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セブンスカラー
セブンスカラー
今回のあらすじを担当する林張ッス。前回は藤正君がシードゥス化する事件が発生し、龍香ちゃんは藍ちゃんと衝突し合いながらも何とか一致団結の末敵シードゥス幹部の一人アルレシャを倒したッス。ケドその後に兄の龍賢さんの仇、トゥバンと名乗るシードゥスが出て来て...どうなる第九話!
雨が降りしきる漆黒の夜を二つの影が交差する。紫のラインの衣装を着た青年と龍のような怪物が打ち合っては離れ、離れては打ち合ってを繰り返す。
そして二人は激闘の末、互いにこれ以上は埒があかず、一撃で決めるしかないと直感する。
二人は渾身の一撃で相手を倒すために力を込めながら相手に向かって行き、そして激突する。
そして二人は激闘の末、互いにこれ以上は埒があかず、一撃で決めるしかないと直感する。
二人は渾身の一撃で相手を倒すために力を込めながら相手に向かって行き、そして激突する。
その激突の余波で地面が抉れる中二人はそれでも目の前の敵を倒すために力を出し続ける。全力を出した二人の力の均衡はしばらく保っていたもののついに崩れ...。
「...んお。寝てたか。」
眠気眼を擦りながらトゥバンが目覚める。辺りは瓦礫だらけ、破壊の後がそこら中にあり、中には青い制服を着た警官らしき人達が倒れているのが見える。
「懐かしい夢だな...。」
トゥバンは背筋を伸ばして、軽くストレッチをするとゆっくりと立ち上がる。すると後ろの方から声をかけられる。
「一方的な虐殺は楽しい?トゥバン?」
「いや全然。」
後ろから声をかけたのは一人の女性...人間に擬態したアンタレスだ。アンタレスの質問に本当に退屈と言わんばかりにトゥバンは答える。
「けど、プロウフの奴に長年戦闘を禁じられてたからな。こうやってブランクを埋める作業をしてんのよ。後ちゃんと自分に縛りを課してんだぜ?俺に一発でも当てたらその箇所を自分で削ぐんだ。アイツらの武器は俺達には効かないからな。」
「それにしたって警察署を襲う?派手にやり過ぎだわ。」
今トゥバンが立っている場所。そこは警察署“だった”場所であった。無惨にも建物は崩れ、辺りには野次馬やテレビ局らしきものがざわざわと騒いでいる。
「しょえがねぇだろ?俺のブランクを埋められそうなのがコイツらしかいなかったんだから。それに邪魔に入られても面倒だしな。お前らシードゥス相手でも良かったがそういうのは絶対にプロウフが許さねぇだろう?」
「そうね。プロウフは許さないしそれに多分私以外は全員本気でアンタを殺しに来ると思うわ。」
アンタレスに言われるとトゥバンはやれやれと嘆息する。
「俺も嫌われたモンだ。まぁ、完全にとは言わんがそれなりにカンは取り戻せた。そろそろ行くとするか。」
「言っとくけどこれ以上派手に動くのは止めてよね。プロウフもそろそろキレるかも。アンタもレグルスみたいになりたくはないでしょ?」
「分かった分かった。いくらなんでもそいつはごめんだからな。大人しく引き下がるよ。」
アンタレスの若干脅しの入った言葉にトゥバンは首を横に振ると、渋々と歩いて残骸の向こうへと消えていく。
「全く...」
「お困りのようですね。」
アンタレスが声がした方に振り向くとそこには冠を被った外見の怪物、ゲンマがいた。
「トゥバンの事は私が見ておきましょうか。わざわざツォディアである貴方が出向く程でもないでしょう?」
「...言っとくけど手柄の横取りをしようとしても無駄だと思うわ。アイツそういうの嫌いだし。」
「そんなまさか。イチシードゥスとして心配してるだけですよ。」
「どうだか。ま、忠告しといてあげる。アイツの戦闘の邪魔したり獲物を横取りしようモンならアンタが殺されるかもよ。」
ゲンマにそう返すとアンタレスは消えていくトゥバンの背中を見ながら続くように残骸の向こうに消える。残ったのは残骸と倒れた警察官達だけであった。
眠気眼を擦りながらトゥバンが目覚める。辺りは瓦礫だらけ、破壊の後がそこら中にあり、中には青い制服を着た警官らしき人達が倒れているのが見える。
「懐かしい夢だな...。」
トゥバンは背筋を伸ばして、軽くストレッチをするとゆっくりと立ち上がる。すると後ろの方から声をかけられる。
「一方的な虐殺は楽しい?トゥバン?」
「いや全然。」
後ろから声をかけたのは一人の女性...人間に擬態したアンタレスだ。アンタレスの質問に本当に退屈と言わんばかりにトゥバンは答える。
「けど、プロウフの奴に長年戦闘を禁じられてたからな。こうやってブランクを埋める作業をしてんのよ。後ちゃんと自分に縛りを課してんだぜ?俺に一発でも当てたらその箇所を自分で削ぐんだ。アイツらの武器は俺達には効かないからな。」
「それにしたって警察署を襲う?派手にやり過ぎだわ。」
今トゥバンが立っている場所。そこは警察署“だった”場所であった。無惨にも建物は崩れ、辺りには野次馬やテレビ局らしきものがざわざわと騒いでいる。
「しょえがねぇだろ?俺のブランクを埋められそうなのがコイツらしかいなかったんだから。それに邪魔に入られても面倒だしな。お前らシードゥス相手でも良かったがそういうのは絶対にプロウフが許さねぇだろう?」
「そうね。プロウフは許さないしそれに多分私以外は全員本気でアンタを殺しに来ると思うわ。」
アンタレスに言われるとトゥバンはやれやれと嘆息する。
「俺も嫌われたモンだ。まぁ、完全にとは言わんがそれなりにカンは取り戻せた。そろそろ行くとするか。」
「言っとくけどこれ以上派手に動くのは止めてよね。プロウフもそろそろキレるかも。アンタもレグルスみたいになりたくはないでしょ?」
「分かった分かった。いくらなんでもそいつはごめんだからな。大人しく引き下がるよ。」
アンタレスの若干脅しの入った言葉にトゥバンは首を横に振ると、渋々と歩いて残骸の向こうへと消えていく。
「全く...」
「お困りのようですね。」
アンタレスが声がした方に振り向くとそこには冠を被った外見の怪物、ゲンマがいた。
「トゥバンの事は私が見ておきましょうか。わざわざツォディアである貴方が出向く程でもないでしょう?」
「...言っとくけど手柄の横取りをしようとしても無駄だと思うわ。アイツそういうの嫌いだし。」
「そんなまさか。イチシードゥスとして心配してるだけですよ。」
「どうだか。ま、忠告しといてあげる。アイツの戦闘の邪魔したり獲物を横取りしようモンならアンタが殺されるかもよ。」
ゲンマにそう返すとアンタレスは消えていくトゥバンの背中を見ながら続くように残骸の向こうに消える。残ったのは残骸と倒れた警察官達だけであった。
「...随分と派手にやるわね。」
謎の襲撃者に騒然とするニュースを見ながら山形が呟く。会議室には龍香、雪花、黒鳥、嵩原を除いた全員が顔を合わせている。
「警察もこれじゃ機能停止ね。」
「元々アテにしてないですけどね。」
「けど何だっていきなり警察署なんて襲ったんでしょうか?」
火元が疑問を口にする。。確かに今までのシードゥスは水面下では活動していたようだが表舞台に干渉ないしは仕掛けることはほぼ無かった。だが今回画面の向こうで暴れているシードゥスはそんなことはお構い無しのような行動を取っている。
「シードゥスもいよいよ本腰を入れてきたってことかしら。」
その言葉に全員の脳裏に数日前に現れたシードゥス、トゥバンがよぎる。カノープス曰く二年前に当時“新月”最高戦力だった紫水龍賢を撃ち破った猛者だ。それだけで龍賢の強さを知っている全員が悲観的な気持ちになる。
だが山形は全員に言う。
「...私達が怯んでいても仕方ないわ。せめて彼らが勝てるよう精一杯サポートをするだけよ。あと林張君。」
「何スか。」
「今回ばかりは嵩原にも出て貰うわ。後で彼に出撃待機するように連絡しといて。」
「...ッ。けど嵩原さんは。」
「前線には出さないわ。彼には撤退の判断とサポートをして貰うだけよ。」
「...うッス。連絡しときます。」
嵩原の身体の具合を知っている山形から嵩原への直々の出撃待機命令。事の重大さを痛感した全員の緊張が高まる。
「皆。よろしく頼んだわよ。」
謎の襲撃者に騒然とするニュースを見ながら山形が呟く。会議室には龍香、雪花、黒鳥、嵩原を除いた全員が顔を合わせている。
「警察もこれじゃ機能停止ね。」
「元々アテにしてないですけどね。」
「けど何だっていきなり警察署なんて襲ったんでしょうか?」
火元が疑問を口にする。。確かに今までのシードゥスは水面下では活動していたようだが表舞台に干渉ないしは仕掛けることはほぼ無かった。だが今回画面の向こうで暴れているシードゥスはそんなことはお構い無しのような行動を取っている。
「シードゥスもいよいよ本腰を入れてきたってことかしら。」
その言葉に全員の脳裏に数日前に現れたシードゥス、トゥバンがよぎる。カノープス曰く二年前に当時“新月”最高戦力だった紫水龍賢を撃ち破った猛者だ。それだけで龍賢の強さを知っている全員が悲観的な気持ちになる。
だが山形は全員に言う。
「...私達が怯んでいても仕方ないわ。せめて彼らが勝てるよう精一杯サポートをするだけよ。あと林張君。」
「何スか。」
「今回ばかりは嵩原にも出て貰うわ。後で彼に出撃待機するように連絡しといて。」
「...ッ。けど嵩原さんは。」
「前線には出さないわ。彼には撤退の判断とサポートをして貰うだけよ。」
「...うッス。連絡しときます。」
