G O K U S A I
登録日:2026/04/15 Wed 22:39:53
更新日:2026/07/27 Mon 17:30:38
所要時間:約 14 分で読めます
『GOKUSAI』とは、
猿渡哲也による漫画作品。
2012年~2013年まで週刊『ヤングジャンプ』に掲載された。
単行本は全4巻。
【概要】
美術・絵画に焦点を当てたアート漫画であり、「絵を描くこと」に真摯に向き合う人々の活躍を描く。
それを通して「人は何故絵を描くのか」「絵を描くとは何か」を読者にも問うような作風が特徴。
本作品では作中で解説のある絵画の技法や、
アスキーアートのような一風変わった作画が度々用いられており、猿先生の高い作画能力が遺憾無く発揮されている。
ライブ感やヤクザを始めとしたいつもの猿渡作品特有の癖はあるものの、全4巻という読みやすさや読後感の良さから、熱心なファンからは『
ロックアップ』と並び猿渡作品の入門としても薦められている。
同作者の『
タフ・シリーズ』のキャラクターが絵画という形でこっそりカメオ出演している。
どのキャラクターがどこに登場しているかは自分の目で確かめてみよう。
【登場人物】
○空波 丈
「死んでから売れたゴッホになんかなりたくねぇ 俺は生きてる間にトラック一杯の金を稼ぐアーティストになるんだ」
「絵を描く才能って神サマから与えられた能力の中で最上のものなんだぞ」
「何もない所から「美」を創り出すなんてこれ以上すげぇ能力はねぇだろ」
主人公。通称“ジョー”。
マリモのような天然パーマに絵の具で汚れたツナギを着ている。
普段は廃バスを改造した家に住み、路上で描いた絵を売っている。
類まれな絵描きの才能を持ち、母親の龍子の度を超えた英才教育と、師であるタマ婆の手解きによって様々な技能を身につけた。
その過程で絵を観る能力も身につけており、他者の才能や絵の本質を見抜くことにも長けている。
単純な絵画の技能以外にも特異な能力を持ち、見たものの映像を鮮明に記憶することや絵をなぞって作家の感情を読み取ることが可能。
そしてこれらの能力を変なクスリと催眠で極限まで無理矢理引き出すことで、作家本人を肉体に憑依させて絵を描くという異能じみた芸当をも可能にする。
この能力によって描いた贋作は何人ものプロの鑑定士ですら見抜くことができないほど精巧だが、
作家の狂気に囚われて精神を壊す危険性もあり、その影響で少年時代の記憶が抜け落ちている時期がある。
この贋作によって一般人にも知られるほどの大騒動を引き起こし、世界中の美術界で“空波 丈”の名がブラック・リストに載ってしまった。
ピカソという名の犬を飼っている。
名前の由来は画家のカラヴァッジオ。
○由冬 リロ
(いつも暗くて深い海の中でもがいてるようだった 息をするのも辛くて苦しくて…死ぬことばかり考えていた)
美大生。半分だけ赤く染めたツートンカラーの髪が特徴的。
本作のヒロインにしてもう一人の主人公であり、作中では彼女のモノローグが随所に挟まれる。
絵描きとしての自信が持てず、他者の作品を見て劣等感を感じるなど自分を卑下しやすい傾向にある。
また、親友と父親がデキてしまい家庭が崩壊した悲しい過去があり、これらの負の感情が彼女の描く独特な絵画に反映されている。
しかし彼女独自の才能とセンスを見抜き、作品だけでなく彼女自身も肯定してくれるジョーに次第に惹かれていく。
最終的に秘められた才能が世界に認められて作中の誰よりも大成し、本編から約100年後の時代では21世紀最高のアーティストの一人に選ばれ、彼女の描いた絵には200億ユーロの値が付くなど、名実ともに一流のアーティストとなった。
ちなみに酒癖がメチャクチャ悪い。
名前の由来はユトリロ。
○加門 礼
(ボクは恵まれている それが許せない 自分の力で這い上がっていきたい)
個展が開催されれば大盛況、画集も数多く販売されているプロの画家。
ひょんなことからジョーとリロに出会い、彼らと友人になる。
繊細な風景画を得意としており、多くの人々から天才画家として能力を高く評価されている。
その一方で、彼の描く絵は「万人受けするつまらない絵」とも評され、本人もスランプ気味で自分の現状に満足していない。
そんな自分から一皮剥けるため、初心に帰って天心画塾の入塾試験に赴く。
名前の由来は鴨居玲。
○北大路 タマ
「命がけだから新たな命を生むことができるんです」
「創造とはこの世で最も厳粛で崇高な行為なのです」
ジョーとお龍の師である老婆。
