リロ・アンド・スティッチ
ストーリー
一方、ハワイには両親をなくして家庭崩壊直前となっている
リロ・ペレカイと
ナニ・ペレカイの姉妹がいた。友達が欲しいリロは野犬収容所に犬を買いに来る。626号はジャンバらが追ってきていることに気付き、犬のふりをしてリロの家にかくまってもらおうとする。リロに選ばれた626号はスティッチと名付けられ、ハワイでの生活を始めるが、問題ばかり引き起こしてしまう。
概要
ディズニー長編アニメーション第42作。
『
白雪姫』(1937年)や『
ダンボ』(1941年)などのクラシック作品以来となる水彩画を用いて背景が描かれた。『ダンボ』のような低予算による作品を目指して作られた。作中の水彩画の色使いがダンボをモチーフにしている点や、
ダンボ自身のぬいぐるみがカメオ出演している点にオマージュが見受けられる。赤字であった前作『
トレジャー・プラネット』のリベンジに成功した。
歴史
1985年、
カリフォルニア芸術大学*を卒業した
クリス・サンダースは児童書の企画としてスティッチというキャラクターを創作した。彼は、ちょっとしたモンスターでどこから来たのか説明もないような森に住む小さな生き物についての物語にしたかったと語っているが、物語を短くまとめるのが難しくなり、この企画は断念された。
1997年、ウォルト・ディズニー・フィーチャー・アニメーションの幹部たちが
バーモント州*の
マイケル・アイズナー*の農場に招かれ、オリジナル新作のアニメーション企画について話し合った。当時の副社長
トーマス・シューマッカー*は「新世代のための『
ダンボ』を作ろう」と提案し、大規模予算作品とは異なる、よりパーソナルな物語をサンダースに依頼した。サンダースはかつて断念した児童書の企画を思い出し、スティッチが森に墜落し、森の動物たちと関わるも仲間外れにされ、
カンザス州*の田舎の農場で一人で暮らすというアイディアを提示した。シューマッカーはモンスターの異質さを最大限に活かすためには、動物の世界ではなく人間の世界を舞台にすべきとアドバイスした。
サンダースは
フロリダ州*パームスプリングスのホテルの一室に3日間こもり、29ページにわたる企画書を作成した。スティッチが出会う人間の男の子はバランスを考慮し女の子に変更となった。壁にかかっていた
ハワイ*の地図を何気なく見たサンダースは、最近ハワイを訪れたことを思い出し、物語の舞台をハワイに変更した。ハワイ文化に詳しくなかった彼は旅行用の地図を参考にし、「リロ・レーン」や「ナニ」という地名を見つけて登場人物の名前に採用した。
バーバンク*のディズニー本社に送られた企画書を読んだシューマッカーは、サンダースが描いたようなスタイルで制作することを条件に企画を承認した。
脚本
当初、スティッチは銀河系のギャング団のリーダーという設定で、
ジャンバ・ジュキーバ*はスティッチに置き去りにされた仲間で、銀河評議会により召喚されたジャンバが復讐のためにスティッチを追うという設定だった。テスト試写での観客の反応を受けて、スティッチを幼い存在にしたほうが観客が感情移入しやすいと判断され、スティッチはジャンバが作ったエイリアンの試作品という形に変更された。
制作チームがロケーション調査のためにハワイの
カウアイ島*を訪れた際、現地のガイドが「オハナ」という言葉の意味について説明してくれた。その血縁を越えた家族という概念が映画のメインテーマへと発展した。メインキャラクターで血縁関係があるのは、リロとナニの家庭崩壊した姉妹であり、姉妹の関係をモチーフとしたアニメーション映画は当時のアメリカでは珍しかった。
キャスティング
スティッチは当初台詞を話さない想定だったが、サンダースは彼には少しは喋らせる必要があると気づき、最小限にとどめて台詞を与えるようにした。デブロアはプロの声優ではなくスティッチの生みの親であるサンダースを推薦し、彼が普段スタジオやいたずら電話で人をからかうときに使っていた声色をスティッチの声として使った。
ホノルル*出身の
ティア・カレルは同じフロリダのスタジオで制作された『ムーラン』の
ムーラン役の候補に挙がっていたが実現しなかった。その後、ハワイを舞台にした本作の存在を知り出演を熱望したことで、リロの姉ナニ役に決定した。彼女はロサンゼルス、パリ、トロントの3都市で2年間にわたり録音に取り組んだ。カレルは恋人の
デイヴィッド・カウェナ役にハワイ系でハワイ育ちの
ジェイソン・スコット・リーを推薦した。二人は自分たちのキャラクターのセリフを地元の話し言葉に直す作業や、ハワイ独特のスラングを加える作業にも協力した。
スティッチがギャングの設定だった頃、悪役にリカルド・モンタルバンが起用されており、『スタートレックII カーンの逆襲』のカーンの声をベースに録音していた。スティッチの設定変更に伴い、悪役が
ガントゥに変更されるとモンタルバンのキャラクターは本編から削除された。
デザインとアニメーション
絵本のような明るい色彩と『ダンボ』のような美術的雰囲気を目指し、ディズニーの長編アニメとしては約60年ぶりに久々に水彩画技法の背景画を採用した。そのため背景画家たちは新たにこの技法の訓練を受ける必要があった。
本作は同時期の長編映画『
アトランティス 失われた帝国』が制作費に見合った収入を回収できていなかったこともあり、予算が限られていた境遇も『ダンボ』に似ている。予算の都合でCGにかかる費用はほとんどなかった。キャラクターデザインはディズニーの伝統的なスタイルではなくサンダースの独特なスタイルを採用した。アニメーターたちが彼のスタイルを習得しやすいよう、美術開発監督の
スー・C・ニコルズ*は『サンダース・スタイルを乗りこなす(Surfing the Sanders Style)』というマニュアルを作成した。また、衣服のポケットや模様といった細部表現は省かれ、影の描写もなるべく減らすために多くのシーンは日陰に設定され、影の演出は重要な場面のみに限定された。
映画に登場する宇宙船はクジラやカニといった海洋生物を思わせるデザインとなっている。
スティッチと仲間たちが
リフエ空港*からボーイング747をハイジャックし、ホノルルの市街地のビル群をかすめながら飛行するシーンがあったが、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件を受けて、納期まで数週間しか残されていない段階で全面的に変更され、ジャンバの宇宙船を使い山岳地帯を飛行する描写に変更された。それでも最終的なジャンバの宇宙船のデザインには、747型機のジェットエンジンの影響が残されているという。
クライマックスの修正後もアニメーションを約2分間追加できる予算が残っており、スティッチとリロたちが新たな家族として結ばれていく様子を描いたエピローグに充てられた。
キャスト
スタッフ
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最終更新:2025年06月06日 20:07