嵩原の身体の具合を知っている山形から嵩原への直々の出撃待機命令。事の重大さを痛感した全員の緊張が高まる。
「皆。よろしく頼んだわよ。」
学校の休み時間。いつもなら龍香はかおりや友人達と談笑しているのだが龍香はいつもと違って先程から落ち着きがなく、常にソワソワしている。
それを堪りかねた雪花が龍香に指摘する。
「...さっきから鬱陶しいわね。落ち着きなさいよ。」
「...でも。」
「...そりゃ家族の仇を前にした気持ちは分からなくはないケド。」
そう。今から龍香達が戦う相手は二年前自分の兄を倒した怪物なのだ。龍香の気持ちが不安定になるのも仕方がない。
「...カノープス。アンタはあのシードゥスと戦った事があるんだっけ?」
《あぁ。奴とは二年前に戦った...その上で言っておくが...奴は強い。今はどれ程か知らんが二年前でも前に戦ったアルレシャよりも強い。俺達がまとめてかかって倒せるかどうかも怪しい。》
「そんなに強いの...?」
龍香の問いにカノープスは沈黙を持って肯定する。
「ふん。そんなに弱気でどーすんのよ。いずれ絶対に戦わなきゃいけないのよ?ブッ潰す位の気持ちでいかなきゃ、やる前から気持ちで負けてちゃ勝てるもんも勝てないわよ。」
藍は沈痛な面持ちの二人に言い聞かせるように言う。
《そりゃそうだが...。》
「?何の話をしてるの?」
突然会話に入ってきたかおりに二人の心臓が跳ね上がる。
「何か男の人の声がしなかった?」
「い、いやいやいや!き、気のせいだよ!!」
「そ、そうよ。私達が男の声なんて出せる訳ないじゃない。」
「...?聞こえた気がしたんだけどなぁ。」
二人は一緒になって誤魔化す。その誤魔化しにかおりは小首をかしげながらも特に追及するのをやめる。
「と言うか会ってまだそんなに経ってないのに二人ともスゴい仲良くなったね。」
「え?そ、そうかなぁ。」
「私がコイツと?」
「うん。二人で会話すること多いなぁって思って。」
雪花が転校してきてから二人肩を並べて戦っているのだから当然と言えば当然だが、そんなことをかおりが知る由もない。だが二人も言われてみて確かに、と自覚する。
「だって雪花ちゃんと私はもう友達だしね!」
自覚した龍香は何となく言ってみる。まぁ素直ではない雪花のことだ。友達ではないとバッサリ切り捨てられるだろうと薄々思ってはいると。
「...まぁ、そういうことにしとくわ。」
まさかの肯定。あのツンケンしている雪花が龍香を友達であると肯定したことに龍香の目が丸くなる。
「へー、やっぱそうなんだなぁ。良いなぁ。ねぇねぇ、雪花さん。じゃあ私とも友達になろうよ。」
「え。あ、うん。...良いんじゃないかしら。」
「ホント?じゃあ今度から私のこと呼ぶときかおりでい全然大丈夫だから!」
これまたあっさり承諾。何だか今日の雪花は優しい。そんな雪花に龍香は尋ねてみる。
「ねぇ。雪花ちゃん。」
「何?」
「今日変なモノでも食べた?何か優しすぎて気味悪いんだけど...。」
次の瞬間容赦ないグーが龍香の顔面にめり込んだ。
それを堪りかねた雪花が龍香に指摘する。
「...さっきから鬱陶しいわね。落ち着きなさいよ。」
「...でも。」
「...そりゃ家族の仇を前にした気持ちは分からなくはないケド。」
そう。今から龍香達が戦う相手は二年前自分の兄を倒した怪物なのだ。龍香の気持ちが不安定になるのも仕方がない。
「...カノープス。アンタはあのシードゥスと戦った事があるんだっけ?」
《あぁ。奴とは二年前に戦った...その上で言っておくが...奴は強い。今はどれ程か知らんが二年前でも前に戦ったアルレシャよりも強い。俺達がまとめてかかって倒せるかどうかも怪しい。》
「そんなに強いの...?」
龍香の問いにカノープスは沈黙を持って肯定する。
「ふん。そんなに弱気でどーすんのよ。いずれ絶対に戦わなきゃいけないのよ?ブッ潰す位の気持ちでいかなきゃ、やる前から気持ちで負けてちゃ勝てるもんも勝てないわよ。」
藍は沈痛な面持ちの二人に言い聞かせるように言う。
《そりゃそうだが...。》
「?何の話をしてるの?」
突然会話に入ってきたかおりに二人の心臓が跳ね上がる。
「何か男の人の声がしなかった?」
「い、いやいやいや!き、気のせいだよ!!」
「そ、そうよ。私達が男の声なんて出せる訳ないじゃない。」
「...?聞こえた気がしたんだけどなぁ。」
二人は一緒になって誤魔化す。その誤魔化しにかおりは小首をかしげながらも特に追及するのをやめる。
「と言うか会ってまだそんなに経ってないのに二人ともスゴい仲良くなったね。」
「え?そ、そうかなぁ。」
「私がコイツと?」
「うん。二人で会話すること多いなぁって思って。」
雪花が転校してきてから二人肩を並べて戦っているのだから当然と言えば当然だが、そんなことをかおりが知る由もない。だが二人も言われてみて確かに、と自覚する。
「だって雪花ちゃんと私はもう友達だしね!」
自覚した龍香は何となく言ってみる。まぁ素直ではない雪花のことだ。友達ではないとバッサリ切り捨てられるだろうと薄々思ってはいると。
「...まぁ、そういうことにしとくわ。」
まさかの肯定。あのツンケンしている雪花が龍香を友達であると肯定したことに龍香の目が丸くなる。
「へー、やっぱそうなんだなぁ。良いなぁ。ねぇねぇ、雪花さん。じゃあ私とも友達になろうよ。」
「え。あ、うん。...良いんじゃないかしら。」
「ホント?じゃあ今度から私のこと呼ぶときかおりでい全然大丈夫だから!」
これまたあっさり承諾。何だか今日の雪花は優しい。そんな雪花に龍香は尋ねてみる。
「ねぇ。雪花ちゃん。」
「何?」
「今日変なモノでも食べた?何か優しすぎて気味悪いんだけど...。」
次の瞬間容赦ないグーが龍香の顔面にめり込んだ。
「嵩原先生。」
「おや、雨宮先生。お疲れ様です。」
休み時間もそろそろ終わろうとしており、担当する教室に向かう途中に後ろから同僚の雨宮に話しかけられ、嵩原は後ろへと向き直る。
「先生はこれからどちらへ?」
「私は音楽の授業があるのでこれから音楽室です。そう言えば嵩原先生はクラシックとか好きです?」
「ええ。と言ってもそこまで詳しい訳ではありませんが。」
嵩原がそう答えると雨宮は一瞬、戸惑った後勇気を振り絞って嵩原に二枚のチケットを差し出す。
「これは...?」
「そ、その。もし、よろしければ先日助けて貰ったお礼に、来週ここのコンサートホールで演奏があるそうなのでご一緒に聞きに行きませんか...?」
雨宮の提案に嵩原は一瞬虚を突かれてキョトンとするが、クスッと微笑んでそのチケットを受け取る。
「分かりました。是非ご一緒させて下さい。」
嵩原がそう答えると雨宮の顔が嬉しそうに綻ぶ。
「ほ、ホントですか!」
「ええ。勿論です。」
「あ、ありがとうございます!では、そろそろ授業なので!」
嬉しそうに去っていく雨宮を見ながら嵩原も授業に向かうために、貰ったチケットを眺めた後丁寧に畳んでポケットにしまうと教室へと向かった。
その足取りは軽く、どこか嬉しそうであった。
「おや、雨宮先生。お疲れ様です。」
休み時間もそろそろ終わろうとしており、担当する教室に向かう途中に後ろから同僚の雨宮に話しかけられ、嵩原は後ろへと向き直る。
「先生はこれからどちらへ?」
「私は音楽の授業があるのでこれから音楽室です。そう言えば嵩原先生はクラシックとか好きです?」
「ええ。と言ってもそこまで詳しい訳ではありませんが。」
嵩原がそう答えると雨宮は一瞬、戸惑った後勇気を振り絞って嵩原に二枚のチケットを差し出す。
「これは...?」
「そ、その。もし、よろしければ先日助けて貰ったお礼に、来週ここのコンサートホールで演奏があるそうなのでご一緒に聞きに行きませんか...?」
雨宮の提案に嵩原は一瞬虚を突かれてキョトンとするが、クスッと微笑んでそのチケットを受け取る。
「分かりました。是非ご一緒させて下さい。」
嵩原がそう答えると雨宮の顔が嬉しそうに綻ぶ。
「ほ、ホントですか!」
「ええ。勿論です。」
「あ、ありがとうございます!では、そろそろ授業なので!」
嬉しそうに去っていく雨宮を見ながら嵩原も授業に向かうために、貰ったチケットを眺めた後丁寧に畳んでポケットにしまうと教室へと向かった。
その足取りは軽く、どこか嬉しそうであった。
「悪かったわね。仇が現れたからアンタも気苦労してると思ったからよかれと思って気を遣ってちゃって。」
「ご、ごめんって...。」
先程の無遠慮な発言を龍香が謝るが雪花はムクれたまま聞く耳を持たない。
「だって雪花ちゃんが素直に認めてくれると思わなかったんだもん。」
「ハイハイ。いつも素直になれなくて悪うございましたわね。」
「ごめんってぇ...」
龍香が雪花に謝りながら一緒に帰ろうとすると、後ろから声がする。
「お、二人とも今から帰るの?なら一緒に帰ろーよ。」
後ろから声をかけたのは桃井かおりだ。
「かおり!」
「あら、二人ともまだ仲直りしてないの?」
「うん...。」
「雪花さん。龍香も悪気があった訳じゃないし、その辺にしておいてあげて。」
龍香を慰めるかおりにそう言われると雪花はプイッとそっぽを向く。
「ふん。全くどーいう育ちをしてんだか。」
「え。昔から龍香はいい子だけど...。」
「アンタが甘やかすからか!」
なんて言いながら雪花達三人は帰り道を歩く。その中でふとかおりは思いついたように言う。
「それにしてもあの河原に行った時から龍香なんか変わったわよね。」
