アットウィキロゴ

史上最低の戦闘シーン

登録日:2026/03/08 Sun 18:56:05
更新日:2026/04/07 Tue 20:28:12
所要時間:約 10 分で読めます





航星日誌、宇宙暦 0401.7148、宇宙の侵略者を追跡中、エンタープライズ号は突如謎の力によって全てのエネルギーを奪い去られてしまい、私はある小惑星に転送されて、敵船の船長と顔を合わせることになった。
何の武器も持たず、メトロンがゴーンと呼んだ怪獣と対決しなければならないのだ。

怪獣を見たとき、私は爬虫類に抱くような激しい悪寒を覚えた。
だが、これは非常に知能の発達した生物なのだ。それを忘れてはならない。
私にとって、危険な恐るべき相手である。


史上最低の戦闘シーン」とは、アメリカ合衆国の人気SFテレビドラマ『スタートレックシリーズ』の第一作『宇宙大作戦』、シーズン1の第18話*1怪獣ゴーンとの対決*2でのとある戦闘シーンのことをさすインターネットミーム。


戦闘シーンに至るまでのあらまし

惑星連邦の宇宙船エンタープライズ号は辺境の前哨基地からの要請で現地に向かっていた。
カーク船長、スポック副長、マッコイ船医は基地を訪れると基地は滅茶苦茶に破壊されていた。
さらに姿の見えない何者かの攻撃を受ける。

エンタープライズ号は宇宙船で逃げ出した正体のわからない敵をどこまでも追いかけ、未知の宇宙域に入っていくが途中で何者かのスキャンを受ける。
すると追いかけていた宇宙船もエンタープライズ号もいきなり停止状態になり、さらに「メトロン」を名乗る人物から無線で呼びかけられる。

メトロンはエンタープライズ号とエンタープライズ号が追跡していた宇宙人「ゴーン人」の宇宙船に対して、自分たちの領域に侵入したことを咎め、戦いの場にふさわしい呼吸に適した大気を持ち武器が用意された惑星を与えるので、そこでお互いの船長同士で一対一で戦うことを要求してきた。
勝った方は解放するが負けた方は宇宙平和のために宇宙船と乗組員ごと抹殺されると付け加えて。
しかも、持ち込める装備はメトロンが用意した翻訳機のみ

その直後カーク船長はエンタープライズ号のブリッジから消失し、気がつくと知らない荒野で不気味な緑色の爬虫類のような異星人…ゴーン人と向かい合っていた。
辺りを見ても岩だらけの荒野で、岩山の露頭を見ると透明な結晶や黄色い鉱床などが目につくが武器らしきものは見当たらない。
こうしてカークとゴーン人の知能対知能、暴力対暴力の一対一の対決が始まった。

解説

このシーンは以下の要素で有名である。

  • ゴーン人の造形がチープ*3
  • お互いに動きがスロー。特に相手のゴーン人が(そういう設定描写とは言え)おそろしく動きがゆっくり。
  • アクションのレベルが低い。スピードの遅さも合わさってものすごくもたもたして見える。
  • ペチペチとしか言いようのない迫力のない効果音。
  • ゴーン人に組みつかれているシーンもじゃれ合っているようにしか見えない
  • ちょっと取っ組み合いをしたかと思うとすぐに逃げ出して岩を投げつけるカーク船長。当たった岩も全然効いているように見えない上に、直後により大きな岩を投げ返されてまた、どこかへ遁走する
  • というか、大きな岩を投げられるなら最初の取っ組み合いでカークも同じように投げ飛ばすことができたのではというツッコミどころ。

一応「動きは鈍いが頑丈で怪力の持ち主」というゴーン人の特徴が視聴者にわかりやすく示されているほか、結末まで観た後で見返すとその後の展開の伏線が示されている(特にカークたちの背後の岩の断層の中に見えるものと、ゴーン人が胸に当たった岩を跳ね返すシーン)のだが、取っ組みあいのシーンだけ抜き取られてインターネットで転載された結果、『史上最低の戦闘シーン』として有名になってしまった。
ニコニコ動画でも該当シーンを使用したMAD動画が多数制作・投稿されたが現在は多くが権利者削除されている。


ゴーン人

『怪獣ゴーンとの対決』が初登場となる異星人。綴りはGornで某レバノン人(Ghosn)とは綴りも発音も異なる。
セスタス3号星にある惑星連邦の前哨基地を突如襲撃、壊滅させた。
その理由は劇中後半で明かされる。

外見は人型の爬虫類で、肌は固く緑色。動きは非常にゆっくりだがとんでもない怪力と頑丈な体の持ち主。
基本的に特殊メイクですませることが多いスタートレックの宇宙人の中では珍しくきぐるみ。

体の動きがのろいことから一見すると愚鈍そうな印象で、カーク船長も例の戦闘シーンの直後に「知能は低そう」とコメントしていたが実際には頭の回転は速いらしく、その後にカーク船長も思わぬしっぺがえしを喰らっていた。

日本語吹き替え版での声は加藤精三が担当。なお日本語吹き替え版での一人称は“俺”。

『怪獣ゴーンとの対決』以降は宇宙大作戦放送終了直後に製作されたアニメ版の『まんが宇宙大作戦』にちらっと登場しただけで以降はろくに登場していなかったが2000年代に『スタートレック エンタープライズ』にて鏡像宇宙(並行宇宙)が舞台のエピソード(『暗黒の地球帝国』)に登場。
もっともその外見はほとんど恐竜のヴェロキラプトルそのまんまで動きも俊敏で『怪獣ゴーンとの対決』に出てくるそれとは大きく異なっていた(全てがあべこべになった並行宇宙が舞台のエピソードだったのでプライムタイムラインの正史のそれとは違っていてもおかしくはないのだが)。

