妖刀(カグラバチ)

登録日:2024/12/19 Thu 13:30:27
更新日:2025/05/27 Tue 23:54:30
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“玉鋼”を 炭素量を整え 強度を高めるため
叩き 延ばし 折り曲げ また叩く

この鍛錬を含む高度な技術を以て行われる
幾つかの工程を経て 鋼の塊は──

美しく強靭な刀へと変貌を遂げる


妖刀とは漫画『カグラバチ』に登場する特殊な刀。
物語の中心となる重要なキーアイテムでもある。
※ネタバレ注意


【概要】

作中主人公の父である刀匠 六平国重(ろくひらくにしげ)が打ったとされる刀。
知っての通り刀社会である日本において刀匠は何人もいると予想されているが、その中でも六平国重は唯一特殊な加工法を用いて刀を作ることができる。

詳細は未だ不明だが、斉廷戦争と呼ばれる日本の妖術師達*1が決死で戦った戦時中に、六平国重は六本の妖刀を開発した。
それが戦場で振るわれたことにより、戦争経験者をして「あの地獄絵図を終わらせた」と言わしめるほどの力を発揮し、戦争に勝利したらしい。

戦後、国重は六本全てを回収し、自らの工房の地下に保管。
しかしその場所を妖術師の集団毘灼(ひしゃく)に襲撃され、六本の妖刀は全て奪われてしまう。

本作の主人公 六平千鉱(ろくひらチヒロ)はそれを取り戻すため、
七本目の妖刀を手に立ち上がることから物語の幕が上がる。


【特徴】


①:特殊能力
妖刀を持って振るう力は作中描写や評価を見る限り、一般的な妖術とは隔絶した差があると見られる。
特に注目すべきは“複数の能力”であり、作中の妖術師が自ら持つ妖術は簡単な汎用能力を除き“一人につき一種類のみ”が大原則であるのに対し、妖刀を握ることで発動できる強力な固有能力が複数(現状では少なくとも三つ以上)得られる。
ただし、妖刀を握ればその人自身が持つ固有の妖術は一切使えなくなるデメリットがある。
だがそれを差し引いても破格と言えるが故に、作中で妖刀を巡る争いが起きたと言える。

②:本領
刀匠である六平国重が明言していた妖刀の“理論を超える力”のこと。
伝え聞いたチヒロ曰く「持ち主の妖刀への解釈の変化…肉体の強化…強い意志…不透明な“何か”が影響して…作刀時には想定していなかった力を呼び起こす」とのこと
上記のような妖刀の力を聞いたかつての戦争経験者は「話してくれた能力だと…強力ではあるけどあの戦争を終わらせるってほどじゃないよね」と称しており、ただ三つ以上の能力を得られるだけではない更なる力があるとされ、劇中では六平千鉱双城厳一(そうじょうげんいち)がその本領に達したことで、妖刀の基本能力を更に進化させた力を使用した。

③:命滅契約
六平国重が全ての妖刀に施したとされる制限機構。
一本の妖刀を使える所有者は“常に一人”であり、そのものが生きている限り、他の者は妖刀の力を扱うことはできない。
作中では斉廷戦争により妖刀を振るった五人の契約者は国の妖術機関神奈備(かむなび)にて保護しており、彼らを守る限り妖刀の力は悪用されることはないとされて来たが…

④:妖刀特有の玄力
妖刀の力は「込めた玄力を増幅させ 人体では生成・保持できない程超高密度練り上げる。するとそれは剥き出しとなり 形を為す」とされており、妖刀使用時にはそれにより形を為したものが所有者の周りに浮かび上がる。現時点で登場しているのは全て何かしら生物に関連する形をしている。
これは予め妖刀に自らの玄力を込めていれば、仮に妖刀を手にしてなくても遠隔で操作ができる様子。それにより出た玄力で周りを知覚することも可能なようで、劇中ではチヒロがそれを活用していた。
また妖刀だけではなく、後述する妖刀の原料“雫天石”を武器として用いた際にも現れる。


【妖刀一覧】

7本のうち、2本はまだ名前が判明しておらず今後登場するものと思われる。

  • 刳雲(くれぐも)
契約者:巳坂(みさか)→双城厳一→六平千鉱
玄力反応:雲のような龍

戦時中に活躍した妖刀の一振り。
作中で“妖刀六工”と称されたうちの一本で、チヒロが初めて対峙した妖刀でもある。
3つの能力それぞれに“溜め”があるのが特徴で、それを活かして戦闘を行うのが大きな要素。
それぞれの能力を組み合わせたコンボ連携技もあるとされており、それを聞いた神奈備のメンバーは「っぱすげえな妖刀 弱点なしかよ」とコメントするほど。

六平国重の殺害後、当初の契約者が真っ先に殺害され、それから3年ののち毘灼によって双城厳一の手に渡った。
双城とチヒロとの対決後に刀身が破損し、チヒロが確保。
楽座市突入時の武器として柄側の短い状態で使用し、最終的にチヒロが限界まで使用したことで消滅した。

