大嶽丸(おおたけまる)
大嶽丸(おおたけまる)は、日本の伝承に登場する
鬼神で、平安時代から語り継がれる伝説的な存在です。
彼は伊勢国と近江国の国境にある鈴鹿山を拠点とし、強大な力を持つ最強の鬼神として知られています。
概要
大嶽丸は、日本古来の
妖怪・
鬼神伝承の中でも特に強大な存在として描かれており、その物語には歴史的背景や宗教的要素が色濃く反映されています。
彼は単なる
悪役ではなく、人間社会と自然界、そして超自然的存在との葛藤や調和を象徴するキャラクターともいえるでしょう。
- 居住地
- 大嶽丸は主に鈴鹿山(現在の三重県亀山市と滋賀県甲賀市の県境)に住み、後には東北地方の霧山にも現れたとされています
- 異名
- 「鬼神魔王」とも呼ばれ、日本三大妖怪(酒呑童子、玉藻前=九尾の狐、大嶽丸)の一角に数えられることもあります
- 能力
- 黒雲で山を覆い隠し、暴風雨や雷鳴、火の雨を降らせるなどの神通力を操る
- 飛行自在であり、他人への変身や分身体を作る能力も持つ
- 三本の剣「大通連」「小通連」「顕明連」を所持し、その力によって無敵とも言われました
大嶽丸の伝説
- 討伐者・坂上田村麻呂との戦い
- 桓武天皇の時代、大嶽丸は鈴鹿峠を往来する人々を襲い、都への貢物を略奪するなど悪事を働いていました
- これに対処するため、天皇は坂上田村麻呂に討伐を命じました
- 大嶽丸は黒雲や暴風雨で田村麻呂率いる軍勢を数年間足止めしました
- しかし、鈴鹿御前という女性が田村麻呂に協力し、大嶽丸を欺いて剣を奪い、酒で鬼たちを酔わせました
- その隙に田村麻呂が攻め込み、大嶽丸を討ち取りました
- 大嶽丸は一度討伐されたものの、「顕明連」の剣の力で復活
- 東北地方霧山で再び活動しましたが、最終的には仏神の力を借りて再度討伐され、その遺骸は各地に封印されました
- 身体の封印
- 大嶽丸の首や胴体などは複数箇所に分けて埋葬され、それぞれ観音堂が建てられました
- この封印伝承は地域信仰とも結びついています
- 薬子の変との関連性
- 平安時代初期に起きた政変「薬子の変」が伝説化したものとも考えられています
- この政変では鈴鹿山が重要な舞台となり、大嶽丸伝説にも影響を与えた可能性があります
- 宗教的要素
- 仏教や山岳信仰との結びつきが強く、観音菩薩や毘沙門天など仏教的存在が田村麻呂を助ける形で描かれています
- 文学・芸能
- 室町時代には能『田村』などで大嶽丸伝説が取り上げられました
- また、『鈴鹿物語』や『田村三代記』など御伽草子にも登場します
- 地方伝承
- 滋賀県や東北地方では、大嶽丸討伐にまつわる地名や寺社が残されています
- 例えば、滋賀県善勝寺には「鬼塚」があり、大嶽丸の首が埋められたとされています
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最終更新:2024年12月07日 12:08