その後2009年の映画『スタートレック』に登場する予定で実際にスーツも作られ撮影されたが本編ではカットされ、予告編などで僅かに確認できるだけである。なおその外見は過去のどれとも大きく異なっていた。

2013年にはリブート版スタートレックの世界を舞台としたゲーム『スタートレック』に敵として登場。
このゲームでは上記の没シーンのそれではなく初代に近い外見で描かれる。
なお同作のCMではかつてカーク船長を演じたウィリアム・シャトナーとゴーン人が仲良くゲームをプレイ、その後喧嘩を始めて史上最低の戦闘シーンを再演するオールドファンには爆笑物のCMとなっていた。

その後に製作された『スタートレック ディスカバリー』や『スタートレック ピカード』ではそれぞれ骨格標本が登場するが今度は初代のそれと同じ外見であり、さらに『ローワーデッキ』と『ストレンジ・ニュー・ワールド』では遂に本体が登場する。
『ローワーデッキ』では家庭的な一面が描かれる一方『ストレンジ・ニュー・ワールド』では対策の確立されていない強烈な敵として宇宙艦隊に立ちはだかり、驚くべき生態が明らかにされていく。*4

なお宇宙大作戦のED映像で毎回登場していた。

『怪獣ゴーンとの対決』

『宇宙大作戦』、シーズン1の第18話(日本での初放映では第12話)。
原案は撮影開始直前に上がって来た脚本を読んだスタッフが話が似ていることに気づいて慌てて作者に連絡を取って承諾を得てクレジットされたフレドリック・ブラウンの『闘技場』。

なおこのエピソード自体は『スタートレック』のベストエピソードを選ぶアンケートや批評では毎回かなりの確率でベスト10入りする他、例の戦闘シーンに加えて登場してすぐ死ぬ赤服の保安部員、上から目線で人類に難題をふっかけてくる神のような宇宙人、そして最後のオチなどシリーズにおけるあるあるネタが豊富で人気が高い。
また惑星連邦や光子魚雷などのシリーズにおける重要語句は本作で初めて登場する他、メトロン人は後の『新スタートレック』以降の作品でレギュラーキャラとなる「Q」のプロトタイプになったとされており、シリーズを語る上で重要な回となっている。

カーク船長役のウィリアム・シャトナーはこの回の収録中、爆発シーンの撮影時に爆発のショックで片耳が難聴になっている。

例の戦闘シーンが撮影されたのはカリフォルニア州ロサンゼルス近くのヴァスケス・ロックス (Vasquez Rocks)。ハリウッドから50kmも離れていないため映画やテレビドラマやミュージックビデオの撮影で多用され、アメリカ人にとっては「例の採石場」ならぬ「例の岩場」として知名度のある場所であり、アニメ作品の『フォーチュラマ』や『シュレック』でパロディとして登場する他、wikipedia英語版に『ヴァスケス・ロックスをロケ地として撮影した作品のリスト』という記事があるほど。

スタートレックシリーズでもこの回以降何度も撮影に使用され、『スタートレック ピカード』ではとうとう登場人物が劇中で作中世界のヴァスケス・ロックス公園を訪れるシーンまで登場した。

このほかに『闘技場』にインスパイアされたと言われている作品には、テレビシリーズ『アウター・リミッツ』第27話「宇宙の決闘」と藤子・F・不二雄のSF短編漫画『ひとりぼっちの宇宙戦争』がある。

ディスカバリーチャンネルの番組「怪しい伝説」では、作中に登場する「武器」が実現可能か実験を行った事がある他、映画『宇宙人ポール』にはヴァスケス・ロックスを訪れた登場人物が史上最低の戦闘シーンごっこに興ずるシーンがある。

スタートレックシリーズ最新作の『ストレンジ・ニューワールド』のシーズン2においてゴーン人が登場するエピソードでは『怪獣ゴーンとの対決』での戦闘シーンがセルフパロディされた他、シーズン3には『怪獣ゴーンとの対決』のリメイク兼前日譚エピソードが制作され、ゴーン人のほか、半世紀以上ぶりにメトロン人が再登場した。

余談

しばしば「映画史上最低の戦闘シーン」と紹介されることがあるが、上述の通りテレビドラマの1シーンである。

男がやたら長い断末魔をあげて死ぬミームの方は「映画史上最悪の死亡シーン」なので混同しないよう注意。
というかあちらは「Kareteci Kiz」という1973年にトルコで公開された映画のワンシーンなのでスタートレックとは一ミリも関係無かったりする。

千年後までに追記・修正お願いします。


この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2026年04月07日 20:28

*1 日本での初放映では第12話

*2 原題:“Arena” 闘技場の意味

*3 ただし、同時期に放送されていた他番組などと比べるとむしろよく出来ており、あくまで現代視点であることは注意

*4 この扱いの差は『ストレンジ・ニュー・ワールド』がシリアス路線な一方『ローワーデッキ』に強烈なギャグ補正がかかっているということもあるが、それぞれの時代設定において宇宙艦隊がゴーン人と和解する前と後であるということも影響している。例の戦闘シーンこそネタの1つではあるが、ゴーン人という設定自体は「未知の恐怖で宿敵」という偏見をどう乗り越えていくかというテーマを見せる役割も担っていると言える