司法試験

登録日:2022/08/31 Wed 23:16:00
更新日:2024/10/06 Sun 00:48:05
所要時間:約 5 分で読めます




〇概要

司法試験とは、裁判官・検察官・弁護士といった法曹になるために必要な国家試験である。この試験を突破しなければ、法曹になることはできない。

受験資格として法科大学院(ロースクール)の修了または司法試験予備試験の合格が必要である。予備試験は年齢に関係なく誰でも受験可能である。

予備試験に合格すれば、法科大学院に入学しなくても司法試験を受験することができる。しかし、予備試験の最終合格率は約3%という低い数字である(しかもその大半はロースクール生である)ため、一般的には法科大学院を修了して受験資格を得ることが多い。
と言っても両方受験することはできるため法科大学院に通いながら予備試験も受けるとか、法科大学院は修了しているので受験資格があるけど力試しで予備試験も受けるという人も珍しくない。
つまりは法科大学院をちゃんと出ても普通に落ちるのが予備試験なのだが、少なくとも力試しにはなるしどれかが受かれば儲けものである。

〇内容

 短答式試験と論文式試験が存在する。

 短答式試験とは、複数の選択肢から正解を選ぶマークシート式の試験であり、憲法・民法・刑法の3科目がある。
 問題数と時間は、憲法・刑法は20問で50分、民法は37問で75分である。憲法は比較的時間があるが、刑法と民法は時間の余裕がなく、速く解かなければ最後までたどり着けないという事態が生じる。そのため、本番と同じ時間を計って演習することが重要である。

 論文式試験とは、問題に対して自己の検討結果を論述させる方式の試験であり、その解答は、23行のA4用紙8枚以内で書かなければならない。
科目は、公法系科目、民事系科目、刑事系科目、選択科目である。公法系科目は憲法・行政法、民事系科目は民法・商法・民事訴訟法、刑事系科目は刑法・刑事訴訟法であり、これらの七法は全受験生が受験しなければならない。
選択科目は、労働法・経済法・知的財産法・倒産法・国際法(私法)・国際法(公法)・環境法・租税法の8つであり、この中から受験生は一つ選んで回答することとなる(ちなみに筆者は租税法選択)。
論文式試験の解答時間は、選択科目が3時間、他の科目はすべて2時間である。

そして、これらの短答式試験と論文式試験を、5月の中旬あたりに4日間かけて行う。2日試験、1日休み(中日と呼ばれる)、2日試験という日程なので、実質的には5日間試験期間があるといえるが。

〇採点の仕方

 短答式試験と論文式試験の点数比率は1:8である。このことから、大体の受験生が論文式試験の勉強に注力すると考えられるし、実際論文式試験で差がつくと言われている。

 では短答式試験に手を抜けばいいのか?と聞かれれば答えはノーである。

 なぜなら、短答式試験は採点に占める比率こそ低いものの、足切りが存在するからである。具体的には、短答式試験で一定の点数以上を取ることができなければ、即不合格になるという恐ろしいシステムである。
 足切りにひっかかると、論文式試験でどんなに良い点数を取っていようと、論文式試験の解答は採点してもらえない*1ので、非常に苦しい思いをすることとなる。短答式試験は試験の最終日にあるのでなおさらである。

〇難易度

 一言でいえば、司法試験は難しい試験である。文系の最高峰の試験とも呼ばれているとか。
 では、何が難しいのか。

 まず法律というものそれ自体が難しい。その事案に適用すべき条文を見つけだしたうえでその条文を解釈し、それを具体的な事案にあてはめたらどうなるか、という思考で進むため、そのような思考を理解できなければ法律を理解することはできない。

 また、法律には全体を貫く価値観が存在し、こうした価値観に合わせて考える必要がある。
 だが、それが個人の価値観に合うとは限らない。
 「自分の価値観と全く違う価値観に沿って考える」のは非常に難しく、価値観は地頭でどうにかできるわけでもない。
 そういう意味で、向いていない人にはとことん向いていないといえるだろう。

