多段ジャンプ

登録日:2025/08/15 Fri 09:52:48
更新日:2025/09/01 Mon 19:23:57
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多段ジャンプとは、ジャンプで空中に跳んだ後、着地を挟むことなく更に追加でジャンプを行うことである。



概要


通常の人間であれば、地面から飛び跳ねた後に何もない空中で静止したり、さらに浮き上がったりすることはできない。
空中では重力という地面に引き寄せる力がはたらくのは言うまでもなく、無重力空間でもない限りこれに逆らうことは不可能である。
そしてジャンプとは地面を蹴ってその勢いで自分の身体を空中に弾くことなのだから、空中にいる、周りに空気しかない状態でこれに抵抗する手段は生身の肉体にはない。
空中に跳んだらあとは重力に任せて落ちるだけである。

しかし、フィクションの世界では様々な理屈を用いて空中を自在に飛び回る面々がいる。
その中でも、全く科学的に説明できないのに多くのキャラクターが活用する摩訶不思議な技術の1つが『多段ジャンプ』である。

ゲームにおける多段ジャンプ


多段ジャンプを初めて実装したのは、1985年発売のナムコのアーケードゲーム『ドラゴンバスター』とされる。
ジャンプの後に、空中でさらにジャンプを追加して行う二段ジャンプの原初である。
(空中の追加制動という意味なら、もっと前に1981年発の『ジャンプバグ』などでも実装があった。しかし、空中の何もない場所で追加でジャンプを繰り出すという意味なら『ドラゴンバスター』が初と考えて良い)

『ドラゴンバスター』がこれを実装したのは、他作品との差別化が目的であったと考えられる。
視覚的インパクトもあるし、シビアな戦いのシステムとして立体的な駆け引きを追加する画期的なシステムだったのである。

当初こそ物珍しいとされていたが、その後のゲーム史において「多段ジャンプ」は、「ホバリング」「浮遊」とは似て非なる独自のシステムとして脈々と受け継がれていくことになった。
それを成せた理由は様々であろうが、大きな理由は
  • ホバリングや浮遊ほど自在ではないが、空中における行動の選択肢として駆け引きを生み出すことができる
  • ただの大ジャンプとは異なり、複雑な軌道修正を可能にさせる
    • 具体的には以下のような動きが挙げられる。
      • 前方(後方)に飛んだ後に後方(前方)に飛び直し「く」の字を描くことで、真上からの攻撃を避けつつ左右の軸を飛ぶ前と同じ位置に戻す。
      • 敢えて穴などの今の足場より低い位置にジャンプで飛び込み、空中のアイテムなどを取りつつジャンプで元の高さの足場に復帰する。
      • ジャンプ距離を見誤って1段目のジャンプが足場に届かず落下死しそうになった場合などに、2段目のジャンプを追加して復帰できることで保険をかけられる。
    • 2段目のジャンプのタイミングを1段目のジャンプの途中という遅れたタイミングにずらせるため、攻撃をかわす際に直前まで攻撃を引き付けてボタンを押すことでタイミングを図りやすいという点も大きい。
などであろう。

ゲームハードの性能が向上していくと、より複雑な空中制御が可能となり、『キングダム ハーツⅡ』のソラのように、多段ジャンプなのか浮遊なのか区別がつかないレベルで飛んだり跳ねたりできるキャラクターも多数登場していくことになる。

漫画・アニメにおける多段ジャンプ


漫画やアニメでは「飛ぶ」「浮く」ことに比べるとマイナー。
何故かというと、漫画やアニメは「自らが操作する媒体」ではなく「見て楽しむ媒体」ため、ゲームの欄に記載したようなメリットが活きることがないのである。

それでも描くとするなら、逆に「なんで多段ジャンプができるの?」の理屈を説明するところから始めなければならない。
よって、わざわざ多段ジャンプを描くくらいなら
「高い所に行きたいなら普通に思いっきり高く飛び上がればいい」し
「複雑な軌道を飛び回りたいなら都合の良い足場を用意すればいい」し
「説明をつけるならいっそ素直に浮けばいい」だけの話なのである。
それでも採用する場合は「展開や体質の都合で飛行能力は持たせられない、しかし高い場所で戦えるだけの理由付けは欲しい」ということで、技法として表現されることが多くなる。

有名どころでは『ONE PIECE』の月歩などがある。
これには「超能力じみた浮遊が出来ない人間でも技術次第で空中移動を実現できる」というきちんとした背景がある。
これによって麦わらの一味サンジをはじめとする月歩(空中歩行(スカイウォーク))習得者は非能力者でありながら移動手段拡張や空中戦を演じることが可能となっており、まさに多段ジャンプのメリットを活かしている好例になっている。

現実における多段ジャンプ


無理です。
かの『空想科学読本』では、ゲームにおける二段ジャンプと、漫画・アニメにおける多段ジャンプによる飛行(前述した『ONE PIECE』の「月歩」)の両方を検証している。
だが、当然と言うべきか、それぞれ「体重70㎏の人が二段ジャンプで2m跳ぶには、空気をマッハ71で蹴ればいい」、「そもそもそれ程の脚力があればジャンプ一回で飛んだ方がずっと早い」と結論付けている。

そんな夢のないこと言わずに


現実でありえる範囲というと、虚無を蹴るという物理的に説明がつかない部分がなければそれっぽいことは不可能ではない、とも言えるかもしれない。

まぁそれが多段ジャンプの核なのでそれを取り払うとどこまでいけるかという話になってくるが……

陸上競技に三段跳び(triple jump)があるが、これはホップ、ステップ、ジャンプと地面を三歩蹴って進んだ距離で競うものなのでこの項目の多段ジャンプとは別物だが、『多段でジャンプする』という字面的にはこれが多段ジャンプに当たるだろうか。

多段ジャンプという定義


最初に「ホバリング」「浮遊」とは異なるカテゴリと記載したが、実際にはその境界は曖昧である。
と言うか、「多段ジャンプとはこういうものである」という定義はべつにこの世に存在しないので、例え明らかにホバリングであってもそのゲームが「これは多段ジャンプ(二段ジャンプ)です」と説明していればそれは多段ジャンプである。
よって一括りに説明すること自体が難しい話で、実際本ページのプロト版にあたる「二段ジャンプ」項目作成時もたいそう揉めた。

多段ジャンプに似たシステム


ゲームにおいて、多段ジャンプに似ているシステムは数多く存在する。
特に、大気や何もない空間を蹴っているわけではなくとも、空中でなにかしら工夫をしてもう一段階飛び上がることを多段ジャンプ(二段ジャンプ)と呼称することがある。
ドンキーコング バナンザ』の破片ジャンプ(ジャンプ中に手に持っている破片を踏み台にさらに飛び上がる)などがそれに該当。そして、破片の代わりにヨッシーを踏み台にするのがマリオである。
他にも、ジェットでジャンプ後の浮遊を追加したり、空中でテレポーテーションを行ってさらに高い所へ移動するなどのアクションも、多段ジャンプに近い挙動といえる。
もう少し現実に近いところでいうと、壁に向かって飛び上がり、壁を蹴ってさらに高く飛ぶ「三角飛び/壁蹴り」なども、多段ジャンプとは異なるが動きとしては多段ジャンプに近いだろう。



追記・修正は多段ジャンプできるようになってからお願いします。

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最終更新:2025年09月01日 19:23