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デジモンブルーム-電子の花は散るか-

登録日:2025/12/12 Fri 03:10:02
更新日:2026/06/28 Sun 17:21:30
所要時間:約 5 分で読めます




出会いがあれば別れがある

その別れが人を強くする

とかなんとか







デジモン召喚アプリ

サービス終了のお知らせ



デジモンブルーム-電子の花は散るか-とはデジタルモンスターシリーズを題材にした読み切り漫画
作者は鳳轡わが氏。
デジモン漫画大賞の最優秀作品にして「準大賞」作品である。
現在も公式で無料公開されているためぜひ読んでみよう。


【概要】

まず、デジモン漫画大賞について説明する必要がある。
これは2023年当時、シリーズ25周年記念に企画された「デジモン」初の漫画賞で、栄えある大賞に選ばれた暁には賞金100万円のほか、副賞として「東映アニメーション、バンダイ、集英社Vジャンプ編集部と一緒に、新たなデジモン漫画を生み出す企画に参加できる権利」を与えられるという、かなり気合の入った公募企画であった。
単純にデジモン作品を集めたいだけではなく、実力派のデジモンファンを公式クリエイター「戦力」として迎え入れたいという狙いがあったものと思われる。

そしてジャンルがデジモンでさえあれば良いというかなり自由度の高い企画である。
ただでさえアニメ・ゲーム・漫画いずれのメディアミックス作品ごとに舞台や登場人物の設定・解釈が自由なデジモンというコンテンツにおいて、この指定は実質的に「面白いデジモン作品であればどんな作品でも許すよ!」と言っているも同然である。
きっと企画者も、多種多様な作風の作品群が来ることを期待していたのだろう。

そして募集は終了し、いよいよ結果を公式がアナウンスしたのだが……

まったく新しい漫画「デジタルモンスター」を生み出すべく2023年2月12日から募集を開始し、
デジモン愛にあふれる様々な作品の応募がございました。

今回はその中から、 準大賞1本 、 佳作3本 を選出させて頂きました!

……大賞作品が選ばれなかったのである。
普通に考えれば、どれだけ募集された作品の出来がイマイチだったとしてもその中で一番優れた作品が大賞になるのでは?という発想に行きつくだろう。
しかし、最優秀作品であっても「準大賞」止まりというまさかの事態だったのである。
勿論「賞金100万円+公式クリエイター化」という大きな報酬がある以上、消去法的なチョイスで大賞を上げるわけにはいかないという都合はある。
実際他の漫画賞においても大賞不在になるパターンもないわけではない。
では、この選ばれた4作品はクオリティが足りなかったのか?というと決してそんなことはない。
読んでみればわかるが、デジモンへの深い愛情とファンならではの豊かな発想、そして画力・演出力・ストーリー構成いずれも優れた作品ばかりである。
そして募集作品の中で最も優れた作品として認められながら、なぜか大賞を取れなかったのが、この「デジモンブルーム-電子の花は散るか-」なのである。
何故そんなことが起きてしまったのか……と思うかもしれないが、読んだデジモンファンの多くが、
「間違いなくこれは非常に優れたデジモンの漫画作品である」と感動すると同時に
「優れた作品でありながらこれを大賞に選べなかった公式の気持ちもよくわかってしまう」と納得してしまうという、
作者のデジモンシリーズへの愛憎をこれでもかと煮詰めて一つの世界へと昇華させた傑作にして問題作である。

<あらすじ>

幼いころからアプリで召喚したララモンと暮らしていた少女、橋戸リラはある日、デジモン召喚アプリのサービス終了の知らせを目にしてしまう。
ララモンはイマイチ状況を呑み込めていないが、ララモンがいて当たり前の日常に慣れ切っていたリラは、現実を受け入れられず、なんとしてでもサービス終了を回避しようとするが……

<用語>

●デジモン
みんな大好き電子生命体。召喚アプリを用いて現実に生体ホログラムとして呼び出すことが可能。
現実のそれと同様、中々の古参コンテンツのようだが、召喚アプリの他にも多種多様なメディア展開をしている様子。
しかし、これもまた現実のそれと同様に、匿名掲示板に「オワコン乙」「まだやってたんだw」などと心無い中傷染みた書き込みが見られたり、一定の人気はあるが所謂覇権コンテンツとは言い難い位置にあるらしい。

●デジモン召喚アプリ
読んで字のごとく、デジモンを召喚できるアプリケーション。
作品の舞台は一般的な現代日本だが、デジタル技術が非常に高度化しているらしく、なんとデジタルワールドそのものを構築してそこに住まうデジモンを召喚できるというトンデモないアプリらしい。
……が、リラが幼い頃からサービスを続けていただけあって*1流石に先細り過ぎたせいか、この度サービス終了となってしまった。
デジタルワールドそのものの運営ができなくなってしまったため、このままではそこで暮らす全てのデジモンがこの度消失することになった。
崩壊していくデジタルワールドの中では無数のデジモンたちが悲しい表情で人間のパートナーの名前を叫びながら逃げ惑う悲痛な光景が繰り広げられていた。


【登場人物】


  • 橋戸リラ

は……は?デジタルワールド閉鎖……?召喚できないって嘘…嘘……?
しかもこの日付……え?明日!?