「あの河原...?」
雪花に尋ねられるとかおりは答える。
「そ、そこにいるって噂のお化け探しに行った時に行ったの。ねー、龍香。」
「うん。」
かおりの後ろで龍香は頭のカノープスを指差す。それで雪花は河原で何が起こったのか何となく察する。
「その時私何か寝ちゃったみたいで不思議だったのよね。確かにあの時巨人を見た気がするんだけどなー。」
「ははは。夢だと思うけどなー。」
「うーん。」
龍香の言葉にかおりは不服気味に唸る。どうやらかおりがシードゥスに襲撃されたことは隠しているようだ。
「なーんか藤正の奴も最近は怪物関連に消極的だし。」
藤正も自身が怪物に変身したあの事件が流石にショックだったのか事件以降怪物関連の話をするのは避けるようになった。勿論かおりがそんなこと知る由もないが。
「そうだ!せっかくだから件の河原に行ってみようよ!また何かあるかも!」
「うーん。私は良いけど雪花ちゃんは...」
龍香が恐る恐る雪花に振り向くと雪花はちょっと考えた後、そっぽを向きながら答える。
「...今回はかおりに免じて許してあげる、次はないからね。」
雪花も流石にもう怒りは収まったようでそう言うと二人に着いてくる。
河原に来たのは始めてカノープスと会って変身した時、そしてアケルナルと呼ばれる怪物を倒した時なのでこれで三回目となる。
カノープスと会ったり、ここで初めて雪花と友情を深めたりと何となく思い出深い場所だ。
雪花も何となく思うところが会ったようで静かに河原に流れる河を見つめている。
「ここって不思議スポットでね!何でも数日前に巨大な水の巨人が出たらしいよ!」
「へ、へー。」
「そうなの、知らなかったわー。」
「何で棒読み?」
勿論二人はその正体を知っている。が、言えるハズもなくハハと笑ったりして誤魔化している時だった。
ピリッと。龍香の背筋に電流が走ったような感覚が襲う。
そして反射的に龍香が振り返るとそこには龍のような形の鎧を纏った外見をした因縁の怪物、トゥバンがいた。
「よぉ。お前のコト社長サンから聞いて探したんだぜ?」
「ッ!」
「どうしたの龍...えっ!?」
怪物を見てかおりが悲鳴を上げる。龍香と雪花はすぐさま変身しようとするが後ろにかおりがいることに気がついて変身するのを止めて身構える。
「こんな時に...!」
「ま、また怪物!?」
「かおりは後ろに下がって!」
トゥバンは自分が現れたのに一向に変身しない二人を見て不思議がるような挙動をする。
「...?何故変身しない?」
トゥバンは歯噛みをする二人を見ながら後ろにいるかおりを見て、少し考えた後合点がいったようでポンと手を叩く。
「成る程そういうことか。」
するとトゥバンはかおりを睨み付け、恐ろしい程の迫力の暴力的な殺気を彼女にぶつける。ただの一般人であるかおりがその殺気をまともに受けては意識を保つことは出来ず、すぐに意識を失ってしまう。一睨みするだけでかおりを気絶させたことで龍香と雪花に戦慄が走る。
「かおり!」
「さて。これで心置きなく変身出来るだろ。さぁヤりあおうぜ。随分と待たされてこっちはウズウズしてんだよ。」
「くっ!龍香はかおりを安全な場所まで連れて行きなさい!私がコイツを相手するわ!」
《いや、コイツとタイマンを張るのは危険だ!俺達も》
「早く行きなさい!一般人のかおりを傷つける訳にいかないでしょ!」
「う、うん!」
龍香は変身するとかおりを抱えて素早くその場から離れる。
「おっといいのかい?俺は二体一でも全然構わんが?」
「シードゥスの言うことなんか信用出来るか!」
そして雪花は素早く頭のペンダント“デイブレイク”に触れると鎧を身に纏い、右手に“モルゲン”を構え間髪入れずにトゥバンに向けて発砲する。
「いきなりか!好きだぜそういうの!」
そう言いながらトゥバンは手にした岩を粗く削ったような薙刀状の武器でその銃弾を弾く。さらに雪花は発砲し続ける。トゥバンは二、三発程武器で弾くと、手応えで勘づいたのか続く銃弾を手で受け止め、そしてそれすらも必要ないと見たか、全くのノーガードで銃弾を受けながら雪花との距離を詰め始める。
「何ですって!?」
「ハハッ!」
トゥバンは間合いを詰めると一気に薙刀を振り上げ、雪花へ向けて振るう。しかし雪花はもはや“モルゲン”は効かないと見切りをつけると“モルゲン”を投げ捨て両腕にチェーンソー“マタン”を装備してその一撃を受け止める。
「中々どうして、いい判断じゃないか!」
「くっ...!」
雪花はトゥバンの武器を押し返すと“マタン”を振るってトゥバンに斬りかかる。しかしトゥバンはその攻撃を全て持っている薙刀で受け止める。
「いいぞ!中々やるじゃないか!だが!」
トゥバンは武器を振るって雪花の“マタン”を弾いて一瞬の隙を作ると尻尾で雪花を叩き付ける。
「ごッ!?」
「全ッ然足りねぇなァ!」
雪花は尻尾で弾かれて地面を転がる。叩き付けられて肺から空気が抜けて呼吸が一瞬詰まる。それでも直ぐ様立ち上がって体勢を立て直そうとする。
しかしトゥバンは一瞬で距離を詰めると武器を振るう。その攻撃を雪花は“マタン”で受け止めようとするが、振るわれた一撃は“マタン”を粉々に粉砕する。
「ッ!?」
「まだ終わらねぇぞ!」
“マタン”が粉砕されたことに一瞬気が取られた雪花は続いて振るわれたトゥバンの一撃を避けることは出来なかった。振るわれた一撃は“デイブレイク”の左肩装甲を弾き飛ばし、雪花を大きく吹き飛ばす。
「うァッ...!クソッ!」
「どうしたどうした!もう終わりかァ!」
追撃の手を一切緩めずトゥバンは雪花に迫る。
雪花は“シャハル”投擲装甲貫通弾を腰部武装ラックから取り出すとトゥバンに向けて投擲する。
トゥバンはそれを弾こうと左手を振るう。しかし左手が“シャハル”投擲装甲貫通弾を殴った瞬間信管が作動し爆発する。だがトゥバンは一切怯まず爆風を切り裂いて雪花との距離を詰めると薙刀を振り上げ、その斬撃が雪花の胸部装甲の一部を削り取る。
「くッ...!?」
「逃げらんねぇぞ!」
返す刀でトゥバンが振り下ろした斬撃が雪花のスーツを切り裂き、火花が弾ける。
「コイツ...!」
何とか距離を離そうと雪花が後ろへと下がろうとするがトゥバンはそれを許さず、一気に近付き左手で雪花の首を掴んで締め上げる。
「がァッ...!ァ...!グッ....!」
「おいおい。まさかもう終わり、じゃあないよな。」
万力のような力で首を締め上げられ、雪花は徐々に呼吸が出来なくなる。口が酸素を求めて大きく開く。何とか力を振り絞ってトゥバンを殴ったり蹴ったりするが、トゥバンは全く意に貸す様子は無く、そして力を緩めない。
段々と雪花の視界が白黒と暗転し始め、意識が薄れていく。息苦しさ、姉の仇の一人にやられる屈辱、無力感...そして沸き上がる死への恐怖に雪花の目に涙が浮かぶ。
「もう終わり、か?」
「ァ...」
最早弱々しく抵抗する力がなくなった雪花を見てトゥバンはつまらなさげに溜め息をつき、首の骨を折ってトドメを刺そうとした瞬間だった。
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
怒号と共に上空から龍香が斧型武器“タイラントアックス”を振りかぶりながら襲い掛かる。
トゥバンは冷静に雪花の首から手を離してその攻撃を避ける。目標を失った一撃は地面にぶつかり、土煙を巻き上げる。
「雪花ちゃん大丈夫!?」
「ゲホッ...ゴホッ...。お、遅いのよ...。」
えづきながらも雪花は悪態を突く。傷だらけだがどうやら大丈夫らしい。
そのことに龍香はホッとすると、すぐに真剣な面持ちになりトゥバンの方に振り返る。
「兄さんと...友達を傷つけた貴方を許さない!」
「いいねぇ。今度は楽しめそうだ。」
龍香は“タイラントアックス”を、トゥバンは嬉しそうで薙刀状の武器を構える。
二年前の決着をつけるべく二人が激突した。
「ご、ごめんって...。」
先程の無遠慮な発言を龍香が謝るが雪花はムクれたまま聞く耳を持たない。
「だって雪花ちゃんが素直に認めてくれると思わなかったんだもん。」
「ハイハイ。いつも素直になれなくて悪うございましたわね。」
「ごめんってぇ...」
龍香が雪花に謝りながら一緒に帰ろうとすると、後ろから声がする。
「お、二人とも今から帰るの?なら一緒に帰ろーよ。」
後ろから声をかけたのは桃井かおりだ。
「かおり!」
「あら、二人ともまだ仲直りしてないの?」
「うん...。」
「雪花さん。龍香も悪気があった訳じゃないし、その辺にしておいてあげて。」
龍香を慰めるかおりにそう言われると雪花はプイッとそっぽを向く。
「ふん。全くどーいう育ちをしてんだか。」
「え。昔から龍香はいい子だけど...。」
「アンタが甘やかすからか!」
なんて言いながら雪花達三人は帰り道を歩く。その中でふとかおりは思いついたように言う。
「それにしてもあの河原に行った時から龍香なんか変わったわよね。」
「あの河原...?」
雪花に尋ねられるとかおりは答える。
「そ、そこにいるって噂のお化け探しに行った時に行ったの。ねー、龍香。」
「うん。」
かおりの後ろで龍香は頭のカノープスを指差す。それで雪花は河原で何が起こったのか何となく察する。
「その時私何か寝ちゃったみたいで不思議だったのよね。確かにあの時巨人を見た気がするんだけどなー。」
「ははは。夢だと思うけどなー。」
「うーん。」
龍香の言葉にかおりは不服気味に唸る。どうやらかおりがシードゥスに襲撃されたことは隠しているようだ。
