イシュタル
イシュタル(Ishtar)は、古代メソポタミア神話に登場する女神で、愛、美、豊穣、戦争、金星などを司る多面的な存在です。
彼女はシュメール神話の女神イナンナと同一視され、アッカド、バビロニア、アッシリアなど広範囲で崇拝されました。その影響力は非常に大きく、「天の女王」とも称されました。
概要
イシュタルの特徴と役割
- 1. 愛と豊穣の女神
- イシュタルは性愛や生殖、豊穣を象徴し、人類や自然界の繁栄をもたらす存在として崇拝されました
- その一方で、自由奔放な恋愛観を持ち、固定した夫を持たず、多くの愛人を持つことで知られています
- 2. 戦争と破壊の女神
- 戦いと破壊も司り、戦場では恐るべき存在として描かれます。彼女は勝利や力を象徴し、戦士たちからも信仰されました
- 3. 金星との関連
- イシュタルは金星(ディルバト)と結びついており、その明けの明星と宵の明星という二面性が彼女の多面的な性格を象徴しています
- 4. 政治権力と王権
- 王権を守護する神としても重要視され、多くの都市国家でその信仰が広まりました。特にウルク市ではエアンナ神殿に祭られています
主な神話
- 1. 冥界下り
- イシュタルが冥界の支配者である姉エレシュキガルに会うため冥界に降りる物語
- この際、彼女は七つの門を通過するごとに身に着けているものを一つずつ失い、最後には全裸となります
- 彼女が冥界にいる間、大地では生殖活動が停止し作物が実らなくなります
- 最終的に神々の助けによって救出されますが、その代償として夫ドゥムジッドが冥界に送られることになります
- この物語は季節の変化(冬と春)を象徴しています
- :2. ギルガメシュ叙事詩
- イシュタルは英雄ギルガメシュに求婚しますが拒絶されます
- 怒ったイシュタルは「天の牡牛」を送り込みウルク市を襲わせます。しかしギルガメシュとエンキドゥによって牡牛は倒されます
- この出来事はイシュタルの激情的な性格を象徴しています
- 3. エビフ山崩壊
- イシュタルが気に入らないという理由だけでエビフ山を崩壊させたという逸話があります
- この物語は彼女の破壊的側面と恐るべき力を表しています
象徴とシンボル
- 八芒星
- ライオン
- 金星
文化的影響
- イシュタル(またはイナンナ)は後世の他文化にも影響を与えました。例えば、カナン神話のアスタルトやギリシア神話のアフロディーテ、ローマ神話のウェヌス(ビーナス)などと類似性があります
- 彼女の多面的な性格(愛、美、戦争)は現代でもフィクションや芸術作品で取り上げられることがあります
作品例
イシュタル『エルシャダイ』
ゲーム『エルシャダイ』におけるイシュタル(イシュタール)は、原作のメソポタミア神話とは異なる独自の設定が与えられています。
- 1. 天界の戦士としての起源
- イシュタルは元々、天界の戦士でしたが、異次元獣「ジュリア」として創造されました
- しかし「失敗作」とみなされ、世界を見届ける役目を与えられる存在となります
- 2. 堕天使セムヤザとの関係
- グリゴリ(堕天使たち)のトップであるセムヤザが堕天するきっかけを作った存在です
- セムヤザとの間に最初のネフィリム(名前はレム)を産みましたが、レムが穢れに飲み込まれることを防ぐため、自ら浄化の力を使い燃え尽きてしまいます
- 3. 魂の彷徨
- その後、セムヤザによって魂は冥界を彷徨うことになり、物語において重要な存在として描かれます
- 4. 伝説的な存在
- イシュタルは「伝説の勇者」としても語られ、彼女の魂や存在が物語全体に深く関わっています
エルシャダイにおけるイシュタルの特徴と象徴は以下のとおりです。
- 悲劇的な存在
- 彼女は愛と犠牲の象徴であり、その行動や運命には深い悲劇性が込められています
- 浄化の力
- 自ら浄化の力を持ち、それを使用することで他者や世界を守ろうとする姿勢が描かれています
- 堕天使たちとの関係性
- 特にセムヤザとの関係が重要であり、彼女の存在が堕天使たちやネフィリムの誕生に影響を与えています
- ゲーム内での役割
- 『エルシャダイ』では、イシュタルは物語全体において象徴的な役割を果たしつつも、その詳細な描写は断片的です
- 彼女は堕天使たちや主人公イーノックとの関係性を通じて、物語に深みとテーマ性を与えています
『エルシャダイ』におけるイシュタルは、原典であるメソポタミア神話からインスピレーションを受けつつも、独自の設定と物語的役割が付与されています。その結果、彼女は愛と犠牲、そして浄化という
テーマを体現する重要なキャラクターとして描かれています。
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最終更新:2025年01月12日 19:48