屋形船 釣りショック(名探偵コナン)

登録日:2023/03/24 (金) 23:10:00
更新日:2023/05/06 Sat 11:28:56
所要時間:約 8 分で読めます




『屋形船 釣りショック』とは、『名探偵コナン』で江戸川コナンが解決した事件のひとつ。
アニメオリジナルエピソードであり、第296話として2002年10月14日に放送された。
脚本は桜井正明と突廻匡隆の両名が担当した。


※以下、ネタバレに注意してください。


【あらすじ】

工務店社長である河井和幸の招待で屋形船「うなばら丸」にやって来たコナン、蘭、小五郎の3人。

屋形船は貸切で、3人の他に招待されたのは河井の知人である金融業者の山崎恒夫しかいなかった。
屋形船は、河井の経営する工務店の慰安会で予約されていたが、急な仕事が入り、従業員達は来る事が不可能になった為、代わりに河井がいつも何かと自分が世話になっている小五郎達と山崎を招待していた。

ここでは飲み放題&食べ放題、さらには花火見物や釣りまで楽しめる為、招待された4人は上機嫌。
さらには、獲れたての魚の天ぷらや刺身などの豪勢な料理に満足していた。

屋形船が花火見物にも釣りにも最適のポイントに到着すると、河井と山崎はデッキで釣り、コナンと蘭は船内で食事、小五郎も同じく船内でビールを飲みながら花火を見物。

小五郎が寝てしまった後、デッキで釣りをしている河井と山崎にビールを運んでいた海原サヨリの大きな悲鳴が聞こえ、コナン達がデッキに向かうと、山崎が仰向けになって倒れて亡くなっており、河井も気を失って倒れていた。
意識を回復した河井から話を聞いた後、目撃者もいた事から事故だと思われたが……。


【事件関係者】

  • 河井和幸(かわい かずゆき)
CV:秋元羊介
工務店社長。65歳。
小五郎達と山崎をうなばら丸に招待した人物。
釣りをする前にカーボン製の釣り竿を山崎に見せており、その竿で釣りをしていた。
山崎が亡くなっていた時に、彼の上に覆いかぶさるように気を失って倒れていた。
事故発生の状況を小五郎から聞かれると、自身の竿にひとりでは釣れないほどの大物がかかり、山崎に助けを求め、2人がかりで釣りあげていたら途中で釣り糸が切れて倒れ込んだと証言している。
愛煙家であり、タバコを取り出そうとした時にコナンはある物に気づく。

  • 山崎恒夫(やまざき つねお)
CV:島香裕
金融会社社長。60歳。
小五郎達と共に河井から招待された。
河井と同じカーボン製の釣り竿を使って釣りをしていたが、一緒に釣りをしていた時に仰向けに倒れて亡くなっている。
死因は釣り竿が電線に引っかかった事による感電死であり、釣り竿を握っていた掌には火傷の跡があった。
河井の話によると心臓が悪かったとの事。

  • 海原福夫(うなばら ふくお)
CV:西村知道
「うなばら丸」船長。50歳。
山崎を自分で殺したようなものと河井が言った時、あれは事故だったからと慰めている。
心臓の悪い山崎が病院に通っていた事を知っており、サヨリも山崎が薬を飲んでいる事を知っている。
事故発生時に電線は剥き出しだったが、出航前にはサヨリと一緒に船全体を点検し、その時に異常は見られなかったと証言している。
それを聞いた小五郎も、事故発生時は電線の皮膜のビニールが一部劣化しており、そこに釣り竿が当たって皮膜が剥がれたと考えている。

  • 海原サヨリ(うなばら -)*1
CV:朴璐美
「うなばら丸」料理・接客係。22歳。
福夫の娘であり、片付けをしていた時に倒れている河井と山崎を発見している。
今回の事故が福夫に責任があると桜井から言われ、納得できなかった。


【レギュラー陣】

ご存知主人公。
山崎の掌に火傷の跡があるのを発見している。
波は穏やかで静かだった為に船は揺れていないのに、山崎の釣り竿が電線に当たったか気になっており、それを聞いた小五郎も疑問に思っている。
再び事故現場の甲板を調べると左舷の船縁にある物を見つけ、さらに焼かれたように溶けているビニールも発見するが、現場には溶けたビニールの雫が落ちていなかった。

ご存知迷探偵。
河井と山崎に釣りを勧められていたが、ビールを呑むほうが性に合うと言って断っていた。
山崎の掌に火傷の跡があったのは、カーボン製の釣り竿を握り、足はバケツに入っていた海水を被って濡れていた為、釣りをしている時に、偶然釣り竿が剥きだしの電線に触れて感電死したと推理している。
今回もコナンの手で眠りの小五郎になっているが、どう見ても机に寝そべっているようにしか見えないポーズとなっていた。

ご存知蘭姉ちゃん。
出番はほとんどない。


【その他】

  • 桜井(さくらい)
CV:千葉一伸
事件発生後、港に戻ったうなばら丸に来た警察官。
一命を取りとめた河井の事情聴取をしており、強烈な電気ショックを受けた事で一瞬にして心臓が止まったと考えていると救急隊員の話を報告している。
声は千葉と同じ。

  • 潮たけし(うしお -)
CV:菅原淳一
「潮風丸」船長。45歳。
事故発生時に近くを航行しており、河井と山崎が魚を釣りあげようとしているのを目撃。
一緒に倒れたのも目撃しているが、その後は通り過ぎた事もあって何かあったかは知らないと桜井に証言している。


