すべてをFにする男/友に心の花束を ◆gry038wOvE
「ミユキ…………!」
相羽タカヤが、放送で真先に呼ばれたその名に顔色を変えた。
サラマンダー男爵という男は、これは死亡者の名前である────と、前置きしたうえでミユキの名前を呼んだのである。
その名前が耳の奥に通っていくのを、彼は複雑な気持ちで受け止めていた。
────反面、かつてミユキの死を眼前にしたときほどの悲しみや怒りは湧かなかった。
既に彼の感覚は麻痺していたのだろうか、もう妹が死ぬことに一度慣れていた。
この場にミユキがいることを知っても彼は泡のような期待を抱いたのみだったし、それがどこかで割れていただけ…………ただそんな気持ちだった。
思考が激しく暴走することもなく、ただ真っ直ぐにその死を受け止めることにした。
悲しいかな、それだけの強さを彼はもってしまった。
そして、一つの決意が胸へと宿る────
(ミユキ……! お前の仇は絶対に取る! この殺し合いを、加頭を、サラマンダーを…………絶対に潰してみせる!)
そう誓いながら、彼は同じく放送で呼ばれた名前に呆然とする真横の
左翔太郎の姿を眺めた。
「フェイト、ユーノ……!」
二人の名は先ほど聞いたが、やはり助けられなかったことがショックだったのだろう。
さらにもう一つの名前が彼を振るわす。
「それに、照井……!」
照井竜────翔太郎の親友であった男が、この放送で呼ばれてしまったのである。
追悼の意味を持たず、ただ無感情な死亡報告として。そのうえ、十八人もの死亡者を出しておきながら、ペースが良いなどとほざいた。
照井たちの死が、ペースを計る指針でしかないとは、強い怒りを加速させるのに充分な理由である。
それに、タカヤの中でミユキが一度死んでいたのに対し、翔太郎の中では照井という男は生きているはずだった。
それゆえに辛い。
心強い仲間の死には、自信さえ失ってしまいそうになる。
鳴海壮吉や
園咲霧彦の次は、彼らだというのか。
園咲冴子の名前まで呼ばれていたが、照井と比べると翔太郎自身の衝撃は薄い。…………だが、仮にも彼女は
フィリップの肉親である。
ゆえに、将来的にフィリップに報告をしなければならないということが苦痛でもあった。
そうだ、報告しなければ、彼女にも────
「亜樹子に、何て言えばいいんだよ…………照井」
彼女は壮吉を失ったとき、翔太郎以上に衝撃を受けたはずだ。翔太郎はそれをずっと黙っていたが、ある事件がきっかけで鳴海壮吉の死は鳴海亜樹子へと伝った。
その時の彼女のショックに染まった顔は忘れられない。
それに加え、照井竜まで失えば、彼女はどうなってしまうのだろう……。
想定外の出来事に、翔太郎の頭はうまく回らなくなり始めていた。
「黙祷しましょう……剛三ちゃんたちの分も、今────」
ふと、
泉京水の言葉で我に返る。
この悪党が真先にこんなことを言うとは意外だった。
死者の名前が呼ばれて悲しむ二人に、一応は同情したのだろうか。仲間の死を経験したという点で共感しあっているのかもしれない。
「あ、ああ……」
戸惑いつつも、帽子を外して返事をする。翔太郎は黙祷の準備に取り掛かっていた。タカヤも胸に手を当てており、二人は同じ様子である。
この十八名全員に、彼らは黙祷を捧げねばなるまい。
善人悪人の違いはあれど、この十八人は、自分たちと同じ境遇に巻き込まれた悲しい被害者だ────無論、彼らを殺した者だってそうだ。
加頭やサラマンダーがいなければ、彼らは元の日常で生きていくはずだったろう。
京水、タカヤ、翔太郎の三人は風都タワーのロビーで死者への黙祷を捧げる。
本来、互いを警戒しあわなければならない翔太郎と京水だが、この時は目を瞑るという隙だらけの状況を作っていた。
「さあ、黙祷は終わりよ。これからは、ここで死んだ人の分も戦っていくわ!」
「ああ、もうこれ以上犠牲者は増やさせねえ。照井の分も、俺が誰かを守るしかないしな」
互いの首元を野ざらしにして、それでも二人は攻撃し合わなかった。
それゆえに共感しているのか、翔太郎と京水は強い決意を胸にする。
(俺やフィリップまで死んだら、亜樹子には本当に何もなくなっちまう…………絶対に死ぬわけにはいかなくなったな)
★ ★ ★ ★ ★
モロトフは、放送で呼ばれた相羽ミユキの名前に思わず口元に笑みを浮かばせる。
不完全なテッカマンが、再度死を遂げた。こんなにも早くだ。なんとも可笑しい。こんなにすぐに死んでしまっては、何のためにここへ召喚されたのかサッパリだ。
巴マミなどという名前も呼ばれたが、それははっきり言えばどうでもよかった。まあ、魔法少女とは所詮その程度の敵というわけだ。
キュアピーチの名前が呼ばれたかはわからない。少なくとも名簿にはキュアピーチの名はなかったし、テッカマンランスと同じくその人物の別名だろう。
それゆえに、あの大量の女性の名前の中に含まれている可能性も否めない。
(残るテッカマンはブレードとエビル…………この二人が潰しあってしまえば、他に敵などいない!)