かつて精神を壊したジョーのセラピストを担っていたのが彼女であり、その時に書から日本画、油彩画まで筆の技術を徹底的に叩き込んだ。
約50年前に使用人だった男が突如錯乱し彼女の両親を惨殺、彼女も両腕を切断されるという悲しい過去があり、口筆で書や絵を描く。
その技術は常軌を逸しており、口筆で米粒に般若心経を書き、描かれた対象物の生気を吸い取って魂が吹き込まれるほど精密を超えた精密な絵を描く。
命を捨てる覚悟で絵を描くという意思を持っており、常に死装束を着ている。
○空波 龍子
「ジョーと私は一卵性親子みたいなもの しっかり覚醒させるのが私の務めさ」
ジョーの母。通称“お龍”または“ドラゴン・ママ”。
刺激的でファンタスティックな“アートな生き方”にこだわりを持つ。
自ら潰して失明した右目に眼帯を付け、龍の紋様が描かれた着物を着ている。
息子の絵を描く才能を見出し、傍から見れば“虐待”にしか思えないような英才教育を施す。
その一環として精神が崩壊するほどにジョーの特異能力を用いて贋作を描かせていた。
その最終目的は自分の絵の師であったタマ婆の般若心経の絵を超える作品を生み出すこと。
夫に関しては作中で一切触れられず完全に不明。
元AV女優で現役の頃はそこそこ有名だったらしい。
そしてビデオを見てしまったジョーに深いトラウマを刻んだ。
○京楽 愛一郎
「悪いねェ 私は目が見えないんだよ」
装飾の施された仕込み杖を携えている盲目の極道。今作のヤクザ枠
美大出身で裏社会では“アートの愛ちゃん”と呼ばれるほど芸術品には造詣が深い。
盲目であるが、直接絵に触れることで視覚でなく触覚で絵を観る能力があり、その審美眼は確かなもの。
お龍とムンクの紹介でジョーの能力に目を付け、お龍と結託してジョーにとあるビッグ・ビジネスを手伝わせる。
ちなみにヤクザ枠だからなのか、一時期使用された本作のweb広告にも登場していた。
○江戸 春人
「ジョオ~ 俺がヘタ打ったせいですまねぇなぁ」
お龍の小間使いでジョーの友人。
通称“ムンク”。
お調子者の小悪党で、警視総監の家にオレオレ詐欺を仕掛けてパクられそうになるなど、ジョーも呆れるようなことを度々やらかしている。
○ピエール・ロブション
「私が興味あるのは絵画だけだ」
ブラック・オークションに属する鑑定人。
役職に見合わない屈強な体躯の中年男性。
芸術品を見る目は超一流であり、真贋を見極めることはもちろん、常人ではX線検査にかけなければ認識できないような隠された下絵をも見抜くことが可能。
その卓越した能力から“神の目を持つ鑑定人”と呼ばれている。
アート無しには生きられない者の一人と自ら称するほど芸術を愛しており、非合法であってもブラック・オークションでの鑑定人の仕事に誇りを持っている。
ジョーの才能に心底惚れ込み、天心画塾への入塾を提案する。
顔のモデルは映画『ノー・カントリー』のハビエル・バルデム演じるアントン・シガーらしい。
○三木 蘭次郎
「本能に直接訴えかけるもの “男を勃たせ女は濡れる”ような絵ですね」
大規模展覧会で入賞経験があるプロ・アーティスト。
加門のことを尊敬しており、彼を追って天心画塾の入塾試験を受験しに来た。
機械化した男性器を描く「メカ・ディック」シリーズを手掛ける。
男性器に固執する理由は本人曰く「愛憎です」とのこと。
また、自身の目指す究極のアートを訊ねられた際は上記のように答え、ジョーからエロ王子呼ばわりされた。
名前の由来はミケランジェロ。
○蓮部 乱人
「人を驚かせ楽しませるんだ 快感だぜ」
両腕を覆うようなゴリゴリのタトゥーにプロレスラーのような体格をした強面の大男。
新進気鋭のアーティストで、天心画塾の入塾試験を受験しに来た。
彼の力強い
ダギングやストリート・アートは“パワー・アート”と呼ばれる。
“絵で世界征服”を究極の目標と考え、見た人が驚嘆して平伏すような絵を目指している。
見た目通りに荒っぽい性格らしく、彼の人生は酒を飲んで喧嘩をしているか絵を描いているかのどちらかしかないとのこと。
一方でジョーたちとフレスコ画の課題に挑んだ時は快く協力し、互いのアート観の話題でも盛り上がり、ジョーから聞かされた龍子の悪辣さに反発するような面もある。
名前の由来はレンブラント。
○宮崎 ハヤヲ
「アニメ風の美少女 しかもエロいのがいい」
天心画塾の受験生の一人。今作の実在人物愚弄枠
汗っかきで暇があればスマホをいじり、ソシャゲばかりしている。
また、入塾試験で描く絵を萌えキャラにしようと提案するなど、かなり高レベルのヲタク。
試験中に他の受験生を惑わせるような発言をするセコい一面もある。
