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更新日:2022/09/18 Sun 00:11:09
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セブンスカラー
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目次
少女は物陰に隠れていた。その表情は強張り、ガタガタと震えて長い前髪で隠れた片目の反対の目には涙が浮かんでいる。
するとすぐ近くをコツコツと音を立てて、誰かが歩く音がする。
「ふっふ〜。どこに行ったのかなぁ。お嬢さん?」
音の主が楽しそうに声を上げる。その主の姿は醜悪な怪物で、全身が白色の毛に覆われ、長い耳を時折ぴこぴこと動かす。
「このアルネブとかくれんぼしよう、って言うのかぁ?」
アルネブと名乗った怪物はクケケと笑いながら周囲を見渡す。
少女があまりの恐怖に思わず身じろぎした瞬間、ピクリ、と怪物の耳が反応する。
「そこにいたかぁ!」
少女が立てたわずかな音を聞き取ったアルネブが少女のいる場所へと向かってくる。
(見つかった!)
その事に心臓が跳ね上がる程驚いた少女は慌てて立ち上がって逃げようとするが、恐怖と焦りのあまり足をもつれさせて転げてしまう。
「あぁっ!」
少女がすぐに立とうとするが、彼女の目の前に見るからに強靭な怪物の両脚が降ってくる。
「ぴょぴょぴょぴょ。逃がさないゾ。“新月”の奴らにチクられたら面倒だからねぇ。」
“新月”?何を言っているか分からないがどうやら目の前の怪物は彼女を生かして帰す気は毛頭ないということだけは少女には分かった。
思わず脚が震えて、奥歯がカチカチと鳴る。アルネブが振り上げた棍棒のようなものから彼女は目が離せない。
「ま、運がなかったってことで。」
アルネブが無慈悲に棍棒を振り下ろし、少女が息を呑んだ瞬間。
窓ガラスが割れて、飛び込んできた矢がアルネブに炸裂する。
「うぴょッ!?」
意識外からの一撃にアルネブは悲鳴をあげてもんどり打って壁に叩きつけられる。
「伏せてっ!」
その声が響いたと同時に窓ガラスをぶち破って黄色のドレスに身を包んだ紫色のポニーテールの少女が飛び込んでくる。
少女が廊下に降り立つと、黄色のドレスは紫色へと色を変え、翼も大きなリボンになる。
「大丈夫?怪我はない?」
「えっ、あ、はい……。」
少女がそう答えると、乱入してきた彼女はニコリと彼女に元気づけるように笑顔を浮かべる。
「おのれっ…!ここを嗅ぎづけたのか!」
《アルネブ。こんなガキを追い回すなんて趣味が悪いぜ。》
アルネブが立ち上がると、彼女のヘアアクセが喋り出す。彼女は少女を守るように前に立つと斧を構える。
「下がってて!」
怪物が棍棒を振り下ろすのを少女は斧で受け止める。彼女と怪物の体格差は倍以上あるにもかかわらず、彼女は互角以上の力で鍔迫り合いをする。
「ぐぅ、なんだと!?俺が…押されている!」
「たあぁっ!」
次の瞬間彼女が吠えると斧を振って棍棒を弾き飛ばし、怪物の鳩尾に蹴りを入れて後退させる。
さらに彼女の持つ斧の刃が一瞬輝いたかと思うと、彼女は力強く踏み込みながらそれを振るう。
「“タイラント・トラッシュ”!」
紫の閃光と共に振り抜かれた紫電の一撃がアルネブを斬り裂く。
「ウピョビョビョッォッ!??」
断末魔と共に怪物は爆散する。彼女はふぅと額を拭うと少女の方に振り返って少女に笑顔を向ける。
「もう安心して。怪物は倒したから。」
「あ、あの。ありがとうございます……」
少女がペコリと頭を下げると、彼女はキョロキョロと辺りを見回して。
「ところであなたなんでこんなところにいるの?」
彼女の言う通り、ここは人気もない廃墟だ。少女が来るような場所とはとても思えなかった。
少女は一瞬言葉に詰まるが、小さく、途切れ途切れの声で言う。
「あの……その、ランドセルを……隠されちゃって。探してたんです。」
「……そっか。」
そう言うと彼女は少女に近づき鼻をスンスンと鳴らす。
「……?」
「どう、カノープス。分かる?」
《ん。そこの右の部屋から匂いがする。》
カノープスと呼ばれたヘアアクセがそう言うと、二人は右の部屋に入る。そしてキョロキョロと見回すと、棚の上の方に赤いランドセルがあった。
「あった!」
少女は駆け寄るとランドセルを大事そうに抱える。
「良かったね。」
「はいっ」
彼女が微笑む。少女は安堵からか思わず笑顔が溢れる。そして少女は彼女に気になっていた事を尋ねる。
「あの、私天願 加菜(あまはら かな)って言います。その、貴女は…?」
少女の言葉に一瞬彼女は考えるような素振りを見せた後。
「私はね。私は───」
するとすぐ近くをコツコツと音を立てて、誰かが歩く音がする。
「ふっふ〜。どこに行ったのかなぁ。お嬢さん?」
音の主が楽しそうに声を上げる。その主の姿は醜悪な怪物で、全身が白色の毛に覆われ、長い耳を時折ぴこぴこと動かす。
「このアルネブとかくれんぼしよう、って言うのかぁ?」
アルネブと名乗った怪物はクケケと笑いながら周囲を見渡す。
少女があまりの恐怖に思わず身じろぎした瞬間、ピクリ、と怪物の耳が反応する。
「そこにいたかぁ!」
少女が立てたわずかな音を聞き取ったアルネブが少女のいる場所へと向かってくる。
(見つかった!)
その事に心臓が跳ね上がる程驚いた少女は慌てて立ち上がって逃げようとするが、恐怖と焦りのあまり足をもつれさせて転げてしまう。
「あぁっ!」
少女がすぐに立とうとするが、彼女の目の前に見るからに強靭な怪物の両脚が降ってくる。
「ぴょぴょぴょぴょ。逃がさないゾ。“新月”の奴らにチクられたら面倒だからねぇ。」
“新月”?何を言っているか分からないがどうやら目の前の怪物は彼女を生かして帰す気は毛頭ないということだけは少女には分かった。
思わず脚が震えて、奥歯がカチカチと鳴る。アルネブが振り上げた棍棒のようなものから彼女は目が離せない。
「ま、運がなかったってことで。」
アルネブが無慈悲に棍棒を振り下ろし、少女が息を呑んだ瞬間。
窓ガラスが割れて、飛び込んできた矢がアルネブに炸裂する。
「うぴょッ!?」
意識外からの一撃にアルネブは悲鳴をあげてもんどり打って壁に叩きつけられる。
「伏せてっ!」
その声が響いたと同時に窓ガラスをぶち破って黄色のドレスに身を包んだ紫色のポニーテールの少女が飛び込んでくる。
少女が廊下に降り立つと、黄色のドレスは紫色へと色を変え、翼も大きなリボンになる。
「大丈夫?怪我はない?」
「えっ、あ、はい……。」
少女がそう答えると、乱入してきた彼女はニコリと彼女に元気づけるように笑顔を浮かべる。
「おのれっ…!ここを嗅ぎづけたのか!」
《アルネブ。こんなガキを追い回すなんて趣味が悪いぜ。》
アルネブが立ち上がると、彼女のヘアアクセが喋り出す。彼女は少女を守るように前に立つと斧を構える。
「下がってて!」
怪物が棍棒を振り下ろすのを少女は斧で受け止める。彼女と怪物の体格差は倍以上あるにもかかわらず、彼女は互角以上の力で鍔迫り合いをする。
「ぐぅ、なんだと!?俺が…押されている!」
「たあぁっ!」
次の瞬間彼女が吠えると斧を振って棍棒を弾き飛ばし、怪物の鳩尾に蹴りを入れて後退させる。
さらに彼女の持つ斧の刃が一瞬輝いたかと思うと、彼女は力強く踏み込みながらそれを振るう。
「“タイラント・トラッシュ”!」
紫の閃光と共に振り抜かれた紫電の一撃がアルネブを斬り裂く。
「ウピョビョビョッォッ!??」
断末魔と共に怪物は爆散する。彼女はふぅと額を拭うと少女の方に振り返って少女に笑顔を向ける。
「もう安心して。怪物は倒したから。」
「あ、あの。ありがとうございます……」
少女がペコリと頭を下げると、彼女はキョロキョロと辺りを見回して。
「ところであなたなんでこんなところにいるの?」
彼女の言う通り、ここは人気もない廃墟だ。少女が来るような場所とはとても思えなかった。
少女は一瞬言葉に詰まるが、小さく、途切れ途切れの声で言う。
「あの……その、ランドセルを……隠されちゃって。探してたんです。」
「……そっか。」
そう言うと彼女は少女に近づき鼻をスンスンと鳴らす。
「……?」
「どう、カノープス。分かる?」
《ん。そこの右の部屋から匂いがする。》
カノープスと呼ばれたヘアアクセがそう言うと、二人は右の部屋に入る。そしてキョロキョロと見回すと、棚の上の方に赤いランドセルがあった。
「あった!」
少女は駆け寄るとランドセルを大事そうに抱える。
「良かったね。」
「はいっ」
彼女が微笑む。少女は安堵からか思わず笑顔が溢れる。そして少女は彼女に気になっていた事を尋ねる。
「あの、私天願 加菜(あまはら かな)って言います。その、貴女は…?」