・「(めい)
刀から全方位に放電攻撃を行う、刳雲の攻撃で最大の殺傷能力を誇る切り札的能力。
万全に溜めた際の攻撃は広範囲かつ容易に人を殺せる威力を持つ代わりに、数十秒のインターバルが発生する。

・「(ゆい)
刀を振るうことで氷を生み出しつつ凍結する能力。
“攻防のバランスがいい”と称される能力であり、実際に作中でも拘束・質量攻撃・防御など幅広く使用されていた。

・「(こう)
広範囲に水を生み出す能力。
殺傷能力は無さそうではあるものの、ほぼ溜めを必要としないのが特徴。
これにより咄嗟の目くらましや陽動に使えるが、特に重要なのが「鳴」との連携。
溜めがほぼいらない「降」で広範囲に水を広げることで、威力は落ちるものの溜めない「鳴」でも広範囲に命中させることができる。
チヒロ曰く「刳雲の基本戦術」とのこと。


  • 酌揺(くめゆり)
契約者:漆羽洋児(うるはようじ)昼彦(ひるひこ)
玄力反応:顔のない浮かぶ遊女

“妖刀六工”の一つ。
玄力反応が人型なのは今のところこれのみ。
能力の一つ「遊」は物体への敬意が習熟に繋がる妖術であり、漆羽が契約者に選ばれたのは彼の「妖刀を見るなり赤子のように可愛がる」といった性格を見込んでのものと思われる。
漆羽の死亡*2により命滅契約が失われ、その力は毘灼のメンバーである昼彦の手に渡った。

・「(えん)
酩酊による幻覚を引き起こし、平衡感覚を乱す。
能力の発動は盃に酒を注ぐ画で形容される。
引き起こす幻覚は精彩で、人を斬る感触まで錯覚させる。

・「(ゆう)
周囲の「モノ」を支配下におき、自在に操ることができる、念力ないしポルターガイスト的な能力。
発動時には玄力反応の遊女が対象となる物体に触れる。
使用者がそう割り切ってさえいれば、人間の死体であってもモノ扱いして操ることが可能。


  • 飛宗(とびむね)
契約者:座村清市(さむらせいいち)
玄力反応:黒い羽根

“妖刀六工”の一つ。
3つの能力はいずれも鳥類をモチーフとしている。
移動・感知・回復と、いずれも攻撃以外に特化しているのが特徴。
しかし使用者である座村清市が盲目でありながら熟練の居合使いであり、かつ戦争で振るい続けた親和性と合わせると作中でも圧倒的な実力になると目される。
なお、飛宗使用時の座村は舞う羽根を介して周辺を知覚するほか、黒い翼を背負って自在に飛行することもできる。

・「(カラス)
妖刀の使用時に舞う羽根と自身の位置を入れ替える。
これにより、一瞬で移動しつつ羽根を目眩ましに大群を居合で斬り伏せる様子が明らかとなっている。
飛行もこれの応用か。
大量の黒い羽根を纏いながら現れる様子は作者の読み切り作品「ロクの盟約」のセルフオマージュと思われる。

・「(ふくろう)
発動することで空に梟の模様が浮かび上がる。
玄力の出力を感知する能力のようであり、盲目の座村とは相性抜群。
作中ではなんと日本全土を覆う範囲に展開された。
ただし、神奈備上層部曰く「広い分デカい玄力出力じゃないと感知できない」「さしずめ妖刀探知機ってとこ」と評しており、範囲が広くなるにつれ感知能力が落ちるもよう。

・「(すざく)
自身の傷を(くさ)にして燃える炎を放ち、肉体の損傷を再生するという不死鳥を体現した能力。
なお、座村は体の傷を癒しても自ら閉じた目だけは治していない。
「宴」の効果のような俗にいう状態異常に類する影響も緩和できる。
炎は普通の炎と同様に熱いため、攻撃手段にもなる。


  • 真打(しんうち)勾罪(まがつみ)
契約者:剣聖
使用者:漣京羅(さざなみきょうら)
玄力反応:黒い液体/液溜まりに咲く花/液体で形象された蟲(蝶/各種妖術名)

“妖刀六工”の中でも無双の一振りと称されるもの。
「勾罪」の名前は契約者である剣聖が呟いたもので、作中では専ら「真打」と呼ばれている。
戦争の勝利を決定づけたとされ、作中評価は六平国重の最高傑作。

しかし制作者である国重は「真打のことになるといつも口を濁した」とされた他

  • 真打は強力なだけでなく“異質”である。
  • 真打だけはもう二度と 誰にも 使わせては駄目

などと意味深な発言をしており、不安を覗かせていた。
実際、国重が回収する前に神奈備上層部によって厳密な封印を施され、「無理矢理解くにしても十年はかかる」と称されるレベルに厳重保管されていた。

しかし、妖刀を奪取した毘灼によってその封印は三年で解かれ、楽座市に出品。
楽座市首席競売人である漣京羅の手に握られる。
本来、契約者が存命の状態で他人が使うことはできないはずだが、京羅が使おうとした瞬間に離れた地で“保護”されているはずの剣聖が反応。
鞘から抜かないまま京羅はその力を行使してみせたものの、何らかの侵蝕を受けているのか不安定な状態を見せ続け、最後には──


