登録日:2025/02/09 Sun 16:01:00
更新日:2025/02/14 Fri 15:14:43
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イワトカゲ類とは、有鱗目トカゲ科イワトカゲ属に分類されるトカゲの総称である。
本項目では、ペットとしてのイワトカゲについて解説する。
概要
イワトカゲと聞いても、爬虫類に興味のない人にはあまり聞き覚えはないかもしれない。
しかし、爬虫類飼育界隈では非常に人気のあるグループである。
レオパやコーンスネーク、ボールパイソンなどの初心者向け種には及ばないが、中級以上の飼い主、特にトカゲ好きの中にはこのグループを愛好する人が少なくない。
丈夫で飼いやすい、大きさも手ごろ、バリエーションが豊かでコレクションする楽しみもある、個人での繁殖も比較的トライしやすい、と、非常に飼育種として優れたトカゲで、人気があるのも納得できる。
……ある一点を除いて
生物学的な説明をしておくと、本種はほとんどがオーストラリアに分布し、ごく一部がニューギニアにも生息する。
広い意味でのスキンクの仲間。スキンクには、他にアオジタトカゲやニホントカゲがいる。
飼育趣味界隈では、キタアオジタトカゲやオニプレートトカゲと並んで、「丈夫で飼いやすい」と言われるトカゲである。
特にストケスイワトカゲやソトイワトカゲは屈強。
これは彼らが、オーストラリア内陸部や北部の砂漠地帯という、かなり過酷な環境で生きているためのようだ。
要求するケージもそこまで大きなものではなく、餌も人工飼料メインで飼える。
それでいて、結構活動的で見ていて飽きない。
そこまで臆病で神経質な奴はほとんどおらず、ハンドリングも可能。
飼育爬虫類の中でも、万人にオススメできるグループである……と言いたいのだが、ただ一点だけ、このグループには初心者にはなかなかおススメできない理由がある。
お値段である。
例外的に安く流通するソトイワトカゲを除いて、安い種でも12~15万円が底値(オスはメスより安い。繁殖経験済みのメスは特に高くなる)。
多くの種が数十万円単位で取引される。
レア種ともなえば百万円はするので、もはや趣味で飼える人は限られてくる。
なんで飼いやすいのにこんなに高いのか?
というと、理由はこのグループがオーストラリア産だからである。
オーストラリアは、野生動物の商業目的の輸出を認めていない。
なので、飼育趣味界隈で流通するオーストラリア産の種は、オーストラリア以外の動物園や研究施設で増えた個体が民間に払い下げられたものである。
オーストラリア産種が、フトアゴヒゲトカゲを例外として軒並み高価なのはこのせいである。
さらにイワトカゲの場合は、この仲間が胎生ということがさらに値段を上げている。
爬虫類でありながら、タマゴではなく子供を産むのだ(厳密に言えば、メスの腹の中で卵を孵化させてから子供を体外に産む)。
そのためもあって、一回の繁殖数が少ない。
すなわち、そうそう増えないということ。
さらにこのグループは、オスとメスを揃えても、相性が悪いと繁殖に到らないらしく、狙って増やすにはなかなか大変だとされている(逆に、繁殖とか意識せずにオスとメスを揃えて適当に飼ってたらいつの間にか増えていた、というパターンも多い)。
そんなわけで、「初心者でも飼えるくらい飼育難易度は低いのに、値段のせいで初心者には飼われない」というジレンマを抱えたペット爬虫類、それがイワトカゲ類である。
飼い方
ぶっちゃけ、よっぽど変なことをしなければどうとでも飼える(特にストケス・ソト)。
このグループは、飼っていて寿命以外で死ぬことはほとんど無いと言われるくらいである。
ケージ・バスキングライト・紫外線ライト・シェルター・床材・水入れを揃えておけば、まず失敗しない。
(逆にこのグループを飼うのに失敗した人はよっぽどなので反省しましょう)
ケージは、ストケスなどの小型種なら60センチでペア飼育も可能。
ソトなどの大型種の場合や、ペアで繁殖を狙う場合、三匹以上で飼う場合などは90センチなど、もっと大きなものを選べばいいだろう。
床材は砂系かバークチップを選ぶ人が多い。まあ、正直何でも大丈夫だろう。
水切れにだけは弱いので、常に水入れに新鮮な水を入れておこう。
ここで上記の必要機材を見て、「パネルヒーターや夜間用保温ライトはいらないの?」と思った人も多いかと思う。
多くの爬虫類で夜間保温のために使われるこれらのサブ保温器具だが、本グループでは使わなくてもOK。
むしろ、夜はしっかり温度を下げてやったほうが状態がよくなるようだ。
砂漠出身の彼らは、昼夜の気温差があったほうが調子がいいようである。
特に繁殖を狙うなら、夜間温度を下げるのは必須。
心配なら、ベビーのうちだけはパネルヒーターを使ってもいいだろう。
ちなみに夏場はエアコン必須。高温には弱い……というか、もはや令和の日本の夏をエアコンなしで乗り切れる爬虫類は稀。
エサは、雑食トカゲ用人工飼料(フトアゴ用など)をメインに、乾燥昆虫や葉野菜を加えて与えてやればOK。
