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天幕のジャードゥーガル

登録日:2026/09/21 Mon 00:03:24
更新日:2026/10/06 Tue 14:01:09
所要時間:約 16 分で読めます







その昔
学者達は
幾何学を使い
はじめて地球の大きさを知った

すると
その手の内にある
運命の大きさも
幾何学で
測ることが
できるかな?

これは

広大な大陸を翻弄した
一人の魔女の話——




『天幕のジャードゥーガル』は、トマトスープによる漫画作品である。
WEBコミックサイト『Souffle』にて2021年から連載中。月刊少女漫画雑誌『ミステリーボニータ』でも2025年4月号から出張連載している。
秋田書店のWEBコミックサイト『チャンピオンクロス』でも読める。



概要


13世紀のモンゴル帝国に生きた、第2代皇帝オゴデイの第6皇后・ドレゲネの側近を務めた女性「ファーティマ・ハトゥン」の復讐劇を描いた漫画作品。
歴史上の出来事や人物を題材に据えた、いわゆる「歴史もの」の系譜に連なる作品である。
復讐劇なので話の大筋はドロドロした重たいものなのだが、トマトスープ氏の児童書風味の絵柄(強いて言うなら藤子不二雄や手塚治虫系の絵)により、くどくさせずにサクサク読める。
「ジャードゥーガル」(جادوگر)はペルシア語で「魔術師」「魔女」という意味であり、これは史実のファーティマが「魔女」とあだ名されたことに因んでいる。

多くの賞を受賞している。
  • 宝島社『このマンガがすごい!2023』オンナ編第1位
  • 文藝春秋『週刊文春エンタ マンガ賞!2022(下半期)』最高賞
  • マンガ大賞2023&2024 第5位
  • 第55回日本漫画家協会賞コミック部門大賞(2026年)

2026年7月~9月にテレビ朝日系列の『IMAnimation』でアニメが放映された。アニメーション制作はサイエンスSARU。

あらすじ


西暦1213年のペルシア、母を亡くし、故郷からも遠く引き離された幼い少女・シタラは、学者一家の心優しい奥方・ファーティマに拾われる。
「勉強して賢くなれば、どんなに困ったことが起きたって何をすれば一番いいのかわかるんだ」ファーティマの息子・ムハンマドの言葉に心を揺さぶられたシタラは、"知"の可能性と大切さを知り、教養を深めていく。いつの日にか、ムハンマドに追いつくことを夢見て……。

その頃、皇帝チンギス・カンによる地上最強の「モンゴル帝国」が日に日に勢力を拡大していた。その歴史のうねりは、ついにシタラの住む街をも巻き込んでいく。
帝国の第四皇子トルイによってすべてを奪われ捕虜となったシタラは、ただ一つ残った“知恵”を駆使して王族に取り入り、帝国を内側から崩壊させようと決意する。
奥方から受け継いだ"ファーティマ"を名乗って。

心に復讐の炎を宿しつつ、表向きは帝国に仕える身となったシタラはある日、第三皇子オゴタイの第六妃ドレゲネと運命的な出逢いを果たす。彼女もまた壮絶な過去を抱え、心の内に帝国への深い恨みを秘めていた。
シタラとドレゲネ。出逢うはずのなかった二人が手を取り合い、復讐の計画を進める。
そしてモンゴル帝国内でも、国の発展や皇帝の座をめぐっての対立が起きはじめていた。

様々な思いが渦巻く中、二人とモンゴル帝国の運命はいかに。

(アニメ公式サイトから抜粋し、一部追記)

用語

・トゥース
ペルシャ(現代のイラン北東部)に位置する街*1。シタラ達が暮らしていたがモンゴル帝国に襲撃された。

・モンゴル帝国
13〜14世紀にモンゴル平原出身の遊牧民の長チンギス・カンと、その子孫が築いた国。
遊牧民の人々は天幕に住み、羊や馬(他に牛やラクダ)を飼い獣を狩って生活している。また戒律に「肉の血抜き」があるイスラムの民と違い捌いた肉は血を抜かないで調理する等、様々な独自の風習を持つ。
チンギス・ハンことテムジンの登場で一気に勢力を拡大し、現在の中国から中東地域まで侵攻し支配、使い道のありそうな人材は捕虜*2とし本国まで連行し、捕虜上がりの一部は皇族の側室や侍従となる。
同じ天幕の遊牧民でもアラビア半島のベドウィンが似合いそうなイスラム教徒の国に、東洋の騎馬民族が攻めてくるのを見た初見の読者は驚愕したのではないだろうか…
本編初期の段階で中央アジア当時の世界の陸地の約4分の1を支配し、途中で中華地域の侵略にも乗り出した超巨大帝国。元寇でもおなじみ。

