エルニア帝国侵攻時のバーリッド朝の英雄。人気が高じて後に《ウルフシャラグナ》神の化身と崇められることになる
南マジョリアの南端、アーテシュ地域の貧しい狩人の家から弓の腕を頼りに成り上がった人物で、エルニア来襲の直前ごろの軍備拡張の際、似たような出自の地元出身の弓兵達に推戴されて将軍となった
礼儀作法の類は不得手で王朝宮廷からのウケは悪かったものの、完全な陸生種族でないナーガや武器に馴染まないガルダでは最適ではない「陸上での射撃戦力」を人族の力で充実させたい宮廷の方針と多種族の組み合わせによる効率化を志向する国柄のおかげで出世することができたと言える
その経歴から地元への愛着が強いが他地域にはあまり興味が無く、エルニアのマジョリア大陸征服活動は放っておけば良いというスタンスの即和平派、エクサランディア島の太守が主導するナイラシャ海での対エルニア通商破壊戦は不要という考えで、交戦継続派とは鋭く対立していた
しかし通商破壊戦に豪を煮やしたエルニアが精鋭の一角である第十六軍団《ルウィナ》の全軍を投じての本格攻勢に打って出ると、エルニアを刺激したなどとなじることはせずむしろ「誤りを認め」て各地を転戦して獅子奮迅の戦いぶりを見せ、《ルウィナ》の魔導工学製兵器に対し、信頼のおける親衛隊を率いて指揮官を狙撃することで抵抗していった
それでも装備面で圧倒的に優越する《ルウィナ》の侵攻には抗えず、エクサランディア太守府陥落、メグルム山脈完全放棄、首都放棄、反転攻勢失敗とバーリッド軍の敗走に次ぐ敗走を止めるほどの力は無かったが、戦果らしい戦果を挙げた将があまりに少なかったこともあり人気はますます高まっていった
だがその活躍から《ルウィナ》軍団長にしてエルニア帝国首席魔導士のヂロイザに目をつけられてしまう。彼の最後の戦いとなったアーテシュ太守府攻防戦に際し、ヂロイザは復讐心と嗜虐心を満たすため、あえて大量のガーゴイルを展開、矢が尽きたアラシュラグナと部下たちを嬲り殺しにした後にカエルム主砲で太守府を薙ぎ払って撤収した
このことはアーテシュの生き残りの人々には「アラシュラグナが無数の敵を討ち命と引き換えに敵を退散させた」と写り、彼は死後神格化が進んだ
実はその血はアーテシュ地域のクシャトリヤ層の間に残っており、アーテシュ教国歩兵団《ピヤーデ・モガッダス》の団長の何割かは彼の子孫である
