登録日:2024/08/21 Wed 10:22:16
更新日:2024/11/05 Tue 00:40:55
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キリキリキリ……恐いでしょう?
キリキリキリ……痛いでしょう?
『オーディション(英:Audition)』は、1999年に製作された日本映画。
配給はアートポート(日本)とVitagraph Films(米国)。
日本での公開は2000年3月3日。
日本よりも先に北米地域で公開されている。
三池崇史監督作品。
主演は石橋凌と椎名英姫。
邦画でも屈指の世界に誇れるトラウマ製造映画として名高い。
【概要】
村上龍が月刊誌『PENTHOUSE JAPAN』に連載していた同名小説の映画化作品。
現在では数々の実写化(原作付き)映画作品で知られる三池崇史による監督作品だが、三池の隠れた持ち味の一つである凄惨なまでのグロ描写も語り種となった衝撃的な作品。
痛々しい位の痛々しさは数ある映画の中でも屈指の物の一つと言われることも。
その、クライマックス部分でのやり過ぎにも程がある展開から、招待された00年開催の第29回ロッテルダム国際映画祭では国際批評家連盟賞とオランダジャーナリズム連盟賞を受賞しているが、同時に同映画祭では(不名誉な)記録となる歴代最高の途中退場者を出したという。
……この時に会場に居た三池は、映画を視聴した女性から「悪魔!」と罵られて「最高に気持ちよかった」と答えている。えぇ…。
翌01年にはアイルランドのダブリンにてアイルランド映画協会会員限定で無修正版の上映が行われたが、その内の数名が上映中に倒れ、一人は救急搬送される羽目になった……とのこと。
━━以上のように、大っぴらには評価できない(してはいけない)が海外でも大いに話題を集めた作品であり、米『TIME』誌が07年に発表した“ホラー映画TOP25”では邦画として唯一のランキング入りする等、知名度が高い怪作となっており、06年公開の『ディパーテッド』にて、本作の映像が流れる場面がある。
【物語】
※以下はネタバレ有りですよ。
ビデオ製作会社を経営する青山重治(石橋凌)は、7年前に妻の良子(松田美由紀)を亡くしてから息子の重彦(沢木哲)と二人暮らし。
ある日、高校生となり思春期も落ち着いて自立心も芽生えてきた重彦より何気なく言われた「再婚したら?」という言葉に思いがけず心を動かされた青山は、友人でもある映画製作会社の代表の吉川との飲みの席にて再婚の話を出してみたところ、此れといった相手が居らずに時間をかけて相手選びをしたいのなら映画のオーディションに託つけて女の子を集め、主役とは別に恋人選びをすればいいと持ちかけられる。
……後ろめたい気持ちが有りながらも吉川の提案に乗った青山もオーディションの準備に協力。
大量に送られてきた応募書類の中からオーディションに呼ぶ30人程の女の子を選ぶ中で、ある一人の履歴書と彼女の心情を綴った作文に強く心惹かれるのだった。
そして、オーディション当日。
個性的ながらもイケていない候補者達のアピールに青山と吉川が内心ではうんざりする中で“その女”……山崎麻美(椎名英姫)がやって来た。
応募書類と添付された写真以上に魅力的な麻美の様子に更に惹かれるものがあった青山は、吉川が「最初から決めていたんだろう?」と呆れるのを後目に麻美を恋人候補に選ぶが、そんな青山に対して麻美に得体の知れない奇妙さを感じ取っていた吉川は忠告を与えるのだった。
しかし、吉川の忠告を他所に初デートを経て更に麻美の存在が大きくなっていく青山。
麻美もまた青山の内心を見透かしているかのように依存を強めていることを告げてくる。
吉川の忠告に背き、麻美と遠出した青山は彼女に廸びかれるように麻美を抱くが、寝ている間に麻美は姿を消していた。
麻美の姿を狂ったように追い求める青山に、吉川は矢張り麻美の身辺がおかしいことを告げるが、自身の気持ちを抑えきれなくなった青山は独自に麻美から告げられていた断片的な情報から彼女の所在を確かめようとするが、その先々で凄惨な出来事があったことを知る……心身ともに疲れ果てて帰宅した青山だったが、一人の筈の自宅で酒杯を煽っている間に身体が動かなくなってしまう。
そうして、意識だけはハッキリとした状況の中で青山の前に姿を表したのは食肉解体用のエプロンを身に着けた麻美の姿であった━━。
【登場人物】
主人公。
ビデオ製作会社を経営する中年男。
友人の吉川のススメで自分の後妻を選ぶために開催したオーディションにて麻美と出会い、クライマックスでは悪夢としか呼べない体験をする。
……恐らくは真実なのだろうが、現実世界の時間の流れからは隔絶された悪夢の中で人の心を持たない怪物となった麻美の本当の気持ちを知る。
妻を亡くしてからは真面目なパパさんをしていた……と思いきや、社員の柳田美千代(広岡由里子)に一度だけとはいえ手を出しておきながらフォローもしないなど、それなりに不実。
クライマックス部分では麻美にあんなことやこんなことをされてしまう。
重治の一人息子。
