筒井筒

登録日:2012/01/14(土) 00:44:41
更新日:2022/07/19 Tue 19:39:29
所要時間:約 3 分で読めます




筒井筒(つついづつ*1)とは、『伊勢物語』・『大和物語』中の物語の一つ。

概要

日本最古の幼馴染みモノとしてそれなりに知られている。
君も教科書なんかで読んだことがあるだろう。

あらすじ

昔、幼馴染みの男女が筒井筒(丸井戸の竹で出来た垣根)の側で背比べ等をして遊んでいた。
やがて二人は大きくなるにつれて気恥ずかしくなってしまい暫く疎遠になってしまうが、二人はお互いを忘れられず、やって来る縁談をことごとく断っていた。
そんな時、女の元に男から文が届く。

筒井つの 井筒にかけし まろがたけ 過ぎにけらしな 妹見ざるまに
(井戸の縁の高さにも足りなかった私の背丈が、貴女を見ない間に伸びて縁をこしたようですよ)

女は、

くらべこし ふりわけ髪も 肩過ぎぬ 君ならずして たれかあぐべき
(貴方と比べていたおかっぱの髪ももう肩より伸びましたよ、貴方以外の誰が髪上げ*2出来るものですか)

と応え、晴れて二人は夫婦となった。

しかし幸せも束の間、女の両親が死に女の暮らしは厳しくなる。
男はそんな妻の家を避け、他の女の家にあしげく通うようになってしまう。
だが妻はそんな男に怒る素振り一つ見せず何時も送り出してくれる。
「ひょっとして間男でも出来たんじゃないか?」
そう訝しんだ男は出掛けた振りをして物陰に隠れ、様子を見ることにした。
妻は綺麗に化粧をし、物思いに耽ったような顔でこんな歌を詠んだ。

風吹けば 沖つしら浪 たつた山 よはにや君が ひとりこゆらむ
(風が吹くと沖の白波が立つ竜田山を、夜中に一人で越えている貴方の事が心配です)

女の自分を思う気持ちに深く心打たれた男は今までの事を反省し、妻の元へと帰ったのだった。

余談

  • 仲の良い幼馴染みの男女(が恋心を育て、ついに実らせること)」を「筒井筒」というが、これは上記の内容に由来する。
    「あの二人は保育園も一緒で筒井筒だったからなぁ」などと使う。

  • 能の曲の一つに『井筒』というのがある。
    世阿弥が「最上級の作品である」と自賛するほどの自信作であった様子。

  • 当時のこの手の物語は基本的に都の上流貴族がメインとなることが多かったが、この物語は当時としては珍しく地方の下級貴族の恋愛を描いている。
    しかし『伊勢物語』に収録された関係か、この『男』を在原業平だと思っている人も多い。




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最終更新:2022年07月19日 19:39

*1 「つついつつ」と読む場合もある。なお旧仮名遣いは「つつゐづつ」である。

*2 成人することの印。そのまま結婚する事が多かった。