少女の言葉に一瞬彼女は考えるような素振りを見せた後。
「私はね。私は───」
「あ…。」
ピピピと目覚まし時計のアラーム音が鳴り響く。少女、天願は眠けまなこをこすりながら時計を押して、アラームを止める。
窓から差し込む光を見ながら、天願はぼんやりと呟く。
「魔龍少女……」
ピピピと目覚まし時計のアラーム音が鳴り響く。少女、天願は眠けまなこをこすりながら時計を押して、アラームを止める。
窓から差し込む光を見ながら、天願はぼんやりと呟く。
「魔龍少女……」
「おはよー。」
「おはよう!」
小学校の正門で登校してきた子供たちがクラスメイト達とあいさつを交わしながら靴を脱いで上履きに履き替える。
「おはようかおり、雪花ちゃん!」
そして各々のクラスへと行く途中、紫色の髪をポニーテールに纏めた快活そうな少女、紫水龍香が手を振ってクラスメイトたちに向かう。
声をかけられたクラスメイト、桃色の髪を輪になるように二つに纏めた桃井かおりと金髪を青いリボンでツインテールに纏めた少女、雪花藍が振り返る。
「おはよ、龍香。」
「ん。おはよ。」
「一限目ってなんだっけ?」
「あー、確か……」
二人と他愛のない話をしていると、ふと視界の端に複数人の少女が長い黒髪で片目が隠れている見るからに大人しそうな少女を囲んでいるのが見えた。最初は何か話でもしているのかと思ったが、囲まれた少女の瞳には明らかに怯えの色があった。
「ねー。ケチケチしないでさぁ。ちょっとくらい貸してくれたっていいじゃない。」
「で、でも…」
「漯(るい)ちゃん困ってるじゃーん?」
「別に返さないって言ってないじゃん?」
どうやら彼女達は少女から何かを取ろうとしているらしい。その光景を見た龍香はムスッとすると彼女達に声をかける。
「ちょっと。その子困ってるよ。やめなよ。」
龍香が少女を囲む三人に声をかけると、三人が不機嫌そうにこちらを振り返る。
「あ?何?あんた関係なくない?」
「同じ学校の生徒なんだから関係あるよ。何が欲しいのか分からないけど、そういうのは良くないよ。」
「なんなのコイツ。」
けらけら笑いながら三人は少女から離れて、龍香を囲うように睨んでくる。しかし女の子に睨まれても、あの時の怪物達と対峙した時に比べればなんて事はない。
逆に龍香は彼女達を睨み返す。カノープスがいなくなったとは言え、彼女の胆力で睨まれた三人は逆に威圧され、思わず後ずさる。
「な、なによ…!」
だが取り巻きの手前引くわけにはいかないのか、漯が声を出したその時。
「あー、はいはいやめやめ。こんなとこで争ってたら先生来ちゃうよ。」
一触即発の空気にかおりが割り込んでくる。
「桃井…!」
「もうやめときなって黒衣(くろご)。あんた、結構悪い噂立ってるよ?先生にチクられる前に大人しくしときなって。」
「……!」
桃井の言葉に漯は顔を真っ赤にするが、流石に先生を引き合いに出されては、これ以上は食い下がらないようで、取り巻きに行くわよ、と言ってその場を去る。
「何よ。喧嘩沙汰になったら面白かったのに。」
「いや、喧嘩はよくないよ…」
藍に龍香がツッコミを入れていると、助けた少女がおずおずと龍香達に話しかけてくる。
「あ、あの……助けてくれてありがとう…」
「うん?いいよこれくらい。またなんか困った事があったらいつでも言ってね。」
龍香は彼女の手を取って笑いかける。
「力になるから!」
「あ……うん。ありがと…」
少し目を伏せて小声でお礼を言う彼女に龍香は尋ねる。
「あ、そうだ名前!名前聞いてなかったね。私は龍香!あなたは?」
「……天願、天願加菜です。」
少女、天願が名乗ると龍香はニコニコしたまま。
「天願さんだね!覚えておくよ!」
「あ、あの……」
「?」
龍香に天願が何かを言おうとしたその時、後ろから雪花が声をかけてくる。
「龍香ー。そろそろ行かないと遅れるわよー。」
「え?あー!もうこんな時間!ごめんけどまたいつでも声をかけてね!」
「あ……」
天願は少し名残惜しそうな顔をするが、龍香はそう言うと雪花とかおりの元へと向かう。
楽しそうに談笑しながら去っていく彼女達を見ながら天願は呟いた。
「……龍香さん。あの時の…魔龍少女みたい。」
「おはよう!」
小学校の正門で登校してきた子供たちがクラスメイト達とあいさつを交わしながら靴を脱いで上履きに履き替える。
「おはようかおり、雪花ちゃん!」
そして各々のクラスへと行く途中、紫色の髪をポニーテールに纏めた快活そうな少女、紫水龍香が手を振ってクラスメイトたちに向かう。
声をかけられたクラスメイト、桃色の髪を輪になるように二つに纏めた桃井かおりと金髪を青いリボンでツインテールに纏めた少女、雪花藍が振り返る。
「おはよ、龍香。」
「ん。おはよ。」
「一限目ってなんだっけ?」
「あー、確か……」
二人と他愛のない話をしていると、ふと視界の端に複数人の少女が長い黒髪で片目が隠れている見るからに大人しそうな少女を囲んでいるのが見えた。最初は何か話でもしているのかと思ったが、囲まれた少女の瞳には明らかに怯えの色があった。
「ねー。ケチケチしないでさぁ。ちょっとくらい貸してくれたっていいじゃない。」
「で、でも…」
「漯(るい)ちゃん困ってるじゃーん?」
「別に返さないって言ってないじゃん?」
どうやら彼女達は少女から何かを取ろうとしているらしい。その光景を見た龍香はムスッとすると彼女達に声をかける。
「ちょっと。その子困ってるよ。やめなよ。」
龍香が少女を囲む三人に声をかけると、三人が不機嫌そうにこちらを振り返る。
「あ?何?あんた関係なくない?」
「同じ学校の生徒なんだから関係あるよ。何が欲しいのか分からないけど、そういうのは良くないよ。」
「なんなのコイツ。」
けらけら笑いながら三人は少女から離れて、龍香を囲うように睨んでくる。しかし女の子に睨まれても、あの時の怪物達と対峙した時に比べればなんて事はない。
逆に龍香は彼女達を睨み返す。カノープスがいなくなったとは言え、彼女の胆力で睨まれた三人は逆に威圧され、思わず後ずさる。
「な、なによ…!」
だが取り巻きの手前引くわけにはいかないのか、漯が声を出したその時。
「あー、はいはいやめやめ。こんなとこで争ってたら先生来ちゃうよ。」
一触即発の空気にかおりが割り込んでくる。
「桃井…!」
「もうやめときなって黒衣(くろご)。あんた、結構悪い噂立ってるよ?先生にチクられる前に大人しくしときなって。」
「……!」
桃井の言葉に漯は顔を真っ赤にするが、流石に先生を引き合いに出されては、これ以上は食い下がらないようで、取り巻きに行くわよ、と言ってその場を去る。
「何よ。喧嘩沙汰になったら面白かったのに。」
「いや、喧嘩はよくないよ…」
藍に龍香がツッコミを入れていると、助けた少女がおずおずと龍香達に話しかけてくる。
「あ、あの……助けてくれてありがとう…」
「うん?いいよこれくらい。またなんか困った事があったらいつでも言ってね。」
龍香は彼女の手を取って笑いかける。
「力になるから!」
「あ……うん。ありがと…」
少し目を伏せて小声でお礼を言う彼女に龍香は尋ねる。
「あ、そうだ名前!名前聞いてなかったね。私は龍香!あなたは?」
「……天願、天願加菜です。」
少女、天願が名乗ると龍香はニコニコしたまま。
「天願さんだね!覚えておくよ!」
「あ、あの……」
「?」
龍香に天願が何かを言おうとしたその時、後ろから雪花が声をかけてくる。
「龍香ー。そろそろ行かないと遅れるわよー。」
「え?あー!もうこんな時間!ごめんけどまたいつでも声をかけてね!」
「あ……」
天願は少し名残惜しそうな顔をするが、龍香はそう言うと雪花とかおりの元へと向かう。
楽しそうに談笑しながら去っていく彼女達を見ながら天願は呟いた。
「……龍香さん。あの時の…魔龍少女みたい。」
プリンのような形をした山、ポッキーのような柱、綿飴の雲など、お菓子を模したような風景が並ぶ奇々怪界な世界、“オウマがトキ”。
その不思議な光景が広がる世界で、チカッと何かが光ったかと思うと大爆発が起こる。
その爆煙を切り裂いて炎の翼を広げる赤髪の少女と白翼の少年が飛び出す。
「くっ!いきなりやってくれるわね!!」
「なんなのだー!?」
赤髪の少女、アルタイルと突然の襲撃に混乱する白翼の少年アルビレオ。アルタイルが毒づくと、彼女を追いかけるように煙の中から蝙蝠のような翼を拡げ、薄桃のローブに身を包んだブロンド髪の少女と和風姿の爬虫類のような特徴的な目をした少女が躍り出る。
「ちゃんと狙いなさい。当たってないわ。」
「あらあら。生意気な口を効くじゃないですかぁ〜」
軽口を叩きながら少女達がアルタイル達に向かう。蝙蝠のような翼を拡げた少女…アリックス•ル•カヌレが手を翳すと彼女の掌から血のように濁った赤い液体が溢れ、一本の槍を作り出される。
アリックスはその槍を手に取るとアルタイルへと迫る。
