和名

登録日:2025/07/09 (Thu) 18:54:00
更新日:2025/07/16 Wed 11:58:00
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和名とは、動物・植物・鉱物などの、日本語における呼び名の総称。
ここでは主に動物の和名について取り上げる。


和名の種類


動物・植物における和名の定義は「日本語における動物の呼び名」であり、厳密な定義はない。
要は、我々が日常的に使っている「イヌ」「ネコ」「ライオン」「シマウマ」「カブトムシ」「コケ」「(タケ)」「サボテン」「(ナシ)」「カボチャ」などは、全て和名である。

その和名の中でも、特に学会などによって正式に定められたものを「標準和名」と呼ぶ。
魚類の標準和名は日本魚類学会によって、哺乳類の標準和名は日本哺乳類学会によって定められている。
この場合、論文や学術書では標準和名を用いることが求められる。
しかし、一般向けの書籍やウェブサイトなどにはこの規約は適応されない。
さらに後述のように、俗名や地方名、流通名などが標準和名とは別に存在して、一種類の動物や植物に複数の和名がついているケースはざらにある。

俗名は、「我々が普段使っている和名」と同義だと考えていい。
例えば「イヌ」や「ネコ」「キク」も実は俗名であり、標準和名はそれぞれ「イエイヌ」「イエネコ」「イエギク」である。

地方名は、日本の一部地域だけで使われている名前で、要は方言。
漁業関係の職…すなわち漁師や魚市場のスタッフ、あるいは地元の人々の中で自然と「食品」として名称が固まってしまったケースが多いらしく、特に魚類において多い。
例えば標準和名「メバル」は、「アオテンジョウ、ウキソメバル、ガブ、スケ、ソイ、テンコ、ハチメ、ハツメ、ヒタケ、ホゴ、メバチ、メバリ」等々、数多くの地方名を持つ。

さらには、飼育趣味界隈で流通する動物の場合、ショップや飼育趣味者たちの間でのみ使われている名前というのもある。
これらは、いわば流通名・商品名である。
有名な例はウーパールーパー(標準和名メキシコサンショウウオ)。
また、流通名・商品名というわけではないが、飼育趣味界隈では標準和名ではない呼び名のほうがメジャーな種も多い。
例えばイエローヘッドモニター(和名・コガネオオトカゲ)など。この種に限らず、飼育趣味界隈では「オオトカゲ」よりも「モニター」の呼び名のほうがよく使われる。

ややこしいのは、これらの複数の呼び名をどの動物も持っているということの結果として、
全く別の動物が同じ名前で呼ばれるというケースが多々あること。
例えば、「ヒガシアオジタトカゲ」というと通常オーストラリア産の高価なアオジタトカゲを指すが、
インドネシア産の比較的安価なアオジタトカゲの個体群が「ヒガシアオジタトカゲ」の流通名で売られていることがある。
特に飼育趣味界隈では、ここのあたりをはっきりさせておかないとトラブルになることもある。

特に外国に生息する動物の場合は、英名や現地名の読みをカタカナ表記したものがそのまま和名になっているケースが多い。
ライオン、チーター、ジャッカルなど枚挙に暇がない。
これらの動物にも、全て日本語の和名を付けようと試みられた時代もあったが、一部を除いて現在では死語となっている。
(例:クロショウジョウ(チンパンジー)、アカダイショウ(コーンスネーク))

学名の読みをカタカナ表記したものが和名になったケースは、現生動物では珍しい(エリンギなどが該当)が、古生物ではむしろ大多数。
ティラノサウルス、アノマロカリス、マンモスなど。
「始祖鳥」や「ナウマンゾウ」など、和名が定着しているものは一部に限られる。
やはりかつては恐竜などにも日本語の和名を付けようとした時代があり、禽竜(イグアノドン)、斑竜(メガロサウルス)などが提唱されたが、現在では完全に死語になっている。

