ヤングケアラー

ヤングケアラー

ヤングケアラーとは、18歳未満の子どもが、病気や障害、高齢などでケアを必要とする家族に代わり、大人が担うべき家事や介護、感情面のサポートなどを日常的に行っている状況を指します。


特徴

1. 大人が担うべき役割を引き受ける
  • 家事(掃除、洗濯、料理など)、介護(入浴やトイレの介助)、家計支援(アルバイト)などを行います
  • 幼いきょうだいの世話や見守りも含まれる場合があります
2. 学業や進路への影響
  • ケアに時間を取られることで、勉強時間が減少し、遅刻・欠席が増えることがあります
  • 進学や就職の選択肢が狭まり、自分の将来を諦めるケースもあります
3. 社会的孤立
  • 家庭内での責任感から友人関係が希薄になり、孤独感を抱えることがあります
  • 周囲に自分の状況を相談できず、「当たり前」として受け入れてしまう傾向も見られます
4. 心身への負担
  • 肉体的な疲労(介護や家事による)や精神的ストレス(責任感、孤立感)を抱えやすいです
  • 睡眠不足や健康問題に繋がる場合もあります
5. 「子どもらしさ」の喪失
  • 勉強や遊び、部活動など「子どもとして過ごす時間」が奪われることがあります
  • 自分の時間が持てず、自己実現の機会が制限されます
6. 多様な背景
  • ケア対象は親だけでなく、高齢の祖父母、障害や病気のある兄弟姉妹など多岐にわたります
  • アルコール依存症ギャンブル依存症といった問題を抱える家族への対応、日本語が話せない家族の通訳といった特殊なケースも含まれます
ヤングケアラーが直面する問題
  • 学業・進路・友人関係への影響
  • 心身への負担と健康問題
  • 社会的孤立と支援の不足
  • 自己認識の欠如(自分が支援対象であることに気づかない)
支援の重要性
ヤングケアラーは家庭内で大きな責任を背負いながらも、その状況が周囲に気づかれにくい特徴があります。早期発見と包括的な支援体制(教育機関、福祉機関、地域社会との連携)が求められています

作品例

『私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記』

『私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記』は、ヤングケアラーとして生きた主人公の体験を描いた実録コミックです。
1. 大人が担うべき役割を子どもが担う
  • 主人公は幼稚園のころから、統合失調症の母親や家庭に無関心な父親、特別扱いされる弟、認知症の祖父の世話を一手に引き受けています
  • 具体的には、買い物・料理・掃除・洗濯などの日常的な家事や家族の感情面でのサポートが含まれます
2. 「子どもらしさ」の喪失
  • 主人公は「家族のかたち」を守るため、自分自身を犠牲にして生きてきました
  • その結果、感情を「オフ」にする癖がつき、怒りや涙といった自然な感情表現ができなくなっています
  • 美しい景色や楽しい経験にも没入できず、周囲と感覚がずれることが描かれています
3. 周囲から気づかれにくい
  • ヤングケアラーは学校では優等生であったり、空気を読んで目立たないよう振る舞うことが多いため、その状況が周囲に気づかれにくいという特徴があります
  • 主人公もまた、家庭内で抱える重圧を隠しながら生活していたため、外部から支援を受けることが難しい状況でした
4. 自己犠牲孤独感
  • 家族を支える中で「自分がいないと家が回らない」という責任感を抱えつつも、自分自身の感情や欲求を後回しにする生活を送っています
  • その結果、自分のアイデンティティーや将来への希望を見失うことが多く見られます
5. トラウマとその影響
  • 主人公は成長後も幼少期の体験によるトラウマに苦しみます
  • 結婚や子育てを通じて、自身が受けた育て方の影響に気づき、それがフラッシュバックする場面も描かれています
  • また、自身が親になった際に「どう子どもを育てればいいかわからない」という悩みも生じています
作品全体のテーマ
  • この作品は、ヤングケアラーとして過ごした主人公が「失われた感情」を取り戻すまでの再生の物語です
  • ヤングケアラーとしての経験は忍耐力や多様なスキルを育む一方で、本来子ども時代に享受すべき安心感や自由が奪われるという問題点を浮き彫りにしています
  • また、社会的支援の必要性や、当事者への共感と理解の重要性についても強く訴えかけています

このように、『私だけ年を取っているみたいだ。』はヤングケアラーという社会問題を深く掘り下げ、その影響と再生への道筋を描いた重要な作品です。
『ヤングケアラー みえない私』

『ヤングケアラー みえない私』は、ヤングケアラーとしての苦悩や現実をオムニバス形式で描いた作品です。この作品に登場するヤングケアラーの特徴は以下の通りです。
1. 突然背負わされる責任
  • 作中では、がんを患った母親の介護をする受験間近の女子高生や、祖母の介護を一人で担う専門学生、家族がいるにもかかわらず祖母の介護を中心的に行う男子高校生が登場します
  • これらのキャラクターは、ある日突然大人が担うべき責任を押し付けられています
2. 学業や進路への影響
  • ヤングケアラーたちは家族の世話に追われることで、学業や進路に支障をきたしています
  • 例えば、学校を辞めざるを得なくなるケースや、進路選択が制限される状況が描かれています
3. 孤独感と周囲からの理解不足
  • ヤングケアラーは、自分の状況を周囲に相談できず孤立することが多いです。作中でも「誰にも気づかれない」「透明な存在」として描かれ、家庭内での役割に縛られる中で孤独感を抱えています
4. 心身への負担
  • 家族の介護や世話による疲労から、心身ともに大きな負担を抱えています
  • 睡眠不足やストレス、身体的な疲労などが影響し、健康状態にも悪影響を及ぼしています
5. 「子どもらしさ」の喪失
  • 作中では、「あるべき瞬間を然るべき場所で過ごせない」というテーマが繰り返し強調されています
  • ヤングケアラーたちは子どもとして自由に過ごす時間を奪われ、自分よりも家族を優先する生活を強いられています
6. 社会的認知と支援の不足
  • ヤングケアラーという存在自体が周囲から気づかれにくく、支援につながりにくいという問題も描かれています
  • 家庭内で起きている問題が外部から見えづらいため、学校や社会から適切なサポートを受けられない状況があります

『ヤングケアラー みえない私』は、ヤングケアラーたちが抱える過剰な責任や苦悩だけでなく、それによって奪われる「子どもとしての時間」や「自己実現」の機会について深く掘り下げています。また、彼らが直面する孤立感や社会的支援の不足といった現実も描かれており、読者に対してこの問題への理解と共感を促す作品となっています。

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最終更新:2025年01月02日 15:15