登録日:2025/9/21 Sun 10:36:49
更新日:2025/09/21 Sun 12:28:20NEW!
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月刊COMICリュウにて連載されていた漫画。作者は中野でいち。
COMICリュウ主催の新人漫画賞「龍神賞」でデビューした、中野氏の『十月桜』に続く代表作。
テーマは「愛と性欲と罪」。
テーマに反して直球なR-18的な描写は少ない。まあ、一般誌だし。
デフォルメ寄りのタッチながらも登場人物の内面や葛藤が綿密かつ生々しく描かれており、
登場人物のユーモアに富んだ齟齬力の高い台詞回しは、漫画でありながら一種の文学作品を読んでいるかのよう。
何故こんな難しいテーマにしたのかというと、『十月桜』がドロドロした暗い作風になってしまった為、今度は明るめな作風を目指したかったとの事。どこがやねん
単行本は全2巻で連載期間は1年とちょっとだが、単行本の2巻目が1巻に比べてやたら分厚い。
2019年には、福岡を拠点に活動する劇団「演劇ユニット「」」によって、『戯曲「hなhとA子の呪い」』のタイトルで舞台化された。
ブライダル業界最大手企業「針辻ブライダル」にて、針辻真という名の男が社長に就任した。
「性欲は人を傷つけ真実の愛の障害たる最低最悪の呪い」という持論を掲げるこの男は、性欲という存在そのものに嫌悪感を抱いており、性欲に打ち克つ事が真実の愛を手に入れられる唯一無二の手段であると謳い、そんな自分に汚らわしい性欲なんて一滴も無いと豪語していた。
不貞腐れていた針辻の前にA子と名乗る謎の幼女が現れ、就任式のパーティーの最中に秘書の南雲の胸をうっかり触ってしまった事をきっかけにA子によって今まで一滴も存在しないと思っていた性欲を引き摺り出されてしまう。
突然湧いてきた性欲に戸惑い惑わされていく針辻。
A子の正体は?針辻は真実の愛を掴み取る事ができるのか?
●針辻真
本作の主人公。ブライダル会社「針辻ブライダル」若社長。
真実の愛の獲得を夢見る一方で、性欲というものの存在をこの世で最も醜く汚らわしいものとして唾棄している。
どれだけ忌み嫌っているのかというと、他人を見た際に、言動や行動が少しでも性欲に絡んでいると判断すれば白い目を向けるくらいには嫌っている。例えば化粧している女性を「性欲に支配された豚共」と蔑み、セックスに関する話が出ただけで「セックスが生み出すのは共犯関係だけ」と嫌悪感剥き出しにするくらい。まさしく坊主憎けりゃ袈裟まで憎しを地で行くスタイル。また、世の中と他人を斜に構えて見下しているクセに自分は「誇り高き純愛主義者」と嘯いており、その姿はいい歳して未だに厨二病を引き摺っている、自称純愛主義者の拗れた童貞坊ちゃんとも言うべきだろう。
ブライダル会社の社長が独身じゃ示しがつかないという理由で母親からお見合いをセッティングされて渋々参加しているものの、その捻くれた性格のせいか全く進展は無い。
まあ、その肝心のお見合いも不機嫌そうなツラしながら相手をガン無視して一方的に愛について小難しい言い回しを多用してクドクドくっちゃべった後に「要するに君は処女か?」なんてセクハラ発言するくらいだし。 理想が高いとか以前に非常識だろって?ごもっとも
そんな矢先に、A子と名乗る悪霊に取り憑かれ、今までないと否定してきた性欲を引き摺り出され、最終的には目に写る全てのものが「エロい」か「逆にエロい」でしか判断できなくなるなど、日常生活を送る事すら困難になるまでに追い込まれてしまう。 降って湧いてきた性欲に死に物狂いで抵抗する様は傍目に見れば滑稽だが、その姿は自身が蔑み嫌悪していた性欲に振り回される人間そのままであり、性欲と理性の間で板挟みにされてどうにかしようにもプライドが邪魔して何も出来ず、積み重ねてきたイメージとアイデンティティーを根本から否定されてだんだんと壊れていく姿は哀れに見える。
