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美女と野獣


1993 1993(字幕) 2002(SPL) 2002(SPL:字幕) 2010(SP)



  • 目次

ストーリー

ある寒い夜の晩、城*を一人の老婆が訪れ、一晩の宿を恵んで欲しいと懇願した。城の主である王子は老婆のみすぼらしい姿を見てこれを拒否する。すると老婆は美しい魔女に姿を変え、外見で人を判断した王子を野獣に、召使いたちを家具に変えてしまう。魔女は魔法のバラ*を差し出し、花びらが全て散るまでに王子が愛することを学び誰かに愛されなければ元の姿に戻ることはないと伝える。

数年後、村*に住む美しい娘ベルは粗暴な男ガストンの求婚を断り、もっと広い世界を夢見ていた。ある日、父のモーリスが仕事に出かけたきり戻らず、彼を乗せていた馬フィリップだけが帰ってくる。ベルはフィリップに導かれ、鬱蒼とした森の奥の城を訪れる…。

概要

ディズニーの長編アニメーション映画第30作。物語は原作よりも1946年に公開されたジャン・コクトー監督の実写映画版に近い。

アカデミー作品賞*に史上初めてノミネートしたアニメ作品である(他には『カールじいさんの空飛ぶ家』(2009年)と『トイ・ストーリー3』(2010年)のみで、手描きのアニメとしては唯一)。興行収入は3.8億ドル。再公開版やIMAX版も含めると4億ドルを超える。

ディズニー・ルネッサンス*期の作品の一つであり、ゲイリー・トゥルースデイル*カーク・ワイズ*ドン・ハーン*が監督・製作として初めて揃い踏みした作品でもある。また、『リトル・マーメイド』(1989年)でのゴールデン・コンビとも呼ばれるハワード・アシュマンアラン・メンケンが楽曲を提供し、後にミュージカル化もされている。しかし、アシュマンはHIVにかかっており、1991年に本作の完成を見ることなく死去したため、彼にとっての遺作となった。本作のスタッフロールには「人魚姫には美しい声を、野獣には魂を与えた私たちの友ハワードへ。一同は永遠に感謝します」という彼への追悼メッセージが残されている。

サイドストーリーとして『美女と野獣 ベルの素敵なプレゼント』(1997年)と『美女と野獣 ベルのファンタジーワールド』(1998年)がビデオ用映画として製作されている。

1991年11月22日、本作の公開と同日にディズニー・ハリウッド・スタジオにて「美女と野獣:ライブ・オン・ステージ」の上演が開始した。1992年から1995年まではディズニーランド、1992年から1996年まではディズニーランド・パーク (パリ)でも公演していた。

IMAX版(スペシャル・エディション)

2002年にはIMAX用に、各シーンにマイナーチェンジが加えられたスペシャル・エディション版が公開された。主な変更点は以下の通り。
  • 「愛の芽生え」のラストのポット夫人がチップに「大きくなったら教えてあげるよ」と語りかけるシーンにて、彼らの立ち位置が逆に描かれていたのが修正されている。
  • 公開当時にお蔵入りとなり、1994年のミュージカル版で日の目を見た故・アシュマンの楽曲「人間に戻りたい」が追加曲として使用されている。
  • 「人間に戻りたい」の掃除のシーンが追加されたことで、野獣が風呂に入るシーンやベルが魔法の鏡で父の姿を見るシーンなどに登場する、野獣に壊された城の壁や装飾品が修理された状態に変更された。
  • ベルを解放した野獣に対するコグスワースのアニメーションが変更されている。

歴史

世界初のカラー長編アニメーション『白雪姫』(1937年)の成功により、ウォルト・ディズニーは新たな映画化の候補として『美女と野獣』を選んだ。1930年代と1950年代に二度ストーリー構成を練ったものの、難しすぎたために断念した。ディズニーが断念した理由にはジャン・コクトー監督による1946年の実写映画版の存在が大きかったようだ。