・「(クモ)
対象の地に蜘蛛の巣のような模様が浮かび上がる。
その上にいるものは体が動かなくなり、拘束される。

・「(トンボ)
刀にトンボの羽のような模様が浮かび上がる。
同時に地面が黒く染まりそこから花畑が一気に生える。
チヒロは「触れたらダメだ」と判断し、最終的に緋雪の乱入により触れることはなかったが、もし触れていた場合後述のように命を奪われていた可能性が高い。

・「(ムカデ)
使用者の体の周りを覆うようにムカデ模様が浮かび上がる。
刀をほんの微かに抜いて鍔鳴りすることで、円状広範囲に遠隔斬撃を飛ばす。


+ 異質な能力
前述の通り、命滅契約がある状態のまま京羅が扱えている時点で異様であるものの、真打の恐ろしくも異質な点はそれだけに留まらない。

  • 本人も「死の淵」と称するほどの重症を負っても生存し、なお妖刀と炎骨相手に戦闘を継続できるほど身体能力が向上する。
  • 鞘に収まった状態のまま物を切断できる。
  • 膨大な力により剣聖と真打が呑み合い、使用した京羅が頭の中に何かが入り込むような感覚を受ける。
  • 他の妖刀とは異なり4つ以上の妖術を使用できる*3

・「(こどく)
斉廷戦争を経て乱心した剣聖が呼び越した真打の「本領」。
現象としては、鍔から黒い液体が広がり、そこから花畑が生えてくる。これらに触れてしまうと花が体に侵食するように生えてきて、やがて体中から黒い液体を流しながら絶命する。劇中でこれを初めて使用したのは京羅経由であり、彼自身までも徐々に侵されている様子が描写されている。

「ただひたすらに生命を奪うためだけの力」「厄祭」と形容され、事実として斉廷戦争の敵だった「小国」の約20万の民を殺害した



  • 淵天(えんてん)
契約者:六平千鉱
玄力反応:水滴/金魚

主人公 六平千鉱が持つ七本目の妖刀。
「六平国重が戦後長い年月をかけ完成させ 命に代えて護り切った」と称され、一般的には認知されていない。

・「(くろ)
具現化される金魚は黒い出目金。
刀を振るって斬撃を飛ばす「遠撃(えんげき)」ができるようになり、淵天の基本技と言える。
玄力消費の調整はできないものの、通常の斬撃の他に
威力は劣る代わりにコンパクトの振りで出が速い簡易斬撃なども放てる。

・「(あか)
具現化される金魚は赤い琉金。
刀で触れた妖術を「吸収」し、任意のタイミングで解き放つ能力。
単純に相手の能力をコピーして奇襲を仕掛けられる他、吸収効果による防御性能も期待できる。
吸収した能力は最低でも1週間は放出せずに保持しておくことができる。
結界など非攻撃系の能力を吸収できるかはまだ描写がなく不明。

・「(にしき)
具現化される金魚はアズマオウの元ネタと思われる東錦か朱文金。
一挙手一投足に高出力の玄力を帯びる「(まとい)」が能力。
これにより速度・膂力共に桁違いの出力を得られるが、本来は人体で保持できない量を体に帯びている代償か、体に激痛が走り長時間の使用は不可。リスクを兼ね備えた切り札のような能力と言える。
作中では動きへの上乗せではなく動きを補助するという「錦」の使い方によって体の負担を軽減することを覚えたが、激痛を回避することはできない様子。
強化できる対象は身体能力に限らず、耐久力を高めて肉体を強固にしたり、三半規管に集中させることで平衡感覚を強化したりもできる。


【雫天石】

妖刀の原料とされる特殊な鉱石。
斉廷戦争の「敵」だった小国を原産としており、250kgほどしか存在が確認されていない。

妖刀の原料となるだけあり、単独で玄力を込めることもできる。
しかし込めた玄力は人体にとって毒になるレベルまで高密度になり、それが体内に流れ込めば体が張り裂け死に至る。
小国の住人は生まれながらにしてこの雫天石に適応する強靭な肉体を持っており、未加工のまま扱っても死に至らない体質の持ち主だった。
それを安定化させ人体で扱える形に加工できたのが刀匠・六平国重であり、歴史上彼だけが安定化の方法を扱えるとされる。

しかし“一時的な安定化”のみであればその方法を双城厳一が発見しており、その安定化した雫天石を握り込むことで妖刀と同じ玄力反応を発現させ、自らが持つ妖術の速度・威力を妖刀と同レベルまで増幅させることができる。
だがあくまで一時的なものであり、最終的なその末路は変わらない。




追記・修正は妖刀の本領に達した方からお願いします。

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最終更新:2025年05月27日 23:54

*1 この戦争が起きる前は、妖術師は“表社会に関与しない”という暗黙の了解により、妖術の存在自体が表に出なかったとされる

*2 作中ではとある理由により完全な死亡ではなく黄泉返りの可能性が示唆されているが、「あまり期待しないこと」と釘を刺されている

*3 4つある理由および本領とも呼ばれている「蠱」がどういった立ち位置にあるのかは不明