後半は彼が過去に犯した罪が話の中軸となり、性欲を病的なまでに嫌悪している理由が明かされる。
彼の罪は、小学五年生の頃まで遡る。
母の仕事が忙しいという理由で祖母の家に預けられる形で転校させられた針辻は、ぼっちだった自分に接してくれた野間瑛子という少女と親しくなり、彼女に恋心を抱く。
小五という年は性の目覚めを初めて知る年齢でもあるが、針辻の場合は「一度知ってしまったら汚れてしまう。思春期という言葉で片付けたくない」と、何かから逃げるかのように避けていた。
勇気を出して瑛子とのホタル探しに行く事を決意した次の日に、瑛子が変質者に誘拐される事件が発生。
更にショックで引きこもってしまった矢先に瑛子が変質者に襲われる悪夢を見てしまい、彼女が汚されていく様を指を咥えて見ているだけしか出来ない中で、その変質者の顔が自分だった事で歪んでしまう。
それ以来、瑛子を守れなかった無力さと、変質者の姿と自分を重ねて興奮してしまった事に対する嫌悪感から目を背ける為に、性欲を病的なまでに嫌うようになった。
また、真実の愛に拘っているのも子供時代に南雲に誓った約束を果たす為であり、それが動力源となっている。
●南雲七海
本作のヒロインで、針辻の秘書にして世話係。26歳。
針辻とは子供時代からの付き合いであり、それ以上でもそれ以下でもないらしい。
柔道空手合わせて五段の有段者にして3ヶ国語を話せるトリリンガルという、絵に描いたような高スペック女子だが、化粧もお洒落もしない上に常に無愛想で大飯食らい。所謂色気も可愛げもない残念な美人。
性欲とは無縁だからという理由で針辻からしつこくプロポーズされているが、全て軽くあしらっている。恋愛嫌いというよりは愛というものを信じられないとでも言うべき。その根底には、幼少期のトラウマから「人は人を簡単に裏切る生き物」という考えが根付いてしまっている様だが……?
●A子
針辻の前に現れた謎の幼女。針辻のラッキースケベがトリガーとなって現れた。
口を開けば淫猥な言葉がバンバン飛び出てくる歩く18禁な、大人を揶揄って遊ぶメスガキ。
その姿と声は針辻にしかわからず、彼女の吐く言葉の一つ一つが針辻への「呪い」となり、彼の精神を蝕んでいく。
針辻の理解者を称する一方で、南雲の事は針辻を苦しめている元凶として敵意を剥き出しにしている。
A子が現れた理由にはどうやら針辻の過去が関係しているようだが…?
正体は、針辻が抱え込んでいた過去に犯した所業に対する無力感と自己嫌悪といった負の感情が膨れ上がり生霊となって具現化したもの。咲からは己自身を罰する為に生み出したのではないのかと推察されている。
その姿は少女時代の野間瑛子と同じであり、瑛子の姿をしているのも、彼の過去が大いに関わっているからである。
●南雲咲
南雲の妹の女子高生。シスコンだが実は霊能力者であり、A子の存在に気づいた最初の人物。
そのため、針辻を助ける事にしたのは、彼ではなく南雲の為でもある。
●ケイ
針辻ブライダルの女性社員。ヤニ中。
南雲とは針辻をめぐるライバルになるかと思ったが、別にそんなことはなかった。
●久慈愛喜
生い茂ったまつ毛とガリガリな体にストールを身に纏った飄々としている謎の男。「人は皆生まれながらにして愛の奴隷」という持論を掲げており、自らを「隷愛主義者」を称している。
性欲を忌み嫌う針辻とは違い、女性を見ればすぐに手が出る程性欲旺盛。しかもかなりのスケコマシ。
その正体は、南雲の実父。ちなみに咲との血の繋がりは一切ない。
