概要
戦闘に至るまでの背景
▲687年3月における勢力図
ゲーリー国の拠点であった
ネルヴァ城は、
偽帝討伐連合軍の予想以上の進軍速度の前に戦わずに撤退し、
マラは堅固な
フェリアザード城に立てこもることとなる。
この城は、規模こそ
ネルヴァ城に劣るが、崖に囲まれた天然の要塞の中に存在し、大軍が一斉に攻め込むことができない守りやすい拠点であり、それを証明するように数度にわたる連合軍の攻撃を跳ね返した。
連合軍は、
フェリアザード城を包囲する一方で、
ボルゴス等で編成された別動隊を本国より派遣させ旧
アゾル領土を奪取、
フェリアザード城を孤立させていく。
しかし、この城は背後の海路を使うことで物資の補給が出来た為、完全包囲網を完成させることができなかった。
これに対して連合軍は艦隊を率いて海路からの攻撃を実行、城への全ての補給路を断つべく海戦へと向かう。
両軍の戦力
戦闘経緯
この時代の海戦とは、まだ
魔導砲は存在しなかったものの、
法術を主砲として打ち込む技術の初期型が既にあった。
しかし、射程距離が短かった為、艦に艦をぶつけて抜刀隊を乗り込ませるという、手漕ぎ船時代の戦法も並行して行われていた。
この様に、
蜉蝣時代の艦隊とは、それまでの旧式な手漕ぎ船から急激な進化を遂げている時期であり、まだ「海軍」という概念は国によってバラバラで、ほとんどの国が「部隊の中の一つ」という扱いに過ぎず、普段は陸上部隊を指揮している将軍が(専門家の技術的な補佐をうけるものの)そのまま艦隊を指揮することが多かった。
唯一の例外があるとすれば、父である豪商
ディヴロームの辣腕によって急遽娘の
タラドーサが艦隊の一翼を担う指揮官になっている。
これは、先の
レイアル砦の戦いにおいて戦果をだせなかった娘に対して強引に再戦の機会を用意した私情による越権行為であるが、それが認められたとこに、商人としての
ディヴロームの存在感の大きさが伺える。
霧が深い早朝、
ロードレア国、
ロー・レアルス国の艦隊は、
ゲーリー国艦隊を正面から見据え、一斉に全艦隊を突撃させる。
しかし、この先陣を切った艦隊はダミー艦隊であり、実際はほぼ無人の船ばかりであった。
ゲーリー国はそうとも知らず、先陣の艦隊に攻撃を集中させ、これを轟沈させることに成功するが、囮艦隊は内部に仕掛けられていた火薬を爆発させ、この爆煙を眼くらましとして主力艦隊が四方から攻撃を開始する。
艦砲射撃をしつつ、
ゲーリー国艦隊に向かって次々と突撃を仕掛け、艦に侵入すると白兵戦の末占拠していき、夕刻には
コウも旗艦と運命を共にし、勝敗は決した。
この戦いは、艦隊司令官なら戦いを避ける霧の日をあえて選び、霧と爆炎による徹底的な視界封鎖によって、本来なら最後の手段として使われる白兵戦を標準戦術としたことに勝利の要因があった。
これは、普段は地上部隊の指揮をとっていた
レイディックや
カルディスだからこそ思いついた手であった。
戦いの結末
フェリアザード海戦における敗北の報告が
マラの元に届いたのは3月27日であった。
これを受けて、城に立て篭もり徹底抗戦して最後の決戦を挑むか、無条件降伏かの選択を迫られた
マラは、配下の将に「二時間後に軍議を開く、それまでここには誰も入れるな」と言い、一旦解散させた。
この間の出来事は証言者がいるわけではなく、全ては
アルディアが書き残した物語「
蜉蝣戦記」での想像の部分であるが、転寝をしていた
マラは、
リディアニーグの悪夢に魘されたという。
そして、彼の悪夢は配下である
ザリアンの侵入によって妨げられることとなる。
ザリアンは、軍議の開始前に乱入すると、
マラをその場で殺害、そのまま
偽帝討伐連合軍に投降する。
こうして
ゲーリー国主
マラによる偽帝騒動は終わりを告げた。
ディヴロームをはじめとする偽帝擁立に関わった者たちは処刑されたが、才能を見出された者達は
ロードレア国、
ロー・レアルス国がいち早く目をつけてそれぞれ引き抜いていくこととなった。
なお、
マラを刺殺した
ザリアンは、元々素行に問題のある将だったこともあり、土壇場で主君を裏切った不義不忠者として扱われる。
ロー・レアルス国に所属するが、これまで以上に略奪を行ったため、690年に処断された。
ひとまずそれぞれの帰路へと付く連合軍。
しかし、
ロードレア国軍はその途中、北方の
メヌド砦へとその足を向けていた。
ゲーリー国の残党軍が兵を集めて立て篭もり、最後の抵抗を続けていた為であるが、その残党軍をまとめていたのがかつて
ラディアと名勝負を繰り広げた
ヴァイナックであった。
ラディアはこの城を落とすのに一兵も使わず、自ら挑戦状をもって
ヴァイナックに一騎打ちを申し出た。
これに応じた
ヴァイナックは、自らの最後の戦いに華を添えてくれたことを感謝して、壮絶な一騎打ちの末に果てた。
彼の息子
メナスも後を追い自決、指揮者を失った城は降伏勧告に応じて開城することとなる。
また、
リューグ国も分岐点に立たされていた。
共に偽帝を討った同士と思っていた
ロー・レアルス国から同盟の使者が到着したとき、その口上に国主
ライグは激怒した。同盟とは名ばかりで、まるで自らの配下になれという内容だった為である。
しかし、
ライグは現時点における
カルディスとの力の差を十分に知っていた為、この同盟に応じることとなった。
それを見て、一人怪しい笑みを浮かべる男がいた。
リューグ国の将軍で、この時点ではまったく無名の存在であった
ベルザウスである。
胸に野望を抱いた彼が歴史の表舞台に立つには、まだしばらくの時間が必要であった。
最終更新:2024年08月19日 20:46