公式マイバチ(太鼓の達人)

登録日:2024/11/21 (木) 13:20:00
更新日:2024/12/02 Mon 09:59:50
所要時間:約 11 分で読めるドン




職人が一本一本丁寧に仕上げたメイドインJAPANの公式マイバチ!
もちろん、世界大会でも使用可能!

公式マイバチは、リズムゲーム「太鼓の達人」の運営チームが発売した商品である。

前史

そもそもマイバチというのは、「太鼓の達人」の上級者の多くが使っている自作のバチのこと。
普通に太鼓の達人を楽しみたいだけの人のほとんどは筐体に備え付けられているバチ(いわゆる「ハウスバチ」)を使うと思うが、上級者目線では
  • 太いし重すぎ
  • ほぼ反発がない
  • バチを覆うラバーで手が擦れて豆になる
などいい所がない。中には最難関レベルの曲をハウスバチで全良する人外もいるが

そこで一部の上級者が自前の木材を削って「マイバチ」を作るようになり、いつしかそれが定着していった。明らかに備え付けじゃないドラムスティックみたいな物で叩いている中・上級者を見たことはないだろうか。あれがマイバチである。

マイバチの特徴としては「細い」「木材が軽い」「(テニスとかの)グリップテープを巻く」「先端に向かって尖らせる」といったものが挙げられる。
これにより最近の恐ろしいスピードで飛んでくる譜面をさばきやすくなり、またバチ自体の反発を使って連打を入れたり専用のテクニックを使えるようになる(詳細はロール処理(太鼓の達人)を参照)。
だがただでさえ軽い木材を削って軽くしている上に、反発の強い形状を採っているためどうしても折れやすい。軽ければ軽いほど、強ければ強いほどこのデメリットも大きくなる。折れた破片が人に飛んでいったり手からすっぽ抜けたり、酷い時にはバチが太鼓に刺さるといった事故が後を絶たない。

公式ではマイバチは一応「禁止」という扱いになっている。
備え付けのハウスバチには筐体に繋げるための紐がついており、かつほぼ絶対に折れない太さの為事故が起きない。しかしマイバチを使ったことにより起きた事故は「プレイヤーの責任」であり、公式側は補填することができない。
だから、建前上だけでも明確に禁止にせざるを得ないのである*1。筐体側でマイバチを使っているか否かを判別する手段がなく、スコアの公平性が失われるという理由もある。

ところが、最近はハウスバチでは絶対にクリアできないと言える譜面が乱発されており*2、ニジイロVer.になった現在では上級者が集う腕試しモード「段位道場」でも、譜面のみならず連打条件すらハウスバチでは達成不可能というお題が増え始めている。
公式の施策によってマイバチ禁止の建前が完全に風化してしまっているのだ。

初代公式マイバチ

運営チームもこの現状は把握しており、「マイバチは非公式ながら『文化』として成立している」「今後世論が『マイバチは危険だ』という方向に傾くと、より厳しい制限を掛けざるを得なくなる」(=現状は黙認している)と開発日記では言及されていた。

そこで公式は2015年12月、「今まで非公式だったマイバチを公式として販売する」と発表。公式大会でも使えるという謳い文句と共に2016年に発売した。価格は税込み3900円ポッキリ。

特徴として、バチ自体が短めかつ細めである点が挙げられる。現代のマイバチの主流となる長さは37〜40cm程度であり、長細いほうが反発が強く連打や処理が楽(その分負荷もかかりやすい)なのだが、公式マイバチは35cmとやや短い。ハウスバチ(38cm)よりも短い。
それを補うように、木材は界隈で定番の米ヒバ、朴ではなく硬めのビーチ材(恐らくブナ)が採用されている。

またPL法に合格するためプレイヤー間の事故を防ぐため、テーパー域*3こそ確保されているものの、現代のマイバチで主流な尖った形状ではなく先端が丸まった形状を採用*4。さらに手からのすっぽ抜けも防げるようストラップが括りつけられている。
当然ながらバチを削ったりテープを貼ったり*5など「バチそのものに対する加工」は禁止。グリップだけは消耗品なので巻き直しOK。

そして太鼓の達人の「ファングッズ」的な側面として、側面に「太鼓の達人」ロゴの焼印が施され、ストラップの留具にもおなじみの「どんちゃん」型の刻印が入っている。
実に所有欲を満たされる逸品である。

