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SCP-4799-JP

登録日:2026/07/13 Mon 12:16:53
更新日:2026/08/21 Fri 10:23:25
所要時間:約 25 分で読めます




SCP-4799-JPとは、怪異創作コミュニティサイト『SCP Foundation』に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は「囚われの姫(Damsel In Distress)へ捧げる救出劇のアンコール、あるいは虚構なカタストロフィのリプライズ」。
オブジェクトクラスSafe

概要

SCP-4799-JPは題名不明の演劇用台本である。SCPで『台本』と言えばお馴染み「SCP-701」、通称『吊られた王の悲劇』がよぎるがアチラほど血なまぐさい代物では無いのでご安心を。

SCP-4799-JPは先述の通り演劇用台本なのだが1ページ目から4ページ目に記載されたあらすじと冒頭部分を除いて残りは白紙という一見欠陥品のような姿をしている。台本のあらすじは
とある国に、美しい姫君がおりました。

姫君はある日、魔王に連れ去られ、その城に囚われてしまいます。

王国の人々は姫を助けようとしましたが、城へ続く道は魔物たちによって閉ざされていました。

やがて一人の旅人が姫を救うことを決意します。

勇者と呼ばれた旅人は仲間と共に森や洞窟を越え、姫の待つ城を目指します。

果たして勇者は姫を救い出すことができるのか、それとも姫は永遠に囚われたままとなるのか。
というテンプレを超えたテンプレで物語中には勇者や姫の他に、魔王の手先や協力者といったモブも登場するとのこと。

そんなSCP-4799-JPの異常性は台本が読み上げられた時に発動し、読み上げた人物を中心とした半径約10mの空間を『演じられている作中場面と同じ状況』へと現実改変させる。具体的には建造物の出現、照明・気温・音響環境の再現といった形で発揮され、読み上げが行われていない状態でも持続するがSCP-4799-JPを閉じる事によって終わらせることもできるようだ。

では異常性を発揮させたとして台本の無い部分にまで劇が突入した時はどうなるのかと言うと、演者達は既存の物語設定や登場人物の口調に準拠した即興劇を行い始める。(小説生成AIツールに近いものだろうか)

この際、演者達には発話内容の制御が不能となるらしいが描写を見る限り強制されるのはセリフを読み上げる間だけで、即興劇としての振る舞いを見せなければ私語も挟めるしいつでもSCP-4799-JPを閉じて劇を中断できるようだ。
なお即興劇の内容は読み上げと同時にSCP-4799-JPへと刻まれるとのこと。

そんなSCP-4799-JPの特別収容プロトコルは
  • 低危険度物品収容ロッカーに入れといてね
  • SCP-4799-JPに書いてある内容の読み上げやSCP-4799-JPへの文章書き込みは今は禁止だよ
の2点。「変に手を出さずロッカーに入れておけ」というSafeクラスオブジェクトに相応しい単純な収容プロトコルである。どうやら、以前であれば読み上げや書き込みは条件次第で許可されていたようだ。

補遺1

2023/07/24、定期的な劣化状況のチェックの際、担当研究員によってSCP-4799-JP上に未確認の文章が発見された。内容は以下の通り

7月24日

今日は、不思議な文章が日記帳に書かれていました。
まるで、誰かが私を助けようとしている。そんな内容の文章が。
一体誰がこれを書いたのでしょうか?

でも、誰がこの文章を書こうと、誰が私を助けに来ようと、関係はありません。
私は、ずっとここから出られませんから。
仕方がないのかもしれません、皆、魔王を恐れています。

それでも、私を助けてくれる人がもしいるなら。
助けて欲しいです。
明日は、何か変わるといいのですが。

発見状況と内容から見て「誰かが行った即興劇の書き起こし」では無いだろうと判断した財団だったが、今度はコレが『演者に頼らずとも即興劇が自動進行するようになったから現れたモノローグ的なもの』なのか『どこかの知性を持った存在の書いた文章がSCP-4799-JP上に現れている』のかが分からない。
というわけで財団はSCP-4799-JP上に出現した書き込みに対し「SCP-4799-JP上に返事を書く」という手法でコミュニケーションを取ることにした。先ほど特別収容プロトコルで『SCP-4799-JPに文章を書き込むな』と紹介したばかりだが、この補遺が書かれた当時はまだ昔の特別収容プロトコルが使われていただろう。

