ラケシス

ラケシス


ラケシス(Lachesis)は、ギリシア神話における運命の三女神(→運命の女神)「モイライ」の一柱であり、「配分者」または「割り当てる者」という意味の名前を持つ女神です。
彼女は運命の糸の長さを測り、個々の人間に寿命や運命を割り当てる役割を担っています。


概要

ラケシスはギリシア神話において、「運命」を具体的な形で管理する重要な存在です。彼女が測る糸には、その人間がどれだけ生きるかだけでなく、その人生で何が起こるかという全体的な運命が込められています。その公平性と冷徹さから、彼女は人間だけでなく神々にも畏怖される存在でした。彼女が担う役割は、「生命」「時間」「宿命」という普遍的テーマへの深い洞察を提供しています。
ラケシスの役割と象徴
1. 運命の糸を測る者
  • ラケシスは、姉妹であるクロトが紡いだ運命の糸を測る役割を担います
  • 彼女は糸の長さを決定することで、個々の人間がどれだけ生きるか、どのような人生を送るかを定めます
  • 糸の長さには、その人の寿命や試練、幸福、不幸といった人生全体が象徴的に込められています
2. 「配分者」としての役割
  • ラケシスは「配分者」として、人間や他の存在にそれぞれ適切な運命を割り当てる役目も果たします
  • このことから、彼女は生命や運命そのものを管理する重要な存在とされています
3. 運命と不可避性
  • ラケシスが測った糸は、最終的には妹アトロポスによって切られるため、彼女が決めた運命は避けられないものとして描かれます
  • この点で、彼女は人生の不可避性や宿命を象徴しています

ラケシスの描写と象徴的アイテム
測定棒または杖
  • ラケシスは糸の長さを測るために測定棒や杖を持つ姿で描かれることが多いです
  • この道具は、公平性と正確性、そして運命の厳格さを象徴しています
白い衣装
  • 彼女は通常、白い衣装をまとった姿で描かれます。これは純粋さや冷静さ、公平性を表しています

ラケシスに関する神話とエピソード
1. プラトン『国家』での描写
 - プラトンの『国家』第10巻「エルの物語」では、ラケシスはアナンケー(必然)の娘として登場します
  • 死者たちが次に生まれ変わる人生を選ぶ際、ラケシスは籤(くじ)を用いてそれぞれの魂に新たな運命を割り当てます
  • この場面では、彼女が過去について歌いながらアナンケーの紡錘(宇宙全体を象徴する道具)の回転を助けているとされています
2. 誕生後3日目に訪れる
  • 一部の伝承では、ラケシスとその姉妹たちは赤ん坊が生まれてから3日目に現れ、その子供の人生や運命を決定すると言われています
3. メレアグロスの物語
  • ラケシスと姉妹たちは英雄メレアグロスの運命にも関与します
  • 彼女たちはメレアグロスが燃え尽きる薪(象徴的な生命)と結びついた運命を持つことを予言しました
  • この物語では、人間が運命から逃れようとする試みも描かれています

親族関係と起源
1. 両親について
ラケシスとその姉妹(クロトアトロポス)の親については複数の説があります:
  • 夜の女神ニュクス(単独またはエレボスとの間)によって生まれた
  • ゼウスと掟(正義)の女神テミスによって生まれた
  • 必然(アナンケー)の娘として描かれる場合もあります
  • この多様な起源説は、モイライが時間や宇宙そのものに根ざした超越的な存在であることを示唆しています
2. 兄弟姉妹
  • クロト(糸を紡ぐ者)およびアトロポス(糸を切る者)が姉妹です
  • また、一部伝承では季節を司るホーライとも姉妹関係にあると言われています

ラケシスと他文化との関連
ローマ神話: デキマ(Decima)
  • ラケシスはローマ神話ではデキマという名前で知られています
  • 「デキマ」は「第10」を意味し、新生児が生後10日目に名前が付けられる習慣との関連があります
他文化への影響
  • 運命や寿命を測る存在として、多くの文化や物語に影響を与えています
  • 例えば、中世ヨーロッパでは「時間」や「死」を司る抽象概念として再解釈されました

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最終更新:2024年12月27日 23:32