おいちょかぶ(花札)

登録日:2021/08/01 Sun 23:51:19
更新日:2023/11/27 Mon 19:32:07
所要時間:約 7 分で読めます




「おいちょかぶ」とは花札(株札)を用いたゲームの一種。

人によっては「龍が如く」内のミニゲーム等でやった事があるかもしれないが、おそらく聞き慣れない人の方が多いだろう。
ルールとしてはトランプで言う所の「バカラ (ビッグバック・バカラ)」や「ブラックジャック」とかなり近く、それらを知っている人ならば覚えるのは簡単かもしれない。
人数は2人以上ならば何人でも可能だが、多すぎるとチップの賭け額が非常に煩雑になる為、多くとも5人前後で行う事が多い。

ルール

注意!
この項目内ではWikipediaを主な引用先にしてルールを記載するが、「おいちょかぶ」にはローカルルール等が多数存在する為、実際にゲームを行う際には相手とルールの事前確認を行った上でゲームを進めることを推奨する。

必要な道具

  • 花札・株札もしくはそれに準ずるもの
「おいちょかぶ」は花札のゲームだが、実際にプレイする場合に使うのは1月から10月の計40枚の札を使用する。また、短冊札やタネ札、光札などの札の優劣は特になく、数字のみに注目して役を考えていく*1

そのため、1から10の札を4組揃えられればトランプでもよい。
極端な場合麻雀牌でも代用可能*2

  • チップ用の小道具
このゲームはあらかじめ与えられた持ち点を元にゲームを行うため、チップとしてコインなどを準備しておく必要がある。
点数決めを事前にしておけば、マッチなどの小道具で出来るが、それが面倒な場合は数字の書かれたコインや麻雀の点棒を使用するのがオススメ。

数字の呼び方

このゲームでは独自の数字の呼び方がある。
それぞれ以下のようになっている。
ちなみに(  )は別称である。

0 - ブタ(ドボン)
1 - ピン(チンケ、イッカチ、インケツ、ツン)
2 - ニゾウ(ニタコ)
3 - サンタ(サンタコ)
4 - ヨツヤ(シスケ、シホウ、シケ、ヨンタ、シス、シスン、シニ)
5 - ゴケ
6 - ロッポウ(ロッポ)
7 - シチケン(ナキ)
8 - オイチョ(ヤイチョ、ハッポウ、チョウベ)
9 - カブ

呼び方から分かる通り、この「おいちょかぶ」と言う名前は8と9の呼び方を繋げたものに由来する*3

ゲーム前にすること

親決め

競技前に「親」「子」を決める。先攻・後攻の違いしかないこいこいなどとは異なり、おいちょかぶでは親と子で立ち回りが大きく異なる(後述)。

互いに札を引いて、最も早い月の札を引いた人を「親」、それ以外は全員「子」とする。

親の交代についてはラウンド数や後述する胴前との差分等を考えて適宜行っていく。

胴前の決定

「おいちょかぶ」は予め与えられた持ち点を賭けて行うゲームだが、青天井式に賭けられるわけではなく、事前に「賭けられる点数の上限」を決めておく必要がある。
この上限が「胴前」と呼ばれるものである。

大事なのは「子1人1人が賭けられる点数の上限」ではなく、「子全員が賭けられる点数の合計の上限」というところ。

例えば子が4人(A,B,C,D)、胴前を50点とし、Aが15点Bが25点Cが10点と賭けを行った場合、3人の合計で既に胴前である50点に到達してしまうので、Dは賭けることが出来ないため、実質的に不参加となる。

もちろん上限に到達さえしなければいいので、子全員の賭けた点数の合計が胴前を下回っている場合は問題ない。
極端な話、胴前の条件さえ満たしていれば、複数の場札に点数をいくら賭けてもいい。
有望な札に一点賭けするか、もしくはリスク分散を目的として複数の場札にチマチマ賭けるのもあり。

ゲームの流れ

親と子は対面するように座った後、場札4枚+自分の札1枚を山札から1枚ずつ選択してくる場札は表、自分の札は裏にしておく。

ちなみにこの際「まき札」と呼ばれるゲームには使用しないが、残っている札が何なのかを参考にする為の札を4枚公開するルールもある。

ゲーム開始後、子は4種類の場札から「点数を賭ける札」「その札にかける点数」を決め、チップを置いていく。

この上で、親は「決め札」と呼ばれる追加の札を以下のルールに従って4枚配る。(配る順番は場札の置き順と同じ。)
  1. チップをかけている子がいる場札には決め札を裏向きにして配る。この札は子は確認できるが、親は確認することが出来ない。
  2. 誰も賭けていない場札は決め札を表で配る。内容次第では良い手に化ける可能性もある。
子はこの時点で勝負をかけに行くことも出来るのだが、合計点を見て不満がある場合は、2枚目の決め札を要求し、それに応じて札を追加することが出来る。(この時は表で札を追加する。)
ただしこの際、以下の条件を守っていく必要がある。
  1. 合計点の1の位が0 ~ 3の場合、必ずもう1枚引かなければならない*4
  2. 合計点の1の位が4 ~ 6の場合、決め札を引くかどうか任意に決められる。
  3. 合計点の1の位が7 ~ 9の場合、決め札を引いてはならない*5
  4. 複数の子が賭けている場札で決め札を追加するかどうかは「賭け額が最も多い子(複数いる場合はその中で最も早く賭けた子)」が決定する。
  5. 誰も賭けていない場札に決め札を追加するかどうかは、その次に決め札の追加選択を行う子(複数いる場合は4のルールを適用。)が決める。
最後に親が自分の札に決め札を追加、そして2枚目の決め札追加*6事で、全ての準備が完了。

