ユリアン・ミンツ

登録日:2025/08/09 Sat 21:10:06
更新日:2025/08/10 Sun 00:41:57NEW!
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ヤン・ウェンリー提督は、勝算のない戦いはなさいません!

CV:佐々木望(石黒版OVA) 、梶裕貴(Die Neue These)

ユリアン・ミンツは銀河英雄伝説の登場人物の一人。



【来歴】

宇宙暦782年3月25日生まれ。
同盟軍人の父と、帝国から亡命してきた家系である母を持っていた。
2歳の時に母が病死*1、8歳の時に父が戦死して家族を喪っている。
その後は父方の祖母と暮らしていたが、祖母は同盟の人間である事に誇りを持つ一方で、ユリアンの母の事を「息子を奪った帝国の血筋の女」と目の敵にしており、幼いユリアンに対しても愛情を持ってはいなかった。
その祖母も父の死から2年後にこの世を去ったため、10歳にして天涯孤独の身となる。
そして、「トラバース法*2」により、同盟軍人であったヤン・ウェンリーの被保護者となる。

当初は生活破綻者であるヤンの家事周りの仕事を完璧にこなし、イゼルローンに赴任するヤンに同行する。
この時から兵長待遇として同盟軍人となったが、ヤンはトラバース法で返済が必要な養育費くらいなら立て替えてやると言い、軍人以外の道も考えるよう勧める。
しかし、自由と人民を守る軍人となるため、そして何よりユリアンがヤンの役に立ちたいと願ったため、そのままヤン艦隊の一員となった。
その後、救国軍事会議のクーデター、そして第8次イゼルローン要塞攻防戦を経て、正式に軍人となる。

ただ、正式に軍人となった事で異動の命令も受けざるを得なくなり、フェザーンへ赴任した時期もあった。
また、地球への偵察なども行い、その見聞を広げている。
そして、ヤンの死後は他の面々からの推薦もあり、イゼルローン共和政府の軍司令官となる。
当然ながら年若すぎる彼の台頭は本人や周囲からの不安や反対も大きかったが、実際に第11次イゼルローン要塞攻防戦にて帝国軍に一矢報いたことでその実力を認めさせる事に成功する。
そして、シヴァ星域会戦の果てにラインハルト・フォン・ローエングラムとの会談を果たし、ヤンが長く願ってやまなかった1つの星系における自治権、そして数十年の平和を勝ち取るのであった。

全てが終わった後、ヤンの意思を継いで歴史家となり、ヤンの生涯を綴っていった。


【人物・能力】

亜麻色の髪をした美少年。
当初はごく普通の子供であり小柄だったが、成長期の少年らしく、最終的にはヤンと並ぶ176cmの長身となった。

少年らしく明るく素直な性格だが、その一方で歳に似合わず真面目で律儀であり、多くの人に可愛がられている。
年相応に直情的な部分もあり、特にヤンに危害を加えようとする者には厳しく対応し、銃を向ける事も厭わない。

ヤンと出会う以前からも家事をこなしていたおかげで、生活破綻者のヤンを十分に支えられるほどに家庭的となっている。
スポーツも得意で、フライングボールという球技で優勝したこともあった。

ヤンの一番の教え子ともいうべき立ち位置にいたため、最終的にはその年に似合わないほどの聡明な戦術眼を持つに至っており、「小ヤン」と呼ばれた事もある。
また、シェーンコップからは白兵戦技術、ポプランからは空戦技術を教わった。
「戦術はポプラン、空戦はシェーンコップ、白兵戦はヤン並みの器用貧乏にならないか」と冗談混じりに危惧されたが、それは杞憂に終わっており、それぞれの分野において非凡な才能を発揮している。
空戦技術においては初陣においてワルキューレ2機、巡航艦1隻撃沈という戦果を上げているだけでなく、増長しかける自身を律するという落ち着きを見せた。
藤崎竜版では乗機のスパルタニアンこそ撃墜されたものの、付近にあった味方艦の残骸により一命を取り留めるという天運も持ち合わせている。
白兵戦においても卓越した運動能力によって百戦錬磨のローゼンリッターの面々と遜色ないレベルの高い実力を持ち、地球教本部やブリュンヒルトにおいてはその力を発揮した。
そして戦術においてはヤン譲りの冷静かつ的確な判断で、さまざまな窮地を脱している。