補遺2

ということでココからはSCP-4799-JPを介した文通タイム。結論から言うとSCP-4799-JP上に出現した書き込みは知性を持った存在が書いたものだったようで、SCP-4799-JPはコチラが返事を書くと次の日にそれを受けた文章を出現させるといった挙動を見せている。以下は対話ログの抜粋である。
※ 元記事では財団が書いた文の文頭に「」、4799-JP上に現れた文の文頭に「」をつけることで区別しているため本項目もそれに従う。

: この文章は見えていますか?
見えているのであれば、質問に答えて頂けますでしょうか。
質問は、あなたの名前は何か、そして今どのような状況にあるか、です。
よろしくお願いします。

: 見えています。
私はシエル・フォン・イファリスという名前です。

今は、牢獄のような場所に居ます。
窓はなくて、扉が一つだけあります。それと、寝台が一つあります。
あと、日記帳が一つ。今は、それにこの文章を書いています。
それ以外は何もありません。

どうやら文の主は台本内に登場する囚われの姫の様子。おおよそ日本語話者とは思えない名前だがそこはまあ台本そのものが日本語で書かれているためであろう。

: こちらからも一つ質問を。あなたは一体誰なのでしょうか?

: ありがとうございます。私が誰か、についてはお伝え出来ません。

あなたの置かれている状況を把握するためにも、もう少し質問をします。
魔王がどのような人物でしょうか。
会話したことがあれば、その内容について教えてください。
また、魔王に何か危害は加えられたことはありましたか。

: 魔王は私たちと同じような姿をしています。
顔は分かりません。

私には、何も話し掛けて来ません。
そういえば、私がこの部屋に連れてこられた時だけは何か、変なことを言っていました。
内容は覚えていません。

危害を加えられたことはありません。
食事も与えられますし、何もしてこないという点では、まだ優しいのかもしれません。

: 魔王に連れ去られた時のことについて教えてください。

: その時は、母と兄と一緒に居ました。
突然城の外が騒がしくなって、兵士たちの声が聞こえて。
そのあと、急に部屋の壁が壊れて。
兄が剣を持って部屋から飛び出していくのを見ました。
母が私を部屋の奥へ隠そうとしてくれました。

実は、その時に私を連れ去ったのが魔王だとは分かっていなくて。
勝手にそう思っているだけなのです。

それで、気が付いた時にはこの部屋にいました。
兄は無事だったのでしょうか。
母は泣いていないでしょうか。
せめて一言だけでも、何か伝えられれば良かったのですが。
それだけが心残りです。

本来ラスボスとなるであろう『魔王』に対しての情報がポッカリと抜けている、なんなら閉じ込めているのが魔王か否かさえおぼつかないようだが仮にも物語の主要人物がそのレベルの認識で大丈夫なのだろうか?まあ物語自体が即興劇である都合上、ラストパートが定まっていないためこうした挙動を取っている可能性も無いことには無いが。

: 日記帳は元々あなたの所有物だったものですか?

: いいえ。
私がここに連れてこられた時には、もう置いてあったと思います。
あなたとやり取りが出来るようになるまでは、ここに物語を書いていました。
私は、本を読むのが好きだったので。

私の持っていた日記帳には、庭に咲いた花のことや、兄と喧嘩したことのような他愛もないこと。
それと、誰にも言えないようなことも。
城の外へ旅をしたい、海を見てみたい、山の上から景色を見てみたい。
そんな叶わない願いを書いていました。
誰にも、日記は見られませんから。

«中略»