【以下、事件の真相。さらなるネタバレに注意】


















奴を殺さなければ……、いつかは私が殺されていたんです


  • 河井和幸
この事件の犯人。
釣り糸の切り口をよく見ると、ひき千切られたものではなく鋭いもので切られていた。
左舷の船縁でコナンが見つけたのはカッターナイフの刃であり、下の船体には釣り針が引っかかっていた。
それらは沖に出た後に仕掛けて、山崎を殺害していた。

甲板で山崎と2人きりになった時、気づかれないように船縁にカッターナイフの刃を仕込み、船体に自分の釣り針を引っかけていた。
そして、大物がかかったふりをして山崎を呼び、釣り竿を掴んだ時に仕込んだ刃で釣り糸を切り、電線に触れるように山崎を押し倒した。

自身も危うく死にかけたと犯行を否定。
しかし、それは山崎のように素手で素足のままならの場合である。
タバコを取り出そうとした時にコナンが目撃したのは肌色のゴム手袋……、持っていた本人はたまたま入っていただけの事であり、再び犯行を否定。

しかし、ギリギリまで船縁に近づいて釣り糸を引っ張るなら船縁に対して垂直に引くはずだと小五郎(コナン)が言う。
糸が切れると垂直に倒れるはずだが、釣り竿が電線に触れるには船縁に対して平行に倒れる必要があり、河井は釣り糸が切れた時に山崎を船縁に対して平行に押し倒し、剥き出しになった電線に釣り竿を接触させ、山崎を殺害。
証拠として、小五郎(コナン)は河井の持っていたライターに火をつけるように言い、桜井が火をつけようとするがつかなかった。

その理由は、ビニールの燃えカス。
出航前には火がついたはずのライターだが、桜井が確認した時にはその燃えカスがあり、その正体が電線を燃やした時についた電線の皮膜だった。
ライターの火で電線の皮膜を燃やし、電線の芯を露出させ、その後に甲板にあった長靴を履いて肌色のゴム手袋をつけて絶縁させ、上記の方法で山崎を感電死させた。
その後に倒れた状態で長靴を投げ捨て、ゴム手袋をポケットに隠して気絶したふりをしていたと小五郎(コナン)は推理。
それを聞いた河井は犯行を認めた。

動機は会社を乗っ取られそうになった事。
山崎から高利でお金を借りていたが、その借金の担保として山崎を受取人にした高額の生命保険に入らされていた。
そうなると自分がいつか殺害されてしまう為、今回の計画を実行したのであった。
事故に見せかけて殺害するという完全犯罪を狙ったものと思われるが、結果として小五郎は騙せてもコナンを騙す事はできなかった。

  • 山崎恒夫
河井に対して高利でお金を貸し、さらには高額な生命保険に入らせ、自身を受取人にするなど悪辣な人物だった。

しかし、冒頭のシーンでは借りている側の河井と貸している側の山崎はそのような関係は見せておらず、むしろ仲は悪くないように見える。
「うなばら丸」は河井の経営する工務店が慰安会で予約していたが、慰安会をするくらいなら金を返せと思わなかったのだろうか。
高額な生命保険の受取人だった事で余裕があったのかもしれないが、その油断で自身が河井より先に命を落とした結果となった。

なお、本作や『金融会社社長殺人事件』などのように『コナン』の世界の金融業者は被害者になる事はよくあるが、特にアニメオリジナルエピソードに登場する金融業者は普通・悪徳問わず高確率で被害者となっている*2


【エピローグ】

別の日、再び「うなばら丸」にいたコナン達3人。

事件がただの事故で捜査終了となった場合は管理責任を問われて営業停止になっていた為、福夫とサヨリからお礼を言われた小五郎は上機嫌。
それを見た蘭は調子いいんだからと呆れており、コナンも調子だけは打ち上げ花火みたいだと心の中で思っていた。
その後、上空には花火が上がり、小五郎は「た~~まや~~~!!」と叫ぶのであった。


【余談】

謎の凶器殺人事件』に登場した犯人は、30mも離れた廃ビルから投げ釣りで被害者を撲殺という人間離れの方法を使用しているが、河井の場合も勢いよく後ろに倒れ込みながら方向転換して幅の短い電線の剥き出し部分に釣り竿の先端を接触させるというこちらも人間離れした方法を使用している。
アニメ版で釣り竿を使用する犯人は化け物か何かだろうか?

「電線にカーボン製の釣竿を接触させて被害者を感電死させる」という殺害方法は『風林火山 迷宮の鎧武者/陰と雷光の決着』でも行われている。
しかし、この事件で被害者が接触したのは電車の架線だった為、今回の山崎とは違い触れた瞬間に約1500ボルトの電気が体に走り遺体は黒焦げになっている。

本話をもって初代音響監督の小林克良氏が降板し、次回からは浦上靖夫氏が音響監督となった。
そのため本編における選曲の傾向が新曲の比率の高かった状態から一気に古い楽曲中心となっていった。


追記・修正は、屋形船に乗船した事がある人にお願いします。

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最終更新:2023年05月06日 11:28

*1 公式ホームページでは名前がサオリになっている。

*2 原作よりもアニオリに金融業者がよく登場しているのも理由だと思われる。