【草案】あせも

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登録日:2025/07/03 Thu 11:17:11
更新日:2025/07/07 Mon 21:56:34
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※ご自身の健康問題については、専門の医療機関に相談してください

あせもとは、大量の汗によって引き起こされる皮膚のトラブルである。
漢字表記では「汗疹」。


「汗」----あせもの原因にして新陳代謝をになう「必要悪」----

まず、あせもの原因となる「汗」の仕組みについて理解する必要があるだろう。
「汗」というと「汗臭い」「洋服にシミができる」「化粧がはがれる」「目に染みて痛い」など、どうしてもマイナスイメージが付きまとうが、実は人体において欠かすことが決してできない役割を担っているのである。

まず一つは、体内の老廃物や有害物質を体外に排出することで、身体や皮膚を清潔にする働きである。
そしてもう一つは、皮膚の表面に汗を出した後、その水分が蒸発する時に発生する気化熱を利用することで、体温を下げるという働きである。
「熱中症の患者が汗をかいていない」というのが危険な状態とされる理由は、「体温を下げる働きをしてくれる汗をかいていない=体温が際限なく上がり続ける」ということを意味するためである。

私たちの体においては必ず汗の通り道があるのだが、これを「汗管」という。
全身にある「エクリン汗腺」と、脇の下などにある「アポクリン汗腺」から汗が分泌され、汗管を通って体外に出されるのである。
このうち、体温調節のために汗が排出される場所が「エクリン汗腺」である。だが、夏の厳しい暑さの中体を動かして体温が上昇し、エクリン汗腺で汗が大量に作られる。そうして汗管に向かって運ばれていくのだが、このとき大量の汗が汗管に流れ込むことになるため、汗管がキャパオーバーの状態を迎えてしまうのである。
そうして、行き場をなくした汗(及び汗内の汚れ)が周辺の皮膚組織を刺激し、炎症が発生するのである。これが「あせも」である。



症状

あせもは首、胸、脇の下、肘の内側、肢のつけ根、膝の裏側など、汗をかきやすく、かつ蒸れてしまいやすい場所によく発生する。
「あせも」と言っても、その症状は3つある。

まず、一般的によく知られるあせもは、「紅色汗疹(こうしょくかんしん)」である。
エクリン汗管において「汗」が表皮内で詰まってしまい、真皮の浅い部分に炎症反応が生じ、小さな水ぶくれが複数できる。この時患部が赤く腫れて痒みを生じる。
これが慢性化すると湿疹となるほか、この症状に罹患した子供が我慢できずに患部を掻きむしってしまい、そこから黄色ブドウ球菌が感染して「とびひ」という炎症を引き起こす他、患部が引きつったようになり、「あせものより」という潰瘍状のものになるまで悪化することもある。

次によく知られるのが、「水晶様汗疹(すいしょうようかんしん)」である。
エクリン汗管が角質層で閉塞して、角質内に小さな水ぶくれができる症状である。この場合は痒みは生じにくく、水ぶくれが柔らかくて破れやすいので、それが自然につぶれれば治りは早いという。
これが悪化すると、上述の「紅色汗疹」となる。

最後に、深在性汗疹(しんざいせいかんしん)である。
エクリン汗腺が真皮内で壊れ、周囲に炎症を起こしたものである。赤く腫れて痒みが生じる点では「紅色汗疹」と似ているが、この症状の場合、「丘疹」と呼ばれる大きなできものができるのが特徴である。
この症状は高温多湿な熱帯地方でよくみられるもので、我が国での発生件数は少ない。



傾向と対策

多くの場合、あせもは乳幼児がかかるものとされる。
確かにそれは間違いではないのだが、年々夏の気温が上昇している昨今では、成人でもあせもにかかりやすくなっている。
一般に、あせもができやすい成人の特徴は以下のとおりである。

  • 仕事などで高温多湿の環境*1にいることが多い人
  • 肥満など、汗をかきやすい体型の人
  • 胸が大きかったり垂れていたりする人
  • 敏感肌ないしは乾燥肌など、何らかの肌トラブルを抱えている人
  • 汗の分泌機能が弱まっている人

昨今は年々夏の気温が上昇しているため、その分、あせもにかかりやすくなっているといえるだろう。
ではここで、あせもにかからないための対策について解説する。

まずは、汗を過剰にかかないように、エアコンや衣類で調節すること。
「電気代がもったいないから」「エアコンなんてぜいたく品がなくても生きていられる」とエアコンを使わず、汗を流れるままに任せて体温を下げようとする人もいるが、当然それによって汗管が詰まるし、何より熱中症のリスクも高まる*2ため、エアコンを使い渋らないようにしよう。