小学生の頃に実母である良子を失うが、その後はグレることもなく重治によって立派に育てられた自慢の息子。
生物学に興味があり、最新の恐竜の発掘情報などをインターネットを利用して独自に情報を集める程。
重治に気軽に再婚を薦めてしまったばかりに……。
母親の死から7年を経ていたことと、最近になってガールフレンドの高木美鈴(中村美里)が出来たことで心に余裕があったからこその発言だったのかもしれないが。
中の人は元ジャニーズで、現在は税理士。
因みに、02年には宮﨑あおい主演の『害虫』にて麻美役の椎名と再共演している。
重治の妻。
物語の冒頭にて若くして病気により死別。
……重治は悪夢のような体験の中で幾度か良子の幻を見ているが、麻美と対面した時には
「この人はいけません」と忠告を発していた。
余談だが、本作の主演の石橋凌の俳優デビュー作は良子役の松田美由紀の夫である、故・
松田優作の唯一の監督作品である『
ア・ホーマンス』で、そもそも歌手である石橋を俳優業に誘ったのが松田(優作)である。
青山の友人で映像製作会社の代表。
冗談めかして再婚話を口にした青山のために、今回の(言ってはなんだが下劣な)オーディションを開催した。
……が、それだけに一応は業界人とはいえ擦れておらず初な青山とは違い物事を見極める眼力には長けており、初めて見た時から麻美の危険性を何となく察知していた。
その後も、青山に協力する中で更に麻美への疑念を深めて警告を与えていたものの、耳を貸さなくなっていた青山は……。
麻美の過去を知る……と思われる不気味な老人。
目と足が不自由。
麻美の姿を追い求める青山より接触を受けるが、強引に追い返す。
その正体は……?
麻美を虐待していた叔父か、同じく麻美を虐待していた母親の同棲相手だと思われる。彼女の内膝に残る火鉢の跡を付けた張本人。……麻美に報復として不自由な身体にされ最終的には殺されたのだと思われる。
麻美を“個人預かり”としているというレコード会社のプロデューサーだが、実は1年半程前より失踪している。
麻美の犠牲者の一人であり、麻美の部屋に放置されているズタ袋の中に身動きと会話を出来ない状態にされて詰められ、麻美より最低限の食事のみを与えられて辛うじて生かされている。……青山の見た悪夢の中の姿だが恐らくは現実。
本作のヒロインでみんなのトラウマ。
吉川が青山の為にでっち上げたオーディションに応募してきた24歳の一見するとスレンダーで清楚な美しい娘だが……?
バレエに人生を賭けていたが、腰の負傷により夢が絶たれたと語る。
彼女の魅力にのめり込んでいく青山に対して、警戒していた吉川の懸念通りに麻美の語る周囲の知人や親族とは悉くに連絡が取れないなど不可解で得体の知れない部分がある。
青山の邪な本心を見透かしていたかのように、麻美自身も“青山しかいない”と語るが……?
正体は幼少期から誰にも愛されることなく虐待され続けた境遇の中で“痛みこそが生の証”と考えるようになった狂気のサイコキラー。バレエに救いを求めていたのは確かだが、恐らくは虐待による醜い傷が残ることで表舞台に出ることを諦めたのだと思われる。“自分だけを愛してくれる存在”を求めているようだが、その意味する所は全く他者が(肉親であっても)入り込まない世界であり、それが叶えられないと感じたならば、容赦なく犠牲者は“麻美にとって都合の良い”物言わぬ所有物へと作り変えられる。……余談だが、中の人の容姿やキャッチコピーの不気味な余韻とは対照的に実際の麻美(椎名)が発する青山らへの虐待シーンでの台詞は無邪気な少女を思わせる明るいトーン(実際には「キリキリキリー↑♡」……位に明るく無邪気に演じられている。)であり、それが寧ろ怖いとの意見も。
【余談】
- 90年代のデビュー以降、数々の世界的な大ヒットを飛ばす一方で反キリスト教的なメッセージや過激なパフォーマンスと作風で常に物議を醸した、かのマリリン・マンソンも本作のファンだったらしく、ある日のこと通訳を介してまで三池の元に本人から電話がかかって来て「リメイクする時には俺を使ってくれ」と言ってきたらしい。そうかそうか、精神だけ起きてる状態で目の周りに針をいっぱい刺されたり肉切りワイヤーで足首を落とされたかったのか。この変態さんめ♡
キリキリキリ……追記でしょう?
キリキリキリ……修正でしょう?
- エグ杉 -- 名無しさん (2024-08-21 12:11:42)
- 三池監督ってこの作品は評価されてるのに後の作品は比較対象にされて過小評価気味になってると思う。 -- 名無しさん (2024-08-21 13:04:21)
- 今観たけど、麻美の拷問ASMR出したら需要ありそう -- 名無しさん (2024-08-22 23:00:05)
- エンディングへの入りが怖かったよ… -- 名無しさん (2024-08-23 17:04:00)
- 尚、アマプラで見れるで♡(ニッコリ) -- 名無しさん (2024-08-23 17:19:26)
- 日本版ジェイソンだな、麻美は… -- 名無しさん (2024-10-08 18:03:01)
最終更新:2024年11月05日 00:40