「やろうっての!?」
アルタイルも負けじと焔の刃を生み出すと、それを手に取りアリックスへ真正面から突っ込む。
剣と槍がぶつかり、衝撃波が辺りに響く。ビリビリと震える空気の中、二人は互いの得物を振るい、打ち合う。
「チッ、熱いのは苦手なんだけど…」
「はァッ!」
舌打ちしながらアリックスは槍を突き出す。アルタイルがそれを剣で弾くと、空いた左手を彼女に突き出す。
「灰にしてやる!!」
「ッ!」
次の瞬間紅い焔が噴き出すと同時にアリックスが赤黒い霧となって霧散する。
だが、彼女が放った焔を食い破るようにして巨大な蛇のような形をした呪術が彼女に迫る。
「!!」
その一撃は彼女の上半身を食い千切る。あまりの光景に一瞬アルビレオが息を呑むが、食われた断面から焔が噴き出したかと思うと彼女の身体は瞬く間に再生する。
「…気色の悪い技を。」
「あらあら。お気に召しませんでした?」
ニヤリと蛇のような目を細めて笑みを浮かべる緑髪の少女、姦姦蛇螺の横に赤黒い霧のようなものが集結し、それは人の形のように固まると、アリックスがその姿を現す。
「便利ですねその霧状化。」
「ドラキュリアですから。」
二人が軽口を叩く間、アルタイルは思考を巡らせる。
(……別にコイツら二人を相手にしても負ける気はしないけど、アルビレオが心配ね。別に戦う理由もないし、適当にあしらってさっさと逃げるか……。)
アルタイルがそう思い、アルビレオに視線を向けた瞬間。
「ちょっとー!君達そこで何をしているのだ!?」
声がした方を見ると、そこには黒い髪をポニーテールに纏め、犬のような耳をぴこぴこと動かす快活そうな少女がいた。
少女、だよロリ犬を見たアルタイルはげっ、と顔を歪める。アルタイルに気づいただよロリ犬があっ、と声を上げる。
「あ、あなたは確かいつぞやの!」
「なんでアンタがここにいるのよ…」
よく分からない乱入者にアルタイルが眉を顰めるが、アリックス達はあー、と面倒そうな声を上げる。
「面倒臭いのが来たわね。」
「はー、相手するのも面倒だしお願いしますかぁ。」
姦姦蛇螺がパンパンと手を叩くと、二人の影が盛り上がり、突き破るようにして二人の人物がニュルリと現れる。
「……!なんなのだ?」
珍妙な登場の仕方にアルビレオ達が身構えると、その二人…全身真っ黒のボロ切れのような布を纏った怪物、シャドウマンと四つの虫のような目をギョロギョロと動かし、背から四本の虫のような脚を生やした女、ザマスロリ大女郎蜘蛛がだよロリ犬に視線を向ける。
「……同類が相手ザマスか。」
「面倒な奴相手に呼んでくれたな。」
「私達のサポートが貴女達の仕事でしょう?」
アリックスがそう言うと、フッと二人は嗤う。
「まぁ、肩慣らしには丁度いいザマスか。」
アリックス達は再びアルタイルへと向かう。
「待つだよ!」
それを見ただよロリ犬が二人を止めようとするがその前に大女郎蜘蛛とシャドウマンが立ちはだかる。
「おおっと、タダで通す訳にはいかねぇ。」
彼女の前にシャドウマンが立ちはだかる。
「邪魔だよっ!」
だよロリ犬が拳を振るい、シャドウマンに殴りかかる。しかしだのロリ犬の攻撃は彼女の身体をすり抜けてしまう。
「んなっ」
慌てて返す刀で蹴りを放つが、まともやその一撃は彼女の身体を捉えたのにも関わらず、まるで何もない空間を蹴ったかのように手応えが一切ない。
「どうした?全然効いてないぞ?」
「ぐっ、何が起きて…!」
だよロリ犬がさらに拳を振るうが、彼女の身体をすり抜けるだけで全く手応えがない。謎の現象に彼女が困惑している時だった。
何処からともなく飛んできた糸が彼女の身体に纏わりつく。
「なにっ!?」
彼女が糸が飛んできた方を見ると、そこにはザマスロリ大女郎蜘蛛の姿があった。
「私達が正面からやり合えば長期戦になるザマス。けど、私は面倒が嫌いザマス。だから。」
ただでさえ糸が絡みついて動けないだよロリ犬にさらに糸を吹き掛けてニヤリと笑う。
「さっさと拘束してポイっザマス。」
「やばっ……!」
大女郎蜘蛛のやろうとしていることに気づいただよロリ犬が慌てて糸を引きちぎろうとするが、糸は非常に柔軟性に富んでおり、伸びるだけで千切れる様子はない。そうこうしている内にだよロリ犬の体は吹きかけられた糸で完全に包み込まれ、白い球体と化す。
「──ッ!───ッッ!」
だが生きてはいるようで、糸から喚くような声が聞こえる。しかし大女郎蜘蛛は気にした様子もなく、背の脚を振り上げると。
「それじゃ、お元気で。」
脚を思い切り振って、白い球を叩く。白い球はそのまま天高く飛んでいき、フェードアウトする。
「ふぅ。筋肉バカが相手で良かったザマス。」
「一丁上がりだな。」
一方でアリックスとアルタイルが槍と剣で打ち合う。アルビレオも何とか入ろうとするが、二人の攻防の凄まじさに割って入る事が出来ない。
「そこっ!」
アルタイルが剣を振るうと、アリックスの槍が弾かれる。
「!」
その隙を逃さずアルタイルは掌を彼女に向ける。
「今度は霧になってもそれごと焼き尽くす!」
アルタイルがそう言って焔を発そうとした瞬間ドスリ、と彼女の胸を4本の針が突き刺さる。飛んできた方を見れば姦姦蛇螺がいた。
「この程度の攻撃が私に効くとでも──!」
アルタイルが突き刺さった針に構わず目の前のアリックスを燃やそうとしたその瞬間ドクンッと彼女の心臓が大きく跳ね上がるのを感じた。
「がっ……!?」
次の瞬間彼女の手足の感覚が無くなる。呼吸や方向感覚が乱れ、どこが上で、どちらが下なのか前後不覚になり、彼女の動きが停止する。
「!!?」
「馬鹿ね。自分の不死性に驕るからそうなるのよ。死なないって言ったってやりようはいくらでもある。」
さらに動けない彼女の周りを六本の柱が囲み、それらを繋ぐようにしめ縄が伸びる。
「“私を封印していた術式”ですわ。実体験から言いますと…結構しんどいですわよ?」
ニヤニヤと笑いながら姦姦蛇螺は笑みを浮かべて呪術を操作する。
「!させるかぁ!」
姉のピンチにアルビレオは勇気を振り絞り、姦姦蛇螺へと飛翔する。風を起こし、腕を振るって刃のように鋭い真空波を彼女へ飛ばす。
「おっと。」
しかし、それは上空から割って入ったアリックスの槍によって弾かれる。
「ならっ!」
遠距離では埒が明かないとアルビレオが翼を拡げ、高速で動きながら姦姦蛇螺へと向かう。
縦横無尽に飛翔し、そしてついに彼女を射程圏内に捉えようとした瞬間。
横から何者かが邪魔するように飛び込んでくる。
「!」
その何者かは剛腕を振るい、アルビレオを殴り飛ばす。
「うぶっ!!?」
殴られたアルビレオは大きく吹き飛び、地面へと叩きつけられる。
「邪魔をしてくれるな下郎。コイツは我の計画に必要なのだ。」
その怪物がアルビレオを一瞥しながら言う。その怪物の外見は筋骨隆々の巨躯に恐竜の骨のような外装を貼り付けたような怪物の姿をしていた。
その姿にアルビレオは見覚えがあった。
「……お前、は…」
怪物は紅く光る眼を細めて言う。
「ほう。我を知っているのか?」
くっくっくっと笑いながら怪物はアルビレオに近づく。そして倒れて動けない彼の前まで来ると、その顔を思い切り踏みつける。
「うぐぅ、あぁっ……!」
呻く彼を見下ろしながらカノープスは嗤う。
「そう案ずるな。一時借りるだけだ。後で返してやる。勿論生きて返すとも。生きては……な。」
そう言って怪物は高らかに笑うと、全員に振り直る。
「さぁ、貴様ら!今こそあの美しく歪んだ世壊へ行くぞ!!そして、そこで我は……」
怪物は鈍くサイケデリックに輝く空を見上げながら、両手を天へと伸ばして宣言する。
「“無敵の存在”へと昇華するのだ!!」
その不思議な光景が広がる世界で、チカッと何かが光ったかと思うと大爆発が起こる。
その爆煙を切り裂いて炎の翼を広げる赤髪の少女と白翼の少年が飛び出す。
「くっ!いきなりやってくれるわね!!」
「なんなのだー!?」
赤髪の少女、アルタイルと突然の襲撃に混乱する白翼の少年アルビレオ。アルタイルが毒づくと、彼女を追いかけるように煙の中から蝙蝠のような翼を拡げ、薄桃のローブに身を包んだブロンド髪の少女と和風姿の爬虫類のような特徴的な目をした少女が躍り出る。
「ちゃんと狙いなさい。当たってないわ。」
「あらあら。生意気な口を効くじゃないですかぁ〜」
軽口を叩きながら少女達がアルタイル達に向かう。蝙蝠のような翼を拡げた少女…アリックス•ル•カヌレが手を翳すと彼女の掌から血のように濁った赤い液体が溢れ、一本の槍を作り出される。
アリックスはその槍を手に取るとアルタイルへと迫る。
「やろうっての!?」
アルタイルも負けじと焔の刃を生み出すと、それを手に取りアリックスへ真正面から突っ込む。
剣と槍がぶつかり、衝撃波が辺りに響く。ビリビリと震える空気の中、二人は互いの得物を振るい、打ち合う。
「チッ、熱いのは苦手なんだけど…」
