経済の本(経済学以外)




ソロスの錬金術


ジョージソロスの(投資)哲学の概要

ジョージソロス氏は2012年世界長者番付1位(2兆ドル)になるほどの大投資家である。
ジョージソロスの哲学はreflexivity(相互作用性 訳出によっては再帰性)である。
人間の思考が社会的事象に影響を及ぼし、その社会的事象を認識した人間は認識に基づいて行動が変化するため、更なる社会的事象に影響を及ぼすという、フィードバックループが起こるということがソロス哲学であるといえる。
このフィードバックループによって、バブルや、バブル崩壊後の恐慌(ソロスの言葉で言えば、boom & burst)を説明しようとするのがソロスの投資哲学の真髄であるともいえる。

第一章.ジョージソロスの経済学批判
1自然現象と社会現象の違い
自然実験は基本的に再現可能なもの。何故なら自然現象は人間の思考が原因としての役割を果たさない。
それに対して、社会的事象は人間の思考が社会に影響を及ぼす。よって社会実験はは客観的な条件が同じでも再現できるとは限らない。
カールポパー 「反証可能性のある命題だけが科学」
自然科学には有効性を認めながらも、社会科学においては「人間」という要素により検証はきわめて難しい。ならば、社会科学と自然科学とでは方法論・評価の基準が異なるのが自然ではないか、とのソロスの考え。

2.社会科学における「人間の思考」の扱いの理論史
これまで社会科学では、参加者の思考と社会的事象との間に「固定的な関係」を仮定することで「人間の思考による相互作用性」の問題を除去しようとした。
カール・マルクス:人間のイデオロギー(思考)は生産の物的条件で決まる
フロイト:人間の行動はコンプレックスで決まる。
近代経済学:「経済事象の参加者は完全な知識を有している」と仮定することから始まる。
ソロスに言わせれば、これは、経済学がニュートン力学に模したものであり、自然科学の様な理論体系を維持するために経済学が『人間の行動は「合理的な行動」をとる』というフィクションを維持せざるえなかった。そのため事実歪曲の度合いを強めざるを得ず、その際たるものが合理的期待仮説(efficent market theory EMH)であるという。

第二章.ジョージソロスの哲学
1.相互作用性(Reflexivity 再帰性)理論
ソロスは2つの命題を置く
①可謬性の原則:「思考する参加者がいるような情況において、参加者の性会館は常に部分的でしかなく、しかも歪んでいる」
②相互作用性「歪んだ情況認識は、その結果として発生する参会者の不適切な行動を通じて、情況に対して影響を及ぼしうる」
これは、認識が誤っていれば、その誤った認識に基づいて発生する行動は必然的に不適切になるということ
例として ⅰ.麻薬中毒者を病人ではなく犯罪者として扱えば、中毒患者は減るどころか増え続ける。なぜならば、中毒に対する治療が不適切となるからである
ⅱ.「政府は悪である」と言い続ければ、政府の質が実際に下がることも考えられる。
ⅲ.バブルの発生 (後述)
相互作用性の概念は、とても常識的であたりまえのことであるが、社会科学、特に経済学では慎重に回避されている部分である。(前述の合理的期待を、将来の不確実性に対して仮定するケースが殆んどであることを指していると思われる)

2.「認知」と「操作」が相互作用を引き起こす仕組み
ソロス氏の定義 認知機能 操作機能
①認知機能:ある事象の参加者が、現実を認識し理解すること
人間が客観的に観察した結果、一個の知識を生み出す過程を関数で表すと
f(現実)⇒認識 となる。
②操作機能:参加者が認識に基づいて自分の考えるとおりに操作していくこと
これを同様に関数で表すと、
g(認識)⇒現実 となる。
どちらも独立変数ではないから、このままでは非決定の情況になる。
また、2つの機能が同時に生起すると、両者が相互干渉する。

3.フィードバックループ
ある事象の参加者の見方が、その事象の展開に影響し、その事象の展開が参加者の見方に影響を及ぼすことでその過程が増幅していくこと
  • ネガティブフィードバック:参加者の現実に対する見方が、現実の情況に接近する
  • ポジティブフィードバック:両者の間の隔たりを拡大する
、経済理論上の均衡点に向かって価格が収斂していく「均衡」概念は、自己修正的であるネガティブフィードバックである。
それに対して、ポジティブフィードバックは、どんどん拡大していくので永続的ではない。いずれ限界点に達すると、今度は逆の方向へ向かう正のフィードバックが動き始める。
金融バブルにおけるブーム&バーストは当初は自己強化的で、後に自己破壊的に転ずるというパターンである。