「なーんか藤正の奴も最近は怪物関連に消極的だし。」
藤正も自身が怪物に変身したあの事件が流石にショックだったのか事件以降怪物関連の話をするのは避けるようになった。勿論かおりがそんなこと知る由もないが。
「そうだ!せっかくだから件の河原に行ってみようよ!また何かあるかも!」
「うーん。私は良いけど雪花ちゃんは...」
龍香が恐る恐る雪花に振り向くと雪花はちょっと考えた後、そっぽを向きながら答える。
「...今回はかおりに免じて許してあげる、次はないからね。」
雪花も流石にもう怒りは収まったようでそう言うと二人に着いてくる。
河原に来たのは始めてカノープスと会って変身した時、そしてアケルナルと呼ばれる怪物を倒した時なのでこれで三回目となる。
カノープスと会ったり、ここで初めて雪花と友情を深めたりと何となく思い出深い場所だ。
雪花も何となく思うところが会ったようで静かに河原に流れる河を見つめている。
「ここって不思議スポットでね!何でも数日前に巨大な水の巨人が出たらしいよ!」
「へ、へー。」
「そうなの、知らなかったわー。」
「何で棒読み?」
勿論二人はその正体を知っている。が、言えるハズもなくハハと笑ったりして誤魔化している時だった。
ピリッと。龍香の背筋に電流が走ったような感覚が襲う。
そして反射的に龍香が振り返るとそこには龍のような形の鎧を纏った外見をした因縁の怪物、トゥバンがいた。
「よぉ。お前のコト社長サンから聞いて探したんだぜ?」
「ッ!」
「どうしたの龍...えっ!?」
怪物を見てかおりが悲鳴を上げる。龍香と雪花はすぐさま変身しようとするが後ろにかおりがいることに気がついて変身するのを止めて身構える。
「こんな時に...!」
「ま、また怪物!?」
「かおりは後ろに下がって!」
トゥバンは自分が現れたのに一向に変身しない二人を見て不思議がるような挙動をする。
「...?何故変身しない?」
トゥバンは歯噛みをする二人を見ながら後ろにいるかおりを見て、少し考えた後合点がいったようでポンと手を叩く。
「成る程そういうことか。」
するとトゥバンはかおりを睨み付け、恐ろしい程の迫力の暴力的な殺気を彼女にぶつける。ただの一般人であるかおりがその殺気をまともに受けては意識を保つことは出来ず、すぐに意識を失ってしまう。一睨みするだけでかおりを気絶させたことで龍香と雪花に戦慄が走る。
「かおり!」
「さて。これで心置きなく変身出来るだろ。さぁヤりあおうぜ。随分と待たされてこっちはウズウズしてんだよ。」
「くっ!龍香はかおりを安全な場所まで連れて行きなさい!私がコイツを相手するわ!」
《いや、コイツとタイマンを張るのは危険だ!俺達も》
「早く行きなさい!一般人のかおりを傷つける訳にいかないでしょ!」
「う、うん!」
龍香は変身するとかおりを抱えて素早くその場から離れる。
「おっといいのかい?俺は二体一でも全然構わんが?」
「シードゥスの言うことなんか信用出来るか!」
そして雪花は素早く頭のペンダント“デイブレイク”に触れると鎧を身に纏い、右手に“モルゲン”を構え間髪入れずにトゥバンに向けて発砲する。
「いきなりか!好きだぜそういうの!」
そう言いながらトゥバンは手にした岩を粗く削ったような薙刀状の武器でその銃弾を弾く。さらに雪花は発砲し続ける。トゥバンは二、三発程武器で弾くと、手応えで勘づいたのか続く銃弾を手で受け止め、そしてそれすらも必要ないと見たか、全くのノーガードで銃弾を受けながら雪花との距離を詰め始める。
「何ですって!?」
「ハハッ!」
トゥバンは間合いを詰めると一気に薙刀を振り上げ、雪花へ向けて振るう。しかし雪花はもはや“モルゲン”は効かないと見切りをつけると“モルゲン”を投げ捨て両腕にチェーンソー“マタン”を装備してその一撃を受け止める。
「中々どうして、いい判断じゃないか!」
「くっ...!」
雪花はトゥバンの武器を押し返すと“マタン”を振るってトゥバンに斬りかかる。しかしトゥバンはその攻撃を全て持っている薙刀で受け止める。
「いいぞ!中々やるじゃないか!だが!」
トゥバンは武器を振るって雪花の“マタン”を弾いて一瞬の隙を作ると尻尾で雪花を叩き付ける。
「ごッ!?」
「全ッ然足りねぇなァ!」
雪花は尻尾で弾かれて地面を転がる。叩き付けられて肺から空気が抜けて呼吸が一瞬詰まる。それでも直ぐ様立ち上がって体勢を立て直そうとする。
しかしトゥバンは一瞬で距離を詰めると武器を振るう。その攻撃を雪花は“マタン”で受け止めようとするが、振るわれた一撃は“マタン”を粉々に粉砕する。
「ッ!?」
「まだ終わらねぇぞ!」
“マタン”が粉砕されたことに一瞬気が取られた雪花は続いて振るわれたトゥバンの一撃を避けることは出来なかった。振るわれた一撃は“デイブレイク”の左肩装甲を弾き飛ばし、雪花を大きく吹き飛ばす。
「うァッ...!クソッ!」
「どうしたどうした!もう終わりかァ!」
追撃の手を一切緩めずトゥバンは雪花に迫る。
雪花は“シャハル”投擲装甲貫通弾を腰部武装ラックから取り出すとトゥバンに向けて投擲する。
トゥバンはそれを弾こうと左手を振るう。しかし左手が“シャハル”投擲装甲貫通弾を殴った瞬間信管が作動し爆発する。だがトゥバンは一切怯まず爆風を切り裂いて雪花との距離を詰めると薙刀を振り上げ、その斬撃が雪花の胸部装甲の一部を削り取る。
「くッ...!?」
「逃げらんねぇぞ!」
返す刀でトゥバンが振り下ろした斬撃が雪花のスーツを切り裂き、火花が弾ける。
「コイツ...!」
何とか距離を離そうと雪花が後ろへと下がろうとするがトゥバンはそれを許さず、一気に近付き左手で雪花の首を掴んで締め上げる。
「がァッ...!ァ...!グッ....!」
「おいおい。まさかもう終わり、じゃあないよな。」
万力のような力で首を締め上げられ、雪花は徐々に呼吸が出来なくなる。口が酸素を求めて大きく開く。何とか力を振り絞ってトゥバンを殴ったり蹴ったりするが、トゥバンは全く意に貸す様子は無く、そして力を緩めない。
段々と雪花の視界が白黒と暗転し始め、意識が薄れていく。息苦しさ、姉の仇の一人にやられる屈辱、無力感...そして沸き上がる死への恐怖に雪花の目に涙が浮かぶ。
「もう終わり、か?」
「ァ...」
最早弱々しく抵抗する力がなくなった雪花を見てトゥバンはつまらなさげに溜め息をつき、首の骨を折ってトドメを刺そうとした瞬間だった。
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
怒号と共に上空から龍香が斧型武器“タイラントアックス”を振りかぶりながら襲い掛かる。
トゥバンは冷静に雪花の首から手を離してその攻撃を避ける。目標を失った一撃は地面にぶつかり、土煙を巻き上げる。
「雪花ちゃん大丈夫!?」
「ゲホッ...ゴホッ...。お、遅いのよ...。」
えづきながらも雪花は悪態を突く。傷だらけだがどうやら大丈夫らしい。
そのことに龍香はホッとすると、すぐに真剣な面持ちになりトゥバンの方に振り返る。
「兄さんと...友達を傷つけた貴方を許さない!」
「いいねぇ。今度は楽しめそうだ。」
龍香は“タイラントアックス”を、トゥバンは嬉しそうで薙刀状の武器を構える。
二年前の決着をつけるべく二人が激突した。
(...コンサートか。)
学校からの帰り道、嵩原は雨宮から受け取ったチケットを見ながらふと物思いに耽っていた。
ゆっくり音楽を聞くなどここ数年考えたこともなかった。
二年前のあの日、致命傷を受け、戦線離脱を余儀なくされて以降いつ来るのかもしれないシードゥスを常に警戒し続け、あの日を後悔し続ける日々であった。
だが何とか戦力を整え、“新月”も勢いを盛り返して来た。死に場所も見つけられず、“保険”としてただいるだけの自分はもう必要ないのかもしれない。この“力”も後の世代に託し、隠居生活するのも良いかもしれないと嵩原が思っていた時だった。
嵩原の携帯がけたたましく鳴り始める。
「もしもし。」
「あっ!嵩原さん!緊急ッス!」
嵩原が出ると林張の焦った態度に何か胸騒ぎを直感的に覚える。
「どうしたんだい林張君。」
「その...今龍香ちゃんと雪花ちゃんが例のシードゥスと戦闘中で、そのすぐに現場へと向かって下さい!」
その報告に嵩原は思わず持っていた鞄を落としてしまう。その報告は二年前の惨劇を嵩原の脳裏によぎらせる。
「分かった。すぐ向かうよ。」
そう言うと嵩原は駆け出した。どうやらまだまだ自分に静かな時間は訪れないらしい。さっきまで晴れていた空は曇天に包まれていた。
学校からの帰り道、嵩原は雨宮から受け取ったチケットを見ながらふと物思いに耽っていた。
ゆっくり音楽を聞くなどここ数年考えたこともなかった。
二年前のあの日、致命傷を受け、戦線離脱を余儀なくされて以降いつ来るのかもしれないシードゥスを常に警戒し続け、あの日を後悔し続ける日々であった。
だが何とか戦力を整え、“新月”も勢いを盛り返して来た。死に場所も見つけられず、“保険”としてただいるだけの自分はもう必要ないのかもしれない。この“力”も後の世代に託し、隠居生活するのも良いかもしれないと嵩原が思っていた時だった。
嵩原の携帯がけたたましく鳴り始める。
「もしもし。」
「あっ!嵩原さん!緊急ッス!」
嵩原が出ると林張の焦った態度に何か胸騒ぎを直感的に覚える。
「どうしたんだい林張君。」