: その場所に来てからどれだけ時間が経っているか、大まかでもいいので分かりますか。
また、昼夜の区別はありますか。

: ここに来てから随分経った気もしますし、ほんの少し前のことのような気もします。
それに、窓がないせいか、昼なのか夜なのか全く見当がつきません。
最初の頃は壁に傷を付けて日数を数えていました。
でも途中でやめてしまいました。
数える意味が無いと思ったので。

早く、家に帰りたいです。でも、帰れる気がしないのです。
勇者様が私を助けに来てくれるはずなのに。

: 勇者が助けに来るとは、誰かからそう言われていたのでしょうか。
その根拠について、詳しく聞かせてもらえますか。
また帰れる気がしないと思う理由は何でしょうか。

: 直接そう言われた覚えはありません。ただ、そう確信しています。
何故かと言われると、上手く説明できないのですが。
不思議ですよね、私もそう思います。
きっと、誰も来なかった時のことを考えるのが怖いのでしょう。

最初は、すぐに帰れると高を括ってしました。
扉の向こうで音がする度に、誰かが助けに来てくれたのだと思っていました。
ですが、何もありませんでした。

もし本当に勇者様が来てくれたのなら、お礼を言いたいと、そう思います。

: この文章が出現したこと以外に、何か変わったことは起こっていますでしょうか。
些細なことでも結構です。

: 魔王が、ここ数日は扉の前に来ていないような気がします。
丁度、貴方の文章が出てきた頃からでしょうか。
それに、以前は聞こえていた足音や話し声が最近は聞こえなくなりました。
この城そのものが、少しずつ静かになっている気がします。

私の心に余裕が出来て、些細な事が気にならなくなったからでしょうか。
最近は朝に目を覚ますのが少しだけ楽しみなんです。
日記帳を開くと、新しい文章が書かれているかもしれませんから。

あと、上手く言葉にできないのですが、何かが良い方向に変わるようなそんな気配がします。
まるで夢から醒める直前のように。

いきなり連れ去られて監禁状態とはなんともお気の毒だが衣食住はしっかりしていて暴行を加えられるといったこともないらしい。それどころかむしろ魔王陣営の力がどんどん弱まっているようにすら思えるが外で何が起こっているのか姫の方から情報を掴むことはできないようだ。

結局姫様からは『台本内世界と文通できる』くらいしか有力情報を得られなかったため次の話題に移ろう。

補遺3

この章ではSCP-4799-JP自体に関する内容が述べられている。
SCP-4799-JPを読み上げることで周囲に即興劇の現実改変が行われることは先ほど述べた通りだが、何度か実験するうちにセリフ上で言及せずとも過去に訪れた地点への再訪が可能であったり登場人物が過去の出来事を前提とした会話を行う事例が報告された。つまりSCP-4799-JPによって出現する台本世界は、その場しのぎで作られたモノではなく既に何らかの形で存在している空間を反映させているとの仮説が立てられるのである。

この仮説を検証するため財団は様々な実験を行い、魔王城の前まで物語を進めるに至る。またあらかじめSCP-4799-JPに対し展開の書き込みを行うことでその後の展開をある程度誘導できることも確認された。

以下は魔王城へ訪れた際に記録された映像ログである。

※ この実験では機動部隊隊員A〜Fが実験要員および演者として勇者、魔術師、聖職者、斥候、戦士、姫の役を担当している。
※ 隊員としての言動と配役としての言動、またそれぞれの人物の区別のため先ほどの対話ログ同様話す人物ごとに色を割り振り、演者としての発言は『』で囲んでいる。

<抜粋開始>

[隊員らの周辺の情景が魔王城と呼称される城目前の街道へ変化する。前方に黒色の城が存在する。]

: 戦士 『あれが、魔王城ってやつか。』

[隊員Eが城を指差す。]

: 隊員C: 思ったより普通ですね。

: 隊員D: 普通の城にしか見えないぞ、本当に魔王城か?