レイピアは鼻から眼中には入れていなかったが、何にせよテッカマンが一人消えたというのは在り難い。
残りのブレードとエビルは潰しあうだろうし、片方が生き残ったとしても、もう片方を倒すのは容易いことである。
問題となるのは魔法少女やプリキュアだが、彼女らもテッカマンの彼にしてみれば大きな障害ではないし、モロトフはこのまま上手く行けば参加者を幾らでも殺せるし、加頭なりサラマンダーなりを殺す舞台へと昇るのも早い。
ともかく、今は街へ出てブレードを探し出すのが目的だ。
────そして、その街はすでに眼前にあった。
巨大なタワーが目に付く。拡声器を使うのなら、あそこが良く通るだろうとモロトフは思った。
(ブレード、この街にいるのか……?)
面倒な事はなるべく早く片付けたいし、ここにブレードがいれば当面の目的は果たすことができる。
後は、魔法少女やプリキュアを潰すことに全力を尽くせばいい。
彼はまだ知らない。
彼が向かっている風都タワーの周囲には、テッカマンブレードも、魔法少女も、プリキュアも、彼の求めるもの全てが集っている事に。
★ ★ ★ ★ ★
「ゴオマか……」
ン・ダグバ・ゼバも放送をしっかりと耳に入れていた。
そこで呼ばれた名前で知っている者は、
ズ・ゴオマ・グのみである。ゲゲルの参加資格を剥奪された、存在価値のない同族の死────それは、彼にとって何ともないことである。
ゆえに、そこでなんとなく呟かれただけでも、彼はマシであった。
本来なら、名前も知らぬまま、平然とダグバに殺されていくのが、彼らのはずである。
だが、やはりその名前への興味など一瞬で薄れた。
(あの塔…………何かあるかな?)
ダグバは、十一時のボーナスという奴にも少し興味を抱いていた。移動に難を抱くわけではなかったし、彼の足腰は人間の領域を遥かに凌駕したもので、日本列島を歩き回っても、ほぼ疲弊することはないと推測される。
それで風都タワーに向かいたかったのは、、地図に載っていてはっきりと目に見える施設はその風車のついた塔だけだったからだ。
十一時までまだ時間はあるが、一応確認してみることにした。
風車のついた塔を間近で見て、ダグバは笑みを浮かべる。
あの風車を叩き落せば、きっとすごい轟音がするだろうし、街中の人の目につくだろう。
通常は考えられないような突拍子もない派手な行動ではあるが、彼ならばその動作は息を吐くのと変わらない。
まあ、それまでに参加者と会うことができたのなら別だが。
(クウガ、早く会えるといいな)
モロトフが着々と目的に近付いているのに対し、この少年はまだまだクウガに会えそうにはなかった。
だが、純粋に殺しと破壊を楽しむ種族の長である彼には、変身者の宴はよほど楽しいものであることは間違いない。
『笑顔』────それがすぐ近くにあるのだと、ダグバはなんとなく気づいていたのだろうか。
既に彼は、塔へと向かうことに興奮を隠せずいた。
★ ★ ★ ★ ★
放送で呼ばれた名前で、
東せつなが最も驚愕したのは、ノーザの名前であった。
ラブや美希や祈里の名前が呼ばれればもっと驚愕したのだろうが、彼女の名前は驚愕のベクトルが違った。
ラブたちの名前が呼ばれたのなら、おそらく悲しみなどの感情が伴っただろう。驚愕よりも激情が勝ると言っていい(本来なら想像したくないことだが、彼女はいま十八名もの名前を呼ばれたことによって、反射的にラブたちの名前が呼ばれることも考えてしまった)。
一方、ノーザの死は純粋に驚きであった。
(ノーザが…………こんなに早く死ぬなんて…………!)
