登録日:2025/02/14 Fri 05:29:00
更新日:2025/02/19 Wed 23:16:07
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この世界の人間は、爺さんと俺の酒場にやってくる人間は、酒が飲めて腹いっぱいになればそれでいい人種だった
でも俺は魔法を使ったり超人的な剣技を振るったりできる自由な冒険者にちょっとした憧れと敬意を抱いていたから、お節介ながらもっと旨い飯を食わせてやりたいと思った
本人達は気にしていないみたいだけど、俺が気になるのだ
飯ってな、旨いんだぜ?人生を豊かにしてくれる素晴らしいスパイスだ
『冒険者酒場の料理人』はGAノベルから刊行されたライトノベル。全2巻。
「小説家になろう」で連載されていた小説を書籍化したもので、作者は黒留ハガネ。イラスト担当は転。
カドコミにて飴井涼によるコミカライズが連載されている。
概要
異世界に転移して冒険者向けの酒場を経営することになった主人公の物語。
異世界の食文化に満足できない彼がなんとか美味しいものを提供しようと悪戦苦闘する姿を描く。
冒険者たちによって持ち込まれる迷宮産の奇妙な食材を如何にして料理にするかをテーマにした短編形式だが、
物語の進行に伴って変わっていく人々や街の姿も見どころである。
登場人物
酒場
●ヨイシ
主人公。
ある日突然異世界に転移してしまい、酒場の老店主に拾われた男。
その後は二人で酒場を切り盛りしていたが、店主の死後は彼の遺言に従って店を継いでいる。
異世界の貧相な食事事情を少しでも何とかしたいと思って店で出す料理を美味しくしようと頑張っているものの、
食材自体が乏しい上にヨイシ自身もあくまで料理好きの素人でしかないため難航していた。
そんなある日、ユグドラとセフィによって持ち込まれた石胡桃の調理に成功。
これが突破口となり、迷宮食材を調理する迷宮料理の先駆者になることを決意。
奇妙な食材の数々と格闘する日々を送ることになる。
本人の目的はあくまで食文化を改善することなので、自身が発見した調理法は他の店にも公開している。
その甲斐あって街の食文化は少しずつ向上していった。
とはいえ商売を蔑ろにしているわけではなく、新しい料理が出来たら一つ前の料理を公開するという形で利益を保っている。
気になることがあっても深く考えようとしないという悪癖があり、数々のトラブルのもとになっている。
一方でウカノを受け入れたのはこの性格があっての事でもある。
●ウカノ
ぼろ切れを身に纏って飢え死にしそうになっていたところをヨイシに拾われた亜人の少女。
鹿のような角と爬虫類のような尻尾があり、常連の冒険者でも彼女の種族は分からなかった。
成り行きで一緒に住むようになった当初は警戒していたが、やがてヨイシを「お父さん」と呼んで慕うようになる。
その後は店の看板娘として一緒に働くようになった。石胡桃など一部食材の仕込みは彼女が担当している。
好奇心旺盛かつ食いしん坊な性格で、ヨイシの新メニュー開発には基本的に立ち会って試食している。
少女なのに異常に強かったり、なぜか迷宮の内部に詳しかったり、ドラゴンの話題に敏感だったりと謎めいた一面を持つ。
また母親というものに良い感情を持っておらず、ヨイシが女性と良い雰囲気になりそうになると全力で阻止している。
常連客
●ユグドラ&セフィ
田舎からやってきた新米冒険者コンビ。
戦士の少年ユグドラと魔法使いの少女セフィ。
初めての迷宮探索後、少しでも資金の足しになればと石胡桃をヨイシの元に持ってきて買い取ってもらった。
後に石胡桃が使い道のないゴミだと知って謝罪に来るが、ヨイシがそれを咎めなかったことで恩返しをすることを決意。
店の常連客となり、ヨイシの依頼を受けて迷宮から食材を取ってくるようになった。
冒険者として活動する中でメキメキと実力を高め、後には街のトップクラスにまで至っている。
●アカルナニア
通称カルナ。魔力を帯びた剣を武器とし、『冥界剣』の異名を持つ軽剣士。
ボーイッシュな女性でヨイシには男性だと思われていた。
元は貴族の令嬢だったが、男しか跡継ぎになれず男子がいなければお取り潰しになるというこの世界の貴族の習慣のため男として育てられた。
しかし弟が生まれたことで用済みとなってしまい、放り出された末に冒険者となった過去を持つ。
