CURE(1997年の映画)

登録日:2025/06/29 Sun 18:18:02
更新日:2025/07/07 Mon 13:29:07
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憎悪は催眠で覚醒する。



C U R E

CURE(キュア)は、1997年12月27日に公開された日本のサイコホラー/クライムサスペンス映画。製作は大映。
配給は松竹富士。

監督・脚本は黒沢清で、黒沢が黒澤明に続く“第2のクロサワ”として国際的な評価を得る切欠となった。
国内でも日本アカデミー賞やブルーリボン賞といった従来の映画賞の他、新世代の日本映画として第2回日本インターネット映画大賞にて高い評価を得ている。

主演は役所広司。
TV畑で活躍していた萩原聖人の出演も話題となった。


【概要】

独創的な発想と、無機質で乾いていながらも何処か底知れない闇を感じさせる世界観を描くことで海外でも人気が高い黒沢清による奇怪な連続殺人を描いた作品。
海外では1999年の『カリスマ』と並び人気が高く、黒沢清の最高傑作とも呼ばれている。

前述の通り黒沢清が“第2のクロサワ”として海外にもファンを獲得することにも繋がり、2016年にフランスにて『ダゲレオタイプの女』を撮影する機会を得る足掛かりとなっていった。

黒沢作品特有の俯瞰的な視点からの突き放したような画面と物語の構成が本作でも活かされており、観客は言いようのない不安感が常に混在する短い場面の連続の中で、同時に膨大な情報量にも晒されていくことになる。

【物語】

※以下はネタバレ含む。

関東近郊で、被害者が何かしらの方法で殺害された後に、遺体の喉元から胸元にかけてをX字に切り裂かれるという猟奇的な殺人事件が連続していた。
事件の度に犯人は捕まっているのに事件の発生は止まずに容疑者も被害者のタイプも事件毎にバラバラ……そんな中で、昨夜も3件目となる娼婦がホテルで客の男(桑野)に惨殺される事件が発生した。
どう考えても同じ流れの中で発生した事件なのに、やっぱり犯人にも被害者にも先の2件との関連は見つけられなかった。

事件を追っている刑事の高部━━。
彼の妻の文江は数年前より精神を病んでしまい、現在は自宅療養しつつ友人である心理学者の佐久間の紹介してくれた病院に通っていた。

そんな中、千葉県の白浜海岸近くの民家にて小学校教諭の花岡が寝ている妻の喉元をX字に切り裂いて殺害した後に二階の窓から飛び降りる事件が発生。
同じ事件だと察した高部は部下達の他にアドバイザーとして佐久間を伴い、花岡が搬送された病院へ向かう。
花岡から供述を取ろうとするが、彼は殺害した妻への不満など無かったはずだと混乱しながらも語る。
……花岡が妻を殺した頃には、花岡が昨日の昼に海岸で拾った記憶喪失の男が姿を消していた。

高部達が何とか連続する殺人事件を止めようと帆走する中、その記憶喪失の男は江東区の住宅街に出没して民家の屋根に居る所を通報されていた。

尚も事件を追う中で、遂に犯人達と順に接触していたと思われる記憶喪失の若い男……間宮の存在を知った高部。

果たして、この異常な別々の人間により引き起こされた連鎖的連続殺人事件の真相は?


【主な登場人物】

※以下の情報にネタバレあり。

  • 高部賢一
演:役所広司
刑事。喉元から胸元までをX字に切り裂くという連続殺人を追っている。
妻の文江の精神状態がおかしくなってしまったことを悩んでいる。

  • 高部文江
演:中川安奈
高部の妻。
精神状態の悪化により社会的な生活が送れなくなったことから、現在は基本的には自宅に籠もりつつ精神科医への通院を続けている。

  • 佐久間真
演:うじきつよし
高部の友人で心理学者。
文江の治療に協力している他、前例がない(と思われていた)連続猟奇殺人の発生についてアドバイザーとして協力する。

  • 桑野一郎
演:螢雪次朗
猟奇殺人の犯人。
ホテルに呼び寄せた売春婦を鉄パイプで殴り殺した後に、浴室にて喉元から胸元をX字に切り裂いた。

  • 花岡徹
演:戸田昌宏
評判の良い小学校教諭。

  • 花岡とも子
演:春木みさよ
花岡の妻。
未だに新婚のような関係から近所ではおしどり夫婦として知られていた。

  • 大井田
演:でんでん
交番勤務の人の良さそうな巡査。
通報を受けて住宅地に出没した間宮を保護した。

  • 宮島明子
演:洞口依子
間宮が搬送された潮見町病院の内科医。

  • 間宮邦彦
演:萩原聖人
元心理学部の医学生であった若い男。
それ以外は謎の男

この他の出演者は大杉漣、河東燈士、諏訪太朗、大鷹明良…など。

【余談】


  • 元々のタイトルはシンプルに『伝道師』とするつもりであったというが、95年にオウム真理教による大規模テロ事件が発生、本作でも主題となっている洗脳やオカルティズムに対して世間が(実態はともかくとして)過剰な反応を示すことを危惧したプロデューサーの意見を受けてタイトルが変更された。




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最終更新:2025年07月07日 13:29