ちなみに1巻では、中華の方から道教の賢者「長春真人」(丘処機)がチンギス・カンの元へと向かう様子が描かれていた。

・原論
古の学者エウクレイデスが著した数学書。初めて見たシタラ曰く「当たり前の事」…数学の理論たる幾何学を体系的にまとめてある。
シタラも最初その内容の価値がピンとこなかったのだが、ファーティマ奥様がそれに続いて占星術の本やそれに記された「ビールーニーの世界地図」(ユーラシア大陸の概略図)を見せ、「星や世界を量る学問の基礎でもある」と言う理解を教えていた。
シタラの仕える家に写本が存在しており、住人達が大切にしていた本であるが、モンゴルに奪われた。
ちなみに実在の書籍で、原論の中で体系化された幾何学理論(古代ギリシア・エジプト発の数学)は、後に欧州にてエウクレイデスの英語読みから「ユークリッド幾何学」と呼ばれるようになる。

・ジャダ石(ベゾアール石)
動物の体内にできる結石のひとつ。
モンゴルでは嵐を起こすまじないの石として、ペルシアでは毒消しの薬として重宝される。

・クリルタイ
モンゴル帝国において、重大事項を決定する際に開催される大会議。
皇帝の座を決める行事でもあるが、各地から有力者を集める都合からか準備に時間が掛かるようで、チンギス・カンの次代の皇帝を決める際は開催まで2年の時間を要し、その間チンギス・カン家のオッチギンたるトルイが「監国」と呼ばれる地位に就き皇帝の代わりに統治を行なっていた。

・オッチギン(炉の主)
モンゴルには末子相続の慣習があり、末子は親元に残り家産を相続することになる。その末子をオッチギンと呼ぶ。
…ただあくまで「財産の相続権」なためか、国の長はクリルタイで別に決めている。

登場人物

CVはテレビアニメ版。また、この項目ではファーティマ奥様との混同を避けるため、シタラ(ファーティマ)は基本的にシタラと表記する。

主要人物

・シタラ(ファーティマ)
CV:関根明良
主人公。モデルはドレゲネの側近だった実在の女性「ファーティマ・ハトゥン」*3。
もともとの名前は「シタラ」*4だが、モンゴル帝国に取り入って以降は「ファーティマ」を名乗るようになる。
Wikipediaにも史実のシタラことファーティマ・ハトゥンのページがあるのだが、見出しに特大ネタバレがあるので注意。
  • トゥース期(5歳〜13歳)
同じく奴隷だった母を亡くして天涯孤独の身となり、前の主人*5から奴隷商に売られる。この時から笑顔の賢さを評価されており、学者一家に売られた。
当初は逃げ出そうとしたが、ムハンマドの教えと屋敷の人々の支えにより勉学に励みながら働くことになる。
幸せな日々を過ごしていたが、13歳の時にモンゴル軍が侵攻。家族と「原論」を奪われ、捕虜となり他のペルシャ人たちともどもモンゴル本国へ連行されていく。
  • モンゴル期(13歳〜)
大切なものを奪ったモンゴルへの復讐を誓う。
奥様の名前「ファーティマ」を名乗り、「原論」などの本の翻訳解説として王族に接近し機会をうかがう。
同じく家族を失ったドレゲネと出会った後は、ドレゲネの侍女として仕えながら復讐の手駒を進めるようになる。
持ち前の知恵と笑顔を武器に、モンゴルに立ち向かっていく。とはいえまだ20代、より広い視野を持つ王族や年齢の高い相手には敵わないことが多い。
また、あまり先のことを考えず、その場の状況や感情で行動することがよくある。それにより予定と違う展開になることもしばしば。

