シリーズが発売禁止になったのは⇒
かく ぬす
隠し撮りや 盗み聞きに
悪用できるからだそうです。
(フミエ)「私はパン! 絶対にパン」。
僕は どっちでも いいよ。
ダメ あんたもパン。
(父)日本人は ご飯に納豆。
いや! 納豆 食べろって言うなら
これから パンしか食べないわよ。
これで もう納豆は
食べさせられないわよね。
パンに納豆なんて
ありえないもの。
僕 毎日パンなんて
いや
嫌だよ。
あんたも パンにしなさい。
りくつ
(母)また へ理屈言って。 じゃあ
フミエは 夏休みの間 ずっとパン。
え~ 毎日なんて嫌だよ!
「子どもじゃ あるまいし
わがまま言わないの」。
(母)フミエ アキラ 夏休みだと思って
いつまでも寝てないの。
あ
(フミエ)あ~ 毎日パンじゃ飽きるわ。
(母)ほら みなさい。
ママの言ったとおりでしょ。
もっと いいもの食べさせようよ。
かわいい子どもにはさ。
(母)自分で言ったんでしょ。
残さず食べないと
大きくなれないわよ。
はい あなた。
(父)ほら見ろ。 パパみたいに
ご飯にしておけば よかったんだ。
アキラ これあげる。
うわ!
残さず食べないと
大きくなれないわよ。
ごちそうさま~!
か
これは ミゼット。 僕が飼っている
小さな電脳ネコです。
親指くらいの大きさで
ちょっとした特技があります。
普通のペットマトンは 見た映像や
聞いた音声を 記録出来ません。
ちょさくけん
プライバシーや 著作権上の
理由だそうです。
でも このミゼットだけは それを
かいひ
回避出来るパッチが流出してしまい⇒
録画や録音が出来ます。
もちろん 僕も
パッチを当てています。
だから サッチーに見つかったら
そくざ
即座に消去されてしまいます。
かしこ
でも こいつは賢いし
すばしっこいから⇒
そんなヘマは しません。
もちろん この種類は
すでに発売禁止になっています。
今も飼っている僕は
とてもラッキーです。 だって…。
「残さず食べないと
大きくなれないわよ」。
こういう映像を残せば
いざという時⇒
姉を やりこめる事が
出来るからです。
これが僕の姉 フミエです。
今日は 姉とその友達の
生態の記録を紹介します。
おく
あっ 申し遅れました。
僕はアキラ 小学4年生です。
姉は 身長120センチ。
体重は 27キロです。
6年生にしては 小さいです。
最近 増えたわよね。 キューちゃん。
(ヤサコ)「キュ-ちゃん」?
知らないの?
球体だから キューちゃん。
で 仕事は何?
かべ
ペットが 壁の中に入っちゃったの。
あな
穴が あったんだけど…。
すぐに消えちゃったの。
う~ん…。
おこのぎ ゆうこ
あの… 私 小此木優子っていうの。
よろしく…。
空間が古いわね。
料金は 200メタだけど いい?
「メタ」? メタって何?
あんた メタバグも知らないの?
ほら さっき渡した…。
ああ~。
そうそれ。 それで ちょうどです。
姉は 非常にガメツイ性格です。
特に メタバグが
こかつ
枯渇してからというもの⇒
僕や ミゼットが見つけてきた
クズバグも すぐに巻き上げます。
こいつが このミッションの主役よ。
これは オヤジ。 姉のしもべです。
オヤジは
ちょっと変わったペットマトンで⇒
たいきゅう
古い空間での耐久性が
とても強いのです。
仕事だ! オヤジ!
あとは メタタグをはって。
メガばあに もらったメタタグだけでは
長もちしないような⇒
古い空間まで もぐって
メタバグを取ってきます。
メタバグは 出所不明の電脳物質で⇒
子どもの間でだけは
通貨の価値があります。
この人はヤサコさん。
だいこく こ
この間 大黒市に引っ越してきた
すごく いい人です。
本名は優しい子と書いて
ゆうこ
優子なんだけど⇒
くん
それを訓読みして
ヤサコって ニックネームです。
あんまり しゃべった事ないけど⇒
名前のとおり
優しい感じの おねえさんです。
全然関係ありませんが 僕は
優しい女の人って あこがれます。
デンスケ!
うわ~!
あっ!
うわ!
今度は何?
