ニーネン=シャプチの宗教とはニーネン=シャプチを構成する母体文明「イェシュート文明(またはチャグマ=ダプラ文明)」による宗教体系
スワーシャカーチェ集約神教とそれらを構成する様々な宗教群のことである。また、外宇宙接触後には様々な宗教が伝来し、スワーシャカーチェ集約神教の体系に組み込まれるものを許したもののみが正式なものとして認識された。
スワーシャカーチェ集約神教
スワーシャカーチェ集約神教(
ダン=ラ=ハン語:
Suaaxakaace-yuulanxandagma)は第13代臨時星衛宰相
モニエ=フタウ=チェディシが1439年に創立した
ニーネン=シャプチの国教。23の在来宗教を包括する宗教体系であり、一つの宗教名ではない。略称としては「集約神教(Yuulanxandagma)」が用いられる。
「スワーシャカーチェ」の名はそれぞれ、拝男教の代表的な宗教「スワー=マ=カラン教」、ニーネン=シャプチ成立に大きく寄与した「シャプチ正教」、拝女教の代表的な宗教「カーリチ教」、チェディシ本人が開祖となった近代宗教「チェディシ教」の最初の音を繋げたものである。
スワーシャカーチェ集約神教はニーネン=シャプチ人民にとって一つの大きな精神的支柱である。国歌「
愛国シャプチ行進曲-いざ大いなるスワーシャカーチェよ-」は宗教統一の偉業を讃える歌として作曲された。また、ニーネン=シャプチの国旗にも4大宗教のシンボルが描かれている。
シャプチ革命におけるニーネン=シャプチ建国以降、国内ではタイユ=ウェグナらによって国教をシャプチ教とされていたが、シャプチ教徒らによる暴走と従来の信仰を守る人民らの間で対立が発生。あるいはスーグ人のパハニヴィエ=ネグエ人に対する差別意識によるパハニヴィエ=ネグエ系諸宗教の軽視または迫害、パハニヴィエ=ネグエ人のそれへの反抗という形の対立、スワー=マ=カラン教徒によるカーリチ教徒への迫害など各地で宗教対立が生じた。第4代星衛主席ピェンス=マルによる
天罰運動の容認によってこれらの対立構造は顕在化してからは、ニーネン=シャプチ建国黎明期以降長期に及ぶエフューラフトに対する反動を生み出し、その間常に分離独立のリスクを抱えていた。
1431年に就任した第13代臨時星衛宰相チェディシはニーネン=シャプチの在来宗教組織を公的な監査の下で承認し、それら宗教を民俗学や遺伝的系統関係を参考にしつつ分類した。また、チェディシは「神の共有」を標榜に掲げて各地宗教の伝統的交流を深めさせる事業や宗教問題を解決させるために和解委員会を発足させ問題解消に取り組んだ。人民の間でもこのような大事業の存在はよく知られており、全国規模での宗教融和運動が行われた。そのような助けもあったことから在任中の1439年にスワーシャカーチェ集約神教は成立した。
スワーシャカーチェ集約神教には分類学のような分類階級が存在し、教群-教類-教-教派-宗派の五つがある。
分類別宗教
在来宗教を大別すると
拝男教群と、
拝女教群の二つに分類できる。また、ニーネン=シャプチ途中または以降に成立した特定の在来宗教から派生した宗教を
二次教群、ニーネン=シャプチが外宇宙文明に接触した後にもたらされた外来宗教を
外来教群(または三次教群)と呼ぶ。
拝男教群は主に
チャグマ=ダプラのスーグ世界の平地に多い宗教群である。一神教の傾向が強く、最高神が男性の姿のものが多い。一方、拝女教群はチャグマ=ダプラのスーグ世界辺境やパハニヴィエ=ネグエ世界などによく見られる宗教群である。ただし、拝女教群は必ずしも最高神が女性の姿で描かれるものではなく、中性の姿や一定の姿でない宗教も少なくない。
四大宗教
シャプチ正教
分類:二次教群-シャプチ教類-シャプチ教-ツェートマン教派
開祖:
マグラン=ガラン(一部では
カプニャーグとも)
ニーネン=シャプチの成立に大きな影響を与えた宗教。母体はカーリチ教、ウォド教、フシェテ教、ヴェムナ教。チャグマ=ダプラに生息する動物は至尊とされるイプカの使者であるという動物信仰。
最大の特徴は遺伝子改造手術によってこれら動物を模した獣耳(ニーネンラフェウ)を自分の身体の一部とすることで動物それぞれのご利益を得られるものとする点にある。獣耳は神聖な動物神をその身に宿す行為であるとされ、毎朝獣耳を洗う習慣がある。また家族の間でもむやみやたらに獣耳に触れるのは良くないこととされており、恋人との間のスキンシップでのみ許される。