そう、ノーザがこんなところで死ぬとは思えなかったのだ。
もしかすればラブたちが倒したのかもしれないが、こんなにも早く…………あれほどの相手が六時間で脱落するのか、という疑問があった。
このバトルロワイアルが、想像以上に過酷であるということを、せつなは瞬時に理解した。
たとえラブたちであっても、この状況で生き残ることができるのだろうか。
不安な気持ちが膨らんだが、逆にこの六時間で死んでいないということは希望とも思えた。
「知り合いかい?」
「え、ええ……」
「そうか…………ま、知り合いが死んじゃ悲しいよな。あたしも、ユーノやフェイト以外にも、ちょっとした知り合いが死んだよ」
杏子が横から口を挟む。そこまで関心があるようにも、同情する様子もない。
自分のことで精一杯であるためだろうか。彼女の一言は、共感であって同情ではない。
或いは、せつな自身、深く悲しんでいる様子がなかったためだろうか。
杏子当人だって、本来なら死んだ知り合い──この場合は既に死んだことを知っているフェイトとユーノよりも、意外な名前が呼ばれたことに対して──に関してはドライでもあった。
────巴マミ。
かつて師匠であった魔法少女ではあるが、悲しみは薄い。
ここで名前を呼ばれたとき、初めてこの戦いに参戦していることを聞き、驚きはしたが、彼女の死はとっくの昔に乗り越えたもので、今更言われても現実味がないのである。
ここに本当に参加させられていたのか、それは本当に自分の知っている巴マミなのか、そして、ここでもまた死んでしまったのか。
それを全部、今この瞬間ようやく疑問に思ったものだから、声が少し低くなるくらいだったかもしれない。
付け加えるなら、まどかやほむらという名前に、この時の彼女にはまだ深い関心もない(まどかの名前自体は聞いているが、格別記憶に残ってはいなかった)。
よって、この放送はソウルジェムに影響を与えるほど、彼女にはショックな出来事というわけではなかった。
そういえば、井坂という参加者は翔太郎のことを知っていたし、ユーノはフェイトのことを知っていた。一部の参加者は、知り合いが何人か連れて来られているのだろう、と杏子は今にして思う。
それが杏子にとってはマミ、そして────
美樹さやかだったのだ。
(さやか……あのいけ好かない魔法少女か……)
名簿の中に目についた、美樹さやかの名前が、自然と目に入った。
さやかの名前は呼ばれていなかったし、まあいずれ会った時は激突することもあろう。
反面、自らの体がどういう状況にあるのかを知った今の彼女は大丈夫なのだろうかという心配も脳裏をよぎる。
まさか、いつまでもウジウジと悩んでいるわけでは在るまい。それならば、マミよりも先に食われてしまう、格好の餌となってしまうことだろう。
彼女の考え方は、魔法少女になりたての頃の杏子にも似ていた。
まあ、『冷徹』で『利己的』な杏子には、それを疎ましく思う気持ちも少なからず残っていたのだが。
(…………もし、本当にマミの奴がここにいたとするなら)
死んだはずのマミがここに居る理由となれば、やはり「キュゥべえが自分に嘘の情報を教えた」という可能性や、ここで本当に蘇生が行われたなど、その辺りが考えられる。
まず目に付いたのは、一番最初に考え付いた「巴マミは実は死んでいない」という説であった。
さやかなどは、マミの死に対して悲しみを持っていたのだが、よくよく考えてみれば、その死とは「ソウルジェムの破壊」だったのだろうか────?