ただし、ヤンの後継者としての周囲の視線は、当然ながら厳しいものが数多くあった。
ヤンの知識、編み出した戦術を独占しているのではないかという心無い意見もあったが、「ヤンは作曲家でありユリアンは演奏家、いかな名曲も奏でる事なく評価されることはない」という擁護の意見も出ている。
また、偉大なるヤンの後を追うばかりで自主性がない面も危惧されたが、カリンとの話を経て、次第に自身の考えも視野に入れるように変わっていった。


【主な人間関係】

◆自由惑星同盟

  • ユリアンの父
文字通りユリアンの実父。名前は不明。
キャゼルヌの部下でもあったようで、その縁もあってユリアンとヤンが巡り会う事となった。
彼もまた紅茶好きであり、ユリアンが紅茶を淹れるのが得意なのも彼のおかげである。

ユリアンの保護者。ただし、その生活能力の無さからむしろユリアンの被保護者と言われても仕方がないほど、私生活をユリアンに委ねていた。
彼にはそのつもりは無かったであろうがユリアンの師であり、何かあるとユリアンに問いかけて考えさせたりと、父と子のような関係でもあった。
ただ、ユリアンからは信奉に近いほど慕われており、その結果出てきたのが項目冒頭のセリフである。

  • 元帥
ユリアンがヤンの家を訪れる前に助けた猫。
石黒版OVA、藤崎竜版にのみ登場。

同盟軍の官僚であり、後方勤務の天才。
トラバース法によりユリアンとヤンを巡り合わせた張本人。
ヤンとは家族ぐるみの付き合いもあり、娘をゆくゆくはユリアンの嫁にと考えてもいた。

  • フレデリカ・グリーンヒル
ヤンの副官を務める女性士官。
身近にいる年上の女性という事でユリアンは憧れの情を抱いた事もあり、ヤンとの間に嫉妬による確執が生まれるのではないかと周囲は危惧したが、ユリアンは静かに身を引いたことで杞憂に終わった。

ローゼンリッター連隊の隊長であり、ユリアンの白兵戦の師。
同じくヤンを守る者としてユリアンを信頼しており、彼と共に戦った。

  • オリビエ・ポプラン
スパルタニアンのエースパイロットであり、ユリアンの空戦技術の師。
女癖も悪く、いずれはユリアンもその道に引き込もうとしていた。

  • ルイ・マシュンゴ
自由惑星同盟の兵士。*3
フェザーンへの赴任や地球へ潜入する際に、ユリアンのボディガードとして同行する。
ヤンを除けば作中で最もユリアンと長い期間行動していたと思われ、藤崎版ではマシュンゴから唯一の友達とまで言わしめている。

  • ムライ
ヤン艦隊の参謀長。
ユリアンがイゼルローンの指導者となった際にユリアンらの元を離れ、あえて脱落者の汚名を被り、他の離反者を引き受ける事となった。

  • バグダッシュ
救国軍事会議のスパイ。
ヤン・ウェンリー暗殺計画が頓挫した事であっさりとヤンの下に付くが、ユリアンは信用し切れず銃を向ける事で、裏切りへの牽制をした。

  • カーテローゼ・フォン・クロイツェル(カリン)
空戦部隊の女性兵士。
ユリアンに対してはキツく当たっていたが次第に絆を深め、父を喪った際には彼の胸で涙を流した。
後にユリアンからも想いを寄せ、恋仲となる。

  • ニルソン
戦艦ユリシーズの艦長。
ユリアンがイゼルローンを離れた時期と親知らずに悩まされた時期が重なってしまったばかりに、「想い人のユリアンがいなくなって傷心になっている」と部下たちから噂されてしまった。

自由惑星同盟の国防委員長。
ヤンと同様ユリアンも彼を嫌っているが、トリューニヒトからはその非凡な才能に目をつけられ、昇進に便宜を図られたと言われたが、ユリアンは迷惑だと心情を露わにした。
だが、彼もまた帝国内に立憲体制を敷く事を目論んでおり、思惑はともかく目的自体は同じであった事にユリアンは戦慄した。