・ドレゲネ
CV:小清水亜美
モンゴル帝国オゴタイの第六妃。ナイマン族出身でメルキト族のダイルに嫁いだ*6。メルキト族降伏後の反乱でダイルを亡くし、不本意ながらオゴタイの妻となりグユクを出産。
メルキト族を追いやったモンゴルを憎んでいる。特にダイルを葬ったオゴタイには殺意を剥き出しにしているが、オゴタイ含め周囲からはまるで相手にされていなかった。

ダイルの形見のジャダ石が何者かに盗まれたことでひどく取り乱し、ジャダ石を持っていたというシタラに当たる。
シタラは無実であったが、これにより同じく復讐の意志を持つシタラと出会い、侍女として迎え入れて復讐を計画する。

トゥースの人々


・ムハンマド
CV:齋藤潤
学者の家の子で、聡明な少年。
勉強を拒否したシタラに学ぶ大切さを説き、シタラにとっても大きな存在になる。
さらなる知恵と真理を求めて、ニーシャープール*7へ旅に出た。
しばらく手紙を送っていたが、ニーシャープールがモンゴル軍に襲撃された後の消息は不明。
シタラは亡くなったと考えているが、ナレーションでは「後に高名な学者になる」という解説があるので存命が示唆されている。

モデルは13世紀のイスラム世界を代表する数学者、天文学者のナスィールッディーン・トゥースィーと思われる。

・ファーティマ
CV:桑島法子
ムハンマドの母で、物語開始時点は学者だった夫を亡くしたばかりで喪中であり、新しい奴隷を購入しに出掛けてシタラとアニースを迎える。
心優しく、奴隷のシタラにも娘のように接する。夫の遺品である蔵書を大切にしている。
イスラム教の教義、誰にでも学ぶ権利があることを大切にしており、シタラに「原論」をはじめ様々な知識を教えた。いずれシタラの身分を解放し、ムハンマドの妻にしようと考えていた。
モンゴル軍が侵攻し「原論」を奪った時に、シタラを庇い死亡。

・伯父
CV:最上嗣生
ファーティマの兄にしてムハンマドの伯父。本名は不明。教師の資格を持ち、シタラや子供たちにクルアーンの読誦などを教えていた。
モンゴル侵攻の際に山に避難していたが、モンゴル軍に捕まり殺された。

・ズムッルド
CV:ニケライ・ファラナーゼ*8
屋敷に長く仕えている奴隷の女性。トゥースの辺りでは珍しい金髪で、海が見える西の国出身*9。ミハイルという弟がおり、トゥースの民軍に所属している。
モンゴル侵攻により長く仕えた屋敷の主人と弟を失い、一人で立てないほど衰弱し、死亡した。

・アニース
CV:伊瀬茉莉也
シタラと同じ時期に屋敷に仕えた奴隷の女性。掃除の達人。
モンゴル侵攻により屋敷のほとんどの人を失った後、モンゴル兵に掴みかかり斬り捨てられた*10。


モンゴル帝国


・チンギス・カン
CV:玉鷲一朗(モンゴル語)*11
おなじみモンゴル帝国初代皇帝。作中では後ろ姿で少し登場したのみ。
史実の人物については当該項目を参照。

トルイ家

・トルイ
CV:鈴木崚汰/雨果(モンゴル語)*12
チンギス・カンの第四皇子。
オッチギンとしてチンギス・カンの多くの資産を引継ぎ、帝国最大の軍事力を持つ。
政治や難しいことは分からず、基本的に他国を侵攻して領地を拡大することを一番に考えている。
愛する妻の要望により、「原論」を手に入れに学者の屋敷を訪れた。
敵に対しては容赦せず、シタラからすればファーティマ奥様と「原論」を奪った怨敵であるが、モンゴル側から見れば多くの兵士を指揮してあらゆる侵攻を成功させる武人であり、兵士からの信頼も厚い。ただ脳筋気味なところもあり、戦には才能を発揮するものの学問にはあまり興味がなく、兄であるオゴタイを慕ってはいるが彼の政策も理解できていない。