第三章 ソロスの「投資哲学」 相互作用性と金融市場
金融市場の二大原則
第一原則:「市場価格はファンダメンタルズを常に歪める」
第二原則:「金融市場は、現実を反映するだけの受身の存在ではなく、積極的な役割を果たしている」
金融市場は、(経済学の理論上、本来はファンダメンタルズが反映されているはずであるが)、逆にファンダメンタルズに影響を与えることもあるということである。

ここでいくつかのバブル事例を出している
コングロマリットブーム 等々(後に追記予定)

第四章 開かれた社会
ソロスは相互作用性の哲学を社会に対してどう応用し、どのような社会が望ましいかについて述べている。政治的には代表制民主主義の問題を、経済的には市場原理主義(market fundamentalism)の問題を述べている。

1.政治:代表制民主主義の問題
①民主制の問題
「政治家の主たる目的は、世論を操作することで、選挙に当選し続け、権力の座に居座り続けることであり、よりよい社会を開くためではない」「自分の権力を己の利益のために行使して、公益を損ねることが余りにも多い」
ソロスの言葉で言うと、「認知機能に対し、操作機能が優位に立つ」
②代理人問題
「依頼者の利害を第一に考えて行動すべき代理人が、依頼人を無視して自分の利益を優先してしまうこと」
  • ロビイング
  • CDS:住宅ローン債権を組み合わせし、証券化して再分割したもの。販売した代理人は、依頼者である購入者の利益よりも、自分の手数料を稼ぐことを優先した。

代理人問題の最小化を図るには、ソロス氏いわく、公共の利益が個別の利害に対して優越した地位が与えられるべきであると述べている。

2.市場原理主義
市場原理主義とは「政府は極力経済に介入すべきではない」という考え方
ソロス氏いわく、市場原理主義の勝利は、大金持、資本所有者による世論操作の賜物である。経済は誤りうる。ゆえに経済(金融市場等)における当局の介入は必要である。政府のコントロールは悪ではない。

3.未来への展望
①国際金融の枠組み強化への提唱
  • IMFの機能強化
 アジア通貨危機の際、IMFが通貨危機国に対する対応の批判。
 (アブソープションアプローチに基づき、内需抑制により輸入を減らし、経常収支を改善しようとしたが、それ以上に景気悪化の影響が強く出てしまったことを指していると思われる)
  • ソロス財団についてうんぬん


なお、本書の他に、「ソロスの講義録」の方を参照するとわかり易い。



通貨の未来
第一章
アメリカは世界GDP23%だが、60%はドル圏という基軸通貨で、経済的な実力と金融面の影響力のギャップが拡大しつつある。

第二章
アメリカはGDP16%(ppp比)
中国は香港入れて17%(ppp)と拮抗している。
(あくまでppp、購買力平価)
ドルの支配はより強まりつつある

第三章
アメリカも孤立主義、自国中心の考え、ポピュリズムが台頭
IMFも弱いし、アジア通貨危機以降、新興国はIMFを良く思っておらず頼りたくない
アメリカ人の保護貿易的考えが蔓延
アメリカのまね論規制で、金融システムのアメリカ離れが起きつつある?

第四章
世界の経常収支不均衡
最後の貸し手がいない
多くの国は危機に備えアメリカ国債を持っている。
このままでは2035年には米国債不足が発生する

第五章
ニューヨークに人民元取引をする場がない
→作ればいいのでは?

第六章
人民元が国際化するには市場を全面開放、法の支配を確立させる必要がある

第七章
人民元の貿易取引は広がっていない
資本市場は閉鎖的
政府が解放を嫌がっている
(自由な資本移動に耐えられないと考えているから?資本流出の惧れている。)

第八章
中国経済原則

第九章
中国は万能で市場を自由に動かせられると思われていたが、その力を失いつつある
急速な高齢化、不動産高 就職難・環境悪化
民主化なくして先進国入りなし

管理人書評
2016年刊行。閉鎖的な市場である中国が市場開放を進め、米国と中国が資本市場も開放すれば米国(だけでなく世界も)も中国も経済的メリットがある、という結論だったのだが、どうやら(2019年8月現在)アメリカと中国は市場の相互開放ではなく、米中経済戦争に向かいつつある。

