ボクラグ(クトゥルフ神話)

登録日:2025/08/09 Sat 05:27:18
更新日:2025/08/09 Sat 19:18:26NEW!
所要時間:約 3 分で読めます





ボクラグ(Bokrug)クトゥルフ神話大系に登場する神。
日本語では、ボクルグなど表記揺れしている。

初出はハワード・フィリップス・ラヴクラフト『サルナスの滅亡』(原題:The Doom That Came to Sarnath)


■概要

1万年前よりも更に1000年以上昔、ムナールの湖畔に存在した石造りの都市イブに住んでいた両生類に似た人型種族が神として崇拝していた水棲の大蜥蜴。
(ムナールはラヴクラフト設定ではドリームランドに存在するが、ラムレイ設定では覚醒の世界のアラブ付近に存在した。)

湖とイブ、住人は月から来訪したとの真偽不明の噂が伝わっている。


『サルナスの滅亡』では湖畔に移住したサルナスの人間たちが、イブを襲い住人を滅ぼしてボクラグ像を強奪して持ち帰る。
その日の夜に、ボクラグ像が設置された神殿の僧侶がサルナスの滅亡を予言して怪死。

1000年後にサルナスは一夜にして滅び、その際にイブの住人と思われる存在が目撃される。
跡地は都市が存在した痕跡一つ残らず、大蜥蜴が這い回る湿原となった。


■後続の作家による設定

上記のようにラヴクラフトの作品時点では、サルナスの滅亡に関与したと思われる蜥蜴であること以上はよくわからない存在だったのだが、
ブライアン・ラムレイとリン・カーターによって設定が掘り下げられた。


ブライアン・ラムレイの設定

『大いなる帰還』(原題:The Sister City)及び、その内容を包括した『Beneath the Moors』(日本語未翻訳)*1内に登場。


『大いなる帰還』は、イギリス人のロバート・クルークという青年が古代都市を巡るうちに、キンメリアに故郷のような感覚を抱き探し求める内容で、
ボクラグは生まれた時点では人間の姿をしており、成長に伴い蜥蜴の姿に変化する種族でロバート自身もボクラグだった事実が判明する。

イギリス、ヨークシャー(かつてのキンメリア)の荒れ地の地底には、ムナールのイブの姉妹都市のル=イブが存在し、そこにボクラグの一族が棲息している。
生まれたばかりではル=イブの環境では生きられないため、人間の街に赤子の状態で放置され、成長し鱗や尾が生えるなど変異が始まるとル=イブに帰還する。
さらに老齢になると、また一時期だけ人間の姿に戻る。

ただし、ル=イブに戻れるのは極僅かな個体だけで大半は辿り着くことができずに野山で暮らしたり錯乱して精神病院に収監されるなどの運命を辿る。
中には深きものどもに混ざってクトゥルフダゴンの配下となるものもいたという(『Beneath the Moors』でル=イブに棲むボクラグがクトゥルフの名を聞き「忌々しい」と反応しているため種族全体としては良い感情は抱いていないと思われる)。


『Beneath the Moors』は、蜥蜴像に強く興味を惹かれた大学教授が『大いなる帰還』の記録を読みル=イブに辿り着く内容で、
ボクラグは地底での生活の面倒をみる代わりに人間時代を思い出せる話を聞かせて欲しいと教授を歓迎して安全地帯に匿う。

イブの住人の種族名がスーム=ハーと設定され、彼らとボクラグは月ではなくその背後の宇宙の遥か彼方から来訪した。
ル=イブは地上に建てたかったのだが、キンメリア人に敗れ地底に潜伏した。
ル=イブが存在する地底空洞内には定期的にスーム=ハーの呼吸に必要な猛毒の緑の霧が流れ、サルナス人にそっくりな現生人類をスーム=ハーが敵視しているため幼体のボクラグには危険な環境。
古のものたちと同様にボクラグ一族も地球に来訪した当初はウボ=サスラから生まれたショゴス組織を利用して道具を作っていたが、古のものがショゴスの反乱で滅んだのを契機に廃棄した、などの歴史がボクラグ自身の口から語られる。


リン・カーターの設定

『Something in the Moonlight』(未翻訳)では、ネクロノミコンの4巻3章にボクラグについて記されている。
ボクラグはスーム=ハーの代表者の名に過ぎず、慈悲深くもボクラグの名で隠された、月の地底深くウッボスの暗黒の湖で這いずり回るドラゴン・ムノムクァこそがスーム=ハーが崇拝している蜥蜴神と設定された。


■余談

特撮番組『ウルトラマンガイア』には、この神をモチーフとした怪獣ボクラグが登場する。


追記・修正お願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2025年08月09日 19:18

*1 短編として『The Sister City』が発表された後、その全内容を含んだ長編として『Beneath the Moors』が発表された。