冒険ゲームブック(ドラえもん)

登録日:2023/03/24 Fri 11:41:31
更新日:2023/03/25 Sat 18:31:49
所要時間:約 7 分で読めます





「冒険ゲームブック」とは、漫画ドラえもんのエピソードの1つであり、その話に登場したひみつ道具の名称である。
小学四年生1985年7月号に初掲載され、単行本では第38巻に収録。連載当初はタイトルの「冒険」の部分はなかった。

この話はゲーマーの皆さんは共感できる話かもしれない。

【あらすじ】


ある雨の日。
静香出木杉のび太の3人が一緒に下校していた。
のび太は、「こんな雨の日にはぼくの家でゲームでもして遊ばない?」と2人に持ち掛けるが出木杉は「ゲームもいいけど…みんなかんたんすぎてすぐあきちゃうんだよね。」と言ってあまり乗り気ではなかった。
その発言に嫉妬したのび太。
二人で別れた後、「なんとかむずかし~~いゲームでギャフンといわせてやりたい」という決心が彼の中に芽生えたのだった。

家に帰るとドラえもんの姿はなくのび太の部屋に龍の絵がある1冊の巨大な本があるだけだった。



GAMEBOOK
火竜の秘宝

その本の表紙にはそう書かれていた。
しばらくすると、中から声が聞こえた。


ばんざい!とうとう火竜の城にたどりつき、秘宝のドラやきを手に入れたぞ。

声の主はドラえもんで、置いてある巨大な本は「ゲームブック」というそっくりそのままな名前の本であった。

彼によると、「なんでもいいから大事なものを最終ページに入れて、1ページ目から本に入って秘宝(大事なもの)を巡って冒険をする」もので「下手すると本の中で迷って出られなくなることもある」ものだという。

それを聞いたのび太。早速静香に電話をかけて「火竜の秘宝」を遊ばないかと誘う。
しかし、静香と一緒に一人厄介な人物も来てしまうようであった。


そう、出木杉である。

唐突に現れた自分が不利になる得る存在。
それを聞いたのび太はドラえもんにこう懇願した。


負けたくないんだ。早あがりの方法おしえて。

…どっからどう見てもチートである。
当然、ドラえもんからは「インチキしちゃだめっ!」と言われてしまった。

そしてやってきた二人。
のび太がルールを説明したが、彼が「へたすると二度と本から出られないという…」といったため、怖気づいてしまった静香はパスすることになった。

急遽「秘宝を静香にして、彼女を目指してのび太、出木杉で冒険する」という方法に変え、静香は本の最後のページに、のび太と出木杉は最初のページに入り込んだ。
こうして火竜の秘宝、静香を賭けた二人の冒険が始まったのだった。

だがのび太はドラえもんがいない隙を見て「あるもの」を押し入れから持ち出していた…。


最初のページの真っ暗な空間を抜けてたどり着いたのはいかにも平和そうな草原地帯。
安心して進んでいく二人だが、目の前に羽の生えたタツノオトシゴのような生物が表れた。


タカラ。タカラ。

その生物の誘いに喜び、あっさり乗ったのび太と、疑心暗鬼ながらもついていった出木杉。
空飛ぶタツノオトシゴは大きな木のうろに二人を連れて行った。


そこにあったのはミクロネシアのヤップ島で使われていたような大きな石貨だった。

出木杉は一応石貨を2つ持っていくことにしたが、のび太は「こんな重いものもっていけるか!!」文句を言う始末。

石貨を2つ持って進む二人。すると…。



ウオオ~ン

遠くから恐ろしげな唸り声が聞こえてきた。
そこにいたのは、のび太たちの身長の何10倍もあろう体躯に、巨大な翼の生えたスフィンクスだった。


あのページ、とばして進めないのかな…。
むりだろな。

そこでとっさの機転を利かせたのが出木杉であった。

彼は石貨のうち一つを坂道に転がすことでスフィンクスの気をそらして、その隙に猛ダッシュで逃げるという作戦で辛くも難を逃れたのだった。
ここでお気づきの方もいるだろうが、出木杉は「石貨を1つ持ったままでダッシュ」し、のび太は手ブラで走っている。
つまり両者のデッドウェイトはだいぶ違う。