愛を求め他者に愛の言葉を囁いておきながら、愛が尽きたと判断すればすぐにポイ捨てして別の女性を取っ替え引っ替えするなど、その奥底は愛に飢えておきながら誰かを本気で愛した事が一度もないどこまでも空っぽな男。それ故、囁かれる愛の言葉も信念や真心が一切こもっていない薄っぺらいものばかり。捨てられた人の人生が狂おうが一切見向きもせず、それどころか最初からいなかった事にして「愛の奴隷」という言葉で正当化するなど、それらが悪い事だという認識すら持っていない分、やり捨て男や結婚詐欺師よりもタチが悪い。謂わば一般常識に道徳心、善悪や貞操観念といった物事の分別が完全に欠落している子供っぽい人格破綻者なエゴイスト。
もちろんその言動や行動はキチガイめいており、変質者や異常者を通り越して妖怪の域に達している。
針辻とは正反対だが、歪んだ方法でしか愛を語ったり実践出来ないという点では、ある意味針辻と同類といえる。
優男風な見た目に反して、実年齢は少なくとも中年は迎えており、南雲の年齢から逆算すると恐らく40代後半あたり。
不特定多数の女性と関係を持つ中で、妻となる女性と結婚。それから南雲が生まれ、幸せな家庭を築き上げていった。だがある日を境に愛が失われる不安と恐怖から深夜徘徊が多くなり、最終的に失踪。
久慈が自分の元から消え去った絶望から、南雲母は精神を病み南雲家は家庭崩壊。やっと帰って来たと思ったら若い女子を複数人に部屋に連れ込んで致していていたために狂死。母の死後、南雲は針辻家に引き取られた。
なお、南雲が幼少期の頃から「人は人を裏切ってしまう生き物」と言い聞かせてきており、それが彼女の人生観を決定づけてしまっていると言える。
以上の事から南雲が愛を信じられなくなった元凶でもあり、毒親やクズ男という言葉では片付けられない所業と、そんな男と同じ血が流れている事実から生理的な嫌悪感と恐怖心を抱かれている。
妻を捨てた後も世界各地を放浪していたが、南雲をモノにする為に日本を来訪。
彼女を見つけ次第拉致した後、針辻を「近いうちに死ぬろくでもない男」「童貞が父親に勝てるわけないんだよ」と貶し、それでも彼の再起を信じている南雲すら嘲笑い、かのじょを実の娘に手を出すという子を持つ親としては最低卑劣な行為に手を染めようとしたところを、全てを思い出したA子に邪魔されて失敗。A子に連れられる形で逃げる南雲に物凄く気色悪い捨て台詞を吐き捨てた。
その後の動向は語られていないが、最終回にて針辻の母に追い詰められた挙句轢き殺されかけたている。
針辻母から南雲を拉致する前から彼女をストーキングしていた事、「あんたは進んで奴隷になったんだ」と、過去に触れて清廉潔白なフリをしている突如湧いてきた性欲に振り回されて苦悶し自殺未遂まで追い込まれながらも少年期に誓った想いを果たすべく真実の愛を掴むために己の過去と性欲に向き合って悩みながらも人生に折り合いをつけた針辻や、かつての父の所業のせいで愛を信じられなくなり自らも母を捨てた父と同じ末路を辿るのではないかとその血と影に怯えていたが血の繋がりのない妹の叱責と針辻を助けたいという純粋な気持ちに従い矛盾やジレンマを抱えながらも前に進んだ南雲とは違い、久慈は己自身と向き合おうともせず思考放棄の末に現実逃避しているだけだと見抜かれる。
この一言が図星だったらしく、腹いせに針辻母の車のボディをベコベコになるまで踏んづけながら「あの二人が上手くいきっこない」と、針辻と南雲の行く末を嘲笑った後に何処かへと消え去った。
ちなみに、A子の姿が最初から見えていた人物の1人でもあり、彼女の存在理由を思い出すきっかけを作っている。
●針辻の母
「針辻ブライダル」会長。素顔本名ともに不明。
その名の通り針辻の母親だが、息子からはかなりウザがられている。
久慈との関係性など明かされなかった部分が多いかなり謎が多い人物。また、何故か夫即ち針辻の父親の事については一切言及されていない。
追記は項目を傷つける!!
修正は項目を狂わせ惑わせるアニヲタWikiの敵!!
Wiki籠りにかけられた捨て去るべき最低最悪の呪いなんだ!!
最終更新:2025年09月21日 12:28