もちろん例外もあるが、ある近縁種に似ているがそれより小型の生物種に「マメ○○○」や「ヒメ○○○」(例:マメキンカン、ヒメユリ)と名付けられ、全体的に大柄であったり、棘や毛が生えていたりする種に「オニ○○○」(例:オニアザミ、オニタケ)と名付けられ、有用な近縁種に似ているが実際は有用性に乏しいものに「イヌ○○○」(例:イヌホオズキ、イヌタデ)等と名付けられる傾向がある。


アニオタ方面ではやはり「動物をテーマにする作品」では必須の概念であろうことが挙がる。
例えば『けものフレンズシリーズ』では…アプリ『3』では神獣に分類される生きもののフレンズもいるため全員ではないが…アニマルガールの名前としてこの和名は作中・メタ的な視点共に必須となっているといえるだろう。
この描写のおかげで「ヒグマには厳密には複数の種がいる(「ヒグマ」名の子以外の実装済はエゾヒグマ*1、カムチャッカオオヒグマ、コディアックヒグマ。他に現実の生物学でヒグマの仲間に分類されるクマのフレンズとしてハイイログマ*2も登場しているため5名)」ことや、「『日本のタヌキ』は日本でおなじみのあの1種と言えるほど希少な動物*3」などがキャラ名から直感的に理解しやすいコンテンツデザインとなっている。

また『わんだふるぷりきゅあ!』では、いわゆる敵怪物はそのへんの動物を洗脳・暴走させた存在であるのだが、この時に「種同定を行って(なんていう動物なのか観察により判断して)今目の前にいる怪物の得意・苦手を推測し、それにより効果的な対処を取る」チームメンバーは当然和名で同定・実際に対処するプリキュアたちへの指揮を行う。
つまり和名として「特定一種の動物の呼び名」がしっかり存在し、かつチーム全員でどの動物とどの和名が対応するか共通している、和名システム自体の意義が実現されているからこそこのような「変身できないため戦うことはできない*4が、種同定と当該種の解説ができる」キャラクターをチームに欠かざる人物として描写できたわけだ。
異世界たるニコガーデン・いろはやこむぎたちの世界とで種分化はしていても割と収斂進化に近い発展をしている(≒外見が類似しているのに、悟の知識から大きくかけ離れた習性をもっているケースがない)のに助けられている面もあるし、ニコガーデン側にはティラノサウルスまで現在の生物相を構成しているいきものとしているが。

変わった和名あれこれ

フクロモモンガモドキ、ニセフクロモモンガ、フクロモモンガダマシ

界隈では非常に有名な、フクロモモンガのパチモン三兄弟。
言うまでもなく、たまたま人間に最初に発見されたのが「フクロモモンガ」だったというだけなのだが……

オジサン、ヨダレカケ、ウンコタレ

この名前だけを見て、こいつらが魚類だと分かった人は偉いと思います

トウキョウトガリネズミ

こんな名前のくせに、東京には一匹も生息していない。生息地は北海道である。
標本にラベリングする時に、「エゾ」と「エド」を取り違えた、という説が、昔からまことしやかに語られている(真偽は不明)。

ネズミキツネザル

「お名前を教えてください」
「ネズミキツネザルです」
「ややこしいな」*5

メクラチビゴミムシ

名前を読み上げるだけでそのまんま罵声語として通用してしまう、凄まじい名前を持った甲虫。
後述のように、近年この手の和名は変更される傾向にあるのだが、この種については著名な研究者が強硬に変更に反対しているらしく、
現在に至るまでこのままである。

トゲアリトゲナシトゲトゲ

ガールズバンドの名前としても有名になった昆虫の名前だが、この名前は正式な標準和名としては、今も過去も存在しない
愛好家の間でつけられた俗称が広まったものらしい。
だが、現在辿れる証言は断片的で、この俗名で呼ばれていた虫が標準和名では何という虫に相当するのか、
そもそも一種類の虫を指す名前なのかは不明である。

