登録日:2026/7/7(日) 23:24:47
更新日:2026/07/09 Thu 18:56:43
所要時間:約 13 分で読めます
『ひゃくえむ』は、魚豊による漫画作品
「マガジンポケット」において連載された。全5巻。新装版の場合は全2巻。
概要
「
チ。-地球の運動について-」で知られる魚豊氏のデビュー作にして、100m走、そしてそれに狂気と情熱を持って飛び込んでいく男達を題材とした漫画作品である。
題材通り、いわゆる『スポ根もの』作品だが、特徴は「何故僕らは走るのか?」「どのように生きていくのか?」といった哲学的なテーマが良く出てくること。
この様な問いに登場人物が悩み、葛藤し、苦しみ、そしてその末に各々の答えを出すまでの長い道のりが作中を通して描かれており、その過程で出てくる登場人物達の名言は必見。
そう、この漫画はいわば名言の宝庫なのだ。これらに惹かれてファンとなった者も多いのではないだろうか?
2025年にはアニメ映画も公開され、
日本アカデミー賞のアニメーション作品賞を受賞するなど高評価を受けている。筆者の感想では漫画より登場人物のモノローグや名言は減り、視覚的な表現が増えたという印象があった。また、大筋は変わらないが、展開もいくつか改変されているので2度楽しめてお得だ。主題歌は
Official髭男dismの『らしさ』。
あらすじ
小学生のトガシは生まれつき足が速かった。それ以外は何処にでもいる普通の男子だったが、その走りだけで友達も居場所も得ることが出来た。しかし今の状態に彼は満足しつつも同時に"熱"がない日々に何処か退屈していた。
そんな日々は、現実を紛らわすために走る小宮と会うことで一変。数々の出来事や様々な人間との出会いを経て陸上により深くのめり込んでいく………
登場人物
主要人物
トガシ
「100mを誰よりも速く走れば、全部解決する」
100m走では負け無し、生まれつきの天才スプリンター。その才能のおかげで不満も不平も無い暮らしをしてきたが、人生を彩る『熱』を経験したこともなかった。半ば消去法で陸上の世界に進み、その中で走る理由を見失っていく。
自分を走りが速いだけの人間と思っておりいくつもの栄冠を掴んでいるのにも関わらず自己評価は低め。それ故得意分野の100m走で負けたら自分には何も無くなると考えており、敗北への恐怖は人一倍強い。
前述の様な暮らしをしてきた故か表面上は冷めている様に見えるが、実際はめちゃくちゃアツい漢。
小宮
「僕でも一瞬なら栄光を掴める」
黙々と走りに打ち込む陰気な男。もともとはタイムも人並み以下、走る理由も「現実より辛いことをすると現実がボヤける」から…つまりは現実逃避のためだったが、トガシと会い、100m走の特訓を受ける中で偉大な記録を打ち立てるという目標を見つけ、陸上の世界へのめり込んでいく。
例え骨が折れていようと感情だけでガムシャラに走れるという特徴を持ち、時にとんでもない爆発力を生み出すその走り方は仁神から「いつか陸上に殺される」とドン引きされた。
実は走りの才能は相当なものであり、初めて闘りあった時は絶対王者であったはずのトガシに初めて本気を出させ、その上で敗北への恐怖を刷り込むほど。
高校生編
side:『鰯第二高校』
トガシが進学した高校で、全国レベルの強豪のアメフト部を抱えている。陸上部は過去には勢いがあったようだが今では見る影もないほど衰退しており、部員はアメフト部からいいように扱われている。
仁神 タケル
「1位を取ったら、もう楽しいだけには戻れない」
最年少で中学陸上の記録を更新した好青年なスター選手。高校の陸上部の部長だったのだが、アメフト部との諍いをきっかけに不登校となってしまっていた。