書評~物欲なき世界

ライフスタイルを売る時代
ライフスタイルという言葉そのものが、多種多様な人生にやや強引に「形容」を与え、分類し差別化し商品化するような匂いのする言葉ではある。ライフスタイルということばは、美しく主体的な言葉のようでありながら、実は巧妙なまーけてぃんぐの戦略にのせられているだけのようでもある。

若い世代の物欲のなさはある種の賢さ

中国~社会発展の過渡期としての物欲
大量生産・大量消費

大量生産の始まりは衣服から
3Dプリンターという現在のミシン。

世界は脱物質化する(P107)
「製品は小型化し、金属の代わりにプラスチックなどが使われるようになった。材料が進化し、ミニチュア化が進んだからである。現在の経済アウトプットの重量は50年前よりわずかに増えた程度である。」

モノからコトとヒトへ

シェアリング経済
カーシェアリングの広がり
駐車場・車検・ガソリン・車両保険・購入費用で月額大体3~4万円程度?
→都市部で、車を買うことの経済合理性はない。

所有欲はオタクの証明にならない
欲望がコンテンツ的になってきた。
→無理して買わなくても、ネットから入手できてしまう。
人々はネットワークを構成するノードに過ぎなくなる?

物欲は代替物?

幸福はお金で買えるか?

お金はモノではなく信用システム
「貨幣という謎 NHK出版」
電子マネー お金の情報化 脱物質化

「仮想通貨革命 ダイアモンド社」
消費をやめるという生き方

「幸せを科学する 新曜社」

21世紀の資本
低成長時代が到来するかもしれない。
経済成長を前提とした、大量消費が行き詰まる可能性。


価格と儲けのカラクリ


農業精算の生産額ベースは8.2兆円 世界第5位
(中国 アメリカ インド ブラジル)
スーパー店頭の野菜は大体国産
外国産野菜は外食、中食、加工食品に使われている

食品加工
牛脂注入:インジェクション肉
細かい端肉の結着剤

原価
ハンバーガー原価48円
チーズバーガー58円
コーラ5円
フライドポテト30円
カップラーメン原価50円

半額セール:普段は倍以上の値段
通常価格で売り出している期間が長ければ、半額セールを行っても虚偽の表示にならない(不当表示防止法)

大手生保 (還元率)35%
ネット77%
都道府県民共済 96%

ビール350ML 酒税77円
発泡酒47円
第三のビール28円

百貨店
消化仕入方式から家賃方式へ
消化仕入:売れた分だけ仕入れたことにして歩合を得る
30%ぐらい

不動産業者
不動産仲介:賃貸の賃料1ヶ月分がフィー
売買;物件価格の3%+6万円(税別)
管理費:賃料の5%
例)300戸管理×2000円=600千円

化粧品原価 1円ー30円

そばー小麦粉100%のものもある(これはうどん)

30年一括借り上げ
新築6000万円
粗利1800万円
初年度家賃3ヶ月免責
例)1室4万円10戸
4万円×10戸×12ヶ月=年収480万円
月40万円×9ヶ月×90%=324万円の収入
(一括借り上げ手数料10%)

退去時2ヶ月免責
2ねんごと家賃見直し(値下げ)
15年目:定期補修~他の業者使うと解約される。この定期補修も高い



多動力(堀江貴文・ホリエモン) 書評
1.寿司屋の修行~オープンイノベーションとマニュアル化により石の上にも3年は崩壊する(意味がない)
2.手作り弁当と冷凍食品~完璧主義よりも完了主義
3.10冊の流行のビジネス書より1冊の骨太の教養書を読もう
4.資産が人をダメにする。資格や資産に縛られずに、丸裸でやりたいことに集中すればいい
5.日本のバランス教の悪しき慣習



父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。
農作物の余剰が経済を生んだ
貝殻(貨幣)と信用の成り立ち
イデオロギーや信仰〜信じさせる者が支配する
農奴の囲い込みが大量の失業者を産み、綿工場の労働者となった
利子の成り立ち
民主化と商品化の対立
エピローグ
「欲望を満足させるのがすべてではない」
「満足と不満の両方がなければ、本物の幸福を得ることは出来ない。満足によって奴隷になるよりも、われわれには不満になる自由が必要なのだ」

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最終更新:2021年11月14日 21:48