ベルゼブブ

ベルゼブブ

ベルゼブブ(Beelzebub)は、ユダヤ教キリスト教の伝承における悪魔の一人で、「ハエの王」として知られています。

ベルゼブブの概要

ベルゼブブは元々豊穣と生命を司る神でしたが、宗教的対立によってその地位が貶められ、「邪神」から「悪魔」へと変容しました。
その歴史は単なる悪魔像以上に、宗教間の対立や価値観の変遷を反映しています。また、現代ではフィクション作品でも頻繁に登場し、多様な解釈で親しまれる存在となっています。
起源と名前の由来
  • ベルゼブブの前身は、古代カナン地方で崇拝されていた神「バアル・ゼブル」(Ba‘al Zəḇûl)です
  • この名前は「気高き主」や「高き館の主」を意味し、嵐や慈雨を司る豊穣の神として信仰されていました
  • しかし、ヘブライ人がカナンに入植した際、この神を嫌い侮蔑的に「バアル・ゼブブ」(Ba‘al Zəḇûḇ)と呼びました
  • これは「ハエの王」や「糞山の王」を意味し、旧約聖書では邪神として扱われています
旧約聖書
  • 『列王記下』第1章では、北イスラエル王国のアハズヤ王が病を治すためにバアル・ゼブブに神託を求めたことが記されています
  • これに対し預言者エリヤは、ヤハウェを軽視したとして王を非難し、その死を予言しました[2][3]。
新約聖書
  • 『マタイ福音書』や『ルカ福音書』では、ベルゼブル(Beelzebul)という名で登場し、「悪霊の頭」とされています
  • イエスが奇跡を行う際、律法学者たちは彼がベルゼブルの力を借りていると非難しました
悪魔としての地位と役割
  • ベルゼブブは地獄において重要な地位を持つ悪魔とされ、サタンに次ぐ権力者ともいわれます
  • 一部ではサタンを凌ぐ実力を持つとも伝えられています
  • 七つの大罪では「暴食」を司る存在とされ、人間に性欲や争い、嫉妬心を煽る役割も担っています
  • 天使として堕天する前は熾天使または智天使だったとされ、ルシファーサタン)の右腕として仕えていたという説もあります
象徴と姿
  • ベルゼブブは一般的に巨大なハエや羽虫の姿で描かれることが多く、そのイメージは19世紀の『地獄の辞典』(コラン・ド・プランシー著)によって定着しました
  • この描写では羽根に髑髏模様がある毒虫として表現されています
  • 一方、『失楽園』(ジョン・ミルトン著)では威厳ある賢王として描かれるなど、多様な姿が語られています
文化的影響
ベルゼブブは文学や芸術、ゲームなどさまざまな作品で取り上げられています。
  • 小説『蠅の王』では、人間社会における混乱や堕落を象徴する存在として暗示的に用いられています
  • ゲームや漫画では、「暴食」の象徴としてキャラクター化されることもあり、その姿や性格は作品によって異なります(例: 『鬼灯の冷徹』や『ベルゼブブ嬢のお気に召すまま』)

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最終更新:2025年02月04日 09:12