かつて足を故障しており、その影響で全盛期の能力は失われてしまっているが、それでも作中上位の実力者。
小学生編でも登場しており、トガシの走りの才能を絶賛したり、小宮の走りにドン引きしたりしていた。
浅草 葵
「遠吠えようよ 死んでない証拠じゃん 黙るには早いって」
陸上部の先輩女子部員。半ば機能していない陸上部で1人きりでも練習に励み、周囲からバカにされようとそれをバネにさらに練習に取り組むなどとてつもない強メンタルの持ち主。
陸上に懸ける思いは人一倍強く、陸上への熱を失いかけていたトガシに再度『熱』を与えるなどこの物語の立役者でもある。
貞広
「本当はっ!自分を嫌おうとしてる自分がっ!1番ッ!嫌いなんだよ!」
眼鏡を掛けた先輩男子部員。気弱な性格かつ部で最弱なことから毎日アメフト部のパシリにされる生活を送っているが本人は「人にはそれぞれ役割がある」「僕はここの役割」と諦め気味。
しかし、もちろん心の奥底ではアメフト部、そして何より自分自身への恨み辛みが溜まっており、本心では自分も変わりたいと思っている。
平川先生
「うるせぇ」
30代の物理教師にして陸上部の顧問。冴えない性格で自己主張が全く無い故、同僚や生徒ほぼ全員から舐め腐られており、アメフト部の顧問からは陸上部の不利になるようなことを言うよう命令され、それに逆らいもしない有様。
しかし、もちろん心の奥底ではアメフト部の顧問らに恨み辛みが(ry
椎名 スズメ
元陸上部員。浅草と同期だったが大会で負けを重ねるにつれ、「勝ち続けたところでどうせ負けるのだから意味がない」と考え引退した。
陸上への未練は無さそうだが、先が見えずとも孤独でも頑張れる浅草には憧憬を持っている節があり、普段はアメフト部とつるみながらも比較的中立よりの立ち位置である。
寺川
金髪のアメフト部部員。一見気さくな好青年だが狡猾な本性を隠し持っており、アメフト部に箔をつけるために走る情熱を失っていたトガシを入部させるよう仕向ける。ちなみに部の練習風景を見ていたトガシ曰く100m11秒台で走れる可能性もあるほど速い模様。
柏木
アメフト部の最高学年にして部長と双璧を成す男。部が大会に出られなくなるリスクを回避することよりも、自分達を舐めたことへの報復を優先するなどプライドが高く粗野な性格。
かつては陸上部に所属しており、都大会でも好成績を残すなど活躍していたが外面を気にしてアメフト部に移籍したという過去を持つ。仁神が不登校になった原因の一つでもある。
アメフト部の皆様方
率直に言ってクズの集まり。貞広をパシリ扱い、綺麗に手入れされ大切にされている陸上部のトロフィーにカップ麺のゴミをぶちまける、陸上部を公然と「邪魔」「必要ない」と言って憚らないなどその悪行は枚挙にいとまがない。特に仁神の過去編では彼らのクソっぷりにさらに磨きがかかり、かなりの胸糞話と化してしまった。
一応、部長や一部の部員の中にはまともなのもいるのがかろうじて救いか。
ちなみに他所でも割とこんな感じらしく、大会本部から「(またトラブルを起こしたら)次はない」と宣告されている。
side:『西沢高校』
小宮が進学した九州の高校。鰯第二高校とは反対に陸上の強豪校である。『日本陸上の絶対王者』もこの学校が輩出した。
経田
「ここにいる部員は、君と同じ志を持った仲間だ」
強豪の陸上部の頂点に立つ男にして部長。その実力は九州トップはもちろん全国レベルとも見られており、部員から打倒トガシを期待されるほどと強豪校に恥じないものがある。
その上、部員達の結束を大切にし、悩める後輩には積極的にアドバイスを送る人格者でもあった。
だが小宮という自分の地位を脅かしかねない実力者が入部してくると一変。ちょうど彼がイップスに陥り伸び悩んでいたことを利用しあの手この手コスい手で成長を妨害する。しかし、皮肉なことにその行動が逆に小宮の完全覚醒を促してしまった。