「はァッ!」
舌打ちしながらアリックスは槍を突き出す。アルタイルがそれを剣で弾くと、空いた左手を彼女に突き出す。
「灰にしてやる!!」
「ッ!」
次の瞬間紅い焔が噴き出すと同時にアリックスが赤黒い霧となって霧散する。
だが、彼女が放った焔を食い破るようにして巨大な蛇のような形をした呪術が彼女に迫る。
「!!」
その一撃は彼女の上半身を食い千切る。あまりの光景に一瞬アルビレオが息を呑むが、食われた断面から焔が噴き出したかと思うと彼女の身体は瞬く間に再生する。
「…気色の悪い技を。」
「あらあら。お気に召しませんでした?」
ニヤリと蛇のような目を細めて笑みを浮かべる緑髪の少女、姦姦蛇螺の横に赤黒い霧のようなものが集結し、それは人の形のように固まると、アリックスがその姿を現す。
「便利ですねその霧状化。」
「ドラキュリアですから。」
二人が軽口を叩く間、アルタイルは思考を巡らせる。
(……別にコイツら二人を相手にしても負ける気はしないけど、アルビレオが心配ね。別に戦う理由もないし、適当にあしらってさっさと逃げるか……。)
アルタイルがそう思い、アルビレオに視線を向けた瞬間。
「ちょっとー!君達そこで何をしているのだ!?」
声がした方を見ると、そこには黒い髪をポニーテールに纏め、犬のような耳をぴこぴこと動かす快活そうな少女がいた。
少女、だよロリ犬を見たアルタイルはげっ、と顔を歪める。アルタイルに気づいただよロリ犬があっ、と声を上げる。
「あ、あなたは確かいつぞやの!」
「なんでアンタがここにいるのよ…」
よく分からない乱入者にアルタイルが眉を顰めるが、アリックス達はあー、と面倒そうな声を上げる。
「面倒臭いのが来たわね。」
「はー、相手するのも面倒だしお願いしますかぁ。」
姦姦蛇螺がパンパンと手を叩くと、二人の影が盛り上がり、突き破るようにして二人の人物がニュルリと現れる。
「……!なんなのだ?」
珍妙な登場の仕方にアルビレオ達が身構えると、その二人…全身真っ黒のボロ切れのような布を纏った怪物、シャドウマンと四つの虫のような目をギョロギョロと動かし、背から四本の虫のような脚を生やした女、ザマスロリ大女郎蜘蛛がだよロリ犬に視線を向ける。
「……同類が相手ザマスか。」
「面倒な奴相手に呼んでくれたな。」
「私達のサポートが貴女達の仕事でしょう?」
アリックスがそう言うと、フッと二人は嗤う。
「まぁ、肩慣らしには丁度いいザマスか。」
アリックス達は再びアルタイルへと向かう。
「待つだよ!」
それを見ただよロリ犬が二人を止めようとするがその前に大女郎蜘蛛とシャドウマンが立ちはだかる。
「おおっと、タダで通す訳にはいかねぇ。」
彼女の前にシャドウマンが立ちはだかる。
「邪魔だよっ!」
だよロリ犬が拳を振るい、シャドウマンに殴りかかる。しかしだのロリ犬の攻撃は彼女の身体をすり抜けてしまう。
「んなっ」
慌てて返す刀で蹴りを放つが、まともやその一撃は彼女の身体を捉えたのにも関わらず、まるで何もない空間を蹴ったかのように手応えが一切ない。
「どうした?全然効いてないぞ?」
「ぐっ、何が起きて…!」
だよロリ犬がさらに拳を振るうが、彼女の身体をすり抜けるだけで全く手応えがない。謎の現象に彼女が困惑している時だった。
何処からともなく飛んできた糸が彼女の身体に纏わりつく。
「なにっ!?」
彼女が糸が飛んできた方を見ると、そこにはザマスロリ大女郎蜘蛛の姿があった。
「私達が正面からやり合えば長期戦になるザマス。けど、私は面倒が嫌いザマス。だから。」
ただでさえ糸が絡みついて動けないだよロリ犬にさらに糸を吹き掛けてニヤリと笑う。
「さっさと拘束してポイっザマス。」
「やばっ……!」
大女郎蜘蛛のやろうとしていることに気づいただよロリ犬が慌てて糸を引きちぎろうとするが、糸は非常に柔軟性に富んでおり、伸びるだけで千切れる様子はない。そうこうしている内にだよロリ犬の体は吹きかけられた糸で完全に包み込まれ、白い球体と化す。
「──ッ!───ッッ!」
だが生きてはいるようで、糸から喚くような声が聞こえる。しかし大女郎蜘蛛は気にした様子もなく、背の脚を振り上げると。
「それじゃ、お元気で。」
脚を思い切り振って、白い球を叩く。白い球はそのまま天高く飛んでいき、フェードアウトする。
「ふぅ。筋肉バカが相手で良かったザマス。」
「一丁上がりだな。」
一方でアリックスとアルタイルが槍と剣で打ち合う。アルビレオも何とか入ろうとするが、二人の攻防の凄まじさに割って入る事が出来ない。
「そこっ!」
アルタイルが剣を振るうと、アリックスの槍が弾かれる。
「!」
その隙を逃さずアルタイルは掌を彼女に向ける。
「今度は霧になってもそれごと焼き尽くす!」
アルタイルがそう言って焔を発そうとした瞬間ドスリ、と彼女の胸を4本の針が突き刺さる。飛んできた方を見れば姦姦蛇螺がいた。
「この程度の攻撃が私に効くとでも──!」
アルタイルが突き刺さった針に構わず目の前のアリックスを燃やそうとしたその瞬間ドクンッと彼女の心臓が大きく跳ね上がるのを感じた。
「がっ……!?」
次の瞬間彼女の手足の感覚が無くなる。呼吸や方向感覚が乱れ、どこが上で、どちらが下なのか前後不覚になり、彼女の動きが停止する。
「!!?」
「馬鹿ね。自分の不死性に驕るからそうなるのよ。死なないって言ったってやりようはいくらでもある。」
さらに動けない彼女の周りを六本の柱が囲み、それらを繋ぐようにしめ縄が伸びる。
「“私を封印していた術式”ですわ。実体験から言いますと…結構しんどいですわよ?」
ニヤニヤと笑いながら姦姦蛇螺は笑みを浮かべて呪術を操作する。
「!させるかぁ!」
姉のピンチにアルビレオは勇気を振り絞り、姦姦蛇螺へと飛翔する。風を起こし、腕を振るって刃のように鋭い真空波を彼女へ飛ばす。
「おっと。」
しかし、それは上空から割って入ったアリックスの槍によって弾かれる。
「ならっ!」
遠距離では埒が明かないとアルビレオが翼を拡げ、高速で動きながら姦姦蛇螺へと向かう。
縦横無尽に飛翔し、そしてついに彼女を射程圏内に捉えようとした瞬間。
横から何者かが邪魔するように飛び込んでくる。
「!」
その何者かは剛腕を振るい、アルビレオを殴り飛ばす。
「うぶっ!!?」
殴られたアルビレオは大きく吹き飛び、地面へと叩きつけられる。
「邪魔をしてくれるな下郎。コイツは我の計画に必要なのだ。」
その怪物がアルビレオを一瞥しながら言う。その怪物の外見は筋骨隆々の巨躯に恐竜の骨のような外装を貼り付けたような怪物の姿をしていた。
その姿にアルビレオは見覚えがあった。
「……お前、は…」
怪物は紅く光る眼を細めて言う。
「ほう。我を知っているのか?」
くっくっくっと笑いながら怪物はアルビレオに近づく。そして倒れて動けない彼の前まで来ると、その顔を思い切り踏みつける。
「うぐぅ、あぁっ……!」
呻く彼を見下ろしながらカノープスは嗤う。
「そう案ずるな。一時借りるだけだ。後で返してやる。勿論生きて返すとも。生きては……な。」
そう言って怪物は高らかに笑うと、全員に振り直る。
「さぁ、貴様ら!今こそあの美しく歪んだ世壊へ行くぞ!!そして、そこで我は……」
怪物は鈍くサイケデリックに輝く空を見上げながら、両手を天へと伸ばして宣言する。
「“無敵の存在”へと昇華するのだ!!」
放課後、帰り道。龍香と藍が歩いて帰っていると。
「あ、龍香ちゃん。」
後ろから声をかけられる。そこには紫の髪に空色の帽子をつけ、カメラを構えた少女、慶光印九こときゅーばんちゃんと白い髪をポニーテールし、蟹のアクセサリーをつけたむらサメがいた。
「あ、きゅーばんちゃん。むらサメちゃん。」
「よっ、久しぶりやな!元気しとったか雪花!」
「ぼちぼちよ。」
「はぁ〜そこは嘘でも元気って答えんかい。ほんま雪のように冷たい奴やで、雪花だけに!ワハハ!」
「冷凍保存してあげようか?うん?」
むらサメに揶揄われている雪花を置いておき、きゅーばんが龍香に話しかけてくる。
「そう言えばさ、龍香ちゃんはこの噂知ってる?」
「何?」
「今、色んな場所でコスプレした人がちょくちょく見られているの。」
「何それ?」
「イベントでもないのに、コスプレして周囲を徘徊している人の目撃情報があるんだよね〜。しかもここのところ数日何処かしらで目撃情報があるんだよっ!」
「へぇ……愉快な人もいるもんだね。」
なんて二人がそんな話をしていると。ガサゴソと何かが動くような音が茂みからする。
その音に四人がドキッとして、一つに固まる。最初は風のせいかとも思ったが、明らかに茂みの中に何かがいるようで、無風であるにも関わらずガサガサと茂みが揺れる。
「だ…誰……?」
「ちょ、ちょい……雪花、見てきてーな。」
「何でアタシなのよ!?アンタがいきなさいよ!」
「ま、まぁまぁ…」