肉体の崩壊自体は、魔法少女にとって「死」ではない。それは先日聞いたばかりのことであるため、マミは肉体の外傷によって死んだと思っていた。さやかも同様だ。魔法少女の体について知ったのはごく最近だろう。
だが、その際にソウルジェムが破壊されていなければ、生きていることもあるのではないだろうか。
…………とはいえ、結局、巴マミはここでも死んでしまっている。
彼女がここにいる理由を深く考えるのは後でもいいかもしれない。
何にせよ、死んだマミも含めここに魔法少女が数名集わされているということは、この殺し合いの裏にキュゥべえが関わっている可能性は高いと、杏子は思っていた。
わざわざソウルジェムに首輪をつけるあたりも、魔法少女についての知識がなければできまい。
(考えすぎかもな……いけねえいけねえ)
内心では、かつてマミの死を知った時には悲しみも抱いたし、それだけ在りし日のマミとの友情は深かった。
そうであるがゆえに、マミのことを考えると多少、杏子らしからぬ無意味な考察をしてしまうのだろう。
杏子は、そんな自分にはっと気づいた。
──あなたは、独りで平気なの? 孤独に耐えられるの?──
マミのかつての問いかけが、何となく頭をよぎる。
せつなについていこうとする自分に、この問いかけを戒めとして使うべきか。
何故、こんな善人を利用しないのか? ────こういう善人は、誰かの食い物ではないのだろうか。
今の杏子ならば、そう考えて行かなければならないはずだ。両親や妹を失ってからの杏子ならば────
では、何故杏子は彼女を利用しようと考えないのか。
単純な話だ。
今はそういう気持ちじゃないから。
そう、それだけに決まっている(と杏子は自分に言い聞かせる)。
もしキュゥべえがここにいるなら、全部問いただしてやるつもりだし、目の前で自分のせいで仲間が死んでしまったことも結構なトラウマだった。
だから、今は少し、かつての自分の感情が邪魔をしに来ているだけなのだ。
「ま、なんだ……放送も終わったし、あの兄ちゃんたちのところに戻らないか?」
「……そうね。でも、大丈夫?」
「何言ってんだよ、あたしは平気だ。もうとっくに慣れちまったことだしな……」
杏子が悲しんでいる様子に見えたのは、せつなの思い違いも少なからずある。
あくまで、杏子がしばらく口を閉ざしたのは、意にそぐわず己の考察を深めてしまったからであり、特に深い悲しみがあったというわけではない。
せつなにしろ、ノーザの死にはそういう考察を残さずにはいられない。
(とにかく、杏子の言うとおりアカルンの力で……)
アカルンの力を使えば、戻れるはずである。少なくとも、ここからそう距離はない。
制限の力が働いていようとも、まあ戻れる範囲だろう。
(…………いや、待って)
せつなも、また少し考えてみる。
そうだ、よくよく考えてみれば、アカルンの移動能力を制限するほどの力を、加頭やサラマンダーたちは持っている。
その制限というのはどの程度のものなのかを、まだせつなは考えていなかった。────現在わかっているのは、その移動距離が短縮されていることだけ。
この制限は、彼らの元に移動させられると困るからというだけで施されているものではない。おそらく殺し合いの公平性をより確かにするためのものであるだろう。
そうだ。アカルンの能力が周囲の人物を巻き込めるのかどうかは、加頭たちが施した制限にもよるだろう。
(二人同時に移動する。そんなことはこの場でできるのかしら? もしかしたら、杏子が置いていかれるかも…………)
そう、せつなは主催者側の視点に立って考えてみてわかった。
アカルンの能力を制限するとすることができるなら、複数人の移動はさせない。
危険人物に対し、複数人の回避が可能となれば殺し合いは円滑にはすすまない。
第一、時間を止めるような能力者もいるこの状況下で、ノーザ含め18人も死ぬのだから、能力制限は厳格なものと考えられるだろう。
(とにかく、大した距離でもないし、歩いて行った方がいいわね……杏子を一人にはできない)
そう思いながら、彼女たちは建物の影から、広い道路へと歩いていった。
★ ★ ★ ★ ★
(誰だ、この気配は…………!)