沼野
小宮と同期の陸上部員。経田が流したデマにより小宮が部から孤立しても尚も小宮の言い分を信じ友達であり続けるいい奴だった。
社会人編
財津
「浅く考えろ 世の中舐めろ 保身に走るな 勝っても攻めろ」
トラックに長年君臨し続ける『日本陸上の絶対王者』。
頭1つ…いや3つは抜ける圧倒的な競走能力を誇り、高校生時代にはインターハイで今尚破られぬ記録を打ち立て、プロの選手となった時にはこれまた並ぶもの無しの日本記録を打ち立てる、台詞の1つから察するに並ぶどころか闘いになる選手すらいなかったなど、全盛期の彼は文句なしの作中最強。
今となっては流石に衰えが見られるものの、それでも他の作中トップクラスの実力者とも互角以上に闘う力を見せつけている。
一方財津自身はそんな現状をあまり快く思ってはおらず、圧倒的1着のことを「最下位のそれと変わらない」とし、「この世で1着をくれるのは(ちゃんと競い合える)対戦相手のみ」と語っている。
ちなみに高校生編でも登場しており、OBとして西沢高校に来た時は小宮に助言をし、彼のイップスを脱するキッカケとなったり、一目見て経田と小宮のポテンシャルの差を把握するなどこの時点で存在感マシマシであった。
海棠
「例えどんな正論 洞察 真理 啓蒙を振りかざそうと、俺は俺を認める」
濃い髭とゴーグルが渋いイケオジ。財津より年上ながらも未だ陸上界トップクラスの実力者として走り、宿敵財津の背中を追い続ける『永遠の2番手』。
彼独自の思想として「現実は逃避できるもの」「俺の勝利が非現実的なら俺は全力で現実から逃避する」というものがあり、この考えは長年に渡って彼が『何度走っても敗北する現実』『永遠の2番手ですら無くなりそうという現実』に折れること無く走り続ける原動力となっており、さらに不調に悩むトガシを助けることにも繋がった。
ここでいう「現実からの逃避」は世間一般で言われる「現実逃避」とは似て非なるものであり、本人も「現実が何かわかってなきゃ現実からは逃げられねぇ」「現実に対して目を塞いで立ち止まるのと目を開いて逃げるのは大きな違い」と語っている。
作中での言及は特にないため確実ではないが、あまり衰えは見られない。こっちはこっちで十分化け物である。
樺木
トガシ、小宮の後輩にして新進気鋭の選手。
『学生時代無敗』というトガシや小宮でも達成していない伝説の記録を持ち、若輩でありながらトップレベルの相手とも渡り合う。どうやら昔の絶対王者トガシを見ていたことがあったらしく、「ガキの頃見てたトガシさんから変わった」と本人に告げた。
余談
- 作者の魚豊先生がこの作品のプロトタイプ『100m』を描くキッカケとなったのは2016年の五輪で、ある100m走の選手がフライングで退場するのを見て『壮絶な世界』と思ったと同時に、『10秒だけ、100mだけ速ければ名声を手にできるという世界』があることを面白いと思ったから何だそう。この考えはまさしくトガシの「100mだけ速ければ、全部解決する」という言葉が象徴するといえよう
大抵の項目は、誰よりも速く追記 修正すれば 全部良くなる。
- 申請ページでも伝えましたが、タイトルから。が抜けています -- 名無しさん (2026-07-07 23:32:54)
- 投票しようと思ったらボタンがない⋯⋯ -- 名無しさん (2026-07-08 00:45:53)
- すいません!言われてたところは直しました!項目を立てるのは初めてなので何かあったらドシドシ言ってください! -- 名無しさん (2026-07-08 06:40:52)
最終更新:2026年07月09日 18:56