結局四人が意を決して茂みに近づいた瞬間。茂みから何かが飛び出してくる。
「「「「わぁああああ!!?」」」」
突然飛び出して来た事に驚く四人。飛び出して来たのは黒いコートにシャープな装飾品がついたものに身を包んだ、一人の少年だった。
「えっ……誰?」
突然飛び出して来た青年に困惑を隠せないが、おずおずと龍香が尋ねると彼は四人に顔を上げてうーん、と唸ったかと思うと。
「……お腹空いた。」
それだけ言って、ばたりと倒れる。それを見た四人はキョトンと顔を見合わせるのだった。
「あ、龍香ちゃん。」
後ろから声をかけられる。そこには紫の髪に空色の帽子をつけ、カメラを構えた少女、慶光印九こときゅーばんちゃんと白い髪をポニーテールし、蟹のアクセサリーをつけたむらサメがいた。
「あ、きゅーばんちゃん。むらサメちゃん。」
「よっ、久しぶりやな!元気しとったか雪花!」
「ぼちぼちよ。」
「はぁ〜そこは嘘でも元気って答えんかい。ほんま雪のように冷たい奴やで、雪花だけに!ワハハ!」
「冷凍保存してあげようか?うん?」
むらサメに揶揄われている雪花を置いておき、きゅーばんが龍香に話しかけてくる。
「そう言えばさ、龍香ちゃんはこの噂知ってる?」
「何?」
「今、色んな場所でコスプレした人がちょくちょく見られているの。」
「何それ?」
「イベントでもないのに、コスプレして周囲を徘徊している人の目撃情報があるんだよね〜。しかもここのところ数日何処かしらで目撃情報があるんだよっ!」
「へぇ……愉快な人もいるもんだね。」
なんて二人がそんな話をしていると。ガサゴソと何かが動くような音が茂みからする。
その音に四人がドキッとして、一つに固まる。最初は風のせいかとも思ったが、明らかに茂みの中に何かがいるようで、無風であるにも関わらずガサガサと茂みが揺れる。
「だ…誰……?」
「ちょ、ちょい……雪花、見てきてーな。」
「何でアタシなのよ!?アンタがいきなさいよ!」
「ま、まぁまぁ…」
結局四人が意を決して茂みに近づいた瞬間。茂みから何かが飛び出してくる。
「「「「わぁああああ!!?」」」」
突然飛び出して来た事に驚く四人。飛び出して来たのは黒いコートにシャープな装飾品がついたものに身を包んだ、一人の少年だった。
「えっ……誰?」
突然飛び出して来た青年に困惑を隠せないが、おずおずと龍香が尋ねると彼は四人に顔を上げてうーん、と唸ったかと思うと。
「……お腹空いた。」
それだけ言って、ばたりと倒れる。それを見た四人はキョトンと顔を見合わせるのだった。
「いやー、ありがとう助かった!正直もうダメかと思ってた!」
何個か買ってきて渡したパンを食べた青年は笑顔でそう答える。
「それは良かったです。私、龍香って言います。あの、あなたは?」
龍香が尋ねると、彼が答える。
「あ、僕の名前はデヴァ。ワコクにいたんだけど、たまたま開いていたよく分からない裂け目に飲み込まれて、気がついたらここにいて……」
そう答えるデヴァを四人は見ながらヒソヒソと話す。
「……どう思う?」
「ウチはヤバいと思う。何やねんワコクて。」
「いやまぁ…そうなんだけど。でもオウマがトキの前例あるし……」
「まぁ、悪い人では無さそうだし…。」
四人がヒソヒソと話す中、パンを食べ終えたデヴァが立ち上がる。
「パン美味しかったよ。ありがとう。お礼に何か出来ないかな?僕が出来る事ならなんでもするよ!」
「いや、なんでもって言われてもな。」
ニコニコ笑顔でデヴァがそう言うが、いきなり言われてもパッと何をして欲しいかは思い浮かばない。
「うーん、あっ。じゃあ他に変な格好の人を見ませんでした?こう、周りにいる人達とは違うような…」
きゅーばんが尋ねると、デヴァはうーんと顎に指を当てて考える。
「変な格好……あっ、そう言えば……。」
何個か買ってきて渡したパンを食べた青年は笑顔でそう答える。
「それは良かったです。私、龍香って言います。あの、あなたは?」
龍香が尋ねると、彼が答える。
「あ、僕の名前はデヴァ。ワコクにいたんだけど、たまたま開いていたよく分からない裂け目に飲み込まれて、気がついたらここにいて……」
そう答えるデヴァを四人は見ながらヒソヒソと話す。
「……どう思う?」
「ウチはヤバいと思う。何やねんワコクて。」
「いやまぁ…そうなんだけど。でもオウマがトキの前例あるし……」
「まぁ、悪い人では無さそうだし…。」
四人がヒソヒソと話す中、パンを食べ終えたデヴァが立ち上がる。
「パン美味しかったよ。ありがとう。お礼に何か出来ないかな?僕が出来る事ならなんでもするよ!」
「いや、なんでもって言われてもな。」
ニコニコ笑顔でデヴァがそう言うが、いきなり言われてもパッと何をして欲しいかは思い浮かばない。
「うーん、あっ。じゃあ他に変な格好の人を見ませんでした?こう、周りにいる人達とは違うような…」
きゅーばんが尋ねると、デヴァはうーんと顎に指を当てて考える。
「変な格好……あっ、そう言えば……。」
青空が晴れ晴れと広がる陽から隠れるように木陰で一息をついていた白髪を三つ編みに纏め、頭に花飾りをつけた少女エフィの鼻筋を風が撫でる。
その瞬間エフィは眼を開けてゆっくりと起き上がる。
「……」
「今の風。いやな感じがするじゃろう。」
彼女が声がした方に顔を向けると、そこには黒髪に猫耳を生やし、赤いマフラーを巻いた奇妙な少女、のじゃロリ猫がいた。
「この世界随分と歪んでしまっておるの。別世界を隔てる仕切りが壊れて世界が不安定になっている。」
「……つまり?」
エフィが尋ねると、のじゃロリ猫はうーんと背伸びをしながら答える。
「悪意を持った別次元の何者かがこの世界に侵入したらしいの。」
エフィが再び空を見上げると、どんよりとした暗雲が青空に流れていく。
同じように空を見上げながらのじゃロリ猫はぼやく。
「これは、かなり面倒な事になりそうじゃの〜。」
その瞬間エフィは眼を開けてゆっくりと起き上がる。
「……」
「今の風。いやな感じがするじゃろう。」
彼女が声がした方に顔を向けると、そこには黒髪に猫耳を生やし、赤いマフラーを巻いた奇妙な少女、のじゃロリ猫がいた。
「この世界随分と歪んでしまっておるの。別世界を隔てる仕切りが壊れて世界が不安定になっている。」
「……つまり?」
エフィが尋ねると、のじゃロリ猫はうーんと背伸びをしながら答える。
「悪意を持った別次元の何者かがこの世界に侵入したらしいの。」
エフィが再び空を見上げると、どんよりとした暗雲が青空に流れていく。
同じように空を見上げながらのじゃロリ猫はぼやく。
「これは、かなり面倒な事になりそうじゃの〜。」
「じゃあね黒鳥。」
「うん。バイバイ。」
灰色の前髪に黒い長い髪を一つにまとめた、少し大人びた顔つきの少女、黒鳥飛鳥は学校が終わると友達と手を振って別れて帰路へと着く。
「帰ったら何をしようかな……」
なんて独り言を呟き、考え事をしながら黒鳥が歩いていた彼女が曲がり角を曲がろうとしたその時。
ドンっと彼女の胸に衝撃が走る。
「きゃっ」
小さな悲鳴が聞こえ、彼女が視線を落とすと、そこには尻餅をついた黒髪に赤いメッシュが入った少女がいた。
「あ、あぁ!大丈夫ですか?」
黒鳥が心配して、彼女に手を伸ばす。尻餅をついた彼女は黒鳥の手を取ると、彼女に引っ張られて立ち上がる。
「こちらこそごめんなさい。不注意だったわ。」
「い、いやいや。こちらこそ…」
少女は立ち上がるとペコリと頭を下げる。それを見た黒鳥も自分も悪かったと頭を下げる。
そして二人が顔を上げて、目線が合った瞬間。お互いの顔を見た二人の胸に郷愁のような懐かしい感覚が広がる。
そう、まるで友人にひさしぶりに会ったかのような……
「あ……あれ?あの……どこかでお会いしました?」
「い、いや。これが初対面だと……。」
「あの、私黒鳥って言います……聞き覚えは?」
「……ないわ。…赤羽って名前に聞き覚えは?」
「いや……ない…です…。」
しかし初対面では絶対に有り得ない感覚に囚われた黒鳥と赤羽の二人が互いを見合っているときだった。
「へぇ。“記憶”が蘇りかけているのですか?」
二人が眼をやると、そこには和服に身を包んだ緑髪の蛇のような瞳の女性がいた。
「次から次へとなんなの…!」
「記憶…!?」
こちらへ悠々と近づいてくる女性、姦姦蛇螺に二人が後退りをする。
「まぁまぁ。そう恐れないでください……寧ろ“記憶を蘇らせて”あげようと言うのですよ?」
姦姦蛇螺が手を前に出し、赤い球体を翳す。二人が警戒してその手をずっと見ていると、その球体に刻まれた×印が光り輝く。その瞬間不意に視界が揺らぐ。
「あ……?」
「えっ…」
二人の意識が混濁し、闇の中に沈んでいく。完全に意識が途切れる寸前、女の声が響く。
「良い夢を。お嬢さん達。」
そして二人の視界は暗転し、闇に包まれた。
「うん。バイバイ。」