勝利条件及びチップの応酬

一連の作業の後、全員の札を公開。
親は自分の持ち札2枚or3枚と、各場札を比較し、1の位が9に近い方のプレイヤーがその場札における勝者となる。
これをチップが賭けられている札のペアの数、即ち最大4回繰り返してそれぞれの場合に対して点数の応酬を行う。

なおブラックジャックと違い、合計点が9点を超えても繰り上がりが発生するだけで失格にはならない。

点数については親が勝った場合は、その場札に子が賭けたチップを総取りし、子が勝った場合は賭けた点数分だけ親から点数を獲得することが出来る。

ちなみに合計が同じ場合は引き分けとするのが一般的だが、親が勝ちとするルールもある。

これを規定回数繰り返して最終的に点数が最も多いプレイヤーが勝者になる。

ここまで見た人は「子の方が札の選択肢やが多い」「親の方が点数比較を多く行う可能性が高い」などの理由から「子の方が有利じゃね?」と思う人がいるかもしれないが、そこで親側のハンデに近い内容の「役」が設定されている。
また、この状況になった場合、点数の収支に変動が生じることもある。

公式役

  • クッピン(九一)
札が1と9の2枚のみの時に成立。親のみ可能。
数字だけを見れば1 + 9 = 10で0点となるが、親が出した場合に限り、問答無用で親側の勝利となる
(ただし後述するアラシを子が出した場合は負けとなる。)

ちなみにローカルルールとして「1枚目:9 → 2枚目:1」でないといけないパターンもあるので注意。

またこの役で勝利したプレイヤーは賭けられた点の2倍の点を獲得できるというルールが適用されることもある。

  • シッピン(四一)
札が1と4の2枚のみの時に成立。親のみ可能。
この場合もクッピン同様親が出した場合、問答無用で親側の勝利。
その他の仕様も基本的にはクッピンと同じ。

  • アラシ
3枚の札がすべて同じ数字の場合に成立する役。こちらは親・子ともに可能。
これが出た場合は出した側が勝利し、クッピン・シッピンも無視できる。

またこのルールで勝利したプレイヤーは賭けられた点の3倍の点を獲得できるというルールが適用されることもある。

また同時に出た場合は札3枚の数値の合計の1の位が最も大きい人が勝利する。
この条件に則って数字ごとのアラシの強さをランク付けすると、強い順に「3 → 6 → 9 → 2 → 5 → 8 → 1 → 4 → 7 → 10」となる。
この内3のアラシは合計値が9(カブ)なので、「アラシカブ」と呼ばれる*7

一見すると親・子でイーブンな役に見えるが、子は場札+決め札1枚目の合計値の1の位が7以上の場合、2枚目の決め札を貰えないので4と9のアラシを作る事が出来ないという制約がある
そのため、作りやすさは親に分がある。

ローカル役

公式役は上に記した3役だが、その他にも以下の様な役を採用することがある。
(効果についてはルールごとにバラつきがあるため割愛。)
また記載されているもの以外に知っている著名なローカル役がある場合は追記されたし。

  • ゴゴ
5が2枚で成立する役。

以下のツルと合わせて2枚が同じ数字の「ゾロ」に含まれるが、比較的出やすい為か「ゾロ」としての採用率はあまり高くない。

  • ツル
2が2枚で成立する役。
「ツル」の花札は2月じゃないのは秘密。

  • トイチ
10と1が出た場合に成立する役。順番は決まっていない。
当然利息のことではない。

  • ノボリ、クダリ
出た数が「場札 → 決め札① → 決め札②」で順番どおりになっている場合に成立する役。
昇順ならノボリ、降順ならクダリとなる。

ちなみに9 → 10 → 1などの数字跨ぎは出来ないので注意。

  • 一二三
出た札が1,2,3の時に成立する役
順番は不動とするのが一般的。

  • 七五三
出た札が7,5,3の時に成立する役
基本的な扱いは一二三と同じ。

  • ドシッピン
出た札が1,10,10の時に成立する役
基本的な扱いは一二三と同じ。

余談

場札と一枚目の決め札が8→9という申し分ない結果なのに、欲張ってルールを破り二枚目の決め札を引いた結果「3」が捲れてしまうと、一気に最低の結果に滑り落ちてしまう。
転じて、見た目は派手だが社会の役に立たない者を「八九三」と呼ぶスラングが生まれ、これが現在で言うヤのつく自由業の語源になったと云われている。
この成り立ちの通り元は蔑称であるため、「かの自由業の方々」の中にはこの呼び名を忌み嫌う人も多いという。



追記・修正は賭けなかった札が最強になっても後悔せずにお願いいたします。
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最終更新:2023年11月27日 19:32

*1 残された11月・12月の札は基本的に除外されるが、ルールによっては追加する事も。

*2 ただし麻雀牌の場合数牌は1から9までなので字牌などを使って10に当たる牌を別に用意する必要がある。

*3 ちなみに0 ~ 7までは全て日本語読みだが、8と9のみポルトガル語読み。

*4 「サンタに止めなし」や「サンタは引き」とも呼ばれる。

*5 「シチケン引きなし」や「ナキナキ勝負」とも呼ばれる。

*6 子と違って合計点がいくつであっても2枚目の決め札を追加するかを選択できる。

*7 「カブアラシ」とも呼ばれる。