次に、汗をかいたらこまめに拭き、可能であればシャワーなどで流して肌を清潔に保つ。汗をシャワーで洗い流すことによって、汗管のつまりを防ぐことにつながる。

また、肌に触れる衣類は、スポーツ用や登山用などの通気性や吸湿性の高いものを着用するとよい。
それによって多少汗をかいたとしても汗による蒸れを防ぐことができ、あせもができやすい環境を作らないことにつながる。

そして、後述するように、患部は痒くなるので、ついつい引っ掻いてしまいがちである。
「掻いちゃだめだ」と思っていても多少なりともポリポリやってしまう人は少なからずいるだろう。
仮に起床時は意識を保って痒みをこらえることができていても、睡眠中に無意識に掻きむしってしまい、目が覚めたら患部から出血していた…ということだってありうる。
そこで、引っ掻きすぎて「掻き壊し状態」になるのを防ぐためにも、爪をあらかじめ短く切っておいた方がよい。また、手袋をはめておくのもよい。多少掻きむしったとしても、手袋の先端は尖っていないので、こちらも書き壊しを防ぐことができる。

なお、こうした対策において、
「そもそも汗をかかなければあせもはできないんだから、汗をかかないようにすればいいんじゃないの?」と疑問に思う読者の方々もいるだろう。
残念ですがそれ、大きな間違いです。
前述したように、適切な量の汗は体温調節に重要な役割を担っている。ところが、「汗をかかないように」とそればかり気にしていると、熱中症のリスクが高まる。
「汗をかくのはしょうがないことだが、それでもあせもが発生しやすいような状況を作らない」くらいの心掛けがちょうどいいのです。


もしもあせもにかかってしまったら

「上記の対策をすれば、必ずあせもにかからない」とは決して言えない。その日の体調のコンディションもあるし、「絶対にあせもにかからない体にする」というのは、どだい無理な話である。
ここからは、あせもにかかってしまった場合の対処法について解説していこう。

あせもは肌を清潔に保てば、数日で治る。とくに水晶様汗疹は、患部を石鹸でよく洗うことを数日繰り返せば早く治る。しかし、自然治癒に任せる最中、やはり痒みが生じるため、掻きむしって症状が悪化したり別の感染症を併発してしまうことがある。
痒みが我慢できない場合は、水で濡らしたタオルを患部に当てるとよい*3
また、お風呂に入る際、湯船につかると血行が良くなり、それによって痒みが強まってしまうことがあるので、入浴をシャワーで済ませるという手もある。

患部に触らないようにしていても、汗をかきすぎてあせもが悪化してしまうことも十分にありうる。この場合、エアコンを適切に使って体温を調節するほか、汗をタオルなどで拭き、流れるままにしておかないことが大切である。特に乳幼児の場合、背が低いので地面からの輻射熱の影響を受けやすいことから、対策は成人の場合のそれに加えて、徹底した暑さ対策が必要になる。

これらの治療を行っても症状が一向に改善せず、いまだに炎症や痒みが強い場合は皮膚科を受診したのち、塗り薬を貰うのがよい。
一方、汗疹が悪化して感染症を引き起こした場合、内服薬を服用する必要がある。塗り薬を用いると、それを塗る際に水ぶくれが破れて感染症の原因である毒素が広がってしまうことになるので、症状が悪化する危険性があるためである。
いずれの場合も、症状を悪化させないために、自己判断での薬の服用や使用を控えるべきである。




追記・修正はあせもができても、少しでも掻かずに我慢できた人がお願いします。



【参考文献】

あせも(汗疹)|ひふ研|第一三共ヘルスケア https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_hifuken/symptom/asemo/ (2025-07-03 参照)
大正健康ナビ 「あせも(汗疹)」https://www.taisho-kenko.com/disease/631/ (2025-07-03 参照)


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最終更新:2025年07月07日 21:56

*1 空調が整っていない屋内、畑などの屋外、真夏でも安全のために長袖を着なければならないような状況など

*2 最悪の場合は命を落とすし、万一助かったとしても重大な障害が残る危険性もある

*3 余談だが、この「痒い部分を冷やす」という方法はに刺された場合も有効である