セドナ
セドナ(Sedna)は、
イヌイット神話に登場する海の女神であり、海洋生物や死者の世界を司る存在です。
彼女は「海の女王」とも呼ばれ、イヌイット文化において重要な役割を果たしています。
概要
セドナはイヌイット神話における重要な存在であり、その伝承には自然との調和や人間社会への教訓が込められています。
セドナの伝承
セドナは元々美しい娘として地上に生まれましたが、彼女の運命は悲劇的なものとなりました。以下は主な伝説の内容です:
- 1. 父親との衝突
- セドナは誰にも嫁がないと宣言し、父親の怒りを買います
- 一説では、父親が彼女を犬に嫁がせたという話もあります
- ある日、鳥(カモメやアホウドリ)が化けた男がセドナを誘惑し、孤島へ連れ去ります
- しかしその生活は過酷で、父親が彼女を救い出します
- 2. 海への投げ落とし
- 父親と共に船で逃げる途中、鳥の男が嵐を起こします。恐怖に駆られた父親は、自分を守るためセドナを海へ投げ捨てます
- セドナが船べりにしがみつくと、父親は彼女の指を切り落としました
- その指は海獣(アザラシ、セイウチ、クジラなど)に変わり、セドナは海底へ沈みます
- 3. 海底での再生
- 海底に沈んだセドナは死ぬことなく、「海の女神」として蘇ります
- 彼女は鯨の骨で家を作り、切り落とされた指から生まれた海洋生物を支配するようになりました
セドナの役割
- 海洋生物の守護者
- セドナはアザラシやクジラなど、重要な狩猟対象となる海洋生物を管理しています
- そのため、人々は豊漁を願い、彼女に祈りを捧げます
- 死者の国の支配者
- セドナは冥界「アドリヴン」の支配者でもあり、死者や魂を導く役割も担っています
- 彼女の犬が門番として死者を迎えるとされています
- 自然現象への影響
- セドナは嵐や不漁など、人間社会に影響を与える自然現象も司ります
- 不漁が続く場合、人々はシャーマンを通じて彼女のお告げを聞きます
- シャーマンとの関係
- シャーマンはトランス状態でセドナに接触し、彼女の髪を梳かす儀式を行います
- これは指を失ったセドナへの癒しとされ、この行為によって彼女は人間に恵み(魚や狩猟物)を与えると言われています
- セドナの姿
- セドナはしばしば巨大で醜い隻眼の老婆として描かれます。しかし、その姿には威厳と神秘性が宿っています
- かつて美しい娘だった頃から変貌した姿として描かれることもあり、この変化が彼女の悲劇的な運命と結びついています
- 文化的影響
- セドナはイヌイット文化において自然と人間との関係性を象徴する存在です
- 彼女への信仰は狩猟社会における倫理観や自然への畏敬心とも深く結びついています
- また、その神話的要素から心理学や文学などでも注目され、「再生」や「自己発見」の象徴として分析されることがあります
関連ページ
最終更新:2025年01月12日 17:30