モロトフの歩みが速度を増していく。
街中、あのタワーのあたりから感じるテッカマンの気配に、モロトフは心を躍らせた。
レイピアが死に、エビルも街には来ていないはずだ。それゆえ、ここにいるテッカマンはブレードのみということになる。
なるほど。綺麗に片付いてくれそうだ。
この目的が果たされれば、当面はブレードに縛られることもなく自由に行動できる。
「テック・セッタァァァァァァァ!!!」
だが、ブレードが相手ならば、一悶着ある可能性は否めない。
念のためにテックセットしてから合流し、予め自分の身を最低限守っておかねばなるまい。
向こうは、おそらくモロトフを殺しにかかるだろう。ましてや、今は相羽ミユキの死の件もあるので、タカヤは何かしら気が立っている可能性もある。
まあ、そんな感情は完璧なテッカマン・モロトフには理解できないが。
(もう奴も私の存在に気づいてるだろう…………奴がいるのは、こっちだ……!)
テッカマンランスは前方のタワーへと走り出していく。
あのタワーの中に、ブレードはいるのだと、彼は確信した。
だが、襲撃が目的ではない以上、迂闊に走り出していく必要はない。
ブレードが向かってくる様子はない。身構えているのだろう。
この眼前のタワーに、ブレードが────
(もうすぐだ、ブレード!)
────刹那
テッカマンランスの眼前の建物の影から、二人の少女が姿を見せた。
彼女らは、ただ歩いているだけであり、特にランスを意識しているわけではない。
ただ、ランスに気づかず、タワーに向かって歩いていただけだった。
「邪魔だ、小娘!!」
その罵声に気がついて、初めて二人はランスを目視する。
人でない姿の戦士に、二人の少女────杏子とせつなは、本能的に戦いの始まりを予感した。
そう、この罵声といい、変身した姿といい、少なくとも翔太郎たちのように好意的に接してくる相手でないのだろう。
まあ、杏子にとってはどちらでもいい。
万が一、仲間となりうる存在であるのがわかったら、その時に協力をすればいいだけの話なのだ。
まずは、警戒心というものを怠ってはならない。
杏子は、ソウルジェムに祈りを込め──────少なくとも、この男に食われぬために────魔法少女へと、変身した。
その姿を見て、ランスは一瞬驚愕しつつ、自らの運命を受け入れる。
「なるほど…………貴様もあの小娘たちと同じか。その姿、魔法少女か? それとも、プリキュアとやらか?」
ランスの問いかけに、杏子もせつなも眉を顰めた。
彼はちょうど、魔法少女やプリキュアの名を知っている。
どういう形で、なのかは知らないが、少なくとも良い意味で言っているとは思えなかった。
「へっ。だったらどうするんだい?」
「…………叩き潰すのみだ! あの魔法少女たちのようにな!」
「……今、何て言った?」
杏子の瞳が、突如として曇る。
彼女は槍を強く握って、ランスを睨みつけていた。
杏子の知っている魔法少女は二人いたし、叩き潰されたといえば、そのうちの片方────死んだ巴マミの方だろうと思ったのだ。
「巴マミ、それからキュアピーチといったか…………貴様らの仲間か?」
「ピーチ!?」
「マミだって!?」
せつなと杏子の顔色は、この瞬間、確かに変わった。
ああ、そうだ。間違いない。
二人にとって、縁の深い仲間────下手をすれば、今の彼女たちにとって最も縁の深かった相手の名前が、ランスの口から出て来たのである。
「…………そうか、やっぱり、あんたがマミを」
杏子はそのまま前方へと駆け出していった。
テッカマンランスの体表に、その槍をぶち当てるために。
(マミ……まさか本当にここにいたなんてな。仇はとってやるぜ!)
生きている杏子にできるのは、マミを倒したというこの男を叩き潰し返し、彼女に見せてやることだけだった。
巴マミの生存を証明する生き証人がいたことで、キュゥべえとバトルロワイアルの繋がりがある程度深く考察されそうなものだが、今はそれどころではなく、ただ前の敵を倒すことだけを考えて、杏子は走る。
「チェインジ! プリキュア、ビートアーーップ!!」
せつなもまた、プリキュアとしての姿に変身する────
「真っ赤なハートは幸せのあかし! 熟れたてフレッシュ! キュアパッション!」
己の名前を名乗り、その姿がランスを不愉快にさせた。
キュアピーチと全く似通った名乗りだ。そのうえ、随所随所を微妙に改変している。
まあ、何にせよ同じような相手であるのがわかった。
(ブレードに会う前に、こいつらを軽く捻ってやる!)
