ぼくをタスケロン(ドラえもん)

登録日:2023/03/21 Tue 00:45:00
更新日:2023/04/09 Sun 08:26:38
所要時間:約 8 分で読めます





「ぼくをタスケロン」は、漫画ドラえもん』のエピソードの1つ。
てんとう虫コミックス20巻および藤子・F・不二雄大全集8巻に収録。

小学五年生1979年9月号掲載時のタイトルは「タスケロン」




【概要】

「世の中は助け合っていくべき」。そうのび太に説くドラえもんは、人助けをせずにはいられなくなる薬で反省を促す。
これを利用して友達に宿題を手伝わせようとしたのび太だったが…。

静香がラストで見せる優しさも必見。ヒロインとしての彼女の魅力が詰まったハートフルな一作となっている。




【あらすじ】

何やら慌ただしい様子で町の中を走っているのび太。
迷子になった子が泣いているのを見たにもかかわらず、まともに助けようとしなかった。

そんな彼の様子を望遠鏡で観察していたドラえもんは憤慨。


なんてつめたいやつだ!


普段は自分の力量で助けられる範囲であれば、困っている人を簡単に見捨てるような事はしないのび太。というのも、この日は宿題が大量にあるのを思い出し急いで帰宅していたため、それどころではなかったのだ。
のび太にとっては明日の朝までに宿題が終わるかどうかの瀬戸際。とても人のことなど構っていられる余裕はなかった。


そんなもんじゃないよ。
世の中は助けあって……。

そう言いながらドラえもんは『タスケロン』という薬を出した。
これを飲めば、困っている人を見ると助けずにはいられなくなるのだという。

のび太にタスケロンを飲ませようとするドラえもん。そんなにのび太を廊下に立たせたいのだろうか。しかし、宿題の山に悪戦苦闘していたのび太はこの薬を見るなり、ある事をひらめいた様子。


みんなに飲ませたら!

なにっ、宿題がまだ!?
まあっ、かわいそ。
みんなで手伝ってあげようよ。


…と、こんな具合で宿題もバッチリ片付くというシナリオだ。
タスケロンをいつもの3人に飲ませるべく、のび太はドラえもんの制止を振り切り家を飛び出してしまった。




野球帰りのジャイアンスネ夫に声をかけるのび太。


いい薬飲ませてあげる。

だが、今回のジャイスネは異様に勘が鋭い。のび太が進んで飲ませようとする薬など、きっとろくな事にならないと予想した。
さすがに日頃ひみつ道具で増長したのび太によって災難に遭い続けてきただけはある。

ジャイアンとスネ夫は、返り討ちとばかりにタスケロンを全部のび太に飲ませてしまう。薬一瓶イッキはもはや「ドラえもん」の様式美か。

のび太の宿題計画は呆気なく中倒れに。だが、横着者のび太に襲いかかる本当のしっぺ返しはこれから訪れることになる…。

ジャイアンに声をかけるのび太。野球で滑り込みをしたため、ズボンの尻が土で汚れていたのだ。のび太は汚れを払ってやる。


のび太、急にしんせつになったな。

それもその筈、タスケロンの効果が早くも表れだしたのび太は、本人の意志にかかわらず他人へ親切をせずにいられない状態になっていた。
これに味を占めたジャイアンとスネ夫は、のび太に野球道具をそれぞれの家へ届けさせる。


宿題やらなきゃいけないのに。
一分でもおしいのに。


不本意ながら善意の人と化したのび太。どんなに嫌な頼み事も引き受けた上で全て完遂しなくてはならない。

途中静香に出会ったのび太は、彼女に宿題を手伝ってくれるよう覚束ない口調で頼もうとするが、言い切る前にジャイアン達の家へ足が向いてしまう。


2人の家へ道具を届け終え、急いで家へ戻ろうとするのび太。しかし、その先には冒頭一人でベソをかいていたあの迷子の姿が。
再び素通りしようとするが、タスケロンの効き目には逆らえない。のび太は迷子の親を一緒に探してあげることに。
その後無事に母親との再会が叶ったものの、のび太はとても喜べはしなかった。