「その...今龍香ちゃんと雪花ちゃんが例のシードゥスと戦闘中で、そのすぐに現場へと向かって下さい!」
その報告に嵩原は思わず持っていた鞄を落としてしまう。その報告は二年前の惨劇を嵩原の脳裏によぎらせる。
「分かった。すぐ向かうよ。」
そう言うと嵩原は駆け出した。どうやらまだまだ自分に静かな時間は訪れないらしい。さっきまで晴れていた空は曇天に包まれていた。
「うああああああ!」
龍香は叫びながら“タイラントアックス”を振るう。しかしその攻撃をトゥバンは軽々と受け止める。
「おいおいその程度かァ!?」
龍香の攻撃をいなすとトゥバンは後ろ回し蹴りで龍香を蹴り飛ばす。咄嗟に両手をクロスして防御の構えを取り、蹴りを受け止めるが大きく吹き飛ばされる。
「アルレシャを倒したんだ!その程度じゃないだろう?」
《龍香!》
「分かってる!」
吹っ飛ばされながらも龍香がカノープスに触れると服の紫色のラインが青いラインに変わり、そしてドリル状の武器“ホーンパーフォレイター”を構えた龍香はトゥバンに向けて一直線に突っ込む。
「一気に決める!ドリルディストラクション!」
攻撃のエネルギーを一点に集中させ突っ込む必殺技で早期に決着を着けるべくトゥバン目掛けて突撃する。
この必殺技は龍香の制御が効かない程の突進力を持つ一撃だ。いくらトゥバンと言えどもこの攻撃を受ければ致命傷は免れない。そう龍香は考えていた。
「はっ。正面から!ナメられたモンだな!」
“ホーンパーフォレイター”の切っ先がいよいよトゥバンの胸板を貫こうと迫った瞬間。
回転するドリルの部分をトゥバンの右手が思い切り掴む。すると龍香の勢いが完全に止まる。かつてシードゥスの迎撃ごと身体を貫いたこともある必殺の一撃を片手で止められたことに龍香は驚きを隠せない。
「えっ...!?」
掴まれたドリルの部分も最初は火花を散らしながら回転していたが、徐々に勢いを失くしていき、ついには完全に止められてしまう。
「これで終わりか?」
トゥバンはそう言うとそのまま思い切り龍香を投げ飛ばす。龍香は投げ飛ばされるものの空中で体勢を建て直し、何とか転倒は避けるが精神的に追い詰められる。
「これが通じないなんて...!」
《なら別のフォームで対応するだけだ!》
龍香はカノープスに触れると黄緑色のフォーム、アンキロカラーに変身し、戦槌“ヘビィプレッシャー”を構えるとトゥバンに殴りかかる。しかしトゥバンはその一撃をなんなくかわす。
「おいおい。そんなんじゃ俺に当てることなんて出来ないぜ?」
「この...!」
続けて“ヘビィプレッシャー”を振るうが身軽に避け続けるトゥバンを捉えることは出来ない。
何とか当てようと龍香は渾身の力を込めて“ヘビィプレッシャー”を振り上げ、トゥバンに振り下ろす。
その瞬間トゥバンがニヤリと笑ったような気がした。トゥバンは薙刀を構えるとその渾身の一撃を受け止める。
「なっ」
「おお...これはちょっと効くな...」
トゥバンはそう言いながらも受け止めた“ヘビィプレッシャー”を受け流すようにして地面へと叩き付けると龍香に武器を振るう。火花が散り、そして追撃の回し蹴りを龍香の腹部に叩き込む。
「がっ...!?」
龍香は地面を転がる。腹部への衝撃に龍香は思わず嗚咽を漏らす。
「おいおい。まだあるだろ?休んでる場合じゃないぜ?」
トゥバンは余裕たっぷりと言った風に薙刀状の武器を地面に突き刺してお腹を押さえる龍香を見下ろす。
《接近戦じゃ分が悪いか...!?》
「な、なら!」
龍香はオレンジ色の姿、プレシオカラーに変化すると鞭“インパルススウィング”を構える。それを見てトゥバンはヒュゥと口笛を吹く。
「今回は随分と衣装持ちだなカノープス。」
「このっ!」
龍香は“インパルススウィング”を振るうとトゥバンの薙刀へと巻き付ける。
「ほぉ。」
そして龍香は思い切り“インパルススウィング”を引っ張って薙刀をトゥバンからブン取って投げ捨てる。
「何ッ!」
「武器さえ奪えば!」
龍香は再び“インパルススウィング”を振るってトゥバンの右腕に巻き付けて拘束する。今度はトゥバンの動きを制限しようと言う狙いだ。
「おっとぉコイツはマズイなァ...!」
「はああああああ!」
龍香がトゥバンを投げ飛ばそうと構え直した瞬間だった。再びニヤリとトゥバンは笑う。
「なーんつってな。」
トゥバンは逆に“インパルススウィング”を握ると力を込めて思い切り引っ張る。その豪腕に引っ張られ今度は龍香が宙を舞うことになった。
「なっ」
「全部演技だよ!!」
トゥバンはその剛腕で宙に浮いた龍香を河へと叩き付ける。大きな水飛沫が上がり、龍香も河原の底に叩き付けられ、その衝撃が全身を襲い、“インパルススウィング”を手放してしまう。
「ガホッゴホッ!」
「おいおい。お前の兄はこんなモンじゃなかったぞ?ガッカリさせないでくれ。」
トゥバンは腕に巻き付いた“インパルススウィング”をほどいてポイと投げ捨てながら言う。
「ま、まだ!まだまだ!」
龍香は赤色のスピノカラーに変身すると銃“フォノンシューター”をトゥバンに向けて撃ちまくる。
振動の塊が次々とトゥバンに当たり、地面にも外れた弾が当たり粉塵が巻き上がる。土煙が舞い、トゥバンが見えなくなっても龍香は撃ち続け、そして最後に必殺技の渾身のエネルギーを溜め込んだ“スパイラルショット”をトゥバンな撃ち込んだ。
「ふん。」
だが渾身の一撃をトゥバンはアッサリと拳で弾く。弾かれた一撃はトゥバンの後ろで爆発する。
あんなに攻撃を撃ち込んだのにトゥバンの身体には傷一つない。
「そ、そんな...。」
「おいおい。お前の力はそんなモンか?」
ティラノ、トライセラ、アンキロ、プレシオ、スピノ。今まで数々のシードゥスを倒してきた攻撃が一切通用しない。果たして残ったプテラ、ヴェロキが奴に通用するのかも怪しい。あまりの実力の差に龍香に絶望が差す。
「ど、どうすれば...。」
《くっ...やはり早かったか...?》
引け腰になる龍香を見てトゥバンはやれやれと首を振る。
「おいおい。こちとら死闘を期待して来たのによ...結構ガッカリだぜ。」
もはや飽きたと言わんばかりにトゥバンは薙刀を拾うと龍香へと距離を詰めていく。
「ひっ」
龍香は思わず悲鳴を上げて後ずさる。攻撃が一切通用せずこちらに歩を進めるトゥバンがあまりにも恐ろしくて仕方なかった。恐怖にすくむ龍香にトゥバンが詰め寄って行こうとした瞬間。
何処からともなく飛んで来たエネルギーの塊がトゥバンを襲った。
「何ッ!」
トゥバンはすぐに薙刀を構えて防御するが大きくぶっ飛んで爆発する。
「え...」
見ればそこには自身の背丈程もあるプラズマ砲“ヘオース”を構えた雪花がいた。
「雪花ちゃん...?」
「へっ、ザマーみなさい。私を倒したと思ってナメてたツケよ。」
雪花が吐き捨てるように言う。雪花も追い詰められて死ぬような思いをしたハズなのにトゥバンに敢然と立ち向かっていく。そんな雪花が龍香には分からなかった。
「雪花ちゃん...怖くないの...?」
「は?何言ってんの。」
龍香の問いに雪花は答える。
「私は姉さんの思いを背負って戦ってんのよ。ビビってなんてられないわ。それにアンタは誰かを守るために戦ってるんじゃなかったの?」
「...!」
雪花の言葉に龍香はハッとさせられる。そうだ。今まで自分が戦って来たのはもう誰も目の前からいなくなって欲しくないから。それをまさか雪花が思い出させてくれるなんて。
「雪花ちゃん...」
「分かったら集中する!」
雪花の言葉と共に瓦礫を押し退け煙の中からトゥバンが現れる。流石に雪花の最大火力である“ヘオース”は効いたようであちこちに焦げ目がついてる。
トゥバンは顔を押さえながら肩を振るわせている。不意の一撃にトゥバンも気が動転したか、と思っていた時だった。
「ククッ...フッ、アッハッハッハッハッ!アーッハッハッハッハッ!イーッヒッヒッヒッヒッ!」
滅茶苦茶に爆笑し始める。まさかの態度に二人とも固まってしまうが、そんなことはお構い無しに笑い続ける。
「何?“ヘオース”を喰らっておかしくなった?」
「ヒーッヒーッ....いや、期待外れかと思ったら中々どうして....楽しませてくれるじゃないか。随分と失礼なことを言っちまったな。詫びとして。」
さっきまで笑っていたトゥバンの雰囲気がガラリと変わる。先程かおりを気絶させたのとは比べ物にならない程の殺気を放出し始める。
「ちびッと本気を出すか。」
「...ッ!」
次の瞬間殺気を感じた雪花が先手を取るべく“ヘオース”を撃つ。しかしトゥバンはそれを大きく跳躍してかわすと薙刀を構え、雪花に向けて思い切り投擲する。トゥバンの剛腕から放たれた薙刀は凄まじい速度で雪花に迫る。
雪花も何とか避けようと身を捻る。が、完全に避けきる事が出来ず放たれた槍は脇腹を削ぐ。
「ッ...!?」
脇腹を走る凄まじい痛みに雪花が顔をしかめる。だがトゥバンの勢いは止まらずそのまま落下しながら雪花に飛び膝蹴りを炸裂させる。
「がっ...」
「雪花ちゃん!」
雪花はトゥバンの飛び膝蹴りを受け、地面にめり込むように叩き付けられる。あまりの衝撃に雪花は猛烈な痛みと吐き気を覚えるがそれらを堪えながらもう片方の腰部武装ラックから“シャハル”投擲装甲貫通弾を取り出そうとした瞬間、トゥバンは雪花の左肩を思い切り踏みつけて妨害する。
「最後まで抵抗しようとするのは好きだぜ。だが。」
トゥバンがちょっと力を込めるとゴキッ、と。嫌な音が鳴り響き雪花に猛烈な痛みが襲い掛かる。