かくして、テッカマンランスは再び魔法少女とプリキュアと交戦することになったのである。
槍先を向けたまま、杏子はテッカマンランスへと立ち向っていく。
それに続くように、キュアパッションも杏子の援護を始めようと、前方へと跳んだ。
【1日目/朝】
【H-8 市街地】
【東せつな@フレッシュプリキュア!】
[状態]:健康、決意、キュアパッションに変身中
[装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式、伝説の道着@らんま1/2、ランダム支給品0~2
基本:殺し合いには乗らない。
0:まずはこの敵を倒す。ラブを知ってる!?
1:友達みんなを捜したい。
2:杏子の幸せを見つけてみせる。
3:ノーザの死に驚愕。
4:可能ならシンヤを助けたいが……
5:克己やシンヤ、モロトフと分かりあいたい。
6:
結城丈二や
涼邑零とまた会えたらもう一度話をする。
[備考]
※参戦時期は第43話終了後以降です。
※
大道克己達NEVERが悪で、テッカマンエビルとテッカマンランスを倒すという結城丈二の言葉は正しいと理解していますが、完全に納得はしていません。
※この殺し合いの黒幕はラビリンスで、シフォンを再びインフィニティにする事が目的ではないかと考えています。
※
佐倉杏子の姿が、人々を苦しませた事に罪悪感を覚えていたかつての自分自身と重なって見えています。
※制限の影響でアカルンの力でワープできる距離は、通常より限られています。
※また、アカルンの力がどの程度制限されているのかが不明であるため、当面複数人での行動は徒歩で行おうと考えています。
【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、ソウルジェムの濁り(中)、脱力感、自分自身に対する強い疑問、ユーノとフェイトを見捨てた事に対して複雑な感情、マミの死への怒り、魔法少女に変身中
[装備]:ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本:????????????
0:せつなと共にこの敵を倒し、マミの仇を取る。
1:自分の感情と行動が理解できない。
2:翔太郎に対して……?
3:あたしは本当にやり直す事が出来るのか……?
4:美樹さやかも参加している……?
[備考]
※魔法少女まどか☆マギカ6話終了後からの参戦です。
※首輪は首にではなくソウルジェムに巻かれています。
※魔法少女の身体の特性により、少なくともこの負傷で死に至ることはありません。
※
ユーノ・スクライアのフィジカルヒールによって身体に開いた穴が塞がれました。(ただし、それによってソウルジェムの濁りは治っていません)
※左翔太郎、
フェイト・テスタロッサ、ユーノ・スクライアの姿を、かつての自分自身と被らせています。
※殺し合いの裏にキュゥべえがいる可能性を考えています。
【モロトフ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、強い苛立ち、ランスに変身中
[装備]:テッククリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
[道具]:支給品一式、拡声器、ランダム支給品0~2個(確認済)
[思考]
基本:参加者及び主催者全て倒す。
0:この二人を倒し、タワーにいるタカヤに会う。
1:市街地に移動して拡声器を使い、集った参加者達を排除。
2:ブレード(タカヤ)とはとりあえず戦わない。
3:プリキュアと魔法少女なる存在を皆殺しにする。
4:キュアピーチ(本名を知らない)と巴マミの生死に関してはどうでもいい。ただし、生きてまた現れるなら今度こそ排除する。
[備考]
※参戦時期は死亡後(第39話)です。
※参加者の時間軸が異なる可能性に気付きました。
※ボルテッカの威力が通常より低いと感じ、加頭が何かを施したと推測しています。
★ ★ ★ ★ ★
────一方、彼もまた付近にいるテッカマンの気配は感じていた。
「…………二人とも、気をつけろ。近くにテッカマンが来る!」
タカヤは、不意にそう言って翔太郎と京水を警戒させた。
黙祷を終えて、ただせつなと杏子を待つだけの彼らに、テッカマンの能力は「来訪」を告げる。
(シンヤか…………? それとも…………)