じょうだんじゃないってんだ。
ほんとにこんなことしてるひまないんだから。

今度こそ宿題に取り掛かろうとするのび太だったが、無慈悲にも今度は大きく重そうな荷物を持った老人と出くわしてしまう。

代わりに荷物を背負う羽目になるのび太。
そんな彼の姿を、家にいた静香は偶然目撃していた…。


荷物運びを終えたのび太は最後の手段に。
困った人がいても見えないフリができると考え、目をつむりながら歩く。方向音痴の上に普通に歩いててもドブへ落ちるというのにあまりにも無謀である。

目を閉じたまま彷徨うのび太は人家の中へ入ってしまう。そこには寝たきりの男性がいた。
その男は一人暮らしで、病気になって寝込んでいたと語る。


そうじして、洗たくして食事を作ってあげます。

苦々しい顔をしながら、のび太はその男の世話を進んで行うのだった。




やがて夜になり、未だ帰って来ないのび太をドラえもんは心配していた。

その頃のび太はと言うと、あれから薬の効き目が切れるまで善意を振りまいたらしく、すっかりヘトヘトになっていた。
今頃タスケロンから解放されたところでお目当ての宿題には間に合いそうにない。深い絶望に襲われたのび太は泣き崩れる。

その時、目の前に一人の少女が姿を表した。



知らなかったわ。

のび太さんて、ほんとにやさしい人なのね。


この日、様々な形で人のために尽くしたのび太の様子を密かに見ていた静香だった。



宿題ならいっしょにやりましょ。

わからないところは教えてあげるから、泣かないで。


夜道の中、のび太に寄り添いながらやさしく慰める静香。

タスケロンがなくても、困った時手を差し伸べてくれる友達はすぐそばにいる。
良き理解者の存在に気づかされ、今度は嬉し涙を流すのび太であった。




【登場したひみつ道具】

○タスケロン
瓶に入った錠剤型の道具。これを飲むと困った人を助けずにはいられなくなる。どんなに急ぎの用事や優先すべき事項があろうと身近な人の手助けを強制的に行うことになる。
宿題を大量に抱えていたのび太はこれをジャイアン達に飲ませようとしたが、逆に自分が全部飲まされてしまう。結果、薬の効き目がなくなるまで至る場所で人助けを行う羽目になった。
作中では失敗したものの、他人に飲ませれば都合良く自分を手伝ってくれる召使、言い方を悪くすればていのいい奴隷が手に入るある意味で危険なひみつ道具……のように見えるが、薬瓶丸ごと飲んだところで半日くらいしか効き目が持たないようなので、数粒飲ませる程度ではもって30分程度の効き目だと思われる。効き目が切れた途端逆襲されるのがオチだろう。その安全性を他の道具にも分けろよ




【アニメ版】

◇大山版「タスケロン・カプセル」
1988年3月18日に放送。映像ソフト未収録。

『タスケロン』は『タスケロン・カプセル』と名を変えていたが、薬本体の形状は原作と同じ丸剤タイプでそれほどカプセルっぽくはない。

大量に出されていた宿題は一週間も猶予があったことが判明。
ドラえもんがのび太を監視するのに使った望遠鏡は『観察望遠鏡』という音声機能付きのひみつ道具。

ストーリーはほぼ原作通りだが、スネ夫やジャイアンの家へ野球道具を届けたついでに、それぞれの母親からお使いを引き受けるなどのび太が行った善行の内容が増えている。


◇わさドラ版「ぼくをタスケロン」
2006年8月18日に放送。初放映時は「しずかは見た…。」という煽り文がついていた。

『タスケロン』は薬ではなくお菓子のようなデザインに変更された(作中でも『飲む』ではなく『食べる』という表現が用いられている)*1。また、容器のデザインもガラス瓶の形から六角形のケースタイプに。

こちらもストーリーは概ね原作準拠だが、病気の男性を助ける前の段階で偶然タケコプターで空を横切ったドラえもんにのび太が助けを求めるも、「いい薬だ」と軽く受け流されてしまった。

ラストは、実際に野比家でのび太に宿題を教える静香と、その光景を押し入れの奥から見守るドラえもんの姿で締め括られる。




追記・修正は、どんな困った項目も直さずにはいられない人がお願いします。




この項目が面白かったなら……\ポチッと/

誹謗中傷等を行った場合、IPの規制等の措置をとらせて頂く場合ありますのでご了承下さい
最終更新:2023年04月09日 08:26

*1 初期のわさドラでは、薬系のひみつ道具が食品などに差し替えられるケースが目立っていた。