「がっ、あああああああああああああ!!?!?」
「その抵抗を一つ一つ丁寧に潰すのもまた好きだ。」
強制的に脱臼させられた雪花の悲鳴が辺りに響き渡る。悲鳴を上げながらも雪花は残った右手で自身の左肩を踏みつけるトゥバンの脚を殴るが、全く動かない。
そうしている間にもトゥバンは雪花にトドメを刺そうと己の武器を振り上げる。
「まずは一つ!」
「うああああああ!」
だがそうはさせまいとティラノカラーに戻った龍香がトゥバンに斬りかかる。しかしトゥバンはそれをも見越していたようで武器を構えるのを止めると脚を雪花から離して雪花を龍香に向けて蹴り飛ばす。
「うわわっ」
龍香は飛んできた雪花を受け止める。と、同時に距離を詰めたトゥバンが龍香へと薙刀を振るう。
「そいつを受け止める余裕があるのかい!?」
「ッ!」
雪花を受け止めたままでは回避も防御もままならない。振るわれる一撃に身構え目を閉じた瞬間だった。
「どんな時も、目ェ閉じんじゃないわよ。」
ボソッと雪花の呟きが聞こえた。次の瞬間雪花は右腕で腰部ラックの“シャハル”投擲装甲貫通弾を構えてトゥバンの斬撃を受け止める。そして信管が作動し爆発が起こる。
「雪花ちゃん!」
雪花は爆発を諸に受けて右腕の装甲が焦げ付き、気を失ったのかそのまま地面へと倒れる。
「捨て身か!」
一方のトゥバンは全くの無傷だが捨て身の反撃に虚を突かれたのか追撃を止めてバックステップで後ろへと下がる。
「そんな...私のために...」
《雪花...》
龍香は俯く。何が守るために戦うだ。友達一人守れないで何のための力だ。なら、どうする?倒すしかない。目の前の兄を殺し、友達を傷つけた敵を。
龍香は叫びながら“タイラントアックス”を振るう。しかしその攻撃をトゥバンは軽々と受け止める。
「おいおいその程度かァ!?」
龍香の攻撃をいなすとトゥバンは後ろ回し蹴りで龍香を蹴り飛ばす。咄嗟に両手をクロスして防御の構えを取り、蹴りを受け止めるが大きく吹き飛ばされる。
「アルレシャを倒したんだ!その程度じゃないだろう?」
《龍香!》
「分かってる!」
吹っ飛ばされながらも龍香がカノープスに触れると服の紫色のラインが青いラインに変わり、そしてドリル状の武器“ホーンパーフォレイター”を構えた龍香はトゥバンに向けて一直線に突っ込む。
「一気に決める!ドリルディストラクション!」
攻撃のエネルギーを一点に集中させ突っ込む必殺技で早期に決着を着けるべくトゥバン目掛けて突撃する。
この必殺技は龍香の制御が効かない程の突進力を持つ一撃だ。いくらトゥバンと言えどもこの攻撃を受ければ致命傷は免れない。そう龍香は考えていた。
「はっ。正面から!ナメられたモンだな!」
“ホーンパーフォレイター”の切っ先がいよいよトゥバンの胸板を貫こうと迫った瞬間。
回転するドリルの部分をトゥバンの右手が思い切り掴む。すると龍香の勢いが完全に止まる。かつてシードゥスの迎撃ごと身体を貫いたこともある必殺の一撃を片手で止められたことに龍香は驚きを隠せない。
「えっ...!?」
掴まれたドリルの部分も最初は火花を散らしながら回転していたが、徐々に勢いを失くしていき、ついには完全に止められてしまう。
「これで終わりか?」
トゥバンはそう言うとそのまま思い切り龍香を投げ飛ばす。龍香は投げ飛ばされるものの空中で体勢を建て直し、何とか転倒は避けるが精神的に追い詰められる。
「これが通じないなんて...!」
《なら別のフォームで対応するだけだ!》
龍香はカノープスに触れると黄緑色のフォーム、アンキロカラーに変身し、戦槌“ヘビィプレッシャー”を構えるとトゥバンに殴りかかる。しかしトゥバンはその一撃をなんなくかわす。
「おいおい。そんなんじゃ俺に当てることなんて出来ないぜ?」
「この...!」
続けて“ヘビィプレッシャー”を振るうが身軽に避け続けるトゥバンを捉えることは出来ない。
何とか当てようと龍香は渾身の力を込めて“ヘビィプレッシャー”を振り上げ、トゥバンに振り下ろす。
その瞬間トゥバンがニヤリと笑ったような気がした。トゥバンは薙刀を構えるとその渾身の一撃を受け止める。
「なっ」
「おお...これはちょっと効くな...」
トゥバンはそう言いながらも受け止めた“ヘビィプレッシャー”を受け流すようにして地面へと叩き付けると龍香に武器を振るう。火花が散り、そして追撃の回し蹴りを龍香の腹部に叩き込む。
「がっ...!?」
龍香は地面を転がる。腹部への衝撃に龍香は思わず嗚咽を漏らす。
「おいおい。まだあるだろ?休んでる場合じゃないぜ?」
トゥバンは余裕たっぷりと言った風に薙刀状の武器を地面に突き刺してお腹を押さえる龍香を見下ろす。
《接近戦じゃ分が悪いか...!?》
「な、なら!」
龍香はオレンジ色の姿、プレシオカラーに変化すると鞭“インパルススウィング”を構える。それを見てトゥバンはヒュゥと口笛を吹く。
「今回は随分と衣装持ちだなカノープス。」
「このっ!」
龍香は“インパルススウィング”を振るうとトゥバンの薙刀へと巻き付ける。
「ほぉ。」
そして龍香は思い切り“インパルススウィング”を引っ張って薙刀をトゥバンからブン取って投げ捨てる。
「何ッ!」
「武器さえ奪えば!」
龍香は再び“インパルススウィング”を振るってトゥバンの右腕に巻き付けて拘束する。今度はトゥバンの動きを制限しようと言う狙いだ。
「おっとぉコイツはマズイなァ...!」
「はああああああ!」
龍香がトゥバンを投げ飛ばそうと構え直した瞬間だった。再びニヤリとトゥバンは笑う。
「なーんつってな。」
トゥバンは逆に“インパルススウィング”を握ると力を込めて思い切り引っ張る。その豪腕に引っ張られ今度は龍香が宙を舞うことになった。
「なっ」
「全部演技だよ!!」
トゥバンはその剛腕で宙に浮いた龍香を河へと叩き付ける。大きな水飛沫が上がり、龍香も河原の底に叩き付けられ、その衝撃が全身を襲い、“インパルススウィング”を手放してしまう。
「ガホッゴホッ!」
「おいおい。お前の兄はこんなモンじゃなかったぞ?ガッカリさせないでくれ。」
トゥバンは腕に巻き付いた“インパルススウィング”をほどいてポイと投げ捨てながら言う。
「ま、まだ!まだまだ!」
龍香は赤色のスピノカラーに変身すると銃“フォノンシューター”をトゥバンに向けて撃ちまくる。
振動の塊が次々とトゥバンに当たり、地面にも外れた弾が当たり粉塵が巻き上がる。土煙が舞い、トゥバンが見えなくなっても龍香は撃ち続け、そして最後に必殺技の渾身のエネルギーを溜め込んだ“スパイラルショット”をトゥバンな撃ち込んだ。
「ふん。」
だが渾身の一撃をトゥバンはアッサリと拳で弾く。弾かれた一撃はトゥバンの後ろで爆発する。
あんなに攻撃を撃ち込んだのにトゥバンの身体には傷一つない。
「そ、そんな...。」
「おいおい。お前の力はそんなモンか?」
ティラノ、トライセラ、アンキロ、プレシオ、スピノ。今まで数々のシードゥスを倒してきた攻撃が一切通用しない。果たして残ったプテラ、ヴェロキが奴に通用するのかも怪しい。あまりの実力の差に龍香に絶望が差す。
「ど、どうすれば...。」
《くっ...やはり早かったか...?》
引け腰になる龍香を見てトゥバンはやれやれと首を振る。
「おいおい。こちとら死闘を期待して来たのによ...結構ガッカリだぜ。」
もはや飽きたと言わんばかりにトゥバンは薙刀を拾うと龍香へと距離を詰めていく。
「ひっ」
龍香は思わず悲鳴を上げて後ずさる。攻撃が一切通用せずこちらに歩を進めるトゥバンがあまりにも恐ろしくて仕方なかった。恐怖にすくむ龍香にトゥバンが詰め寄って行こうとした瞬間。
何処からともなく飛んで来たエネルギーの塊がトゥバンを襲った。
「何ッ!」
トゥバンはすぐに薙刀を構えて防御するが大きくぶっ飛んで爆発する。
「え...」
見ればそこには自身の背丈程もあるプラズマ砲“ヘオース”を構えた雪花がいた。
「雪花ちゃん...?」
「へっ、ザマーみなさい。私を倒したと思ってナメてたツケよ。」
雪花が吐き捨てるように言う。雪花も追い詰められて死ぬような思いをしたハズなのにトゥバンに敢然と立ち向かっていく。そんな雪花が龍香には分からなかった。
「雪花ちゃん...怖くないの...?」
「は?何言ってんの。」
龍香の問いに雪花は答える。
「私は姉さんの思いを背負って戦ってんのよ。ビビってなんてられないわ。それにアンタは誰かを守るために戦ってるんじゃなかったの?」
「...!」
雪花の言葉に龍香はハッとさせられる。そうだ。今まで自分が戦って来たのはもう誰も目の前からいなくなって欲しくないから。それをまさか雪花が思い出させてくれるなんて。
「雪花ちゃん...」
「分かったら集中する!」
雪花の言葉と共に瓦礫を押し退け煙の中からトゥバンが現れる。流石に雪花の最大火力である“ヘオース”は効いたようであちこちに焦げ目がついてる。
トゥバンは顔を押さえながら肩を振るわせている。不意の一撃にトゥバンも気が動転したか、と思っていた時だった。
「ククッ...フッ、アッハッハッハッハッ!アーッハッハッハッハッ!イーッヒッヒッヒッヒッ!」
滅茶苦茶に爆笑し始める。まさかの態度に二人とも固まってしまうが、そんなことはお構い無しに笑い続ける。
「何?“ヘオース”を喰らっておかしくなった?」
「ヒーッヒーッ....いや、期待外れかと思ったら中々どうして....楽しませてくれるじゃないか。随分と失礼なことを言っちまったな。詫びとして。」