: 隊員A: この城、海外に旅行したときに見たことがあるような気がする。

: 隊員E: これはフィクションだぞ、そんな訳無いだろ。

: 隊員A: やっぱり、気のせいか。

: 隊員B: 取り敢えず、行こう。

: 魔術師 『ゆっくりしていて、魔王に気付かれてはかなわない。早く行くぞ。』

[隊員Aが城門を開き、機動部隊が城門を通り抜ける。]

: 戦士『なあ、もうちょっと誰か、歓迎にでも来ないのか?魔王とかさ。』

: 斥候 『馬鹿言え、来ない方が良いだろ。』

: 魔術師 『そうだな、このまま姫が助けられればそれでいい。危険は冒すべきじゃない、だろ?』

: 聖職者 『早く、行きましょう。』

なんとも緩いように感じる掛け合いだが姫様の話では魔王陣営の規模が縮小しているとのことであったしどちらかと言うと拍子抜けに近い感じだろうか。

[周辺の情景が城内の広間のものに変化する。]

[壁面に、チョークのようなもので図形が描かれている。]

: 勇者 『……これは?』

: 隊員C: 記録によれば、18回目の実験の時に書いたらしいです。

: 隊員E: あんま覚えてないけど、マッピングの手間が省けるのはいいよな。

[隊員Bが図形に近づき、観察する。]

: 魔術師 『……地図のように見える。先駆者が遺していったのだろう。』

: 斥候 『でも、まだ魔王はくたばってない。だろ?』

: 聖職者 『私たちが、やらなきゃいけないんです。』

: 隊員D: なあ、この地図見づらいんだが。

: 隊員C: 汚いんですよね、この地図。

: 隊員A: あれで読めるだろ……。

[周辺の情景が城内の分かれ道の物に変化する。]

戦士『おい、どっちに行く?棒でも倒すか?』

斥候 『右側の壁に矢印みたいな傷がついているぞ、こっちじゃないか。』

隊員D: 確か、俺が少し前の実験で付けた傷のはずだ。

隊員B: 流石に偶然にしては、出来過ぎているか。仮説は正しそうだな。

隊員C: 読み上げる度に同じ空間が出て来てる、でしたっけ。

先述の通り台本世界はこれまでの内容もある程度反映された状態で生成されているためこのように次のプレイに向けて情報を残しておくこともできるようだ。明らかに既定路線とは思えない要素でも『散っていった先遣隊のモノ』として違和感が無いように、台本には事前にセリフが書き込まれている。

隊員A: そうだな。さて、急ごうか。

[機動部隊が右側の通路へ進行する。]

[周辺の情景が城内の廊下のものに変化する。廊下には薄く埃が堆積している。]

聖職者『静か、ですね……。』

勇者 『気を付けろ、ここは敵の本拠地だ。何が起こるか分からないぞ。』

隊員D: なあ、ここまで生活感が無いのはおかしくないか?

隊員A: 魔王も、その配下も誰もここを通っていない、なんて無いよな?姫を連れ去ってるんだし。

隊員B: 私たちが来る前に、既に魔王が居なくなっていたと?

隊員E そうだとして、意味が分からん。

隊員C: 魔王は、どこへ行ったんでしょう。

[廊下には燭台が等間隔に配置されているが、いずれにも火は灯されていない。]

姫様の話で魔王軍の動きが大幅に縮小されていることは判明していたが、それにしても埃が薄く積もる程となると縮小というよりもはや退散である。彼らはどこへ行ったのだろうか。

魔術師 『おい、あそこを見てくれ!』

[周辺の情景が、金属で装飾された巨大な扉の目前の物に変化する。扉の表面には風化した紋章が刻まれている。]

聖職者 『いかにも、魔王が居そうな部屋の扉ですね。』

戦士 『さっさと倒そうぜ。姫様がお待ちだ。』

隊員D: 見る度に汚くなってないか?誰も手入れして無いのかよ。

隊員B: 時間が経てばそうなるだろう。当然のことだ。

[隊員Aが扉の目前まで移動し、扉を開ける。]

[部屋の内部は玉座の間に類似している。内部に人影は存在しない。]

[これを受け、研究チームによって先の展開の書き換えが行われる。]

魔王と戦うぞと乗り込んで来たのに玉座が空ではどうしょうもない。かと言って劇が終わるわけでもないため、最低限不足の事態を避けるため研究チームがここで先の展開を書き換えるに至った。

隊員E: マジで誰も居ないんだが。どうなってんだ。

隊員B: 私たちがSCP-4799-JP-Aと接触したのが原因か?それとも、何かの偶然か?