初期シャプチ教から長い年月を経て様々な宗教の概念が持ち込まれた。例えば天命信仰(イプカは天命を司り、その軽快で優美な姿で人々に天命をもたらす)、庭園信仰(セタウの森の奥地にはイプカたちの楽園があり、イプカは普段そこで水浴びをしたり、走り回って遊んだりする)などがシャプチ正教の間では知られている。
開祖は一般的には
マグラン=ガランとされているが、一部の宗派では
カプニャーグを開祖とする。シャプチ革命の際は「ある日
白いイプカがセタウの森からやってきて我々の天命を伝えられた。再び私がこの世界に現れる時、世界は平穏と安寧の中にあって永遠の国を作るだろう」として教徒やタイユ=ウェグナに反乱を促した。
現代ではイプカの捕食、狩猟、屠殺、虐待を固く禁じたイプカ法という法律がある。ただしこれらは主にセタウ人の民間信仰であるフシェテ教などでは認められているため、彼ら教徒の場合においてその限りではない。や一方でイプカの使者とされるヴァフリ(牛)など動物の肉を食べることは許されている。これは「イプカがエシュトに対してもたらした自然の恵みである」という解釈であり、シャプチ正教教徒が肉食する際は食前にイプカに祈りを捧げなくてはならない。
スワー=マ=カラン教
最も規模が大きい拝男教。ウダナズラナーテの庭を天上世界として認める。スモラヌンプラエ教の影響を受けているが始祖神シチャヌによる一神教である点が特徴。聖典は始祖神話、ウントゥムの大善録、再誕録、ウジャクシャクヴァの宴などである。
シチャヌは8柱のサプスコンによって守られており、彼らは同時にエシュトを守護する。ジェンマヒ(再来者)による誘惑や悪習をヴァヒュタンチ(俗悪)とし、サプスコンは彼らジェンマヒを罰する。スモラヌンプラエ教のシチャヌ以外の神々の一部は庭園崩壊後のエシュトとして登場し、死後ウダナズラナーテの庭でサプスコンによってガランガン(任じられた者)と認められ、サプスコンの下で共にエシュトを守護する。
ヴァヒュタンチ(ナ=ヴァヒュタンチ)とは「不当な力で人々を支配すること」、「意思を持たず生活すること」、「他者をよく理解しないこと」の三つであるとされる。スワー=マ=カラン教徒はこのヴァヒュタンチにならないように日々腐心しなければならない。ヴァヒュタンチという言葉は最も邪悪なものであり、シチャヌが庭園崩壊を引き起こした際に言った「命、失望、堕落した快楽」はこの上なく恐ろしい言葉としてスワー=マ=カラン教の宗教最高指導者ダウムーチェが破門宣言する際に必ず唱えられる。
カーリチ教
最も規模が大きい拝女教。動物や植物、あるいは物質や概念、災害や現象などの23柱の神々を崇拝する多神教。
チェディシ教
チェディシが開祖の中道を重んじる二次教。
二元的な世界観にあり、その中道が最も調和した状態あるとする。ギール神教の影響も受けており、その二元的世界観を超越的に支配するのが時間の概念であるとする。
在来宗教
在来宗教の拝男教群
スモラヌンプラエ教
スモラヌンプラエ人の宗教。スモラヌンプラエ人は既に消滅しているが宗教は継承されている。ウダナズラナーテの庭を天上世界とする多神教。神々の戦いによってウダナズラナーテの庭が崩壊(庭園崩壊)し、その瓦礫からスモラヌンプラエの街が生じ文明が栄えたされる建国神話があり、神が地上世界に降臨し、神とエシュトとの間に生まれた子がエシュトであるスモラヌンプラエ人を率いて王国を築きあげ、風俗、言語、文字などを作り上げたとする。
スニグニル教
スモラヌンプラエ人を祖先に持つとされるサグヌーチェの宗教。ウダナズラナーテの庭を天上世界とし、物質や概念、災害などを神格化した多くの神々を崇拝する多神教。神は地上世界に降臨することはなく、エシュトの善行を見て「トゥムーチ(知恵やひらめき)」を授ける。死後昇天、庭園崩壊を否定する立場をとる。
ギール神教
ギール人の宗教。天空神フシェドを崇拝する一神教。スワームなどの鳥類を天空神フシェドに時間の運行を任された神聖な動物として見なし、鳥たちが日昇や日没、あるいは雲の流れを司ると考えられている。
輪廻転生を強く意識するのが大きな特徴。死者を灰にして風葬することにより、その灰が天空に昇って再び新しい生命となる考え方がある。再び転生する際は精神の半分を誰かと共有して生まれてくるとされ、天才と呼ばれるような人物は少なくともどちらかが古代の賢者や聖職者、あるいは軍人であると見なされる。
また、普段の生活でも循環があることを重視し、「楽しいことはいつか終わるし、悲しいこともいつか終わる」という時間を重視した考え方が強い。そのため、スナエード信仰の信者たちは時間の流れに逆らって固執する「停滞」を悪いものと見なす。
