概要
戦闘に至るまでの背景
ビアスコア帝国は広大な領土を誇っていたが、山岳地帯が入り組み、領土に対して大きな都市の数はそれほど存在せず、人口は帝都と北部の副帝都と呼ばれた都市ガルーダに集中していた。
17328年2月、
六界連合軍は、最終目的地を副帝都ガルーダ定めた電光石火の
冬の嵐作戦を立案。
ガルーダに至るまでに突破した都市、砦をほぼ放置状態としたまま次の拠点へ向い、ガルーダを攻め落としてからそこを拠点としてじっくり次の戦いを見据えることを目標として進軍を開始する。
短期決戦における連勝が兵の士気を高める反面、進軍が一度でも止まると敵中に孤立する危険な戦法ではあったが、ガルーダまでの障壁がそれほど脅威ではないとの判断から、彼等はその雷撃戦を決行し、わずか30日でガルーダに肉薄するまで迫っていた。
連合軍は
ルーイガルドの地に降り立ってから、兵士達の一切の略奪を禁止し、なるべく民衆の反感を買わない様に気をつけつつ進軍していた。
ビアスコア帝国に進軍してからもその信条を貫いていたが、長き戦いと膨大化する兵力を完全には抑えきれず、一部の兵士たちの間で略奪が行われる等、軍規にほころびが見え始めていた。
一方ガルーダにおいては、本来なら指揮をとるはずだった
ビアスコア帝国の
アドリアノ将軍だが、援軍であった
イルザ、
ルカを抑えることはできず、軍勢の主導権は
シャクティアナ帝国、
フェルトビーン帝国に握られつつあった。
更に、連合軍からの降伏者で、
ビアスコア帝国将軍となっていた
シュバインの暗躍もあり、完全に軍の主導権を奪われた
アドリアノは、
シュバインらを残して自分は一部の軍勢を率いてガルーダより脱出、両軍が激突し疲弊したところで登場するべく、進軍ルートから外れていた都市バルニへと移動、潜伏して時を待った。
両軍の戦力
戦闘経緯
ガルーダ目前にある都市カルカンは、これまでの小規模な街とは違い、ガルーダに次ぐ大都市であったため、攻略において大きな抵抗を受けた。
しかし、これを撃退してカルカンを陥落させると、第16部隊を治安維持のために残して連合軍はガルーダに迫った。
その初戦、
イルザは、
フェルトビーン帝国軍にわざと負けて撤退する様に指示、勢いにのってガルーダに迫る連合軍に一気に反撃を仕掛ける。
この猛反撃により、連合軍前線の部隊は
ビアスコア領に入ってからはじめて大きな損害を受ける。また、この初戦において
グラシスは、敵将となった
シュバインと遭遇、激突した。
初戦で手痛い反撃を受けた連合軍だが、その後は隙を見せず大軍をもってガルーダを包囲するものの、防衛側の奮戦もあり、激しい攻防を繰り広げつつも決着がつくことなく12日間が経っていた。
堅固な城壁と防御に徹した守備軍、それぞれの連携が徹底された軍勢の防衛の前に、連合軍は完全に攻め手を欠いていたが、防衛軍も敵の侵入を許さないまでが限界で、撃退というの勝利を手にする事はできなかった。
連合軍は正攻法だけではなく、内部からの崩壊を狙って内通を促すための
隠密を放つが、ことごとく捕らえられ、誰も帰還することはなかった。
結局連合軍はガルーダを連続攻撃し、損害と疲労を蓄積させる消耗戦をとるしかなかった。
この一連の戦いで四方の門をそれぞれ防衛し、大軍の連合軍を幾度も撃退した
ライア、
ベルト、
ルカ、
イルザを兵士達は
四門の獅子と呼び称え士気は上がり、戦意は全く衰えることはなかった。
しかし、この防衛側の奮戦にこのまま連合軍を撃退して手柄を横取りされるのではと焦った
アドリアノは、バルニから出陣して連合軍後方に接近する。
これに対して
サルファーと
アゼルは、「後方から迫る奇襲部隊に気付かないふりをして引き寄せる。そして、ギリギリの位置でガルーダの包囲網を解いて、なるべく慌てふためいた芝居をして敵の迎撃に向う。城内の部隊が、援軍が来た今が挟み撃ちのチャンスと喜び勇んで出陣したところで、半分の部隊を反転させ、城から出てきた敵軍を撃退する」という策を立てた。
この策が成功すれば、守りに徹していた篭城軍を外におびき出すことができたが、
イルザは策を見抜き、逃げ戻ったふりをしていつでも再出撃できる準備をするという手をうった。
更に
イルザは、自らの直属の上官である
バーナさえも使いこなし、一連の戦いが始まるより前に密かに南方の都市ディアニに送り込んでいた。
この決戦に全く参加していなかった
バーナがここにきて突如姿を現し連合軍を南から強襲、更に帝都から派遣されていた
ビアスコア帝国本隊を偽の命令書で足止めしておき、このタイミングで戦場に到着させる様に調整していた
イルザは、今が決戦の時と、ガルーダの城門を開け出陣した。
この時