灰色の前髪に黒い長い髪を一つにまとめた、少し大人びた顔つきの少女、黒鳥飛鳥は学校が終わると友達と手を振って別れて帰路へと着く。
「帰ったら何をしようかな……」
なんて独り言を呟き、考え事をしながら黒鳥が歩いていた彼女が曲がり角を曲がろうとしたその時。
ドンっと彼女の胸に衝撃が走る。
「きゃっ」
小さな悲鳴が聞こえ、彼女が視線を落とすと、そこには尻餅をついた黒髪に赤いメッシュが入った少女がいた。
「あ、あぁ!大丈夫ですか?」
黒鳥が心配して、彼女に手を伸ばす。尻餅をついた彼女は黒鳥の手を取ると、彼女に引っ張られて立ち上がる。
「こちらこそごめんなさい。不注意だったわ。」
「い、いやいや。こちらこそ…」
少女は立ち上がるとペコリと頭を下げる。それを見た黒鳥も自分も悪かったと頭を下げる。
そして二人が顔を上げて、目線が合った瞬間。お互いの顔を見た二人の胸に郷愁のような懐かしい感覚が広がる。
そう、まるで友人にひさしぶりに会ったかのような……
「あ……あれ?あの……どこかでお会いしました?」
「い、いや。これが初対面だと……。」
「あの、私黒鳥って言います……聞き覚えは?」
「……ないわ。…赤羽って名前に聞き覚えは?」
「いや……ない…です…。」
しかし初対面では絶対に有り得ない感覚に囚われた黒鳥と赤羽の二人が互いを見合っているときだった。
「へぇ。“記憶”が蘇りかけているのですか?」
二人が眼をやると、そこには和服に身を包んだ緑髪の蛇のような瞳の女性がいた。
「次から次へとなんなの…!」
「記憶…!?」
こちらへ悠々と近づいてくる女性、姦姦蛇螺に二人が後退りをする。
「まぁまぁ。そう恐れないでください……寧ろ“記憶を蘇らせて”あげようと言うのですよ?」
姦姦蛇螺が手を前に出し、赤い球体を翳す。二人が警戒してその手をずっと見ていると、その球体に刻まれた×印が光り輝く。その瞬間不意に視界が揺らぐ。
「あ……?」
「えっ…」
二人の意識が混濁し、闇の中に沈んでいく。完全に意識が途切れる寸前、女の声が響く。
「良い夢を。お嬢さん達。」
そして二人の視界は暗転し、闇に包まれた。
「珍しいですね。月乃助さんから俺達を誘ってくださるなんて。」
「うむ。妹が世話になっているからな。御礼としてな。」
たまたま道でバッタリと出くわした紫の髪の青年龍賢と、亜麻色の長い髪を三つ編みにし、アホ毛をぴょこぴょこと動かす女性……月乃助が道を歩いていた。
「でも良いのかしら。私達まで。」
「なんか、悪いな。」
その後ろを同じように紫の髪を一つに束ねた少し線の細い少年、龍斗と紫の髪を長く伸ばし、おっとりとした雰囲気の女性、龍姫が続く。
「構わんさ。私は天才だからね。一人二人増えたところで困りはしないのだよ!」
申し訳なさそうにする二人に彼女は気にするなと高笑いをする。
そうして四人が歩いていると、四人の行き先に二人の少女が立っていた。
四人を見定めるかのように隅々まで見てくる蝙蝠のような羽を生やした少女が呟く。
「面倒事押し付けられたとは思っていたけど……なかなかどうして…良い色男がいるじゃない。」
少女の何処か熱が篭ったねっとりとした視線に龍賢が少し身震いをする中、もう片方の雲のような脚を生やした四つ目の女が赤い球体を翳す。
「……さっさと終わらせるザマス。」
「なんなんだね君達は。妙なかっ…こ…?」
妙な二人組に絡まれたと月乃助が文句を言おうとした瞬間。ぐわんと視界が暗転する。
「なっ、月乃助さ──」
膝をついた彼女に龍賢が慌てて駆け寄ろうとしたその時だった。
「気に入ったわ。貴方は、私の“モノ”よ。」
蝙蝠の少女が龍賢に赤い球体を翳す。先程の月乃助の様子からそれを見てはマズイと目を反らそうとするが、彼女の力は強く、目を背ける事は出来ない。
「しまっ──!」
その光を見た途端龍賢の視界が暗転し、膝から崩れ落ちる。意識が途切れる寸前、彼の目に同じように倒れる龍斗達二人の姿も見える。
「龍香……っ!」
そして、彼の視界は暗転する。
「うむ。妹が世話になっているからな。御礼としてな。」
たまたま道でバッタリと出くわした紫の髪の青年龍賢と、亜麻色の長い髪を三つ編みにし、アホ毛をぴょこぴょこと動かす女性……月乃助が道を歩いていた。
「でも良いのかしら。私達まで。」
「なんか、悪いな。」
その後ろを同じように紫の髪を一つに束ねた少し線の細い少年、龍斗と紫の髪を長く伸ばし、おっとりとした雰囲気の女性、龍姫が続く。
「構わんさ。私は天才だからね。一人二人増えたところで困りはしないのだよ!」
申し訳なさそうにする二人に彼女は気にするなと高笑いをする。
そうして四人が歩いていると、四人の行き先に二人の少女が立っていた。
四人を見定めるかのように隅々まで見てくる蝙蝠のような羽を生やした少女が呟く。
「面倒事押し付けられたとは思っていたけど……なかなかどうして…良い色男がいるじゃない。」
少女の何処か熱が篭ったねっとりとした視線に龍賢が少し身震いをする中、もう片方の雲のような脚を生やした四つ目の女が赤い球体を翳す。
「……さっさと終わらせるザマス。」
「なんなんだね君達は。妙なかっ…こ…?」
妙な二人組に絡まれたと月乃助が文句を言おうとした瞬間。ぐわんと視界が暗転する。
「なっ、月乃助さ──」
膝をついた彼女に龍賢が慌てて駆け寄ろうとしたその時だった。
「気に入ったわ。貴方は、私の“モノ”よ。」
蝙蝠の少女が龍賢に赤い球体を翳す。先程の月乃助の様子からそれを見てはマズイと目を反らそうとするが、彼女の力は強く、目を背ける事は出来ない。
「しまっ──!」
その光を見た途端龍賢の視界が暗転し、膝から崩れ落ちる。意識が途切れる寸前、彼の目に同じように倒れる龍斗達二人の姿も見える。
「龍香……っ!」
そして、彼の視界は暗転する。
(龍香さん……龍香さんかぁ。)
少女、天願は今朝自分を助けてくれた少女を思い出しながら廊下を歩く。
(私を助けてくれた時の真剣な表情と笑顔……まるで夢で見た魔龍少女みたい。)
天願は思わず笑みが溢れる。そう。あの時の態度、姿勢や表情。龍香の姿は夢で見た魔龍少女そっくりだった。
彼女には猛烈に記憶に刻み込まれた夢があった。それこそ現実と見まごうほどの夢だ。
怪物に襲われた彼女を紫のドレスの少女が助けてくれた。そして名を訪ねた彼女に少女はこう答えたのだ。──自分は魔龍少女だと。
夢の追体験をしたかのような、それこそ文字通り夢見心地の彼女がランドセルを背負い、下駄箱の靴を履いて、外に出ようとしたその時。
「ねぇ、ちょっと。面貸しなさいよ。」
校門で待ち構えていた黒衣とその取り巻きによって彼女は冷や水でもかけられたかのように夢から叩き起こされる。
少女、天願は今朝自分を助けてくれた少女を思い出しながら廊下を歩く。
(私を助けてくれた時の真剣な表情と笑顔……まるで夢で見た魔龍少女みたい。)
天願は思わず笑みが溢れる。そう。あの時の態度、姿勢や表情。龍香の姿は夢で見た魔龍少女そっくりだった。
彼女には猛烈に記憶に刻み込まれた夢があった。それこそ現実と見まごうほどの夢だ。
怪物に襲われた彼女を紫のドレスの少女が助けてくれた。そして名を訪ねた彼女に少女はこう答えたのだ。──自分は魔龍少女だと。
夢の追体験をしたかのような、それこそ文字通り夢見心地の彼女がランドセルを背負い、下駄箱の靴を履いて、外に出ようとしたその時。
「ねぇ、ちょっと。面貸しなさいよ。」
校門で待ち構えていた黒衣とその取り巻きによって彼女は冷や水でもかけられたかのように夢から叩き起こされる。
「……うあっ。」
「助けて貰ったからってさぁ。良い気にならないでよね。」
人気のない体育館裏で彼女は黒衣に突き飛ばされる。取り巻き達がニヤニヤと嗤う中、黒衣が天願に詰め寄る。
「大体アンタがさっさとそのペンダントを渡せば、私は恥をかかずに済んだのよ!」
「そーそー。」
「黒衣ちゃんかわいそー。」
取り巻きが囃し立てる中、黒衣は天願が首からかけていたペンダントを奪い取る。
「……やめてっ!返して!」
それを取られた天願が夢中になって黒衣へと向かうが、黒衣はふんっ!と彼女を蹴りつける。
「にしても綺麗な紫のペンダントね。アンタなんかより私の方が似合うわ。」
「うぅ…返して……」
天願が蹴られた箇所を押さえながら黒衣に掴みかかろうとするが、バシッと振り払われてしまう。
「良いじゃない、またあの龍香とか言う子に助けて貰ったら?」
「…!」
「呼んで良いわよ。助けて〜龍香ちゃ〜ん〜!ってね。」
「アイツ、良い子ちゃんぶってムカつくんだよね〜。」
「チンチンクリンの癖に生意気なのよ。」
そう言ってケラケラ笑い、恩人をバカにする三人を、天願は恨めしそうに睨む。
(うぅ……私にも、力があれば。龍香さんや他の人に迷惑をかけないのに。こんな人達に、負けないのに。)
ドロリ、と彼女の心にドス黒い雫が垂れる。
(力さえあれば……!!)