・ソルコクタニ
CV:久野美咲
トルイの正妃。ネストリウス派キリスト教の信者。夫とは非常に仲が良く、少女期*13に嫁いで以来の相思相愛。
彼女が「原論」を望んだからファーティマ奥様と「原論」が奪われたとこちらもシタラの怨敵。
しかし「原論」を求めたのは「草原より広いこの世界のことを知り、後世に伝える」という王族の務めの意識によるものである。
シタラに「原論」をの翻訳を頼む。
また、兄弟の権力争いを危惧する洞察力もあり、シタラを密偵として送り込む。

・モンケ
トルイとソルコクタニの長男。キプチャク*14遠征に参加。
ちなみに史実では後に、4代目のモンゴル皇帝となる。

・クビライ
CV:石橋陽彩
トルイとソルコクタニの次男。
史実では兄モンケの死後に5代目モンゴル皇帝にして中国王朝「元」の開祖となり、元寇で日本に攻めてきた「フビライ=ハーン」のことであるが、作中での登場は少なめ。

余談だが本作開始前の2025年には、元皇帝時代のフビライ・ハン(声:森山周一郎)が登場する昭和時代のアニメ『マルコ・ポーロの冒険』が再放送されていた。

・フレグ
CV:村瀬歩
トルイとソルコクタニの三男。容姿は一番母に似ていてωみたいな口と垂れ目をしており、アニメでは某クソアニメのような口の動きをする。
…なお史実では、成長後の遠征でペルシア地域やバグダード等旧イスラム国家圏の多くを統べ一時は十字軍をも慄かせ、「フレグ・ウルス(イル・ハン国)」開祖とされるようになる。
このため一部読者からは、「ファーティマはトルイ家に仕え続けるべきだったのでは」なんて感想も出ていたり…





オゴタイ家

・オゴタイ
CV:下野紘
皇帝チンギス・カンの第三皇子。思慮深く、穏やかで寛大な人物。モンゴルには末子相続の慣習があるが、チンギス・カンの遺言に従い三男でありながら次期皇帝になった。
モンゴルをより強固に誰でも幸せになるように、都市をつくる計画がある。一方で自分を嫌うドレゲネを特別視し、彼女のところに通ってはキレさせるのを繰り返すなど、女性の趣味に関しては特に真意の読みにくい行動をとることもある。

馬乳酒(アイラグ)を好み、かなりのシーンで飲んでいる。

・ボラクチン
CV:くじら
オゴタイの第一皇后(大カトゥン)。聡明で威厳がある。
元々はチンギスの妻だったが、レヴィレート婚*15*16よりオゴタイの妻になった。それもあってか王妃の中で年長で年も離れている。
帝国の未来のためにあちこちと手を回す底知れぬ女性。
シタラが出会った時は寝込むほど重いなんらかの病気を患っていたが…?

・キルギスタニ
CV:新谷真弓
オゴタイの第三妃。とても小柄で、騒いだりオゴタイに甘えたりなど感情の起伏が激しい。息子のコデンを溺愛しているが暴走気味なので息子には迷惑がられている。

・モゲ
CV:朝井彩加
オゴタイの第四妃。チンギスの妻だった頃からボラクチンと仲が良く彼女を深く慕っている。
無邪気で素直な性格で愛嬌のある人物。
「頭は悪いが相手が嘘をついているかどうかは分かる」と自負しており、実際、変わっていく帝国のきな臭さを感じ取っていた。

・ドレゲネ
オゴタイの第六妃。詳細は上記参照

・グユク
CV:花江夏樹
オゴタイとドレゲネの息子。
周囲の人の言動に敏感で、気分に波がある繊細な性格。ひどい時は初対面の相手に怯えて隠れるほど。
信用しているのは養育係のカダクと妻のオグルガイミシュ、のちに知り合うコルゲンくらい。
しかし必要な時は表立って行動する。キプチャク遠征に参加。
ちなみにドレゲネは息子の彼のことを溺愛している。