それから時が過ぎ、『ロジャー・ラビット』(1988年)の制作中であった1987年にプロジェクトが発足した。『ロジャー・ラビット』のアニメーション部分の監督を務めたリチャード・ウィリアムズ*に監督の打診があったが、彼が1964年から取り組んでいるアニメーション映画『The Thief and the Cobbler』に集中するため、断った。彼は代わりにイギリス*のアニメーション監督リチャード・プルダム*を推薦し、プロデューサーのドン・ハーン*と組ませた。ディズニーのCEOマイケル・アイズナー*の要望で、ストーリーに脚本家を起用した。これは伝統的にストーリーボード*を用いてきたディズニーにとっては画期的な方法で、リンダ・ウールヴァートン*が草稿を担当した。

1989年、映画部門の責任者ジェフリー・カッツェンバーグ*はストーリーボードの全面作り直しを命じた。『リトル・マーメイド』(1989年)をヒットさせたジョン・マスカー*ロン・クレメンツ*を監督に起用しようとするも、彼らは大作を終えたばかりなので断った。代わりにエプコット用の短編映画『Craninum Command*』(1989年)を監督したゲイリー・トゥルースデイル*カーク・ワイズ*に白羽の矢が立った。

また、カッツェンバーグは『リトル・マーメイド』のようなブロードウェイ・ミュージカル形式を目指すために再び作詞家のハワード・アシュマンと作曲家のアラン・メンケンにオファーした。当時、エイズの合併症で死期を悟っていたアシュマンは『アラジン』(1992年)に取り組んでいたため乗り気ではなかったが『美女と野獣』の立て直しに参加することを決めた。『美女と野獣』の準備の場はロンドン*からアシュマンの自宅のあるニューヨーク*に移された。製作体制はトゥルースデイル、ワイズ、ハーン、ウールヴァートン、アシュマン、メンケンとなった。その時点では登場人物はベル野獣しか決まっておらず物語も暗かったため、コメディ要素を強めるために家具をモチーフにした脇役を登場させることになった。1990年に入ると、カッツェンバーグは改訂された筋書きを承認し、ストーリーボード作業が再開した。製作はカリフォルニア州*のスタジオで行われたが、ストーリー・アーティストはアシュマンの承認のためにカリフォルニアとニューヨークを行き来することになった。アシュマンの病気のことは一部の人間にしか知らされておらず、アシュマンに会うためにわざわざニューヨークまで行かされることを不満に感じていた者もいたという。

キャスティング

ディズニーは当初『リトル・マーメイド』のアリエルを演じたジョディ・ベンソンを起用しようとしたが、少女というより女性らしい声を探して約500名にオーディションをした結果、ブロードウェイ女優のペイジ・オハラベル役に選んだ。アシュマンはロジャース&ハマースタインのミュージカル『ショウボート』でのオハラの演技を絶賛していたという。

アニメーション

物語の手直しがあったため、アニメーションの作業は当初予定していた4年間から2年間に削減することとなった。作業のほとんどはカリフォルニア州*グレンデール*にあるスタジオで行われた。また、フロリダ州*レイク・ブエナ・ビスタ*にあるディズニーMGMスタジオ(現ディズニー・ハリウッド・スタジオ)の小規模のチームが「ひとりぼっちの晩餐会」のシーンのヘルプに入った。

本作はピクサー・アニメーション・スタジオがディズニーに提供したシステムCAPS*を用いて制作した2本目の映画となる。この活用により、『101匹わんちゃん』(1961年)で作業効率化するためにゼロックス・システム*を導入した際に失われた線のシャープさを取り戻し、さらに彩色の選択肢も大幅に増えた。また、当時手探り状態であった手描きの絵にCGを合成するという行為がやりやすくなった。遠近法を再現するために大型の設備マルチプレーン・カメラ*の役目もコンピューターの中のシミュレーターで素早く行うことができるようになった。

シミュレーションは『美女と野獣』のカメラワークにも存分に活かされており、ディズニーが初めて3Dレンダリングを行うこととなった。このシーンはディズニーの上層部にも感銘を与え、ディズニーが今後の作品でCG技術に投資するための十分な動機となった。

