ワタツミ(綿津見神)
ワタツミ(綿津見神)は、
日本神話に登場する
海の神であり、海そのものを象徴する存在です。
その名は「海の神霊」を意味し、日本の自然信仰や海洋文化に深く根ざしています。
概要
ワタツミの名前と意味
- 語源
- 「ワタ」は海を表す古語
- 「ツ」は「の」を意味する上代語の助詞
- 「ミ」は神霊や神格を指します
- したがって、「ワタツミ」は「海の神霊」という意味になります
- 表記
- 『古事記』では「綿津見神」、『日本書紀』では「少童命(わたつみのみこと)」や「海神」とも記されます
- 「ワタツミ」という表記も一般的で、現代では同義として使われます
神話におけるワタツミ
- 1. 神産みの段
- ワタツミは、イザナギとイザナミが多くの神々を生んだ「神産み」の段階で誕生したとされます
- この場合、ワタツミは海全体を司る主宰神として描かれています
- 2. 禊ぎによる誕生
- イザナギが黄泉(よみ)の国から戻り、身を清めるために海で禊ぎを行った際に、「綿津見三神」が誕生しました。
- ソコツワタツミ(底津綿津見神): 海底を司る
- ナカツワタツミ(中津綿津見神): 海中を司る
- ウワツワタツミ(上津綿津見神): 海面を司る
- この三柱は、海の異なる領域を守護する存在であるとされています。
- 3. 海幸・山幸伝説
- ワタツミは『古事記』や『日本書紀』に登場する「海幸・山幸」の物語にも重要な役割を果たします。
- 山幸彦(ホオリノミコト)が兄・海幸彦から借りた釣り針を失い、それを探すために訪れたのが「綿津見の宮」でした
- ワタツミは山幸彦を歓迎し、娘の豊玉姫と結婚させて釣り針を取り戻す手助けをします
- この物語では、ワタツミが海底宮殿に住む高貴な存在として描かれています
信仰と役割
- 1. 海洋文化との結びつき
- ワタツミは漁業や航海安全、豊漁祈願など、海に関わる人々の生活と密接に結びついています
- 古代日本では、特に海人族(安曇氏など)によって祖神として崇拝されました
- 2. 祓えの神
- 禊ぎによって誕生した背景から、「穢れ」を清める力を持つ祓えの神としても信仰されています
- 海水や塩が浄化の象徴とされる由来にも関連しています
- 3. 農業との関係
- 海だけでなく農業用水とも関連があり、水全般を支配する存在としても認識されていました
- その他の役割
- ワタツミは、日本神話における重要な「海の神霊」であり、その役割は単なる自然現象としての海だけでなく、人々の日常生活や精神的な浄化とも深く結びついています
- 特に漁業や航海だけでなく、水全般への信仰や祓えとの関連性も強調されており、日本文化における「水」の重要性を象徴する存在です
代表的なエピソード
- 豊玉姫との関係
- 豊玉姫はワタツミの娘であり、山幸彦と結婚して子供(ウガヤフキアエズ)をもうけます
- この結婚は天孫系統(天津神)と地上系統(国津神)の融合を象徴するとされています
祀られている場所
- 1. 志賀海神社(福岡県)
- ワタツミ信仰の総本社とされる。安曇氏によって祀られた歴史があり、航海安全や漁業繁栄が祈願されます
- 2. 住吉大社(大阪府)
- ワタツミ三神と関連する住吉三神が祀られており、航海安全や水運守護で知られる
- 3. 穂高神社(長野県安曇野市)
- 内陸部にもかかわらず、安曇氏によって綿津見三神が祀られています
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最終更新:2025年01月12日 21:03