そして史実では、紆余曲折の末に彼が父の後を継ぎモンゴル皇帝となるも、没後にいとこモンケへと皇位が渡ってしまうのだが…。


・コデン
CV; 丹羽哲士
オゴタイの次男で、キルギスタニとの子。クチュのことは信頼しているが、グユクのことは軽侮している。暴走気味の母に手を焼いている。クチュと別動隊で南宋攻略に向かう。

・クチュ
CV:山本隼
オゴタイの三男。ボラクチンからオゴタイの後継者候補として推薦されていたが、ある出来事からボラクチンに不信感を持っており、ボラクチンが敵視しているドレゲネに協力を求めるなど独自に動く。
次期皇帝としての意欲はあり、遠征などでも味方を増やす活動を欠かさず、勢力を増やしていった。

南宋攻略の司令官に任じられ順調に進軍していたが…?

・コルゲン
チンギス・カンとクランとの間に生まれた庶子。気さくな性格で、グユクと親しくできる人物。グユクと共にキプチャク遠征に参加。
ダイルの血を引くためか霊感があるようで、夢の中である部族の夢を見るようになる。

・オグルガイミシュ
グユクの妃。グユクが心を開く数少ない人物。同じメルキト族の出身としてドレゲネのことも信頼している。

チャガタイ家

・チャガタイ
CV:浪川大輔
皇帝チンギス・カンの第二皇子。四兄弟の次男。
法令の徹底につとめ、他地域の習慣や文化を厳しく取り締まった。これは奴隷や民を守るためという優しい一面もある。
オゴタイからも信頼されている。

ジュチ家

・ジュチ
CV:野島健児
第一皇子。四兄弟の長男。控えめで大人しい人物。父チンギス・カンより先に死去する。

・オルダ
CV:佐藤正幸
ジュチの長男。キプチャク遠征に参加。

・バトゥ
CV:堀金蒼平
ジュチの次男。キプチャク遠征の総司令官を務める。
史実ではキプチャクとその先のルーシ*17を占領して「ジョチ・ウルス(キプチャク・ハン国)」開祖となり、更にその先のポーランドやハンガリーにまで侵攻してヨーロッパを恐怖のドン底に叩き落とした。


テムゲ家

・テムゲ
CV:川田紳司
チンギスの末弟。各ウルス*18の損得を意識して帝国での生き残りを図る。
息子の名前を毎回間違える。これは史実の彼に80人の息子がいたことに由来する。

・オタイ
CV:内田修一
テムゲの息子。いつも名前を間違えられる人。

その他モンゴルの人々

・シラ
CV:入野自由
サマルカンド(現在のウズベキスタン)人の少年。街が侵略を受けた事で*19モンゴル帝国の捕虜になった。
しかし捕虜となってもめげず、トルイに取り入り通訳として生き残るしたたかさを持つ。
ただ異国の人々との会話は出来ても、文字(恐らくイスラム教圏で学問書等に使われるアラビア文字)の読み書きは簡単なのしか出来ないため、「学者の娘」らしきシタラに出世のチャンスと「原論」を取り戻すことを持ちかけた。それ以来シタラとは旧知の仲。
主にシタラとソルコクタニの仲介を行う。ちなみに成長後はターバンを被るようになっている。
ただシラはあくまで帝国での出世を目標にしており、シタラの活動より自分優先で動く。

・チンカイ
CV:上田燿司
ウイグル人の穏やかな男性。元・行商人で現在はモンゴル帝国の書記官を務めている。モンゴル人の多くが書類仕事を軽視して文字を覚えておらず*20、書記官が足りないことを不満に思っている。

・カダク
CV:沼田祐介
ドレゲネの従者。ナイマン族出身。
実際の主人はグユク。傅役(皇帝の子女の教育係)として幼少期から関わりがある。
帝国に非協力的なドレゲネ、不審な行動を繰り返すシタラ、気分に波があるグユクと、様々な難のある人を相手にする苦労人。