シンヤが来るというのなら、その戦いはかなり過酷なものとなる。
少なくとも、この二人は逃がすべきだ。たとえ変身能力者であっても。
まあ、もう片方ならば、今のブレードがそこまで苦戦することもないだろう。
「シンヤちゃん! シンヤちゃんかしら!?」
「ちゃん付けはやめろ! だいたい、本当にあいつが来たら、俺たちはそんなことを言う余裕もなくなるぞ!」
いつになく、鬼気迫る表情でタカヤは返した。
その怒号の迫力に、さすがの京水も息を呑む。
翔太郎も、ダブルドライバーを腰に巻き、戦いの準備は万全であった。
「……あいつはどっちだ、Dボゥイ」
翔太郎は、ロビーのガラスから見える、剣を構えた白い服の男に目をやりながらタカヤに問うた。
翔太郎としてはあれが間違いなく、タカヤの言うテッカマンであると確信を持ちながら。
だが、テッカマンの外見を知るタカヤはまた別の回答をした。
「違う、あいつは…………シンヤでもモロトフでもない!」
「じゃあ一体……別のテッカマンか?」
「あいつはテッカマンじゃない。テッカマンは別の場所にいる……!」
と、その時、ガラスの向こうに見える男が体にメモリを差し、見覚えのある怪人────ナスカ・ドーパントに変身した。
変身したのは園咲霧彦ではない。…………これはかつて、エターナルとの戦いの時の前兆となった出来事にも似ている。
全く別の人間が変身したナスカを見ながら、あれはT2メモリではないかと勘ぐった。本来のナスカメモリは、おそらく霧彦や冴子に支給されているはずなのだから。
ともかく、タカヤには情報を提供しなければならない。加頭の変身実演を見たとはいえ、一応はタカヤに言っておくべきだろう。
「チッ! 言った通りだ。あれはテッカマンじゃねえ……!」
「そうね! あれは、ドーパントよ!」
双剣を持ったまま、然とした体を前に持ってくるナスカの姿に、三人は変身アイテムを持ったまま身構えた。
ナスカならば、ここの三人が同時に相手すれば勝てるかもしれない。
「とにかく、あいつは味方じゃねえ以上……!」
「……迎え撃つしかない!」
「よし、みんな行くわよ!」
敵が変身している以上は、こちらも変身しなければ対抗はできないだろう。
それぞれが変身アイテムを構えたまま、変身の掛け声をとった。
「テックセッタァァァァァッッ!!」
「いくぞフィリップ……変身!」
「私も行くわよー!! メモリ・セッタァァァァァッ!!」
『サイクロン!』×『ジョーカァァァァ!』/『ルナ!』
メモリの音声も多種多様鳴り、風都タワーのロビーは非常にやかましいことになった。
三つの声と、メモリの音声が入り混じり、本来誰もおらず静かだったこの街に、光がともされたように盛況していく。
テッカマンブレード、仮面ライダーダブル、ルナ・ドーパント。
三人の戦士が互いを見合わせ、各々の変身した姿を確認して、眼前の敵────ン・ダグバ・ゼバへと駆けだす。
翔太郎は、彼がガドルの仲間──ガドルを遥かに凌駕する存在だということをしらない。
「面白そうだね……君たちなら、僕を笑顔にできるかな?」
ダグバはそう言いながら、風都タワーを張り巡らすガラスを切り裂き、タワーの中に入った。この街のシンボルを────例によってナスカの姿でブチ壊すダグバに翔太郎は憤りを覚えた。
だが、その憤りを口にしようとした瞬間、フィリップが口を挟む。状況を知らないフィリップもまた、時間をあまりおかずしての再度の変身に驚いていたので、彼との会話をまずは優先した。
『翔太郎、また敵かい!?』
「ああ、ちょっと力を借りるぜ」
『僕は構わない。敵はあのナスカ・ドーパントかい?』
「そうだ。……それからフィリップ、これが終わったら後で少し話しておくことがある」
『…………わかった。僕も色々と状況を把握したかった。ところで翔太郎、隣のドーパントは敵じゃないのか?』
「それも後で話す。少なくとも、今はコイツは俺たちの味方だ。だから、目標はあいつに絞る」
冴子や照井の死にしろ、京水のことにしろ、戦い以外の場所でフィリップに教えておかなければならないだろう。
だが、今はそんなことに気を配っていられない。
仮面ライダーダブルは、目の前の敵に対して指を差しながら、いつもの台詞を突きつけた。
「『さあ、お前の罪を数えろ』」
【1日目/朝】
【H-8 風都タワー ロビー】
※周囲のガラスの一部が破壊されました。
【ダグバ以外の共通備考】
※これから中学校に向かい、参加者を探そうと考えています。