彼女が憎悪と悪意を滲ませながら、顔を上げた瞬間。
《クックックッ。あまりに無様。惨めだな小娘。》
何処からともなく男の声が聞こえる。天願は驚いてキョロキョロと辺りを見回すが、声の主と思しき人物は見つからない。
「…何してるの?」
「えっ……あっ?」
突然挙動不審な行動を取り出した彼女を黒衣達は怪訝な目で見つめる。
《なぁ……奴らが憎くないか?》
「え…?」
《奴らだよ。お前から搾取して、圧迫してくる奴らが憎くないか?》
「あっ、あっ……」
天願の視線が黒衣達に向く。憎い。自分を抑えつけ、恩人を馬鹿にする彼女達が。彼女の心が殺意と怒りで染まっていく。
《良い憎悪。良い怒りだ。気に入ったぞ…!力を貸してやろう…!》
次の瞬間黒い靄のようなものが彼女の手に集まる。そしてその靄が晴れると、彼女の右手には龍の頭蓋骨を模したような“ヘアアクセ”が握られていた。
「憎い……!憎い!貴方達が…!」
恨み言を呟きながら幽鬼の如くゆらりと立ち上がる彼女に気味悪いものを感じたのか彼女達が後ずさる。
「な、何よ…」
「おかしくなっちゃった?」
黒衣達を睨みつけながら天願は握っていたその“ヘアアクセ”を構える。
その瞬間彼女の後ろから巨大な肉食恐竜の頭蓋骨が禍々しいオーラを纏いながら現れる。
突然の出来事に三人が困惑と恐怖に顔を歪める中、天願は口角を上げて、邪悪な笑みを浮かべた。
「“ダイノフォーゼ”…!」
「助けて貰ったからってさぁ。良い気にならないでよね。」
人気のない体育館裏で彼女は黒衣に突き飛ばされる。取り巻き達がニヤニヤと嗤う中、黒衣が天願に詰め寄る。
「大体アンタがさっさとそのペンダントを渡せば、私は恥をかかずに済んだのよ!」
「そーそー。」
「黒衣ちゃんかわいそー。」
取り巻きが囃し立てる中、黒衣は天願が首からかけていたペンダントを奪い取る。
「……やめてっ!返して!」
それを取られた天願が夢中になって黒衣へと向かうが、黒衣はふんっ!と彼女を蹴りつける。
「にしても綺麗な紫のペンダントね。アンタなんかより私の方が似合うわ。」
「うぅ…返して……」
天願が蹴られた箇所を押さえながら黒衣に掴みかかろうとするが、バシッと振り払われてしまう。
「良いじゃない、またあの龍香とか言う子に助けて貰ったら?」
「…!」
「呼んで良いわよ。助けて〜龍香ちゃ〜ん〜!ってね。」
「アイツ、良い子ちゃんぶってムカつくんだよね〜。」
「チンチンクリンの癖に生意気なのよ。」
そう言ってケラケラ笑い、恩人をバカにする三人を、天願は恨めしそうに睨む。
(うぅ……私にも、力があれば。龍香さんや他の人に迷惑をかけないのに。こんな人達に、負けないのに。)
ドロリ、と彼女の心にドス黒い雫が垂れる。
(力さえあれば……!!)
彼女が憎悪と悪意を滲ませながら、顔を上げた瞬間。
《クックックッ。あまりに無様。惨めだな小娘。》
何処からともなく男の声が聞こえる。天願は驚いてキョロキョロと辺りを見回すが、声の主と思しき人物は見つからない。
「…何してるの?」
「えっ……あっ?」
突然挙動不審な行動を取り出した彼女を黒衣達は怪訝な目で見つめる。
《なぁ……奴らが憎くないか?》
「え…?」
《奴らだよ。お前から搾取して、圧迫してくる奴らが憎くないか?》
「あっ、あっ……」
天願の視線が黒衣達に向く。憎い。自分を抑えつけ、恩人を馬鹿にする彼女達が。彼女の心が殺意と怒りで染まっていく。
《良い憎悪。良い怒りだ。気に入ったぞ…!力を貸してやろう…!》
次の瞬間黒い靄のようなものが彼女の手に集まる。そしてその靄が晴れると、彼女の右手には龍の頭蓋骨を模したような“ヘアアクセ”が握られていた。
「憎い……!憎い!貴方達が…!」
恨み言を呟きながら幽鬼の如くゆらりと立ち上がる彼女に気味悪いものを感じたのか彼女達が後ずさる。
「な、何よ…」
「おかしくなっちゃった?」
黒衣達を睨みつけながら天願は握っていたその“ヘアアクセ”を構える。
その瞬間彼女の後ろから巨大な肉食恐竜の頭蓋骨が禍々しいオーラを纏いながら現れる。
突然の出来事に三人が困惑と恐怖に顔を歪める中、天願は口角を上げて、邪悪な笑みを浮かべた。
「“ダイノフォーゼ”…!」
デヴァを筆頭に龍香達四人は山の中を進んでいた。段々と道なき道を進んでいく中、藍がぼやくように尋ねる。
「…本当にこんな山の中にいるの?」
「確かこの先の滝にいたんだよねぇ…。」
「って言うかこの先滝あったんだ…。」
デヴァの案内を受けて前に進んでいく道中、コソコソと龍香達は相談する。
(…ホントにあるのかなぁ。)
(まぁ、任せとき。もしあの人が騙しとったらウチがしばき回したるわ。)
(私も一応“デイブレイク”持ってきたし。大丈夫でしょ。)
(わぁ頼もしい。)
四人が話をしていると、微かにドドドッと水が落ちる音が聞こえてくる。
「もうすぐだ!」
デヴァがそう言うとゴールが近くなって来たことで皆も少し元気になり、先を急ぐ。
そして五人は開けた場所に出る。果たして、その先には確かに滝が流れていた。緑豊かな自然に滝が流れる風景はまさに隠れた名所のようで、派手な煌びやかさこそないものの、素朴ながらも美しい風景に五人は感嘆の声を漏らす。
「わぁ……」
「綺麗……」
五人が思い思いに辺りを見回していると、ふと滝壺を見た藍が何かに気づく。
「…あっ!あそこ!」
藍が指差した先を全員が見つめる。よく目を凝らしてみると、そこには滝に打たれている一人の女性がいた。
「あっ、あの人!あの人だよ!」
滝壺にいる人を見たデヴァが反応する。取り敢えず気になった五人は降りて滝壺へと向かう。
どうやらあっち側も近づいてくる五人気づいたようで、辿り着く頃には滝から出ていた。
そこにいたのは少し黒がかった茶髪の長い髪に龍を模したペンダントを頭につけ、青のチャイナドレスに身を包んだ赤い瞳の女性がいた。
「何の用かしら?」
女性に尋ねられたデヴァは目をぱちくりとさせた後にきゅーばんに視線を向ける。
視線を向けられたきゅーばんはおずおずと前に出て彼女に尋ねる。
「あの……もしかして貴方も裂け目に巻き込まれて?」
「あら?もしかして貴方達も巻き込まれたクチ?」
仲間を見つけた、かのように彼女の瞳が少し輝く。きゅーばんは首を振って。
「い、いやいや。それは、この人だけで私達は違うんです!」
きゅーばんがデヴァを指差す。彼女はふーん、としげしげと彼を見つめる。そしてふと、何かに気づいたように龍香と藍へと視線を向ける。
「な、なに?」
「……君達、不思議な感じがするね。…この世界の住人のようで……それともまた少しちがうような…。」
「な、何を言ってるのかしら?ねぇ龍香。」
「そ、そうだよね。よく分かんない。」
彼女の指摘に二人がどもりながらも否定する。それを見た彼女は少し訝しげに二人を見ながらも、それ以上追求はしてこなかった。
「私の名前はシェーン。この次元から妙な気配を感じてね。次元の狭間からここに来たの。」
「今度は次元と来たかぁ……。」
またもや訝しげにするむらサメが彼女に尋ねる。
「って言うかなんやねん次元の狭間だのなんだのって。大体なんで世界がそうなってんねんや。」
彼女の質問にシェーンはふむ、と思考を巡らせると。
「ザッと世界を見た限りでは、この世界は歪だ。まるで球体を一度潰して無理矢理作り直したかのような……そんな歪さを感じる。恐らくその歪みが狭間となって色んな次元に繋がってしまっている。」
「なんじゃそりゃ。」
突拍子のない言葉にむらサメだけでなく、きゅーばんも怪訝な顔をする。
しかし一方の龍香と藍は顔を青くする。二人には心当たりがあった。そう。シードゥスとの激闘の末、世界を書き替えたのだ。
(もしかして……)
シェーンの言葉に二人が考え事をしていたその時、シェーンの顔が鋭くなる。デヴァも四人を庇うように前に出る。
「そこにいる者!何者だ!」
シェーンが何もない場所に向かって叫ぶ。何事かと四人が彼女の視線の先に目をやると、木の影がゆらりと揺らぐ。
そしてその影はニュッと伸びて、その影は人型へと変貌し、一人の少女が立っていた。
「ほう……この私に気づいたか。」
その少女はククと笑いながら一歩前に踏み出す。それを見た全員が警戒する。
「私が用があるのは貴様らだ。そこの、二人だ。」
影の少女が龍香と藍を指差す。指差された二人は困惑の色を隠せない。
「は?何?アンタ?」
「私達に用って…!?」
しかし彼女達二人を守るように四人が立ちはだかる。
「なんだか知らんけど……友達をお前みたいな怪しい奴に渡す訳にはいかんなぁ。」
「…二人共、下がってて。」
「一食の恩。ここで返させて貰うよ。」
「よく分からないけど、君達に彼女達を渡さない方が良さそうだ。」
立ちはだかる四人を見て、影の少女、シャドウマンはクックックッと笑うと。
「成る程。邪魔立てをするか。なら……私の新たな力を試すとしようか!」
シャドウマンが手を地面につく。するとニュニュッと影が彼女から伸び、その影は三人の人の姿へと変貌する。
「行けッ!影写兵“シャドウトルーパー”」
四人の影写兵の内、ポニーテールの少女が振りかぶったかと思った次の瞬間文字通り巨大化した右拳が龍香達に襲いかかる。
「うおおおっ!!?ウチと同じ能力ッ!?」
驚きながらもむらサメが手を巨大化して受け止める。さらに二体の影……三つ編みを棚引かせた少女の影が刀を抜き、デヴァに襲い掛かる。
彼は剣を引き抜くとその振りかぶられた一撃を受け止める。
「くっ!女の子を相手にするのは気が引けるけど…!」
そしてきゅーばんには仮面で顔の半分を覆い、マントを棚引かせる男性の影が脚を振り抜いて攻撃してくる。
「危ないっ!」
しかし彼女は自身の女児符号を使い、動きを見切ると身体を屈めてその一撃を避ける。
「大人しくしてもらおうか!」