・シギ・クトク
CV:こばたけまさふみ
断事官(ジャルグチ)という裁判や領地分配を担当する役職に務める官僚。南宋遠征では副将を務める。

・スベエデイ・バートル
CV:佐久間元輝
チンギス・カンの代から帝国に仕える大将軍。金国攻略やキプチャク遠征などに参加。

・イルケ
CV;間宮康弘
オゴタイに仕える将軍にして筆頭家臣。幼少期からの傅役でもある。

・コルグズ
チンカイと同じウイグル人の書記官。ペルシア総督府長官。意識高い系ビジネスマンのようにカタカナ語を多用する。前ペルシア総督のチン・テムル将軍の死後、新たな総督に任ぜられた。しかし高圧的な性格や施策で、敵は多い。

・イルチダイ
CV: 中谷一博
イルケの息子。オゴタイのケシク*21に任じられる。守りたい人(CV:並木さくら)がいる。

・アルグン
CV:橘龍丸
オイラト族の青年。オゴタイの配下のイルケの奴隷だったがイルケの依頼・推薦でケシクテン*22になった。
木々や星などの数を数えることが好きで、無心で取り組むことができる。同様に書類仕事なども得意でミスがない。
真面目で才能があるが、自分の意志がほとんどなく、命令に従うだけだった。
ある命令に失敗して途方に暮れているところをドレゲネに拾われ、密偵として働く事になる。

・女奴隷
CV:土屋李央
オイラト族の奴隷の赤髪の娘。ボラクチンに仕えている。名前は不明。
天幕を間違えたり物を落としそうになったりなどあまり要領が良くない様子。

アルグンとは同じ部族出身ということで仲が良く、アルグンが奴隷から解放されケシクテンになることを素直に喜んだ。
そしてアルグンから務めを終えたら一緒に故郷に帰ることを持ちかけられ、喜んで約束するが…


メルキト族

モンゴル高原北部から東南シベリアにかけての地域にいた遊牧民。ドレゲネが嫁いだ地。チンギス・カンの妻ボルテを拉致するなど、モンゴルとは長らくいざこざが続いていたが、徐々に劣勢となり降伏した。

・ダイル・ウスン
CV:石田彰
メルキト族長の一人。ドレゲネの前の夫。
精霊と対話できる巫者(カム)でもある。
対モンゴル同盟のためにドレゲネを妻として迎えいれた。親子ほど歳が離れていることや遠征などでなかなか妻と関われないことを申し訳なく思っている。
精霊の言葉を聞き、娘のクランをチンギス・カンに捧げてモンゴルに降伏する苦渋の決断を下す。
降伏後、ドレゲネにジャダ石を渡す。

反乱を起こすがオゴタイに討たれ、鎮圧された。

・クラン
CV:水瀬いのり
ダイルの娘。
明るく無邪気な性格。ドレゲネともすぐに打ち解け、彼女に生きる喜びを感じさせた。

チンギス・カンに捧げると告げられても一切戸惑わず、一族を守る存在になることを誇りに思う芯の強さを見せる。
チンギス・カンに嫁いだ後は打って変わって物憂げで落ち着いた様子になる。

チンギス・カン死後はオゴタイに引き取られ再婚。
ドレゲネのためにある行動に出る。

・クルトガン
CV:千葉翔也
弓の名手(メルゲン)と呼ばれる少年。
クランと幼馴染。クランと一緒にドレゲネと交流を深める。
クルトガン含め一部のメルキト族は降伏に従わず抵抗を続けていたが、モンゴル軍に捕らえられて殺された。
公式副読本『もっと!天幕のジャードゥーガル』収録の短編では、クランとドレゲネの無事を願いながら敗北後に逃走を図るが、モンゴル側に捕縛され…。

余談

  • モンゴルについて書かれた歴史書は主に4つある。
『集史』
14世紀初頭にイルハン国の宰相ラシード・アッディーンが編纂した歴史書で、現存する中で最古の世界史の書とされる。

『元史』
中国・明の国家事業として、李善長、朱濂、玉障が中心となって編集し、1370年に完成した歴史書。

『世界征服者の歴史』
トルイの息子フレグに仕えたアラーウッディーン・アターマリク・ジュヴァイニーが、13世紀半ばに書いた歴史書。

『モンゴル秘史』
モンゴル人が自らの言葉で記した最古の歴史書。文学的要素を多く含む。

それぞれの歴史書で記述の違いがある。本作では歴史書の中からストーリー展開に合うものを採用、または歴史書を踏まえてオリジナルの展開になっている。

  • web漫画サイト「Souffle」でモンゴル国立大学研究員の谷川春菜先生によるコラム「もっと!天幕のジャードゥーガル」が掲載されている。
    モンゴルの文化や仕組みについてとても詳しく解説されている。
    2026年7月に追記修正されたコラムと描き下ろし漫画を収録し副読本として刊行された。

