ヨハン・ゲオルク・アウグスト・ガレッティ

登録日:2024/5/28 (Thu) 20:34:00
更新日:2024/11/14 Thu 21:56:21
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ヨハン・ゲオルク・アウグスト・ガレッティ(1750~1828)は、近世ドイツの歴史学者・地理学者である。通称ガレッティ先生。

◆概要

現在のテューリンゲン州のアルテンブルクに生まれた。父親はプロの歌手だったという。
ちなみに、同時代の著名人には文豪ゲーテや楽聖モーツァルトがいる。

ゲッティンゲン大学で歴史・地理・法律を学び、卒業後は家庭教師をしながら多数の著作を執筆。
これらの著作が評判になったためか、ゴータのギムナジムの教授になり、40年間教鞭を取る。
その間も多数の著書を表した。
全10巻からなる「ドイツ史」ほか、全6巻の「テューリンゲン史」、全3巻の「スペイン・ポルトガル史」ほか、その著作は40を超える。
退職後も執筆活動を続け、1828年、78歳で死去した。


◆『失言録』

ガレッティ先生には大変申し訳ないが、上記のようなガレッティ先生の生涯や学問的業績は、現代日本人である我々にとってはどうでもいい
先生の名が現代日本でも広く知られているのは、ひとえに先生が授業中に口にした数々の失言が生徒たちによって記録され、現在まで伝えられているからである

ガレッティ先生の死去の直後に、まずは私家版の「失言録」が発行された。
これがその後、長い歴史の中で何度も編纂され、現代に到るのである。
そして、池内紀氏が日本語に翻訳したことで、日本でも知られることになった。

失言と言っても、ガレッティ先生のそれは聞く人を不快にさせるようなものではない。
むしろお前は何を言っているんだ系の思わず笑ってしまうようなものばかりである。
これがガレッティ先生が長く愛され続けている理由だろう。

なお、前述のように生前のガレッティ先生は実に40冊を超える著作を残しているが、現代ではほとんど読まれていない。
あろうことか「失言録」こそが先生の「主著」である
こういう歴史への名前の残し方もあるのだなあ。

◆ガレッティ先生失言集

ガレッティ先生の爆笑珍発言の数々は、前述したように池内紀氏が編訳した『象は世界最大の昆虫である―ガレッティ先生失言録』として、白水社から刊行されている。
ここでは本書から、特に破壊力の高いものをいくつか引用しておこう。


・"この地上に現れた最初の人類は住居を持たなかった。ために、一人残らず、けものに食われてしまった"

いきなり話を終わらせないでください。


・"ただ一人を除いて、人類はことごとく大洪水に呑まれた。ただ一人-つまり、デウカリオンである。並びに女房のピュラだ"

一言の中で矛盾を発生させないでください。
この本は1頁目からこの調子である。


・"ダイオタロスはダイオタロスの父の子であった"

そりゃあそうでしょうけど……


・"「父なる酒神バッカス」などというが、とんでもない間違いだ。第一にバッカスが結婚した形跡は無いし、第二に子供はいないし、第三に、やつはまだほんの子供である"

先生はバッカスの知り合いかなんかなのだろうか?


・"教皇は自分のとこへやってくる借金取りに説法をする"

いくら教皇だからって、えらい面の皮である。


・"カール大帝ともどもシャルルマーシュもまた死んだ"

当たり前だ


・"女王エリザベスがメアリー・スチュアートを調教した"

エロ同人かな?


・"人食い人種を人食い人種と呼ぶのはあやまりである。彼らはただ人肉を食っているにすぎない。さもないと、我々は牛肉を食べるのだから、牛食い人種ということになりかねない

なんだか大事なことを言っている気もする。


・"ドイツでは、毎年、人口一人あたり二十二人が死ぬ"

国造りシミュレーションゲームのバグみたいである。


・"ピクピク動く蛙にカルヴァーニ静電流を実証した最初の人は、当然の権利としてカルヴァーニと命名された"

じゃあ、それまでは何と呼ばれてたんだ?


・"鉱物の中で最大の獣が象だ
・"象は世界最大の昆虫である

ガレッティ先生は象のことを正しく認識できない呪いにでもかかっていたのだろうか?


・"あらゆる物体と同様、人類もまた長さと幅という二次元に規定される

当時にしてはえらく先進的な発想ですね。


・"教師はつねに正しい。たとえ間違っているときでも"

まあ、ガレッティ先生がそう言うなら……


・"ひどい答えだ。このレーニング君は是非とも減点しなくては"
生徒"先生、レーニングじゃなくてメッフェルトですよ"
"ならば減点の必要は無い"

いやいやいや、ちょっとちょっと


・"美しい三人の裸の女神をあらわした古代彫刻のポーズときたら、まったく口では言い表せません。だから先生が実物通りにしてみせましょう

生徒たちは大受けだったに違いない。


さて、こんな失言が実に700以上も収録されているこの本だが、その中には明らかに後世に創作されたものもあるという。
ガレッティ先生が「失言」の代名詞となった以上、おそらく今後も新しい失言が付け加えられながら、この「失言集」はいつまでも語り継がれていくことだろう。
学者としての業績が顧みられなくなったことは先生は不満かもしれないが、失言集が編まれて後世まで伝えられたのは、先生の人柄がいかに愛されているかを物語っているだろう。



ガレッティ先生「追記・修正は、追記・修正をやった後に行わなくてはいけない」

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最終更新:2024年11月14日 21:56