 加えて、暗記量も膨大である。試験では六法を参照することができるが、六法を引いても条文の文言の定義は載っていないので、文言の定義については事前に暗記しておかなければならない(特に刑事系科目)。そしてもちろん、その意味も理解しておかなければならない。
 また、最高裁判所の判例についてもある程度は覚えておかなければならない。なぜなら、こういう事案だったらこの判例に触れるべき、という採点基準があり、そこを外すとかなりの減点を食らう可能性が高いからである。

 そして何より、範囲がとんでもなく広い。先ほどの膨大な暗記量に加え、8科目という科目の多さから、勉強には非常に時間がかかる。だからこそ、法科大学院で2年または3年学ぶことが大前提となる。

 また、制限時間の2時間は非常に短く、時間内に書ききるのは困難を極める。途中答案になってしまうと、書いたところまでしか評価されないので、字が汚くてもいいから急いで書ききろう。
 現在の法曹業務ではほぼパソコンが主体で手書きで文章を長々と記述すること自体が激減しているのに短い試験時間に大量の文を記述させる必要性がないとして将来的にパソコン入力で回答する方式に変更する見込み。字が汚い人には朗報かもしれない。

 そして、本番は1日に2~3科目受験し、それを4日間行うので、へとへとに疲れる。そのため、体力も必要である。

 以上が司法試験を難しくしている要因である。
 こうしてみると、司法試験がいかに様々な能力を要求する試験かが分かるであろう。

〇合格率

 令和3年の司法試験は、受験者3,424人のうち、1,421人が合格した。実に41・5%が合格しており、決して低くない数字であるといえよう。合格率は年々上昇傾向にあり、令和3年に初めて合格率が40%を超えた。
 しかし、だからといって簡単な試験とはいえない。半分以上は不合格になっているし、受験する段階で法科大学院への入学・卒業という形で絞り込まれているからである。
 なおこの40%については、法科大学院修了者の合格率は30%、予備試験合格による受験者は93%でそれらを混ぜたものである。
 予備試験自体が半端なく難しいためそちらの合格者は比較的通りやすいが、本気で法曹を志望した者が多いであろう法科大学院出身でも簡単には受からないといえる。

 法科大学院制度ができる前は、合格率2~3%程度であった。
 こちらは高難易度故に「大学法学部に行ったから一度は受けてみる」感覚で記念受験をする者も多く、倍率と難易度をそのまま結びつけることはできないが、1日8時間以上の勉強を何年も行って、それでも合格できない受験生がザラな試験だったのである。
 当時からすれば、法曹人気が下がったこともあって難易度は落ちているが、楽な試験になったとはとても言えない。

〇司法試験を受験する方へ

 法科大学院に通っている方は、まず学校の期末試験で良い成績をとることを目指そう。そのうえで、司法試験の各科目を解いて、先生や友達に添削してもらい、添削された部分を出題趣旨や採点実感を見ながら復習したうえでもう一度解き、過去問10年分くらいの完全解を作れるくらいにまで理解できれば、合格レベルまで達すると考えられる。

 なお、司法試験に興味を持った方は、法務省のHPのうち「試験・資格・採用」と書いてあるところから「司法試験」のところをクリックしてみよう。過去の問題や出題趣旨・採点実感を見ることができる。

 また、「司法試験 合格体験記」とインターネットで検索すればいっぱい出てくるので、そういうのを見るのも参考になると思われる。



 追記・修正は司法試験に合格してからお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 司法試験
  • 法曹
  • 文系
  • 裁判官
  • 弁護士
  • 検察官
  • 難関
  • 国家試験
  • 法科大学院
  • 予備試験
  • 司法試験受験後に建てられた項目
  • 追記修正のハードルが高すぎる項目
最終更新:2024年10月06日 00:48

*1 司法試験は試験不合格でも成績を教えてもらえるが、採点もされないので、「どの科目が足を引っ張ったのか」さえ分からないことになる。