○江留 昏子
天心画塾の受験生の一人。中性的な美人。
物静かでジョーたちの前では一言も喋らず、作中では台詞が全くない。
しかし加門の絵に驚いたり、試験を突破した際には微笑んでいたりと、無感情なわけではない模様。
名前の由来はエル・グレコ。
○上由 五郎
「何者だ あいつ?」
天心画塾の受験生の一人。馬のマスクを常に被っているため素顔は不明。
食事はマスクを少しだけ上げて口だけ露出させて摂る。
名前の由来はカミーユ・コロー。
○己土 美江
「ふんっ」
天心画塾の受験生の一人。ゴスロリ風の服装をした肥満体の女性。
プロのイラストレーターであり、同人誌も描いている。
見た目通りの大食いで朝からドカ盛りの食事をブタのように食べる。
名前の由来はオノレ・ドーミエ。
○アルゴス講師
「すべては“デッサン”から始まる」
天心画塾“十哲人”の一人で“黒仮面”と呼ばれる男。
黒い仮面に黒いマントと頭から足先まで黒一色の装いをしている。
細部にこだわった者こそ作品の本質を決定するというポリシーを持つ。
天心画塾の第一の試験の審査を行い、受験生の才能の有無を見極める役割を担っている。
○テミス講師
「あなたちょっとうるさいです 退場ッ」
「みなさんも苦しんで いい作品を作ってください」
アルゴスと同じく“十哲人”の一人で“白仮面”と呼ばれる。
白いピエロのような仮面と様相をしている。
口調は丁寧だが人を喰ったような性格をしており、常に飄々とした態度で受験生に接する。
踊りながら喋るという謎の癖がある。
見た目や言動がまるでデス・ゲームのゲーム・マスターのようだと評判。
○死神塾長
「人生は常に選択の連続です」
天心画塾の塾長。
“死神”の綽名通り不気味な骸骨の仮面に黒いフードとマントを身に着けている。
“破壊なくして創造なし”を基本理念とし、塾生が全身全霊で作りあげた作品をいとも簡単に破壊することも厭わない。
正体は遠隔操作されたロボット。
しかし操作している「本体」が何者なのかは一切不明。
一部読者からは猿先生がメカを描きたくなってしまったので、思いつきでロボットにされたのではないかと邪推されている。
最終回で明かされた天心画塾の出資者の正体や、ジョーのことを何故かよく知っていたことから「本体」はピエールと推測できるが断言はされていない
【作中用語】
○ブラック・オークション
4年に1度開催される裏社会のオークションと、そのオークションを運営する組織。
オークションでは盗難品や曰く付きの美術品の専門に扱っている。
“アート”というワードで表裏問わず世界中の組織や権力者と太いパイプで繋がっており、その気になればヤクザやマフィアを組織ごと消せるほどの力を持っている。
オークションの参加者は会員制で、厳しい審査を通った者にのみカタログが配布されて入札を許される。
「ブラック・オークションの組織力を以てすれば、この世のあらゆる美術品を手に入れることができる」と言われており、名作と呼ばれる美術品がコンスタントに出品されている他、会員の欲しい作品のリクエストにも応じているらしい。
過去には
ダヴィンチのモナ・リザが
出品されたこともあるとのこと。
美術品の出所は問わない一方で、絶対に守らなければならない鉄の掟があり、贋作の出品は禁止とされている。
美術品の真贋は組織が擁する鑑定人によって行われ、万が一オークションに出品予定の美術品の奪取を企てるような者がいれば強行手段で抹殺にかかる。
○天心画塾
日本某所にある、美術の研究や人材の育成を目的とした私塾。
“天心十哲人”と呼ばれる講師たちの独自の指導によって塾生の能力を向上させる。
しかし指導といってもただ技術を教えるわけではなく、斬新・奇抜な指導と困難な課題によって塾生を肉体的・精神的に追い込み、秘められた才能を開花させることを主目的としている。
そのやり方は苛烈を極め、天心画塾で挫折した者は二度と筆を持つことがないと噂されている。
また、講師を務める十哲人はオークショニア、ギャラリスト、美術館の学芸員、美大の講師などアート界の要職に就いており、正体を明かせないため常に仮面を着けている。
講師以外にも反抗的な塾生・受験生を排除するための屈強なガードマンがいる。
この塾で優秀な成績を修めた者は、様々な界隈から一流アーティストとして招聘されるほどの待遇を得られるという。
実はブラック・オークションがバックについており、運営も担っている。
前述した死神塾長の本体も、天心画塾の運営にリソースを割いていたとされているピエールだったのではないかと示唆されているが、真相は謎のまま。