反応

発表当時は当然ドンだーの間に激震が走った。荒れやすい話題*6として敬遠されていた「マイバチ」に対して、公式が踏み込んで対策を打ち出してきたのだ。

マイバチ派のドンだーはもちろん、今まで律儀にルールを守ってきたハウスバチ派のドンだーからも「公式から出るなら…」と賛成し購入を検討する層が多数現れた。単純に公式の態度が軟化したことを喜ぶユーザーもいた。

一方で手放しに喜べないという意見も存在していた。

1.公式大会では「公式が用意した道具」のみが許可されるので、今までハウスバチ限定だったのが今後は公式マイバチとハウスバチ使用のドンだーが混在することになる。これではドンだーの経済格差が現れて公平な大会を行えないのでは。
2.軽いマイバチが普及するという建前の元、ハウスバチではクリアできないレベルの譜面が今後許容されるようになってしまい、難易度の上昇に歯止めがかからなくなってしまうのではないか。
3.自作バチに比べると精度用に寄った形状なので連打が入りにくいのではないか。加工もできないので公式マイバチを使うモチベーションも上がらない。
4.値段が高く感じる。普通木材はホームセンターで500円程度、グリップも300円ほどで買える上、工具等を一通り揃えて自作しても計2000円前後でマイバチは1組作ることができる。その上乗せに価値はあるのか。

というのが散見された意見の一部である。

1に関しては、公式大会で「公式マイバチの貸出」という形でこの格差を埋める努力が為された。当初はナムコ直営店・次世代ワールドホビーフェアのみでの販売だったのも、後に全国のゲームセンターや直営通販での取り扱いが開始され、地域格差も解消された。
3も実物を触ったユーザーからは「ロール処理が入りやすい」「短いが反発があるため精度が取りやすい」と概ね好評*7であり、ここで出た様々な意見は後の2021年版に活かされることになる。

4は主観の問題ではあるが、そもそも「ファングッズ」という面もあるため一概に高いとは言い切れない。マイバチが気になっているけど買えない・作れない層にとっても3900円で公式による安心感を得られることの恩恵は大きく、価格そのものに対する批判は下火になっていった。
ただし販売当初は「買って数時間で折れた」「グリップの処理が甘い」「左右の重さが分かる程度に違う」など、個体差による不良の報告もそれなりにあった。

問題なのは2で、上記に挙げた通り現代の太鼓の達人のインフレは歯止めがまるできいていない。一応Q&Aでも「(公式マイバチと)譜面の難易度は関係ありません」と回答されてはいるが、クリアはまだしも公式の裁定内でフルコンボ・全良するにはハッキリ言って公式マイバチを使わざるを得ないという状況が続いている。
とはいえ、これはどちらかというと難易度調整の是非の話であり、公式マイバチの功罪とは別と言えるだろう。

総合的には、公式マイバチという存在そのものは受け入れられ、名実ともに太鼓の達人の歴史に新たな1ページを刻んだ製品になったと言える。

2021年版

大好評を得た2016年版は速攻で完売。中古市場でも高騰が起こり、再販を望む声が高まっていた。
去る2021年に待望の再販が決定されたが、今度は「リニューアル」するとの文面と共に、まさかの3種類のバチの展開としてパワーアップを遂げた。価格も5470円へとパワーアップした

内訳は以下の通り。
  • …2016年版のものに準拠でほとんど同一。短い故の使いやすさが売り。
  • …新たなマイバチその1。朱と比べて若干細い18mmの太さかつ、長さも38cmと長い。そして木材はメイプル材が採用されており、低反発であることが売りになっている。
  • 山吹…新たなマイバチその2。こちらは朱と同じビーチ材だが、太さ・長さの寸法は蒼と同一。反発の強い木材でより長細くなっているため、蒼と対照的な高反発が売り。
まとめると「取り回しの朱」「万能・精度型の蒼」「反発・ロール処理型の山吹」という差別化がされている。

その他の仕様は基本的に引き継がれており、丸い先端と緩やかなテーパー域、焼印、ストラップは健在。種類によってグリップとストラップの色も変わる。

またバチ本体には直接関係しないが、今回からは数量限定の方式をやめ、月ごとの受注生産、ヨドバシでの販売に対応。運が良ければすぐに、そうでなくても確実に手に入るようになった。