さっきまで笑っていたトゥバンの雰囲気がガラリと変わる。先程かおりを気絶させたのとは比べ物にならない程の殺気を放出し始める。
「ちびッと本気を出すか。」
「...ッ!」
次の瞬間殺気を感じた雪花が先手を取るべく“ヘオース”を撃つ。しかしトゥバンはそれを大きく跳躍してかわすと薙刀を構え、雪花に向けて思い切り投擲する。トゥバンの剛腕から放たれた薙刀は凄まじい速度で雪花に迫る。
雪花も何とか避けようと身を捻る。が、完全に避けきる事が出来ず放たれた槍は脇腹を削ぐ。
「ッ...!?」
脇腹を走る凄まじい痛みに雪花が顔をしかめる。だがトゥバンの勢いは止まらずそのまま落下しながら雪花に飛び膝蹴りを炸裂させる。
「がっ...」
「雪花ちゃん!」
雪花はトゥバンの飛び膝蹴りを受け、地面にめり込むように叩き付けられる。あまりの衝撃に雪花は猛烈な痛みと吐き気を覚えるがそれらを堪えながらもう片方の腰部武装ラックから“シャハル”投擲装甲貫通弾を取り出そうとした瞬間、トゥバンは雪花の左肩を思い切り踏みつけて妨害する。
「最後まで抵抗しようとするのは好きだぜ。だが。」
トゥバンがちょっと力を込めるとゴキッ、と。嫌な音が鳴り響き雪花に猛烈な痛みが襲い掛かる。
「がっ、あああああああああああああ!!?!?」
「その抵抗を一つ一つ丁寧に潰すのもまた好きだ。」
強制的に脱臼させられた雪花の悲鳴が辺りに響き渡る。悲鳴を上げながらも雪花は残った右手で自身の左肩を踏みつけるトゥバンの脚を殴るが、全く動かない。
そうしている間にもトゥバンは雪花にトドメを刺そうと己の武器を振り上げる。
「まずは一つ!」
「うああああああ!」
だがそうはさせまいとティラノカラーに戻った龍香がトゥバンに斬りかかる。しかしトゥバンはそれをも見越していたようで武器を構えるのを止めると脚を雪花から離して雪花を龍香に向けて蹴り飛ばす。
「うわわっ」
龍香は飛んできた雪花を受け止める。と、同時に距離を詰めたトゥバンが龍香へと薙刀を振るう。
「そいつを受け止める余裕があるのかい!?」
「ッ!」
雪花を受け止めたままでは回避も防御もままならない。振るわれる一撃に身構え目を閉じた瞬間だった。
「どんな時も、目ェ閉じんじゃないわよ。」
ボソッと雪花の呟きが聞こえた。次の瞬間雪花は右腕で腰部ラックの“シャハル”投擲装甲貫通弾を構えてトゥバンの斬撃を受け止める。そして信管が作動し爆発が起こる。
「雪花ちゃん!」
雪花は爆発を諸に受けて右腕の装甲が焦げ付き、気を失ったのかそのまま地面へと倒れる。
「捨て身か!」
一方のトゥバンは全くの無傷だが捨て身の反撃に虚を突かれたのか追撃を止めてバックステップで後ろへと下がる。
「そんな...私のために...」
《雪花...》
龍香は俯く。何が守るために戦うだ。友達一人守れないで何のための力だ。なら、どうする?倒すしかない。目の前の兄を殺し、友達を傷つけた敵を。
....許さない。
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
「カノープス...!」
《龍香...》
己に初めて渦巻くどす黒い感情に支配されるまま龍香はカノープスに叫ぶ。
「もっと...!もっと力を...!目の前にいるアイツを倒す力を...!」
龍香の言葉に呼応してカノープスの力が“許容範囲”を越えて引き出されていく。
《龍香...》
己に初めて渦巻くどす黒い感情に支配されるまま龍香はカノープスに叫ぶ。
「もっと...!もっと力を...!目の前にいるアイツを倒す力を...!」
龍香の言葉に呼応してカノープスの力が“許容範囲”を越えて引き出されていく。
そのことに気づいたカノープスが龍香に警告をする。
《!お前...!待て!これはヤバい!落ち着け!》
だが龍香の耳にはその声は届いていない。カノープスの力が引き出されると同時に龍香に変化が起こる。手に持っていた“タイラントアックス”を落とす。その手の爪は鋭く長く発達していき、背中からトゲがメキメキと嫌な音を立てながら伸びていき、腰部のリボンがまとまり、強靭な尻尾へと変形し、そして全ての装甲に赤い光が灯る。
「成る程。お前もアイツと同じで自分より他人が貶されたり、傷ついたら怒るタイプか。」
龍香の変化をトゥバンは面白そうに眺める。そうしている間にも龍香の目は赤く、血のような色になり、まるで口が裂けたかのように両頬にギザギザのラインが滲み出る。
身体の急激な変化による負担に龍香は呻き声をあげて踞るが直ぐに顔を上げ、眼前のトゥバンを睨み付け、吼える。
「バアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
そして尻尾を地面に叩き付けて、大きく跳躍しながら一直線にトゥバンに襲い掛かる。
「面白い!だが直線的な攻撃はなぁ!」
トゥバンは跳躍する龍香を迎撃すべく薙刀を振るう。手応えアリ。だがトゥバンが薙刀を振ったと同時に龍香が消える。
「何?」
一瞬見失うがすぐに持っている武器の違和感に気づいたトゥバンが薙刀の先端を見ると、何と龍香が先端にしがみついていた。トゥバンが気づくと同時に龍香は尻尾をトゥバンの胴体に巻き付け、トゥバンに飛び掛かると後ろへと回り込む。
「ギャロロロロロロロロロロロロロロロ!!」
「ほぉ!」
後ろに回り込んだ龍香が吼えながらトゥバンの首元に噛みつこうとする。だがその狙いにいち早く気づいたトゥバンは首元を噛まれる前に自身の腕を後ろに回して代わりに噛ませることで防御する。
噛みついた龍香の鋭い牙が様々な攻撃を受けてもビクともしなかったトゥバンの装甲に穴を開ける。そして紫色の液体が噛まれた箇所から溢れ出す。
「ハハッ!やるじゃないか!」
噛みつかれながらもトゥバンは腕を振るい、龍香を地面へと叩き付ける。しかし、龍香は全く意に貸さず噛みつき続け、ついにトゥバンの腕の一部を食い千切ってしまう。
「こいつは!」
トゥバンは食い千切られた箇所から激しく紫色の液体を噴出しながら後ろへと下がる。
だがトゥバンを逃すまいと龍香は素早く立ち上がり吼えながら走り出す。
「バアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「そう何度も!」
トゥバンが鋭い一突きを繰り出す。だが龍香はその一撃をスレスレでかわすとトゥバンの胸部に拳を叩き込む。
「ウゥッ」
そして怯んだトゥバンの顔面を掴むと思い切り爪を立てて、引っ張り始める。トゥバンの顔面にヒビが入り、ミシミシと軋み始める。
「ハハッ!ハハハハハ!良いぞォ!張り合いが出始めて来たじゃねぇか!もっと、もっとだ!俺を楽しませてくれ!」
トゥバンも負けじと龍香の首を掴むと思い切り締め上げ始める。凄まじい力で締め上げられ、龍香も呼吸が上手く出来なくなるが、お互いに全くと言って良いほど力を緩めない。龍香がトゥバンの顔面を潰すのが早いか、トゥバンが龍香の首を締め落とすのが早いか。壮絶なチキンレースが始まろうとした瞬間だった。
「待ちなさいカノープス!」
どこからともなく声が響く。声がした方を見るとそこには一人の少女を抱えた冠の怪物がいた。その少女に龍香は見覚えがあった。
「かお...り...!?」
「これを見なさいカノープス。これ以上歯向かえばこの娘の命はありませんよ。」
怪物は輝きを放つ手を気絶しているかおりに近付け、龍香を脅す。それを見た龍香は友人の危険よりも友人を傷つけられた怒りが噴き上がる。
「...!」
「....。」
トゥバンから龍香は手を離す。それと同時にトゥバンも龍香の首から手を離す。龍香はゲンマの方を向き、憤怒の形相を浮かべる。
《おい!止まれ龍香!》
「ウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」
カノープスに言葉をかけられ龍香は唸りながらゲンマへと身構えて止まる。龍香もこの状況で動くのは無謀と判断したようだ。
「良い子ですね...。この子の命が惜しければそのまま動かないように。」
歯噛みする龍香を見て、ゲンマは嬉しそうに光をおびた手をかおりから離すと龍香に向けると思いきや別の方向へと手を向ける。
「ではまずは一人。」
「!」
その言葉にゲンマが狙っているのモノに龍香は気づく。ゲンマの手は気を失って倒れている雪花に向けられている。
「やめっ」
「もう遅い!」
気づいた龍香が駆け出すよりも先にゲンマは雪花に向けて光弾を放つ。その光弾が今にも雪花に炸裂しようとした瞬間。一瞬何かが飛び込んでくる。続いて、爆発。
だが龍香の耳にはその声は届いていない。カノープスの力が引き出されると同時に龍香に変化が起こる。手に持っていた“タイラントアックス”を落とす。その手の爪は鋭く長く発達していき、背中からトゲがメキメキと嫌な音を立てながら伸びていき、腰部のリボンがまとまり、強靭な尻尾へと変形し、そして全ての装甲に赤い光が灯る。
「成る程。お前もアイツと同じで自分より他人が貶されたり、傷ついたら怒るタイプか。」
龍香の変化をトゥバンは面白そうに眺める。そうしている間にも龍香の目は赤く、血のような色になり、まるで口が裂けたかのように両頬にギザギザのラインが滲み出る。
身体の急激な変化による負担に龍香は呻き声をあげて踞るが直ぐに顔を上げ、眼前のトゥバンを睨み付け、吼える。
「バアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