逃げた先は巨大な湖。
だがしかし、そこには橋が一本も架かっていないのだった。

泳いで渡るしかないと思っていたその時、いいタイミングで渡し舟が現れた。

これで二人とも対岸に渡れる…と思いきや、またもや別の問題が生じたのだった。

渡し舟に乗るには渡し賃が必要、ところが実は

渡し賃はあの石貨で、石貨は1個しかないので一人しか乗れないのだった。

「悪いなのび太、この渡し舟は一人乗りなんだ」
出木杉一人だけが渡し舟に乗って対岸に渡ってしまい、のび太は一人残されてしまった。

仕方なく石貨を取りに戻るのび太。
だが事態はそう甘くなかった。

運悪くスフィンクスに見つかってしまい、石貨がある木のうろに追い詰められてしまったのだった。


同じころ出木杉は順当にイベントをクリアしており、ツルに絡まっていた小人を助けて剣を、竜の火にも耐えることができるようになる泉の水を浴び、いつの間にか盾を、身に着けると空を飛べるようになる意思を持った羽根という最強装備を手に入れ、いつでも火竜を倒せるようになっていた。

木のうろに取り残されてしまったのび太。
外にはスフィンクスがずっとにらみを利かせていて動けない。
そう、詰んでしまったのだ。


だが彼は剣や泉の水など比較にならないような究極の装備を持っているのだった……




スペアポケット


そう、ゲームブックに入る前に押し入れから失敬した道具にしてあらゆる(ドラえもんのポケット内のものに限るが)ひみつ道具を引き出せる究極のチート装備である。



スモールライト」でスフィンクスを小さくして逃げることもできる。

「桃太郎印のきびだんご」でスフィンクスを手なずけることもできる。

タケコプター」で空を飛んで脱出することもできる。

はたまた「テキオー灯」で炎にも耐えられるようにもなれる。

そして彼が選んだ道具は…。




…もはや説明不要の禁止カードである。


彼はどこでもドアでその後のダンジョンやイベントはおろか、ラスボス・火竜戦をも全部スルーして秘宝・静香のもとに向かうというチートを使ってしまった。

ラスボスの火竜を倒した出木杉。
無事秘宝・静香のもとにたどり着くがそこには、巨大な石のブロックに押しつぶされたのび太の姿があった。


………のび太は、「おまちどお!!」と静香のところにドアから出て向かった瞬間に頭上に巨大な石のブロックが落ちてきてしまったのだった。

そう、チート対策がゲームブック側に施されていたのだった。

こうしてのび太は文字通りペラペラの姿になってしまい、ドラえもんにも「インチキするとそういうことになる。」と言われてしまい、チートの恐ろしさを身をもって味わったのだった…。


【初登場したひみつ道具】

〇ゲームブック
中に入り込んで冒険できる本。いわばフルダイブVRに近い。
ひみつ道具の中には「まるで見ているものが冒険世界に見える」ような道具や、
くろうみそやアドベン茶のような「因果律が変動し苦難を乗り越える体験ができる」ものがあるが、
この道具はそれらと違いリアルダメージは皆無である。

だからこそ最後のチート対策で「ぺらぺらにされる」ようなオチも待っていたわけであり、
そういう意味では非常に安全に冒険を楽しめる。
(見ているものが冒険っぽくなるやつなどは野良犬が猛獣に見えたりするので、フツーに噛まれるし怪我をする)
最後のページには好きなものを入れておくこともできる。

今回は「火竜の秘宝」というバージョンだったがほかのバージョンがあるのかは不明。わさドラの「どくろ島の大秘宝」ではドラえもんやジャイアン、スネ夫も含めた6人で魔法使いや戦士になって冒険するRPGのようなゲームブックがでて来てる。

ファンタジーRPGの冒険を楽しむという点ではドラえもん のび太と夢幻三剣士に登場した道具「気ままに夢見る機」とそのソフト「夢幻三剣士」に近いものがある。
あちらは夢の中なので寝ていないと使えないが。

余談だが、アニメ版の台詞として2017版「天井うらの宇宙戦争」では
のび太がシューティングゲーム無双を繰り広げているのか「このゲームもあきちゃった」と発言、
またかしょうがないなとお出しされた複数本のうち最後のゲームが物語の本筋に繋がるという導入になっている。
射撃戦にだけ関して言えばのび太も出木杉と比肩するのではないかと思わせる台詞である。




追記・修正は大歓迎だがチートはダメ、ゼッタイ。


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最終更新:2023年03月25日 18:31