ちなみにフィナーレでベルと王子が周りに祝福されて踊るシーンのアニメーションは『眠れる森の美女』(1959年)の流用となっている。監督のトゥルースデイルによると、「締切ギリギリだったから」とのこと。

音楽

作詞はハワード・アシュマン、作曲はアラン・メンケンが担当した。

ブロードウェイのスタイルを目指したこともあり、ストーリーと楽曲制作は並行して行われた。「ひとりぼっちの晩餐会」はベルの父モーリスをもてなす歌だったが、アニメーションが作られた後にストーリー・アーティストのブルース・ウッドサイド*が「この歌はベルに向けて歌われるべきだ」と主張し、二人の監督も同意した。

『美女と野獣』はポット夫人役のアンジェラ・ランズベリーが歌った。彼女はこの曲は自分の声質と合っていないのではないかと主張したが、結局ワンテイクで歌いきり、スタジオにいた全員を感動させたという。この日、彼女が乗っていた飛行機に爆弾を仕掛けたという脅迫があって緊急着陸したため、スタジオに着いたのはギリギリの時間だったという。

人間に戻りたい」は脚本の都合上カットされることになり、代わりに「愛の芽生え」という曲が追加された。

制作チームは最初のスクリーン・テストで成功を収めた後、病床のアシュマンを見舞ったという。1991年3月14日、公開の18ヶ月前にアシュマンは41歳の若さでこの世を去った。『美女と野獣』の楽曲は完成していたが、『アラジン』の曲は未完であり、いくつかはティム・ライスが跡を継いだ。1994年、ミュージカル版『美女と野獣*』を上演するにあたり、メンケンは「人間に戻りたい」を復活させた。2002年にIMAXで公開した特別編にも追加シーンとしてこの曲を採用している。

エンド・クレジットではセリーヌ・ディオンピーボ・ブライソン*が『美女と野獣』を歌唱している。

キャスト

ベル ペイジ・オハラ 伊東恵里
野獣 ロビー・ベンソン 山寺宏一
ルミエール ジェリー・オーバック 江原正士(台詞)
若江準威知(歌)
コグスワース デビッド・オグデン・スティアーズ 熊倉一雄
ポット夫人 アンジェラ・ランズベリー 福田公子(台詞)
ポプラ(歌)
チップ ブラッドレイ・マイケル・ピアース 山口淳史
ガストン リチャード・ホワイト 松本宰二
ル・フウ ジェス・コルティ 中丸新将
ワードローブ ジョー・アン・ウォーリー 近藤高子(台詞)
白石圭美(歌)
フェザーダスター キミー・ロバートソン 横尾まり
モーリス レックス・エバーハート あずさ欣平
フィリップ ハル・スミス -
フットスツール - -
ムッシュー・ダルク トニー・ジェイ 渡部猛
シェフ・ブーシュ ブライアン・カミングス 渡部猛
本屋 アルヴィン・エプスタイン 矢田稔
魔女 - -
ナレーター デビッド・オグデン・スティアーズ 鈴木瑞穂
リズ・キャラウェイ
その他 パトリック・ピニー

※IMAX版(スペシャル・エディション)の追加部分にも参加した声優

  • 吹替版
    • オリジナル版:1992年9月23日公開。※Blu-ray・DVD・旧VHS収録
    • IMAX版:2002年1月1日、追加シーンを同一キャストで追録して再公開。※Blu-ray・DVD・新VHS収録
    • 翻訳:進藤光太*、訳詞:湯川れい子*浅利慶太*(追加曲)、演出:山田悦司*

※Blu-ray・DVDでは、オリジナル版とIMAX版がどちらも収録されています。VHSは通常版が『オリジナル版』、スペシャル・リミテッド・エディションは『IMAX版』のみの収録となります。

楽曲


※IMAX版(スペシャル・エディション)で追加された楽曲

タグ:

長編映画
最終更新:2022年10月18日 00:14