いよいよ サッチーのお出ましだわ。
(サッチー)「ボク サッチー ヨロシクネ」。
これは サッチー。 大黒市が最近
くじょ
導入した強力なウイルス駆除ソフトです。
でも すごくバカなので⇒
普通の電脳ペットや いたずら道具を
持っている子どもにも⇒
ようしゃ
容赦なく
フォーマット光線を打ってきます。
フォーマット光線というのは 僕が
勝手につけた名前なのですが⇒
光線を浴びると ペットマトンは
死んでしまうし⇒
メガネのユーザーは
メガネサーバーに入っている⇒
こわ
OSの情報を 壊されてしまいます。
しゅうふく
OSの自動修復が始まると⇒
お年玉 2年分ぐらいが
強制的に引き落とされちゃいます。
姉は 対抗手段として⇒
額から ビームを発射するソフトを
インストールしています。
もっとも サッチーは命じられた
仕事をしているだけなので⇒
罪はありません。
さかうら
姉の逆恨みです。
ゆうせい
ちなみに 郵政局のサッチーは
学校や神社に入れません。
なぜなら 学校は文部局
かんかつ
神社は文化局の管轄だからです。
縦割り行政 さまさまです。
きょうこ
京子。
(京子)ウンチー。
逃げて!
(ハラケン)待て!
この人は ハラケンさんです。
ハラケンさんは ボケッとした感じで⇒
4年生の僕から見ても
たよ
頼りない人です。
おどろ
それなのに 驚くべきペットを
飼っていたのです。
そう あれはバス墓場に
メタバグ狩りに行った時でした。
(ハラケン)待て!
(フミエ)ハラケン!
お座り。
お手。
さあ 今のうちに逃げよう。
僕の言う事を聞くのは
1分だけなんだ。
あなた 一体…。
何者なの?
あろう事か サッチーはハラケンさんのペット。
正確には ハラケンさんの
おばちゃんの ペットだったのです。
でも これは
大した事件ではありません。
あんた ダイチに駅ビルの事 チクッタろ!
許してよ お姉ちゃん。
ぐてい「お姉ちゃん」?
そう 我が愚弟 アキラよ。
一生の中で 一番嫌な思い出です。
トラウマになりそうです。
僕は将来 検事か弁護士になって⇒
うった
そして姉を訴えて
必ず有罪にしてやります。
こういう映像を
全部 残しておいて⇒
しょうこ
裁判の証拠として
こうか
効果的に使ってやるのです。
ミゼットがいて 本当によかった。
(テレビ)「…というわけで 違法に
盗撮 盗聴された音や映像は⇒
裁判の証拠としては
使えません」。
「…使えません」。
なんだって!
今日は 朝から本当に うつです。
裁判の証拠にするのはやめて
自由研究に使う事にしました。
タイトルは「いきものの記録」です。
姉も広い意味で
「いきもの」だからです。
我ながら いいタイトルだと思います。
姉の悪事に関しては 一休みして⇒
その周囲の人々に
目を向けたいと思います。
京子。
(おばちゃん)この子たち
あんたの知り合い?
はい… 妹です。
あぶ
この辺は 子どもには危ないから
気をつけて。
じこ
前にも 事故があったのよ。
知っています。
あの… ありがとうございました。
ヤサコ! あっ 京子ちゃん。
よかったわ。
うわ! ストーカー。
あ~ サッチー。
待て!
お手。
お座り。
あなたは?
(ハラケン)見つかったんだ よかった。
ケンちゃん。
おばちゃん…。
「おばちゃん」?
この人は サッチーの飼い主
おばちゃんです。
はらかわ
本名は 原川タマコといいます。
ハラケンさんの おばさんだから
おばちゃんと呼ばれています。
この人が 大黒市にサッチーを
ちょうほんにん
導入させた張本人だそうです。
その人格は 姉を上回るもので⇒
もし サッチーがいなかったとしても⇒
なぞ
謎と混乱を 僕らの町に
もたらしたことでしょう。
(先生)こら お前!
こんな所で 何やっとる!
…ですか?
おばちゃん 助かったよ。
(2人)ハラケン?
全然関係ないのですが 胸の大きい
女の人って 僕 あこがれます。
おばちゃんは 性格に関しては
姉と似ていますが⇒
胸に関しては 6年生にもなって
ペッタンコの姉とは 大違いです。
姉は きっと一生 あのままです。
(ナメッチ)このこの。
しょぞく
この人たちが 僕の所属していた
クラブ 大黒ヘイクーのメンバーです。
ダイチさん。
ガチャギリさん。
ナメッチさん。 デンパさん。
そして 僕。
しかし 重要なのは
この人たちでは ありません。
戦っている相手です。
この人が イサコさん。
ヤサコさんと同じ「ゆうこ」という
名前ですが⇒
字が違って勇ましい子と書きます。
名は 態を表すとは
よく言ったものです。
すごく勇ましい人です。
全然関係ありませんが⇒
僕は 勇ましい女の人って
すごく あこがれてしまいます。
だがし
それはともかく 駄菓子屋で
売ってる電脳兵器をつぎ込んだ⇒
この戦争ごっこは
あっしょう
イサコさんの 圧勝に終わりました。
うわ~!