オオイヌノフグリ

春になると街中で普通に見かける雑草の一種で、4枚の花弁からなる青紫色の花を咲かせる。
和名の由来は果実の形状が‥‥あとはお察しください。


変更された和名

様々な理由から、標準和名が変更されたり、新しい和名が提唱されて過去の名前が使われなくなったりするケースもある。

イザリウオ→カエルアンコウ

日本魚類学会によって、正式に変更された標準和名。
「いざり」は、脚の不自由な人が、手だけを使って移動する様子を指す差別語。
なので妥当な変更と言えるが、では「ザリガニ(「いざり蟹」が変形したものとされる)」はどうするのか、という難しい問題が生じる。

オシザメ→チヒロザメ

これも日本魚類学会による正式な変更。「おし(唖)」が「言葉を話す事が出来ない(発話障害)人」への差別語だった事から改名され、深海に住む事から高度・深度の高さを示す「千尋」の名を新しく付けられた。
ちなみに英語名は「False catshark」(ニセトラザメ)または「sofa shark」というのだが、そっちの訳にしなかった理由は謎。

メクラウナギ→ヌタウナギ

メクラウオ→ブラインドケーブ・カラシン

言うまでもなく、「メクラ」が差別語であることからの変更。
ヌタウナギは日本魚類学会による正式な変更。
メクラウオは日本に生息していないので、学会による正式な標準和名の制定はないが、
現在ではショップや書籍ではほぼ「ブラインドケーブ・カラシン」で統一されている。

アシナシトカゲ→ヘビガタトカゲ

ヨーロッパ原産だが、飼育趣味界隈では古くから飼われていて、わりと飼いやすくて人気のあるトカゲ。
手足が完全に退化している。
まだこの変更は完全に浸透しているわけではなく、ショップによって呼び名が異なるので注意。
なお、なぜか「アシナシイモリ」のほうには改名の動きはない。

バカジャコ→リュウキュウキビナゴ

これも日本魚類学会による正式な標準和名変更。
バカもダメなようである。
これで行くと、「アホウドリ」はいいのだろうか

ジムグリパイソン→カラバリア

飼育趣味界隈では(ごく一部のもの好きに)人気のあるヘビ。
分類が見直された結果、そもそもパイソン(ニシキヘビ)ではない、ということで、現在では学名をカタカナ表記した「カラバリア」という名で流通することが多い。
この手の理由でひっそりと和名が変更されるケースは以外と多い。

ピグミーチンパンジー→ボノボ

これも分類の見直しによる変更。
当初はチンパンジーに極めて近縁とされていたが、後の研究で差異が大きいことがわかったために変更された。
なお「ピグミー」という単語は、現在では差別的という事であまり使われない傾向にあるが、ボノボの例に関してはそうではないよう。
ピグミーマーモセットのような例も残っていることから、上記のメクラやバカほどには問題視されていないようだ。



標準和名:アニヲタ
学名:ツイキネンシス・シュウセイトロプス

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最終更新:2025年07月16日 11:58

*1 実際には完全な別種ではなく、無印ヒグマと分類される種の亜種。

*2 いわゆる「グリズリー」。

*3 一応日本と距離的に近いエリアならユーラシア大陸の国々にもいるのだが、それぞれ固有に分化した種とする説があったりと実質日本固有種と見なされている様子。そのため海外の動物園からは「トップクラスに交換レートとして高い動物だが、日本の園にお願いすれば絶対になんとかしてくれる。飼育や繁殖もそんな難しくない」として重要視されているようだ。「近隣の山産のタヌキもなぜか混じる超大所帯」の東武動物公園の展示を見せたら失神するのではなかろうか。

*4 ※設定上は大きく異なるが、シリーズ全般への一般イメージを優先させていただいた

*5 医療機関で行われる患者の名前確認のポスターに描かれたやり取り