イルザが放った言葉「全ての手はそろった、さぁ、ガルーダの門を開け刮目せよっ!!機は天より来る、矛は胸に抱く、勝利は人が紡ぐ……全軍、出陣!!」は、現在も城門に記念碑として残されている。
アドリアノの想像以上の奮戦、
バーナと
ビアスコア帝都からの援軍の出現、そして突如扉を開いて打って出たガルーダ篭城軍。
思いもしない形で突然の野戦に引きずり込まれた連合軍は各地で混乱、全軍の部隊配置と連携は不可能となり、それぞれの部隊が自分達の判断で戦わざるを得なくなる。
多大な損害を出した連合軍であったが、撤退までには至らず再びガルーダを包囲したことにより、防衛側は「あれほどの勝利を収めても、敵軍は撤退しないのか」という焦燥感を感じ始めていた。
更に、この決戦のため伏せていた軍勢も出し切ってしまい、城外にひそかに伏せていた
バーナ部隊もすべてガルーダに集結したため、もはや奇襲も不可能となった。
こうして両軍の膠着状態が続くが、
霊虎の指示により連合軍は水攻めを敢行する。
ガルーダは左右にかなりの水量をもつ川を持つ盆地に存在する。しばらく包囲網を解かず対峙したふりをして、密かに工作部隊を使い両川をせき止め、機を見て堰を切ればガルーダを水攻めすることが可能となる。
この地形の弱点は
サルファー自身も気付いていた手だが、季節は冬であり、水攻めを受けたガルーダの食料庫は冷水によって使い物にならず、大都市が故にすぐに食料は底をつき、非戦闘民の民衆から餓死者を生み、やがてガルーダは味方の人肉すら喰らう餓鬼の巣窟と成り果て連合軍を悪鬼の如く恨むということも解っていた。
これは、民衆への略奪を一切許さなかった連合軍としては決して許される手ではなく、
サルファーはその策に断固として反対した。
だが、
サルファーが矢傷から発熱した隙をついて、
霊虎は「水攻めを実行した時点で敵軍は降伏する」と説得、強引に水攻めを実行する。
一方、城内においては
イルザのみが水攻めの危険性を察知していたが、
サルファーと同じ理由から実行はないと思っていた。
だが、敵軍の良心に頼っていた自らのあまさを嘆いて、水攻めが始まった時点で全軍の撤退を決意する。
世の中には、誰の知恵も及ばない偶然や必然というものも数多く存在する。
完全包囲されたガルーダからの脱出において、自分が助かるため味方の脱出ルートを敵軍に知らせた
ゴルゴダの密書を罠と警戒した連合軍は、逆に別方面の防衛を厚くしていた。そのため、絶望的な撤退戦を覚悟していた
フェルトビーン・
シャクティアナ軍は難なく包囲を突破し、逆に仲間を生贄にしてその隙を伺おうとしていた
ゴルゴダは、これにより脱出の機会を失いガルーダに取り残されていた。
まさかその事態を招いたのが自分の密書だったとはついに気付かないまま追い詰められた
ゴルゴダは、味方の兵士の食料に毒を混ぜ、混乱状態を作り出してその隙に脱出。
帰国後にそれを自らの知略と誇らしげに語ったため、
チカに激しい罵倒を受けた。
戦いの結末
ガルーダ防衛軍は瓦解し、兵士は戦意を喪失して城門は開かれた。
四門の獅子である
ライアは、城門前にて
サウラと一騎討ちを申し込む。
既に勝敗はついていたが、後世に至るまで「ガルーダは最後まで果敢に戦った」という伝説を残すための一騎討ちであり、将である前に一人の格闘家である
サウラもその気持ちを察して本気で相手をした。
こうして
ライアは討ち取られ、彼女の戦死を持ってガルーダは降伏となった。
ライアの意気を評価する一方で、兵士を見捨てて脱出した
ビアスコア帝国の将は追撃によって捕らえられ、民衆の怒りの矛先を向けさせる為、
ガイラスの指示によって処刑された。
これは、「水攻め」による民衆からの恨みの矛先を少しでも避けさせる為の処置であったが、
六界連合軍における公式な捕虜の公開処刑はこれが唯一の例である。
その後、
ジュディス、
アゼルの提案により、ガルーダ南方にあり、
ビアスコア帝国の精神的支柱である重要な文化建造物が数多く存在する都市チェスターへ進軍をはじめる。
チェスターだけは占領されたくないと帝都から軍勢が出陣すれば反転して野戦に持ち込み、出て来なければチェスターを無視してナイテッドを抑え、
ビアスコア帝国を南北に遮断、互いに連携、移動、輸送はできなくした後、ナイテッドを新拠点に長期戦の構えをとり、敵の内応工作なり外交戦なりを繰り広げるという二段構えの作戦をとった。
本来ならガルーダを電撃的に占拠して、そこを拠点に長期的な作戦をとる筈だった連合軍が、すぐさま次の進軍にうつった根底にあるのは、水攻めによって民衆の恨みを買ったガルーダから、一刻も早く離れたいという心理的なものであった。
最終更新:2024年07月04日 19:29