ヨイシとはその頃に出会ってからの付き合いであり、以来ずっと彼に恋慕している。
一応本人なりにアピールはしているのだが、前述のとおり男だと思われていたことに加え、
酒場で泥酔したり返り血まみれで来店したりと醜態の数々を見せていることもあってなかなか女として見てもらえない。
後に覚悟を決めて告白したことで恋人になることはできたものの、今度はウカノの妨害を受けることになってしまった。
その他
●ドグドグ
先代店主の頃から付き合いのある金物屋の親方。
ドワーフのようなずんぐりした体型だが人間であり、本人曰く「冒険者時代にミノタウロスにぺしゃんこにされて背が縮んだ」とのこと。
腕のいい鍛冶師で、どんな奇抜なものでも金さえしっかり払えばキッチリ作ってくれるため、ヨイシは自分の思いついた料理に必要な道具をよく依頼している。
またヨイシとは飲み仲間でもあり、彼に料理だけでなく旨い酒も用意するようにと要求したり、ウカノとの接し方に悩んでいたときにアドバイスを送ったりしている。
●メルクーリ・ヴォン・ストラトニーケー
宮廷料理人の女性。
吟遊詩人によって広まったヨイシの料理の歌に王族が興味を持ち、迷宮料理のレシピを学ぶよう指示されて来店した。
真面目な性格で、奇想天外な調理をするヨイシの迷宮料理に驚きながらもそれをしっかりと学び、わずか一晩で習得して帰っていった。
王都に帰った彼女が作った料理を王が気に入ったことで、ヨイシの酒場は専売制が敷かれている王侯蜂蜜の仕入れ販売許可を得ることになる。
ヨイシとは同じ料理人として意気投合し、異性としても意識するようになった。
後に新王即位祝賀祭でヨイシと再会したときには既に結婚も意識するようにまでなっている。
また宮廷で働いていることもあって口が上手く、アカルナニアと対面した際には言葉巧みに誘導して彼女とヨイシのデートを阻止してみせた。
迷宮食材の一例
石胡桃
その名の通り石のように固い胡桃。苦労して割ったとしても中身が非常に苦く、とても食べられたものではない。
地面にゴロゴロ転がっているため、冒険者はスリングの弾に利用している。
骨魚
名前の通り全身が骨のように硬く、包丁すら通らない魚。
水の補給中に襲ってくることがあるので矢尻として使われることがある。
糞桃
王族に供される最高級品にも勝るとも劣らないほど美味しいが、食べると100%腹を下す桃。
一応食べた後に治癒魔法をかけてもらえば回避できるが、事前に桃に治癒魔法をかけると味も香りも消えてしまう。
霞肉
迷宮のモンスターの肉の総称。
この世界のモンスターは特殊な肉を持ち、死ぬと瞬く間に腐敗してしまう。これが動物とモンスターの違いとなっている。
水ぶどう
非常に水分の多い実をつける葡萄。
あまりに水分が多すぎて葡萄の味がほとんどせず、冒険者の水分補給に使われている。
白濁樹液
牛乳のような成分を持つ樹液。
解毒剤の材料になるほか、薬を作った後の残液には美容効果があるが薄めた牛乳のような味でとても不味い。
透明玉菜
目に見えない透明なキャベツのような葉物野菜。
食感もキャベツに近いが味が無く、ビニールを食べているような感覚になる。
追記・修正は迷宮食材を美味しく調理してからお願いします。
- この項目ができるとは。「現代料理で無双」ではなく「食べられないと言われたものを、どうにかして食べる」という着眼点が面白い。フグだのキノコだの、現代食文化の歴史にも通じる不自然でない話。小粒で派手さはないけどおすすめできる作品。 -- 名無しさん (2025-02-14 15:37:03)
- 項目の内容から察するに、書籍版はだいぶ加筆されてるなこりゃ。 -- 名無しさん (2025-02-15 16:18:04)
- 出てる食材がマジで食えそうにないものばかりだな -- 名無しさん (2025-02-15 17:30:47)
- なろう原作版は10話くらいで終わっててサクっと読めるの良いよね。 -- 名無しさん (2025-02-15 20:12:57)
- アカルナニアとストラトニーケーはなろう版だとホントに1、2行くらいしか触れられずしかも名前もついてないのよね、書籍化の肉付けがうまくいった好例だと思うわ -- 名無しさん (2025-02-19 23:16:07)
最終更新:2025年02月19日 23:16