本作の主人公の女子高生。幼い頃に「引っ越したてで友達もいなくて寂しいだろうから」という両親の気遣いによってララモンと出会い(出会った当時は幼年期Iのユラモンだった)、以来ずっと暮らしている。
幼い頃から一緒に時に笑い、時に喧嘩し、時に涙したりと、どんな時も一緒に暮らしてきたララモンを心の底から大切に思っていたのだが、この度「サービス終了」という形で別れを迎えることに……

「いや無理無理無理 無理なんだけど!」

当然、納得いくはずもなく、自分が思いつく限りの手段を尽くしてララモンとの別れを回避しようと、運営会社にまで乗り込んで直談判までするが、元運営スタッフが顔を押さえて涙を流しながら「ごめんね」と謝ったのを見て*2、もうサービス終了は絶対に避けられないという事実をを思い知らされてしまう。
このまま涙を呑んでララモンと別れるかと思いきや……

  • ララモン
あのね なんかこっちの世界が…
デジタルワールドが壊れていってるの

デジモンセイバーズ』の藤枝淑乃のパートナーとして有名な植物型成長期デジモン。*3
リラとは長年の付き合いで、同じ家の同じ部屋で暮らして、寝食を共にして一緒にデジモンのゲームを遊んだり、お菓子をめぐって喧嘩したりと、大切な家族として共に生きてきた。
当初は「サ終?」と状況を理解できておらず、そんなことより一緒にゲームしようよと彼女にじゃれつくが、リラが嘆く姿を目の当たりにし、アプリの機能不全で強制的にデジタルワールドに帰還させられたことで、徐々に状況を認識し始める。


  • インフェルモン
今日、デジモンはみんな死ぬ。いや、死ぬより虚しい無と化す
どんな冒険の思い出があろうとなかろうと全てなかったことになる。
このデジモンとの別れが少年少女を大人にするんだと!

いや子供はもうやってないか

あのディアボロモンの進化前に位置する完全体デジモン。現実の検索エンジンサジェストに「インフェルモン 怖い」と出るような恐怖のデジモンだが、リラが苦手なデジモンのホラーゲームのパッケージを飾っており、こちらの世界においても恐怖の象徴的なデジモンのようだ。
アプリのサービス終了が目前に迫ったリラの前に姿を現し、茫然としていたリラに対して、
彼女のララモンを含めた数十万、数百万というデジモンたちの命があと少しで消えるという現実を突きつけ、
リラの「何があってもララモンと一緒にいたい、別れたくない」という心の叫びを引き出す。
そんな彼女を笑いながらも、ある「賭け」を彼女に持ちかける――

デジタルワールド崩壊によって、サ終前にもかかわらずアプリが機能不全になっている中でも、なぜか現実世界にいるリラの目の前に現れるなど、謎の多い存在だが、
それ以上に読者の印象に残るのは彼の語る、
「デジモンとの別れが人を成長させるというのなら、こんな形で死別するのもまた成長につながる美徳と言えるのか?」
「パートナーと別れた後のデジモンたちは今もあの世界でずっと待っているんだぞ?」
というあくまでもリラを揺さぶるために発したにすぎないはずのセリフに込められた、
「デジモンとの出会いと別れ」を感動的なものとして扱ってきたデジモンコンテンツに対する、強烈なアンチテーゼのセリフの数々だろう。
そんな彼がリラに持ち掛けた「賭け」とは……

<その後の展望>

大賞を逃してしまった本作の作者鳳轡わが氏だが、その後、デジモン公式サイトで運営されているweb漫画サイト「デジモンコミック」において「デジモンリコレクション」というデジモン漫画作品の連載が決定した。
このデジモンブルームと世界観を共有している作品であり、知っているとニヤリとする要素はあるものの、あくまでも独立した作品である上に、何より本作ほどにデジモンへの想いが籠ったドロドロとした作品ではなく、よりライトな作風であるため気になった方は是非読んでみることをお勧めする。

ちなみにこのデジモンリコレクション連載時の公式インタビューにおいて、一番好きなアニメ作品は『デジモンセイバーズ』だと述べているのだが、その理由についてこう答えている。

今までの「デジモン」アニメでは、物語の最後にはデジモンたちとお別れするので、「そういうものだ」と思っていたんです。ですが『セイバーズ』では、最終回でマサルが「俺も行くぜ!」といってデジモンたちと旅立っていきました。「完」となった瞬間に、「それでいいんだ!」と、衝撃を受けて思わず泣いてしまったんです。この展開は、自分の作品作りにとても強い影響を与えました。

こう答えられていたことを念頭に置いて改めて本作を読み直してみると、また違った見方ができるかもしれない。

アタシたちずっと一緒だね!

うん!

よーしララモン!

今日はどうやって追記・修正しよっか!

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最終更新:2026年06月28日 17:21

*1 リラ曰く当初はデジヴァイスから始まり、ゲーム機、スマホといくつもの端末を渡り歩いてきたとか。当時はアプリではなくデジモンのデータを買い切りで販売していた様子

*2 実はこの職員はリラにだけ謝っていたわけではなく、これから間もなく別れを告げることとなる自身のパートナーであるクルモンに対しても謝っていた

*3 リラが当初使っていたデジヴァイスも、『セイバーズ』に登場したデジヴァイスiCである。