反応

2020年代になると、マイバチを自作するよりも「技術の成熟した上級者が作ったバチを買う方が信用できる」という機運が高くなっており、フリマサイトなどで購入するケースが増えていた。アマ○ンの業者にも「達人愛用」といった宣伝文句が使われたり(真偽は不明なことが多い)

そんな中で3種類のバチが販売されたわけだが、相変わらず丸い先端の仕様は健在かつ、3種類ともすべて定番の木材からは外したチョイスなため結構賛否両論に分かれていた。前回から多少値上げされたことも批判に拍車をかけている。
特には「低反発」という、反発を強くして叩きやすくするという本来のマイバチの目的と真っ向から対立した特徴が推されていたため、余計に敬遠されるフシがあった。

そんなわけで初販はまず山吹から完売、次にが売り切れ、の在庫消滅は最後というだいたい予想通りの結果になった。

しかし実際に使ってみると、山吹の反発が予想以上に強く、また軽いため安定感に欠け精度が取りにくいという意見が多発。それに対して硬く重めの素材で、かつ言うほど低反発でもなかった*8の株が上がる事態に。
結果安定・精度を求める層からが再評価され、先にデメリットを挙げた山吹もピーキーながらロール処理・連打の性能はピカイチという評価に落ち着き、依然として取り回しの良さという無二の長所で一定の人気があると合わせて三者三様の存在感を放っている。

奇しくも公式のプッシュの仕方とプレイヤーの認識が一周回って同じになったわけだが、2021年版も概ね成功を収め、以降はこの仕様のまま販売が続けられている。

余談:どれがオススメ?

マイバチとしての性能だけを重視するなら山吹一択である。試し打ちする機会があればやってみてほしいが、本当に圧倒的なロールの性能を誇る。

しかし先に述べた物の他にもう一つ、無視できない欠点がある。それは折れやすいこと。
反発が強ければ強いほど、軽ければ軽いほどバチにかかる負荷が大きくなるというのは序盤で述べた通りだが、公式マイバチも例外ではないのだ。くれぐれも丁寧に使用すること。項目作成者も第六天魔王の攻略中に1本折ったショックで1ヶ月引退した

自分はシングル・正攻法で頑張りたい、連打はそこそこでいい、安定した反応がほしいという方にはが適しているだろう。矛盾した言い方だがとにかく汎用性に特化しているバチであり、また地味な利点だが反発が控えめなため指が疲れにくいというのも見逃せない。
逆に特定の難関曲、最近のロール処理の多用を強要してくる譜面の攻略には山吹と比べるとどうしても劣る。決して出来ないわけではないため、ここは好みの問題。

ではにはどんなメリットがあるかと言うと、この3種の中では最も短く、かつ最も重い点が挙げられる。
単純に無反応が起きる確率が減る上、叩く場所と手が近いのでより直感的な演奏ができる。打面のブレが減るのだ。短いので重さと反発の割には疲れにくくもある。初心者や、初めてマイバチに触れるドンだーには一番オススメかもしれない。

追記・修正は、3種類のバチを揃えてからお願いだドン!
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最終更新:2024年12月02日 09:59

*1 店によっては本来のハウスバチを撤去し、マイバチ型のバチをつけていることもある。が、もちろん運営側の管轄外なのでこれで事故が起きた場合は店舗側の責任である

*2 先ほど挙げた人外も流石にシングルだけでは無理だったようで、工夫してハウスバチでロール処理を行っている。

*3 マイバチの中心あたりから先端に向かって細くなっていく形状、及び部分のこと。この部分の角度が急であるほど反発が強くなるが、軽く脆くなるため無反応や破損を招くリスクも上がる

*4 この形状のマイバチは「精度用」という呼ばれ方がされる

*5 俗に「魔改造」と呼ばれる、反発を強くするためにビニールテープを貼ったりグリップテープをバチの先端近くまで重ね巻きする行為

*6 mixiなどの太鼓の達人コミュニティでは禁止の話題とされることもあった。

*7 項目作成者も当時試し打ちを行っており、短さゆえの取り回しの良さがいい意味で前面に出ており、反発もむしろ丁度いいバチだと感じた。

*8 強いて言うと中反発くらい。確実に山吹や朱の反発には負けているが、全く跳ねないという印象を持っていると面食らうくらいには反発する