【左翔太郎@仮面ライダーW】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(中)、照井の死に対する悲しみと怒り、ダブルに変身中
[装備]:ダブルドライバー@仮面ライダーW (腰に装着中)
[道具]:支給品一式、ガイアメモリ(ジョーカー、メタル、トリガー)、ランダム支給品1~3個(本人確認済み)
[思考]
基本:殺し合いを止め、フィリップを救出する
0:ナスカを倒す。
1:ここにいるみんなと力を合わせて、一緒に行動する。
2:照井や冴子の死をフィリップに報告する。
3:あの怪人(ガドル)は絶対に倒してみせる。
4:仲間を集める
5:出来るなら杏子を救いたい
6:泉京水は信頼できないが、みんなを守る為に戦うならば一緒に行動する。
[備考]
※参戦時期はTV本編終了後です
※他世界の情報についてある程度知りました。
(何をどの程度知ったかは後続の書き手さんに任せます)
※魔法少女についての情報を知りました。
【相羽タカヤ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:健康、ブレードに変身中
[装備]:テッククリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
[道具]:支給品一式、メモリーキューブ@仮面ライダーSPIRITS、ランダム支給品0~2
[思考]
基本:主催者を倒す。
0:ナスカを倒す。近くのテッカマンの気配も気になる。
1:他の参加者を捜す為、これから中学校に向かう。
2:俺はいつまでコイツ(京水)と付き合わなければならないんだ……
3:シンヤ、モロトフを倒す。ミユキと再会した時は今度こそ守る。
4:克己、ノーザ、冴子、霧彦、左達を襲った怪人(ガドル)を警戒。
5:記憶……か。
[備考]
※参戦時期は第42話バルザックとの会話直後、その為ブラスター化が可能です。
※ブラスター化完了後なので肉体崩壊する事はありませんが、ブラスター化する度に記憶障害は進行していきます。なお、現状はまだそのことを明確に自覚したわけではありません。
※参加者同士が時間軸、または世界の違う人間であると考えています。
【泉京水@仮面ライダーW】
[状態]:健康、ルナドーパントに変身中
[装備]:T-2ルナメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、細胞維持酵素×4@仮面ライダーW、克己のハーモニカ@仮面ライダーW、ランダム支給品0~1
[思考]
基本:剛三ちゃんの仇を取るために財団Xの連中を潰す。
0:ナスカを倒す
1:タカヤちゃんが気になる! 後、シンヤちゃんやモロトフちゃんとも会ってみたい! 東せつなには負けない!
2:克己ちゃんと合流したい。克己ちゃんのスタンスがどうあれ彼の為に全てを捧げる!
3:仮面ライダー(左翔太郎)とは、一応共闘する。
[備考]
※参戦時期は仮面ライダーオーズに倒された直後です。
【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
[状態]:健康、ナスカドーパントに変身中
[装備]:クモジャキーの剣@ハートキャッチプリキュア!、T-2ガイアメモリ(ナスカ)@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×2(食料と水は3人分)、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、ランダム支給品(ほむら1~2(武器ではない))
[思考]
0:目の魔の三人を倒す
1:市街地を適当に歩いて、リント達を探す。
2:この状況を楽しむ
3:クウガ(五代)、ヴィヴィオ、ほむら等ソウルジェムの持ち主(魔法少女)、暁のような存在に期待
4:風都タワーを壊して、参加者をおびき寄せようかな?
5:そろそろこの剣やガイアメモリも使ってみたい。
[備考]
※参戦時期はクウガアルティメットフォームとの戦闘前です
※発火能力の威力は下がっています。少なくとも一撃で人間を焼き尽くすほどの威力はありません。
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最終更新:2013年03月15日 00:12