  • もともとはドレゲネを主人公にする予定だった。しかし自由に動けて、モンゴルの文化を外部から見れる存在がよいと考え、ペルシア出身のファーティマ・ハトゥンに奴隷出身という出自を加えて主人公になった。
    また、掲載誌が女性誌でなかったらアルグンが主人公だったとも語っている。


追記修正して賢くなれば、どんなに困ったことが起きたって、何をすれば一番いいかわかるんだ。
それは絶対に悪いことじゃない。

この項目が面白かったなら……\私の本を返して/

最終更新:2026年10月06日 14:01

*1 21世紀現在はマシュハドの近くにある遺跡のみが遺されている。

*2 男性は職人や医師、子供以外は殺される可能性が高い

*3 「ハトゥン」という言葉自体は主にモンゴル語では「王族の后たち」や「既婚女性」に付く代名詞であり、彼女の名字ではない。

*4 「星」という意味。当時のイスラム圏の女性奴隷は花や宝石などの煌びやかな名前を付けられるのが普通であり、作中でも「シタラ」が当時の価値観ではいかにも奴隷らしい名前という旨が言及されている。

*5 この主人が彼女の実父である可能性は読者からも考察されているが作中では不明。とはいえ奴隷に産ませた子は実父に認知や身分解放する気が無ければそのまま奴隷としてしか扱われない

*6 作者によると設定上は14歳の時

*7 現在のイラン北東部にある都市。トゥースから西南西に約70km行った箇所にある

*8 ちなみに日本で生まれ育った2世ではあるがイラン人である。現在は日本国籍を取得している。

*9 金髪碧眼かつ弟の名前などから、黒海の沿岸(現ウクライナ〜ロシア南部辺り)出身のスラヴ系と読者からは推測されている。

*10 イスラム教の教えでは「自殺」が禁止されており、シタラは彼女の最期を「モンゴルよりもあの屋敷の奴隷でいる事を選んだ」…つまり間接的に死に急いだと解釈している。

*11 声優や俳優ではなく、モンゴル出身(帰化しており国籍は日本)の現役力士。余談だがアニメが放送されていた令和八年七月場所と九月場所で好成績を残し、史上最年長での再入幕を達成している。

*12 モンゴル出身のモデル・俳優

*13 作者によれば双方が12歳の時の結婚

*14 現在のカザフスタンからロシア南部、ウクライナ一帯にかけての広大な草原地帯。当時はキプチャク人というテュルク系の遊牧民が住んでいた。

*15 夫の死後、義理の息子に嫁ぐ制度

*16 なお史実ではレヴィレート婚ではなく、チンギス存命中に結婚したされている

*17 現在のロシア西部地域にして後のロシアの原型。当時は多数の小国や都市国家に分かれていた。

*18 「国」と表記されることもある。ひとりのリーダーの元に組織された人の集団のこと。チンギス・カンの下のモンゴル帝国の民全体も、〇〇家という括りの領民もウルスと呼ばれていた。

*19 史実でのサマルカンドは当時のペルシア地域を支配する「ホラズム・シャー朝」の首都となっており、ホラズム・シャー朝がモンゴルとの戦争に突入した際、当時の王が態勢立て直しを図ろうとして首都からも撤退してしまっていた。

*20 史実でも「ウイグル人が侵略に来たモンゴル族に文字の必要性を教えた」という記載があり、また欧州へ送る文書では本文にペルシア文字を使用。後にモンゴル族はウイグル文字を応用・改造する事で自分達の「モンゴル文字」を手にしている

*21 当直係。主にモンゴルの貴族や有力部族の子弟、支配国の王族などから選抜され、皇族の身の回りの世話や警護を担当する。

*22 当直(ケシク)をする人