「……あの、アメーリア? そろそろ離れてくれると助かるかなって……」
とグラジオはアメーリアを離そうとするもののかたくなに拒否して更にしがみ付いてくる始末だ。胴体に妙に柔らかい感触を感じるがあえて気にしないように振舞う。気にしたら色々駄目な気がしたからだ。
「……いやです」
「……なんで?」
「今酷い顔だから見られたくありません。しばらくこうさせてください」
「……なんで?」
「今酷い顔だから見られたくありません。しばらくこうさせてください」
理由を尋ねると何とも言えない答えが返されたため余計にグラジオは困ってしまった。一方アメーリアはさらに強く抱き着いてくる。彼女にそんなに力がないため痛くも苦しくもないのだがアメーリアの豊かな一部分が更に押し付けられる形になるのが悩ましかった。
アメーリアをどう説得しようか悩んでいた所、彼らに声をかけてくる者たちがいた。
アメーリアをどう説得しようか悩んでいた所、彼らに声をかけてくる者たちがいた。
「お嬢様! シンプソン君! 無事ですか!」
彼女の御付きのメイドであるヘルネが二人の元へ駆けつけてくる。街中で避難を呼びかけていた冒険者ロメオ・タオルも一緒に着いてきたようだ。ヘルネの声に反応しグラジオは片手を上げる。無事であると伝えるために。そんなグラジオの様子にヘルネは駆けつけつつ安堵の表情を浮かべる。急に戦場に飛び出していった同僚と戦場に取り残された主が無事だった。それはヘルネにとって何よりの朗報だった。
「二人とも無事でよかった……」
安堵するヘルネを安心させるようにグラジオは微笑みかける。ヘルネもそれにつられて笑みを浮かべる。
「まー、何にしても無事でよかった。いきなり騒動の中心地に向かって言った時はマジで焦ったわ」
ヘルネの後をついて来たロメオもグラジオの無事を知って安堵しているようであった。ダークエルフと殺り合った甲斐があったと内心呟きつつグラジオに手を差し伸べる。ロメオから差し伸べられた手を取りグラジオは未だに抱き着いて離れないアメーリアを支えつつ立ち上がる。そんな主の姿にヘルネは呆れる。
「お嬢様、流石にそれははしたないです。もう少し人目を気にしてください」
「だって……今離れたらグラジオ君にひどい顔見られてしまいます……」
「もう十分ボロボロなお姿を見せているのですから誤差の範疇です。ほら……」
「だって……今離れたらグラジオ君にひどい顔見られてしまいます……」
「もう十分ボロボロなお姿を見せているのですから誤差の範疇です。ほら……」
ごねるアメーリアを無理矢理グラジオから引き離すヘルネ。アメーリアはグラジオにだけは見られまいと顔をそらす。そんな二人の様子にグラジオは肩の力が抜けた。やっと一息付けた。そう思った時だった
激戦区から精霊獣ケラウノスがグラジオの元へ飛んできたのだ。どうやらグラジオが無事かどうか確認に来たらしい。頬に自身の頭をこすりつけてくるケラウノスにグラジオは頭を撫でてやる。一見和気あいあいとした光景であるのだがグラジオを除いた三人にとってはそうでもなかった。どこか荘厳な気配を感じさせる存在が近くにいるのだ。そしてそのような存在がグラジオに懐いているように見えるため困惑する。
「ユニコーン……? いや、どこかで聞いたようなその姿は……、そして気配からして精霊獣か……?」
「……シンプソン君? その……ユニコーンのような生物は一体……」
「……シンプソン君? その……ユニコーンのような生物は一体……」
困惑した様子でロメオ・タオルは正体を考察しようとするがなかなか思い浮かばない。ヘルネは戸惑いを隠せない様子でグラジオに問いかける。
「えっと……友達のような物です」
対してグラジオはヘルネの問いに対し非常にシンプルな答えを返した。その後、ロメオ・タオルと別れガスペリ邸にケラウノスを連れて戻ってきた三人にガスペリ家の者たちが驚くことになるのだが割愛する。ただ、一騒動起こったのは確かだった。