昆虫は生きてなくてもいい、というか、むしろ生きていない乾燥昆虫(餌用に売られている)のほうが好みのようだ。
ストケスの場合、ベビーに生きた昆虫を与えていると突然死するという恐ろしい情報もある。
野生下では、あまり餌からは水分を取っていないのだろう。
餌のメニュー自体はトゲオアガマに近いが、トゲオアガマのように偏食はしないので安心。
ソトイワトカゲは、アオジタトカゲ並みに何でも食べるので色々試してみてもいいだろう。
見た目に似合わず立体活動を結構するので、シェルターや流木、岩などでレイアウトしてやろう。
かなり活発に動くので、飼っている方も楽しくなる。
この仲間は、トカゲにしてはかなり社会性がある部類のようで、複数飼育しても問題は起きにくい。
是非複数で飼ってやろう……飼い主のサイフが許すなら
オスとメスをペアもしくはコロニーで飼っていると、運が良ければ(これは本当に運である)子供が生まれる。
いつの間にかケージの中に小さいイワトカゲがいて驚くことになるかもしれない。
親が子供を食べてしまうことは無いとされているが、まあ分けて飼育したほうが無難だろう。
難しいことを考えなくても飼えて、それでいて色々食べてよく動く、本当に楽しいトカゲである。
是非お迎えしてみてほしい……予算さえOKなら。
ペットとして流通する主なイワトカゲ
通称ストケシィ。
最も有名で人気のあるイワトカゲ。
胴体後部から尾がトゲトゲなのが特徴。
イワトカゲの中でも特に屈強とされる奴。キタアオジタトカゲと並んで、「最も飼いやすい昼行性爬虫類」に挙げられる。
お値段はイワトカゲの中では大人しめだが、オスは15万~、メスなら25万~ほど。
それでも、社会人初ボーナスをはたいてペアを買うくらいの価値はある良トカゲである。
イワトカゲ人気の火付け役だったとも言える種で、この種が見直されたことでイワトカゲ全体に注目が集まった。
特徴的な模様の地域個体群があり、見た目のバリエーションは豊富。
かつてはソトの次に流通量が多くてお手頃価格なイワトカゲだったが、最近(2024年現在)ではかなり見なくなっている。
値段は12万~。
オス同士は激しく争うため同居できないので注意。
ストケス以上にトゲトゲで、かつ鮮やかなオレンジ色の、最も美しいイワトカゲとも言える種。
昔からかなり人気が高い種で、それ故に高価(30~40万円かそれ以上)。
特に「コーラル」というモルフは、美しくて高い。
最大では75センチにもなる(そんなのまず見ることはないが)イワトカゲ最大種。
ランドマレット、すなわち「陸のボラ」という異名を持つ。
この仲間でも特に社会性が強いようで、野生下では群れで活動するらしい。
そんなお値段は現在100万円~。群れを飼育下で作れるのは富豪か狂人である。
この「キング」は人名であり、王様の意味ではない。
しかし、大型で霜降り状の模様が美しく、イワトカゲの王と言われれば納得できる。
これも現在では一匹100万円~の富豪向けトカゲ。
「イワトカゲが入荷したぞ!!」
\ ヽ / / /
(Д´)∧∧ ∧∧
ノノ⊂(∀・ )(∀`∧∧
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「ソトイワトカゲだけどな」
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こういう扱いをされる不遇なイワトカゲ。
ほとんどの種がオーストラリア固有種のイワトカゲにあって、本種は例外的にニューギニアにも分布する(オーストラリアの「外」に分布するのでソトイワトカゲの名がある)。
そのため、本種はイワトカゲで唯一WC個体が流通し、値段も安い(数万円)。
そして、それ故に影が薄く、人気が無い。
「オーストラリア産のイワトカゲが欲しいけど手が出ない貧乏人が、代わりにしょうがなく飼うトカゲ」というイメージが常にくっついて離れないのである。
こいつはこいつで、ちゃんと飼えば結構面白いし、特に飼いこんだオスは大きくて鮮やかで見ごたえある姿になるのだが……
少なくとも、オーストラリアのイワトカゲがいなければもっと評価されていたであろう。
ストケスに並んで屈強なイワトカゲだし、もっと注目されてもいいトカゲである。
なお、人気が無い理由の中には、「人慣れしない個体が多くてハンドリングに向かない」というのもあると思われる。
少なくとも、WCのアダルトはなかなか手に負えない。結構大型種だし。
これから飼う人にはCBが断然おススメ。
追記・修正はオオイワトカゲの群れを飼育している人がお願いします
- 偶にペットの即売会でも見るけど大体高い。 -- 名無しさん (2025-02-09 19:38:43)
- 庶民のボーナスで買えるくらいであればまだ普通で、ブラックとかアルビノとかの色変個体にもなると350万円とか、そういう世界。一体どんな人が買ってるのやら… -- 名無しさん (2025-02-10 19:37:03)
最終更新:2025年02月14日 15:14