◆銀河帝国

銀河帝国の提督であり、後に皇帝の座を掴んだ青年。
フェザーン制圧のパレードでユリアンが彼を目にした際には一瞬暗殺が脳裏をよぎったが、「テロで歴史は動かない」というヤンの言葉で思い止まる。
ブリュンヒルトにおいてユリアンらの実力を測り、見事に己の元に辿り着いたのを見て、ユリアン達は自治領と自治権を勝ち得る事に成功した。
また、その後の会談の合間にヤンの逸話も伝えたという。

「鉄壁ミュラー」の異名で知られる帝国軍提督の一人。
ラインハルトの名代としてヤンの弔問に訪れた際に、ユリアンと会談した。
彼からは「ヘル・ミンツ」と呼ばれているが、これは「Mr.」に相当するドイツ語の「Herr」から来ている。
断じて「Hell」で「地獄ミンツ」と呼んでるわけではない。激昂した時の苛烈さを見ればそれも頷けるが。

  • アウグスト・ザムエル・ワーレン
帝国軍提督の一人。
地球教潜入時に、彼が率いる討伐隊の襲撃のお陰で情報収集と脱出に成功。
この時はフェザーン商人のフリでやり過ごしたが、2年後のシヴァ星域会戦後の会見で本来の身分で対面する。
「おたがい、ずいぶん多くの知人を失ったものだな」と言葉をかけられ、共に故人を偲んだ。
藤崎版では地球教討伐後に素性を明かしており、第11次イゼルローン攻防戦の時点で互いの素性を知って戦った。

◆フェザーン自治領、地球教

  • ボリス・コーネフ
フェザーンの商人。
ベリョースカ号の船長でもあり、フェザーンを脱するユリアンに協力したが、その結果ベリョースカ号を破壊されてしまった。
その後ヤンの伝手によって輸送船「親不孝号」を譲り受けて、地球へ向かうユリアンに再び手を貸す事となる。

  • マリネスク
ボリス・コーネフの下で働く事務長。
ボリスとヤンが既知の仲であると知っていた事で、ユリアンの信頼を得た。

  • デグスビィ
地球教の司教。
フェザーン脱出の際に同行しており、彼の話によって後に地球教の本部、地球へと向かうことを決意した。

  • ド・ヴィリエ
地球教の大主教。
地球教潜入の際に顔を覚えていたことで、仮皇宮で遭遇した際に素性に気づく。
ヤンを初めとした地球教の企みの犠牲者の仇として銃を向け、「銀河帝国の転覆を目論む潜伏者の情報」による取引も帝国の公人ではないユリアンは一蹴。
怒りのままに蜂の巣にした。


【余談】

  • エンディングにて
石黒版OVAのエンディングは4種類あるが、そのいずれにもユリアンが登場している。
1期はヤンの元を訪れ、様々な人々とすれ違いながら戦乱の宇宙を共に歩んでいる。
ラストではラインハルトに一瞥されており、コレからの長い戦いを思わせるものとなる。
2期は月面らしきところに一人立つユリアンが色々な人の姿に想いを馳せ、表情を引き締める。
ユリアンが本格的に戦いを身を投じる、その決意の表れと言えるだろう。
3期はヤン達とピクニックを楽しむ様子……の映像を眺めているというものであり、彼の最大の別れを思うと涙無しには見られない。
そして4期では、ヤンの掬い上げた光を様々な人から増やされて、最後に隣に立つカリンの前でその光を投げて銀河を描いている。


僕は、アニヲタ達の追記・修正などしたくはない。アニヲタ達と追記・修正をしたい。その為にも……


アニヲタの歴史が、また1ページ。


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最終更新:2025年08月10日 00:41

*1 藤崎竜版では6歳の時に病死しており、彼曰く「2年ごとに人生の転機がある」と語っている。」

*2 平たくいえば戦争により孤児となった子を同盟軍人の養子にし、後に養育費の返済、もしくは軍人になる事で人的資源の不足を防ごうというもの。

*3 シェーンコップの推薦としてフレデリカの護衛についたのが初登場だが、ローゼンリッターの一員とは言われてはいない。