水面下では 姉とイサコさんも
同時に戦っていたようですが⇒
忙しくて
僕は 気づきませんでした。
でも イサコさんはその両方に
勝ったのです。
すごい人です。
そして 姉からの伝聞情報では⇒
このイサコさんが
はかい
駅ビルの空間を破壊して⇒
大量のメタバグを
引き出したという話です。
姉とヤサコさん イサコさん以外は
真相を知りません。
でもその後の イサコさんの
かつやく
活躍を見ると 本当だと思います。
だって ついにサッチーと
いっき
一騎打ちをして⇒
イサコさんは 勝ってしまったんだ。
(サッチー)「ボク ボク サッ… サッチー…」。
だから イサコさんが その後
ヘイクーを乗っ取って⇒
ダイチさんを
追い出しちゃった時も⇒
僕は やっぱりなって
思っちゃいました。
単なる小学生よ。
ダイチさんには悪いけど
でも イサコさんはサッチーより強いし⇒
こわ
ちょっと怖い人だな
って思っていました。
それで ミゼットに イサコさんを
調べさせたんです。 そうしたら…。
おじさん。
よく来たね。
どう? もう退院出来るの?
まだ かかりそうなんだ。
おじさん聞いて。 もうすぐ
お兄ちゃんが戻ってくるの。
そうかい そうかい。 うれしいね。
じょうだん
冗談じゃないのよ。
分かっているよ。
それを知らせに来ただけだから。
じゃあ…。
ちょっと意外なものを
見てしまいましたが…。
イサコさんも 普通の子どもなのかな
って少し安心しました。
でも やっぱり何かを
たくらんでいそうです。
さて 今日もミゼットを 情報収集の
ために 路上に放っています。
どんな映像を持ち帰るか
楽しみです。
言い忘れましたが ミゼットシリーズには⇒
同じ種類に出会うとジャンケンをする
というデモが 仕込まれています。
もっとも 発禁になってから
同じ種類には めったに出会わず⇒
ジャンケンの機会は
ほとんど無いようです。
うわ~ ミゼット 今日もごくろうさん。
どう 何か見つけた?
おや? これはミゼットと同型かな?
あれ? あれ? 何で途中から
と
録れてないんだろう?
こんな事 初めてだ。
まあ いいや。 姉貴の生態日記の
へんしゅう
編集でもしようかな…。
全部 聞こえているっちゅうの。
姉を なめるなよ。
あっ…。
危ない!
赤信号だぞ。
すみません。
友達が そこにいた気がして…。
けががなくて よかった。 君のそれ
電脳メガネかい? えっ? …はい。
気をつけた方がいい。
特に横断歩道は…。
最近 事故が増えているんだ。
君と同じメガネの子どもね。
それじゃあ。 あっ あの…。
うん?
すごいね。
よく ここまで調べたね。
君 小学生なんだよね。
自由研究で イリーガルを?
大したもんだ。
さっき事故の事
言っていましたよね。
ああ。
何か事故と関係のある方ですか?
いや この町で起きた出来事を
いろいろ調べているだけなんだ。
こじん
個人的にね。
さっき言っていたメガネの子どもの
事故 どう思いますか?
君のレポートにもあるけど⇒
一番有力な説は 電脳ナビが
ご
誤動作したというものだね。
なんらかの作用で…。
その「なんらかの」っていうのは
もしかして…。
イリーガル。
…はい。
確かに 電脳ナビの事故現場では
イリーガル自体が 正体不明の今⇒
事故との関係も
都市伝説の域を出ない。
ただ これは僕の仮説なんだが…。
もし イリーガルが自然発生した
電脳生物だとしたら⇒
こう考えられないだろうか?
ぜつめつ きき
住みかを追われ 絶滅の危機に
ひんしている生き物だと。
あるものは ペットや
電脳機器の中に逃げ込み⇒
あるものは 無害化して
新しい空間と共存の道を図り⇒
自分たちが帰る事の出来る場所⇒
安住の地を
探しているのかもしれない。
だが もしその仮説が
正しいとしても⇒
それは 今 起こりつつある事の
ほんの一部にすぎない。
今 この町で起こっている
何かのね。
どういう意味ですか?
僕の仮説では 事故そのものは
ぐうぜん
単なる偶然だったんじゃないか。
真相は 別の所に
隠されていると思うんだ。
実は 君も うすうす
分かり始めているだろう?
僕は 君の事を気に入った。
だから 君のために
ちゅうこく
一つ忠告をしておこう。
これ以上 深入りするな。
あなた…。
あまり 深みに入ると自分の
いし
意志では戻れなくなってしまう。
君の友達のように…。
あなたは 一体 何者なんです?
自由研究は うそだろう?
何を… 何を言って…。
会いたいんだろう?
君が 探しているのは
イリーガルではなく その方法。
自由研究のふりをして。
何の事ですか?
だが ほどほどにしておきなさい。
あまり深入りすると
君も彼女と同じような事になる。
あしはら カンナのように。
なぜ カンナの事を…。
君は 電脳コイルという言葉を
知っているか? 「電脳コイル」?
知らないなら 4年前の出来事を
調べてみるといい。
あなたは 一体 何者なんだ。
君たちの安全を守る者だ。
僕の忠告を 軽んじない方がいい。
もうすぐよ
もうすぐ会えるわ。 お兄ちゃん。