隊員C: とにかく、調査を続けましょう。

戦士 『なあ、魔王は留守なのか?』

勇者 『そんなことはどうでもいいだろう。』

勇者 『姫を、早く助けなければ。』

隊員A: 確か、情報通りなら……この部屋のどこかに。

隊員D: 情報?

隊員A: 対話ログ。見ただろ?

[玉座の横に、片開きの扉が発見される。]

隊員A: よし、ビンゴだ。

[隊員Aが扉に手を掛ける。扉は抵抗なく開く。]

[部屋の内部は窓のない狭い石造りの空間であり、簡素な寝台と机が置かれている。]

隊員C: ……書いてあった部屋と、同じですね。

隊員D: 机もあるな。

[机上に日記帳が発見される。隊員Aが紙片を手に取り、無言で中身を見る。]

[内容は確認済みの対話記録と一致している。]

隊員A: 日記はある。でも誰も居ない。どういうことだ?

隊員B: 姫なんていなかったってことさ。次へ行くぞ。読み上げを頼む。

[隊員Fが姫役の台詞の読み上げを試みる。]

[この際、全隊員が女性の声を部屋内から知覚する。]

[報告された音声の内容を以下に示す。]

魔王城は人っ子一人見当たらないどころか肝心の姫様すらいない文字通りモヌケの殻。文通していた時と比べて明らかに違う状況だが姫役のセリフを読み上げようとした途端、女性の声が流れ始めた。

姫 『勇者様!』

[機動部隊が部屋内に女性と思しき人物の存在を確認する。]

勇者『ああ、姫。助けに来たぞ。』

姫 『本当に、助けに来てくれたのですね。』

姫 『来てくださると、信じて待っておりました。』

隊員B: おい?一回止めた方が……。

隊員C: 止めたら何が起こるか分かったもんじゃないですよ。

勇者 『さあ姫、取り敢えず、行きましょう。』

姫 『出て行っても……大丈夫なのでしょうか。』

勇者『大丈夫ですよ。姫。王も待っておられるはずです。早く顔を見せてあげましょう。』

姫 『ええ。分かっています。けれど、不安で。それに随分、長かったような気がします。』

隊員D: あいつ、本当に姫を助けに来た勇者みたいだな。

[機動部隊及び女性が城内を進行し、入口付近に到達する。]

隊員E: なあ、この後どうなるんだ。実験を終了したら彼女はどうなる?

隊員C: 分からないですけど、一緒に帰れるなら、嬉しいです。

隊員B: 形だけの演劇で、姫を助けてるだけだ、また元通りさ。

[女性がその場に停止する。]

女性: もう二度と、青空なんて見られないと、そう思っていました。

女性: ……ありがとう、私の勇者様。

初めて劇を完結まで演じ通したわけだが、その結末は『魔王が消えたので姫を回収しました』という何とも拍子抜けなものであった。途中まで台本のセリフに沿って話していた『姫』が最後に自分から発話していることについては、演劇が終わり台本の追記(=定められた姫のセリフ)が無くなったためなどだろうか。

さて突如として姿を消した"魔王"についての謎が残るが、コレについて財団は
"魔王"とは独立した個人ではなく、SCP-4799-JP-Aの自由を制限する環境、あるいはその環境を維持する主体に対して与えられる物語上の役割である可能性
要するに『姫が自分から動くことができない』という作中状況を作るための存在であってしっかりとした設定を持つものではないと推測している。

この実験の後SCP-4799-JPは消失してしまい、代わりに長期間の監禁によって衰弱したと見られる女性が出現した。女性は「シエル・フォン・イファリス」、台本内で捕まっていたあの姫様と同じ名を名乗ったという。財団は少なくともこの女性とSCP-4799-JPとが関連しており、未発現の異常性をそのうち発現する可能性があるということからこの女性をSCP-4799-JP-Aとしてサイト-81DCの観察下に置くこととした。