シャドウマンは両腕に刃のような形の影を纏わせると、二人に襲い掛かる。しかし横から飛び込んで来たシェーンの掌底が彼女の進行を遮る。
「邪魔立てをっ!」
「君からは悪い気がプンプンする!思い通りにはさせないっ!」
シャドマンとシェーンが打ち合い始め、混戦状態となる中藍も“デイブレイク”に触れて参戦の構えを取る。
「なんだか分からないけどっ、私も加勢を……!」
藍が装甲を纏い、手助けをしようとしたその時。
「!」
二人は後ろに気配を感じて振り返る。そこにいたのは何故か俯いたまま悠然と立つ一人の少女……天願だった。
「天願ちゃん?」
龍香が声をかけると、天願はその顔を上げる。その顔を見た瞬間、彼女達は思わず後ずさる。
何故なら彼女は目を大きく見開き、不気味な笑みを浮かべていたからだ。
「…ど、どうしたの?」
「……龍香さん。私、力を手に入れたんです。どんな奴にも負けない、私の大切なものを守れる最強の力!!」
嬉しそうに言う彼女を困惑しながら見ていると彼女は龍香達に見せつけるようにあるヘアアクセを取り出す。そしてそれを見た龍香は驚愕する。
それは彼女がよく知る恐竜の頭蓋骨を模したヘアアクセだったからだ。
「天願ちゃん……!それって、カノープス……!?」
「そうっ!龍香ちゃん!私は選ばれたの!見てて!」
天願は狂気が入り混じった笑顔でそう叫ぶとヘアアクセ“カノープス”を構える。
「ダイノフォーゼ!」
彼女がそう叫んだ次の瞬間、彼女の後ろから地面を食い破るように恐竜の頭蓋骨が現れ、彼女を捕食する様に包み込む。
そして一際大きく輝いたかと思うと砕け散り、中から恐竜の骨のような装甲を散りばめた紫色のドレスを来た天願が現れる。
《傍若無人。ティラノカラー……!》
その姿を見て驚愕する藍と龍香に彼女は自身の姿を見せつけるように両手を広げて声高高に叫ぶ。
「そう!私はなれたの!憧れの魔龍少女に!」
そして彼女は何処か熱のこもった視線を龍香に向けて呟く。
「だから今度は私が貴方を守ってあげる……龍香さん。」
「…本当にこんな山の中にいるの?」
「確かこの先の滝にいたんだよねぇ…。」
「って言うかこの先滝あったんだ…。」
デヴァの案内を受けて前に進んでいく道中、コソコソと龍香達は相談する。
(…ホントにあるのかなぁ。)
(まぁ、任せとき。もしあの人が騙しとったらウチがしばき回したるわ。)
(私も一応“デイブレイク”持ってきたし。大丈夫でしょ。)
(わぁ頼もしい。)
四人が話をしていると、微かにドドドッと水が落ちる音が聞こえてくる。
「もうすぐだ!」
デヴァがそう言うとゴールが近くなって来たことで皆も少し元気になり、先を急ぐ。
そして五人は開けた場所に出る。果たして、その先には確かに滝が流れていた。緑豊かな自然に滝が流れる風景はまさに隠れた名所のようで、派手な煌びやかさこそないものの、素朴ながらも美しい風景に五人は感嘆の声を漏らす。
「わぁ……」
「綺麗……」
五人が思い思いに辺りを見回していると、ふと滝壺を見た藍が何かに気づく。
「…あっ!あそこ!」
藍が指差した先を全員が見つめる。よく目を凝らしてみると、そこには滝に打たれている一人の女性がいた。
「あっ、あの人!あの人だよ!」
滝壺にいる人を見たデヴァが反応する。取り敢えず気になった五人は降りて滝壺へと向かう。
どうやらあっち側も近づいてくる五人気づいたようで、辿り着く頃には滝から出ていた。
そこにいたのは少し黒がかった茶髪の長い髪に龍を模したペンダントを頭につけ、青のチャイナドレスに身を包んだ赤い瞳の女性がいた。
「何の用かしら?」
女性に尋ねられたデヴァは目をぱちくりとさせた後にきゅーばんに視線を向ける。
視線を向けられたきゅーばんはおずおずと前に出て彼女に尋ねる。
「あの……もしかして貴方も裂け目に巻き込まれて?」
「あら?もしかして貴方達も巻き込まれたクチ?」
仲間を見つけた、かのように彼女の瞳が少し輝く。きゅーばんは首を振って。
「い、いやいや。それは、この人だけで私達は違うんです!」
きゅーばんがデヴァを指差す。彼女はふーん、としげしげと彼を見つめる。そしてふと、何かに気づいたように龍香と藍へと視線を向ける。
「な、なに?」
「……君達、不思議な感じがするね。…この世界の住人のようで……それともまた少しちがうような…。」
「な、何を言ってるのかしら?ねぇ龍香。」
「そ、そうだよね。よく分かんない。」
彼女の指摘に二人がどもりながらも否定する。それを見た彼女は少し訝しげに二人を見ながらも、それ以上追求はしてこなかった。
「私の名前はシェーン。この次元から妙な気配を感じてね。次元の狭間からここに来たの。」
「今度は次元と来たかぁ……。」
またもや訝しげにするむらサメが彼女に尋ねる。
「って言うかなんやねん次元の狭間だのなんだのって。大体なんで世界がそうなってんねんや。」
彼女の質問にシェーンはふむ、と思考を巡らせると。
「ザッと世界を見た限りでは、この世界は歪だ。まるで球体を一度潰して無理矢理作り直したかのような……そんな歪さを感じる。恐らくその歪みが狭間となって色んな次元に繋がってしまっている。」
「なんじゃそりゃ。」
突拍子のない言葉にむらサメだけでなく、きゅーばんも怪訝な顔をする。
しかし一方の龍香と藍は顔を青くする。二人には心当たりがあった。そう。シードゥスとの激闘の末、世界を書き替えたのだ。
(もしかして……)
シェーンの言葉に二人が考え事をしていたその時、シェーンの顔が鋭くなる。デヴァも四人を庇うように前に出る。
「そこにいる者!何者だ!」
シェーンが何もない場所に向かって叫ぶ。何事かと四人が彼女の視線の先に目をやると、木の影がゆらりと揺らぐ。
そしてその影はニュッと伸びて、その影は人型へと変貌し、一人の少女が立っていた。
「ほう……この私に気づいたか。」
その少女はククと笑いながら一歩前に踏み出す。それを見た全員が警戒する。
「私が用があるのは貴様らだ。そこの、二人だ。」
影の少女が龍香と藍を指差す。指差された二人は困惑の色を隠せない。
「は?何?アンタ?」
「私達に用って…!?」
しかし彼女達二人を守るように四人が立ちはだかる。
「なんだか知らんけど……友達をお前みたいな怪しい奴に渡す訳にはいかんなぁ。」
「…二人共、下がってて。」
「一食の恩。ここで返させて貰うよ。」
「よく分からないけど、君達に彼女達を渡さない方が良さそうだ。」
立ちはだかる四人を見て、影の少女、シャドウマンはクックックッと笑うと。
「成る程。邪魔立てをするか。なら……私の新たな力を試すとしようか!」
シャドウマンが手を地面につく。するとニュニュッと影が彼女から伸び、その影は三人の人の姿へと変貌する。
「行けッ!影写兵“シャドウトルーパー”」
四人の影写兵の内、ポニーテールの少女が振りかぶったかと思った次の瞬間文字通り巨大化した右拳が龍香達に襲いかかる。
「うおおおっ!!?ウチと同じ能力ッ!?」
驚きながらもむらサメが手を巨大化して受け止める。さらに二体の影……三つ編みを棚引かせた少女の影が刀を抜き、デヴァに襲い掛かる。
彼は剣を引き抜くとその振りかぶられた一撃を受け止める。
「くっ!女の子を相手にするのは気が引けるけど…!」
そしてきゅーばんには仮面で顔の半分を覆い、マントを棚引かせる男性の影が脚を振り抜いて攻撃してくる。
「危ないっ!」
しかし彼女は自身の女児符号を使い、動きを見切ると身体を屈めてその一撃を避ける。
「大人しくしてもらおうか!」
シャドウマンは両腕に刃のような形の影を纏わせると、二人に襲い掛かる。しかし横から飛び込んで来たシェーンの掌底が彼女の進行を遮る。
「邪魔立てをっ!」
「君からは悪い気がプンプンする!思い通りにはさせないっ!」
シャドマンとシェーンが打ち合い始め、混戦状態となる中藍も“デイブレイク”に触れて参戦の構えを取る。
「なんだか分からないけどっ、私も加勢を……!」
藍が装甲を纏い、手助けをしようとしたその時。
「!」
二人は後ろに気配を感じて振り返る。そこにいたのは何故か俯いたまま悠然と立つ一人の少女……天願だった。
「天願ちゃん?」
龍香が声をかけると、天願はその顔を上げる。その顔を見た瞬間、彼女達は思わず後ずさる。
何故なら彼女は目を大きく見開き、不気味な笑みを浮かべていたからだ。
「…ど、どうしたの?」
「……龍香さん。私、力を手に入れたんです。どんな奴にも負けない、私の大切なものを守れる最強の力!!」
嬉しそうに言う彼女を困惑しながら見ていると彼女は龍香達に見せつけるようにあるヘアアクセを取り出す。そしてそれを見た龍香は驚愕する。
それは彼女がよく知る恐竜の頭蓋骨を模したヘアアクセだったからだ。
「天願ちゃん……!それって、カノープス……!?」
「そうっ!龍香ちゃん!私は選ばれたの!見てて!」
天願は狂気が入り混じった笑顔でそう叫ぶとヘアアクセ“カノープス”を構える。
「ダイノフォーゼ!」
彼女がそう叫んだ次の瞬間、彼女の後ろから地面を食い破るように恐竜の頭蓋骨が現れ、彼女を捕食する様に包み込む。
そして一際大きく輝いたかと思うと砕け散り、中から恐竜の骨のような装甲を散りばめた紫色のドレスを来た天願が現れる。
《傍若無人。ティラノカラー……!》
その姿を見て驚愕する藍と龍香に彼女は自身の姿を見せつけるように両手を広げて声高高に叫ぶ。
「そう!私はなれたの!憧れの魔龍少女に!」
そして彼女は何処か熱のこもった視線を龍香に向けて呟く。
「だから今度は私が貴方を守ってあげる……龍香さん。」
To be continued……
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(続編や派生作品が有れば、なければ項目ごと削除でもおk)