スナエード信仰
ダン=ラ=ハン帝国時代にスワー=マ=カラン教と並んで規模の大きかった拝男教。
元々はギール人系の宗教であり、ダン=ラ=ハン帝国を建国したギール人の指導者(スナエード)は始祖神シチャヌの生まれ変わりであるという立場をとる。スナエードは輪廻転生を続けてスナエードになり続けると信じられており、それは始祖神シチャヌが天空神フシェドにそうするように命じたとされる。一般的にスナエード以外の者の魂は輪廻転生をすると血統も家系も関係ない別の人間になると信じられている。
ギール神教との最大の違いは「天空神フシェドは鳥に時間の運行を任せたが、スナエードは時代の運行を司る」とする点である。始祖神シチャヌが人間を作り出したので人間世界はシチャヌ(スナエード)のものであるが、自然世界は天空神フシェドのものであるという立場をとる。
ウォド教
中世スーグ世界各地で密かに信仰されていた少数派宗教。元々はスモラヌンプラエ教の一教派だったが、それが独立してウォド教となった。ウォド教は始祖神シチャヌの息子である無能の神ヴンドゥイを崇拝していたことから、ヴンドゥイを邪神と捉えるスモラヌンプラエ教が大多数を占めるスモラヌンプラエ朝の時代以降強い弾圧や迫害を受けた。スモラヌンプラエ朝の滅亡後、離散したとされるスモラヌンプラエ人ウォド教徒によって様々な民族に伝えられ広まっていった。タルニ王国時代以降も邪教・異教として扱われ続けたが、ウォド教徒の強固な連帯によって教義の統一性は保たれた。
ウォド教では無能の神ヴンドゥイを崇拝し、エシュトはちっぽけでか弱い存在であると認めた上で「弱者による弱者救済」を重んじる。教徒は敬虔さと禁欲を求められ、常に清貧であるべきとされている。一方で苦行や修行のような習慣はない。
ズネスハム教
元々はスワー=マ=カラン教の一教派だった二次教。双子月神秘教、あるいは双月神秘教とも。ズネスハム教徒のことをサグナイエシュといい、ダン=ラ=ハン帝国時代に宗教として認められある程度の隆盛を見せたが、プダージのロッシュ限界騒動の際に厳しい弾圧を受けて衰退した。ヴェシパとプダージを神聖なものとして見なし、月の運行(月齢など)によって吉兆を占う。
メティエ教
光と闇と大地の象徴とされる三柱の神を祀る三元論的多神教。カレトゥト人、ススティウ人、中世スューグ人などに信仰されていた。
あらゆる事象は三すくみのように力関係が決まっており、光は闇に勝り、闇は大地に勝り、大地は光に勝るという構造になっているとする。それぞれの神は光の陣営、大地の陣営など複数の神を統率する神とされ、世界に動乱がもたらされる時は天上世界で神々が戦争を巻き起こしているからだとされた。
コル教
大コル人及び小コル人の宗教。
パハニ教
パハニヴィエ人の宗教。主神パハニとその妻の神ヤティナを崇拝する多神教。
モンカムン教
アタヤパム教
在来宗教の拝女教群
レプネタイユ=サナヤウ教
レプネタイユ=サナヤウ教はスモラヌンプラエ教の流れを汲む多神教。地理的には拝男教の地域で生じたが、女性神信仰であるため特例的に拝女教群に分類されている。別名「使徒聖女教」とも。最大の特徴はラニユとサナテャスの女神に代表される女性神同士の恋慕や友情を神聖視する点である。この他、スモラヌンプラエ教の神々を女体化した数々の女神も崇拝の対象とされ、カーリチ教など他の宗教の神も女神として信仰する。中世タルニ王国やカーリチ人の間で信仰の隆盛を見せたが、シンテーア暦18世紀に入って再び信者数が増えた。
トラム信仰
トラム=トラム人の宗教。古代スモラヌンプラエ人と同じ年代に成立したとされる。
トラム=トラム人は「庭園の人」であると信じられ、死後は庭園(トラム)に行き、あらゆる悩みや苦しみから解放されるとされる。庭園ではその庭園を支配する女神とその従者の女神が常に宴を開いており、食事はとてもおいしく、寝具はまるで雲のように柔らかいとされる。庭園は暖かな光に包まれ、緑豊かで常に色とりどりの花が咲いており、蜜の川が流れ、シャガタウが足元をくすぐる。
庭園に行くためには生前に手の込んだ庭園を自分の家に作り、そこで祈りを捧げる必要がある。殺人などの犯罪や不正をした者は死後庭園には行けず、永遠に大地の中に押し込められ苦しみながら死に続ける。
この死後世界の楽園像はスモラヌンプラエや様々な地域に伝播し、多くの宗教で庭園の存在が認められた。
フシェテ教
ヴェムナ教
プナトガン教
ワドミ教
オルミ信仰
ヤムーテ
プタヤ教
ライ教
最終更新:2019年11月19日 15:15