補遺4

2024/04/27、先述の姫様を収容していたサイト-81DCが突如として丸ごと消失する事案が発生した。

サイトの跡地には新たなSCP-4799-JPが残されており、その特性は消失する前のSCP-4799-JPと同じものであったが唯一の相違点として"魔王城"に相当する建造物が、サイト-81DCへ置き換えられているという報告がされている。

また本来空白であるページには以下の書き込みが確認された。

4月27日

少し前、勇者様が私を助けに来てくれました。
勇者様に手を引かれて、部屋から、魔王の城から出ました。
久しぶりの外の空気は、前とは少し違う気がしました。
青空は少し眩しくて、綺麗でした。

ですが、窓の無い部屋に戻ってしまえば、それも少しずつ思い出せなくなります。
今の私は、部屋の外へ自由に出ることができません。
ただ、沢山の異常な魔物に囲まれて、怯えているだけなのです。
また、私は誰かに扉を開けてもらうのを待っているのです。

あの日の牢獄と今の部屋は、きっと違う場所のはずなのに。
魔王だって、前とは違って私によく話し掛けて来ます。
それでも、私には。私がまた同じ扉の前に座っているように思えます。

私はいつになったら、自由になれるのでしょうか。
次の勇者様こそ、私を本当の意味で助けてくれると信じています。
今度は、何かが変わるといいのですが。

財団は異常存在の「確保」「収容」「保護」を理念とする団体である。『演劇を演じきったら突如出現した女性』、しかもまだ詳細の掴めない段階の存在など当然収容房に閉じ込めておくだろう。
しかし思い出して欲しい。SCP-4799-JP内における"魔王"はSCP-4799-JP-Aの自由を制限する環境、あるいはその環境を維持する主体、まさしく姫に対する財団そのものである。
一度しか例がないため詳しい条件は不明だが、おそらく『姫が囚われた』という状況が成立した結果一度終わった物語は再び幕を開けてしまったのだろう。

回収された第二のSCP-4799-JPを用いてもう一度劇を終わらせる対応も検討されはしたが、仮に姫を助けたとして魔王陣営として引き込まれた人間まで帰ってくるとは限らないし、なんならまた何かの拍子に周囲一帯を巻き込んだ第三幕が開演する可能性もある。
結局のところ財団はサイト-81DCの回収を諦めSCP-4799-JPには干渉しないという対応を決めた。


かつて『姫を助ける勇者』だった財団は後に『姫を閉じ込める魔王』となり、今は『ただ物語を眺める観客』でしかない。



SCP-4799-JP
囚われの姫(Damsel In Distress)へ捧げる救出劇のアンコール、
あるいは虚構なカタストロフィのリプライズ



余談

メタタイトルに含まれる「Damsel In Distress」「カタストロフィ」「リプライズ」について

「Damsel In Distress」は『物語において序盤に囚えられ、その救出がその物語の主題となる女性キャラクター』を示す言葉であり「DID」と略されることもある。主な例だとマリオシリーズのピーチ姫などがまさしくそうだろう。

「カタストロフィ」は『悲劇的な結末』を指す演劇用語である。「リプライズ」も同様に演劇の用語であり、『一度劇中で歌われた楽曲やテーマを、異なるシーンで再び演奏・歌唱する演出手法』を指す。


ビギナーズコンテスト2026

コチラの作品は2026年春先に行なわれた公式コンテスト「ビギナーズコンテスト2026」の参加作品である。このコンテストはサイトにて定期的に行われる新人コンテストの一種であり、SCP-4799-JPはイベント終了時点で「+109」という高評価を叩き出した。
なお「ビギナーズコンテスト2026」環境は魔境も魔境であり、この高評価を持ってしてもSCP-4799-JPの最終順位は部門内7位、全体11位という結果に落ち着いている。

追記修正は囚われの姫君を魔王の手より救い出してからお願いします。



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最終更新:2026年08月21日 10:23