そして尻尾を地面に叩き付けて、大きく跳躍しながら一直線にトゥバンに襲い掛かる。
「面白い!だが直線的な攻撃はなぁ!」
トゥバンは跳躍する龍香を迎撃すべく薙刀を振るう。手応えアリ。だがトゥバンが薙刀を振ったと同時に龍香が消える。
「何?」
一瞬見失うがすぐに持っている武器の違和感に気づいたトゥバンが薙刀の先端を見ると、何と龍香が先端にしがみついていた。トゥバンが気づくと同時に龍香は尻尾をトゥバンの胴体に巻き付け、トゥバンに飛び掛かると後ろへと回り込む。
「ギャロロロロロロロロロロロロロロロ!!」
「ほぉ!」
後ろに回り込んだ龍香が吼えながらトゥバンの首元に噛みつこうとする。だがその狙いにいち早く気づいたトゥバンは首元を噛まれる前に自身の腕を後ろに回して代わりに噛ませることで防御する。
噛みついた龍香の鋭い牙が様々な攻撃を受けてもビクともしなかったトゥバンの装甲に穴を開ける。そして紫色の液体が噛まれた箇所から溢れ出す。
「ハハッ!やるじゃないか!」
噛みつかれながらもトゥバンは腕を振るい、龍香を地面へと叩き付ける。しかし、龍香は全く意に貸さず噛みつき続け、ついにトゥバンの腕の一部を食い千切ってしまう。
「こいつは!」
トゥバンは食い千切られた箇所から激しく紫色の液体を噴出しながら後ろへと下がる。
だがトゥバンを逃すまいと龍香は素早く立ち上がり吼えながら走り出す。
「バアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「そう何度も!」
トゥバンが鋭い一突きを繰り出す。だが龍香はその一撃をスレスレでかわすとトゥバンの胸部に拳を叩き込む。
「ウゥッ」
そして怯んだトゥバンの顔面を掴むと思い切り爪を立てて、引っ張り始める。トゥバンの顔面にヒビが入り、ミシミシと軋み始める。
「ハハッ!ハハハハハ!良いぞォ!張り合いが出始めて来たじゃねぇか!もっと、もっとだ!俺を楽しませてくれ!」
トゥバンも負けじと龍香の首を掴むと思い切り締め上げ始める。凄まじい力で締め上げられ、龍香も呼吸が上手く出来なくなるが、お互いに全くと言って良いほど力を緩めない。龍香がトゥバンの顔面を潰すのが早いか、トゥバンが龍香の首を締め落とすのが早いか。壮絶なチキンレースが始まろうとした瞬間だった。
「待ちなさいカノープス!」
どこからともなく声が響く。声がした方を見るとそこには一人の少女を抱えた冠の怪物がいた。その少女に龍香は見覚えがあった。
「かお...り...!?」
「これを見なさいカノープス。これ以上歯向かえばこの娘の命はありませんよ。」
怪物は輝きを放つ手を気絶しているかおりに近付け、龍香を脅す。それを見た龍香は友人の危険よりも友人を傷つけられた怒りが噴き上がる。
「...!」
「....。」
トゥバンから龍香は手を離す。それと同時にトゥバンも龍香の首から手を離す。龍香はゲンマの方を向き、憤怒の形相を浮かべる。
《おい!止まれ龍香!》
「ウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」
カノープスに言葉をかけられ龍香は唸りながらゲンマへと身構えて止まる。龍香もこの状況で動くのは無謀と判断したようだ。
「良い子ですね...。この子の命が惜しければそのまま動かないように。」
歯噛みする龍香を見て、ゲンマは嬉しそうに光をおびた手をかおりから離すと龍香に向けると思いきや別の方向へと手を向ける。
「ではまずは一人。」
「!」
その言葉にゲンマが狙っているのモノに龍香は気づく。ゲンマの手は気を失って倒れている雪花に向けられている。
「やめっ」
「もう遅い!」
気づいた龍香が駆け出すよりも先にゲンマは雪花に向けて光弾を放つ。その光弾が今にも雪花に炸裂しようとした瞬間。一瞬何かが飛び込んでくる。続いて、爆発。
土煙が上がり、雪花が見えなくなる。
「そんな....」
その爆発を見た龍香はその場へとへたり込む。雪花を仕留めたゲンマは機嫌良さそうに掌をひらつかせる。
「安心なさい。次は貴方ですよ。」
「それはどうかな。」
何処からともなく声がする。土煙が晴れるとそこにいた筈の雪花は影も形もなく、消えていた。
そして声がした方に目を向けるとそこには気絶した雪花を抱え、右目に三つの目を模したような仮面をつけた嵩原がいた。
「何だと!?」
「先生!」
「遅れて悪かったね。」
嵩原はそう言うとゲンマを睨み付ける。ゲンマは嵩原の仮面に気づくと途端に焦り後退りをする。
「貴様、その目はサダルメリクの...!?」
「サダルメリク...?」
龍香が突然の名前に疑問符を浮かべる中、嵩原の仮面の三つの目がギョロリと動きゲンマを凝視する。その目の動きにゲンマが警戒し、後退しようとした瞬間、ドンと何かにぶつかる。何に当たったのか、ゲンマが振り返るとそこにはいつの間にかトゥバンが立っていた。
「と、トゥバ」
トゥバンは無言で腕を振り上げゲンマを殴り飛ばす。
「ぐわっ」
殴り飛ばされたゲンマから放れたかおりをトゥバンが地面に落ちるより先に抱える。
「つまらねぇ真似してんじゃねぇよ。俺の楽しみに水を差しやがって。」
「き、貴様、助けてやったんだぞ!?」
「俺はアイツと真剣に命のやり取りをしてたんだ。正々堂々死に瀕するまで戦ってる瞬間が、全身の血潮が沸き立ち俺が生きてると実感出来る!」
トゥバンは倒れたゲンマの顔のすぐ横に薙刀を突き立てると顔を近付け脅すように言う。
「次同じようなことを真似をしてみろ。オマエを八つに裂いてやる。いいな?」
「ぐ...!!」
ゲンマに警告するとトゥバンはフンと鼻を鳴らして、薙刀を抜くとそれを肩に担いで龍香に向き直る。
「興が覚めた。つまらん横槍を入れて悪かったな、仕切り直しだ。」
トゥバンはそう言うと抱えているかおりを龍香に見せつける。
「コイツを預かるぞ。なぁに、俺が指定した場所に来ればすぐに返してやるさ。」
「かおり!」
「場所はそうだな...お前がダリムを倒した廃工場に来い。そこで待っとくぜ。」
「させると思うかい。」
嵩原がトゥバンに睨みを効かせるが、トゥバンは嵩原を一瞥すると。
「死に損ないと戦ってもつまらん。大人しくしておけ。」
そう言うとトゥバンはゲンマに顎を前に出してジェスチャーをする。ゲンマは舌打ちしながらも両手から強烈な光を放つ。
「うわっ!」
光が晴れるとそこにトゥバンとゲンマの姿は無かった。龍香は大きく跳躍してトゥバンとゲンマがいた所を探るが何処にもその姿が見えない。
「ウウウウウウウウウウウ!!!」
《龍香...。》
龍香は大きく唸ると地面に拳を叩きつける。雪花は倒れ、かおりは拐われた。龍香達の完全敗北だった。
その爆発を見た龍香はその場へとへたり込む。雪花を仕留めたゲンマは機嫌良さそうに掌をひらつかせる。
「安心なさい。次は貴方ですよ。」
「それはどうかな。」
何処からともなく声がする。土煙が晴れるとそこにいた筈の雪花は影も形もなく、消えていた。
そして声がした方に目を向けるとそこには気絶した雪花を抱え、右目に三つの目を模したような仮面をつけた嵩原がいた。
「何だと!?」
「先生!」
「遅れて悪かったね。」
嵩原はそう言うとゲンマを睨み付ける。ゲンマは嵩原の仮面に気づくと途端に焦り後退りをする。
「貴様、その目はサダルメリクの...!?」
「サダルメリク...?」
龍香が突然の名前に疑問符を浮かべる中、嵩原の仮面の三つの目がギョロリと動きゲンマを凝視する。その目の動きにゲンマが警戒し、後退しようとした瞬間、ドンと何かにぶつかる。何に当たったのか、ゲンマが振り返るとそこにはいつの間にかトゥバンが立っていた。
「と、トゥバ」
トゥバンは無言で腕を振り上げゲンマを殴り飛ばす。
「ぐわっ」
殴り飛ばされたゲンマから放れたかおりをトゥバンが地面に落ちるより先に抱える。
「つまらねぇ真似してんじゃねぇよ。俺の楽しみに水を差しやがって。」
「き、貴様、助けてやったんだぞ!?」
「俺はアイツと真剣に命のやり取りをしてたんだ。正々堂々死に瀕するまで戦ってる瞬間が、全身の血潮が沸き立ち俺が生きてると実感出来る!」
トゥバンは倒れたゲンマの顔のすぐ横に薙刀を突き立てると顔を近付け脅すように言う。
「次同じようなことを真似をしてみろ。オマエを八つに裂いてやる。いいな?」
「ぐ...!!」
ゲンマに警告するとトゥバンはフンと鼻を鳴らして、薙刀を抜くとそれを肩に担いで龍香に向き直る。
「興が覚めた。つまらん横槍を入れて悪かったな、仕切り直しだ。」
トゥバンはそう言うと抱えているかおりを龍香に見せつける。
「コイツを預かるぞ。なぁに、俺が指定した場所に来ればすぐに返してやるさ。」
「かおり!」
「場所はそうだな...お前がダリムを倒した廃工場に来い。そこで待っとくぜ。」
「させると思うかい。」
嵩原がトゥバンに睨みを効かせるが、トゥバンは嵩原を一瞥すると。
「死に損ないと戦ってもつまらん。大人しくしておけ。」
そう言うとトゥバンはゲンマに顎を前に出してジェスチャーをする。ゲンマは舌打ちしながらも両手から強烈な光を放つ。
「うわっ!」
光が晴れるとそこにトゥバンとゲンマの姿は無かった。龍香は大きく跳躍してトゥバンとゲンマがいた所を探るが何処にもその姿が見えない。
「ウウウウウウウウウウウ!!!」
《龍香...。》
龍香は大きく唸ると地面に拳を叩きつける。雪花は倒れ、かおりは拐われた。龍香達の完全敗北だった。
to be continued...