ボーはおそれている(映画)

登録日:2025/03/16 (日) 08:09:52
更新日:2025/03/23 Sun 18:30:08
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ママ、きがへんになりそうです。


怪死した母の元へ駆けつける帰省が壮大な旅に変貌する。
一度体験したら戻れない、オデッセイ・スリラー






『ボーはおそれている(原題:Beau Is Afraid)』とは、2023年に公開された米映画。
製作は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』等のA24。
日本では2024年2月16日にハピネットファントム・スタジオ配給で公開された。
監督は『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』で「強烈な不快感」を観客に植え付けたと話題になったアリ・アスター。
主演は『ジョーカー』でアカデミー賞主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックス。



概要


本作で主題となるのは「母と息子の関係」である。
しかし、あのアリ・アスター監督がまさか普通の親子関係を描くわけがない。
そもそも、アスター監督は短編映画『The Strange Things About the Johnsons』『Munchhausen』等で、「歪んだ親子関係」をテーマにした作風を得意とする人物である。
『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』においても、「身勝手な親に振り回される子供」のモチーフが用いられており、ある種の作家性と見て取れる。

本作は主に四つの章に分かれている。
1.「ボーの一人暮らし」母の死を知り、一人暮らしが上手くいかなくなるボー。
2.「他人の家での暮らし」医者の家に居候するが、最終的に破綻する。
3.「自立した自分の妄想」演劇を通して自分の自立を妄想するが、最終的に邪魔される。
4.「実家での母との対決」互いの感情をぶつけ合う母と子。そしてその破局。

いずれも、「強大な力を持つ母に振り回される息子」が描かれ、その描写はかなりリアリティに欠け、不条理感たっぷりに描かれている。
あまりにも現実離れし、なおかつアバンギャルドな描写が多いため、多くの観客は理解を置いてけぼりにされ、アスター監督の映画では「最も難解」という評価を得た。

3時間という長尺な上映時間も災いしたせいか、興行収入も製作費の半分に満たない赤字となったが、A24はアスター監督と次回作の製作を契約している。

ちなみに、アスター監督は本作の試写会を自身の母と一緒に鑑賞し、笑顔で終幕を迎えたという。その母ありにしてあの息子あり……?




ストーリー


父を喪い、母に女手一つで育てられた男・ボー。
成長したボーはカウンセリングに罹りながらも一人暮らしをしていた。
そんなある日、警察から「お母様がシャンデリアの下敷きになって亡くなった」という電話が入る。
すぐさま実家に向かおうとするボーだが、何故か次々と邪魔が入り、トランクを奪われ、薬も飲めず、殺人鬼に襲われかける。
逃げる途中で車に轢かれたボーは、医者の一家に拾われ、治療を受けることになるが、そこでも起こる異常な出来事の数々に逃げ出してしまう。
その後も各地を転々とするボーだったが、どこへ行っても母の面影が現れ、不可解な出来事が起こり、離れていく。
やっとの思いで実家に辿り着いたボーだったが、その先にはとんでもない出来事が待ち受けていた。



登場人物


  • ボー・ワッサーマン
演:ホアキン・フェニックス/吹き替え:森川智之
主人公。
都市部で一人暮らしをしている中年男性で、未だに母の庇護から抜け出せずにいる。
極度の心配性による精神疾患を患っており、薬が手放せないが、作中では何故か「水」を与えられないシーンが多い。
母から「お父様はセックスの最中に亡くなった」と言い聞かされており、セックスに恐怖感を抱いている。
実家から母の訃報を聞き、実家に帰ろうとするが、何故か邪魔が次々と入り、色々な場所を転々とするが、最終的に破綻していく。
やっとの思いで実家に帰るが、そこで待ち受けていたのは驚愕の事実であった。


  • モナ・ワッサーマン
演:パティ・ルポーン/吹き替え:小宮和枝
ボーの母で大企業の社長。ちなみに、本作冒頭の製作会社ロゴに交じって、彼女の会社のロゴが入っている。
父は早々に亡くなり、難産の中息子ボーを出産し、女手一つで彼を育てた。
そのため、息子には過剰なまでの愛を注いでおり、男女交際すら息子に許さなかった。
ある日、自宅のシャンデリアが頭部に落下し、首なし死体で発見され、ボーは実家に帰省することになる。
だが、死後も彼女の存在感は次第に増していくことになる。


  • フリール医師
演:スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン/吹き替え:佐々木祐介
ボーのセラピスト。
不安障害に悩むボーの相談に乗り、母親との関係については「ちゃんと向き合ったらどうですか」とアドバイスする。


  • ロジャー
演:ネイサン・レイン/吹き替え:玉野井直樹
負傷したボーを介抱した医師。
ボーを重症だとして、実家に帰りたがる彼をいつまでもいさせようとする。


  • グレース
演:エイミー・ライアン/吹き替え:葛城七穂
ロジャーの妻。
ボーを可愛がっており、実の娘のトニと仲良くするよう言いつけるが、どこか歪な思いを抱いている。
最終的にはボーに殺意を抱き、使用人に彼の追跡を命じた。


  • トニ
演:カイリー・ロジャース/吹き替え:中井美琴
ロジャーとグレースの娘。情緒不安定気味な少女。
パンクな不良娘であり、ボーのことが気に入らず、彼に様々な嫌がらせをする。


  • ジーヴス
演:ドゥニ・メノーシェ/吹き替え:小野寺悠貴
ロジャー一家の使用人。
軍人上がりで、異様にいかつい。
グレースの命令でボーを追跡し、彼を殺そうと執拗に追い詰めてくる。


  • 森の孤児達
ボーが森の中で出会った流浪の演劇集団。
彼を温かく迎え入れるが、ジーヴスにより滅茶苦茶にされる。


  • ボーの息子達
演劇の中でボーが夢想した「家族」。
絵に描いたような立派な子供達だったが、モナの呪縛により邪魔され、消えてしまう。


  • エレイン
演:パーカー・ポージー/吹き替え:木村香央里
ボーが子供時代に知り合った初恋の人。
豪華客船の船旅で恋仲となるが、ベッドに忍び込んだため別れさせられた。
モナの葬儀で再会し、話が弾むうちに、意を決したボーと一緒にセックスする。しかし……。


  • ボーの父
モナから「死んだ」と聞かされていた。
しかし、森の孤児達の中に「父」と思しき男が登場し、ボーは当初彼がそうだと思い込む。
だが、モナは別の「父」を紹介する。その正体はあまりに醜悪なものだった。




余談


  • 本作では「水」のモチーフがふんだんに用いられている。冒頭で「水」の供給に苦しむボー、「水」ではないペンキ、そして「水」に囲まれた裁判場。そして、子供が生まれて最初に浸かるのは「羊水」である。ここから、ボーが辿る運命について想像がつく。













追記・修正は子宮に還ってからお願いします。

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最終更新:2025年03月23日 18:30