秋山醤(鉄鍋のジャン)

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秋山醤(鉄鍋のジャン) - (2022/12/04 (日) 22:25:45) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2012/03/16(金) 18:53:11
更新日:2024/04/11 Thu 12:00:01
所要時間:約 7 分で読めます







料理は“勝負”だ!

誰にも負けないうまい物を作る――それこそが料理人の心掛けであるはずだ



鉄鍋のジャン!』及びその続編『鉄鍋のジャン!R』の主人公。
「料理は勝負」を信念とする。


【概要】

かつて「中華の覇王」と呼ばれた秋山階一郎の孫であり、幼少の頃から中華の真髄を徹底的に叩き込まれていた。
背中にはその時の鍛練の証として夥しい量の傷痕がある。誇りでもあり、裸を覗かれた時でも股間より先に背中を隠す。
美味い料理を作るためならばいかなる努力も惜しまず、料理の基礎である鍋振りや腕力トレーニング、皿洗いにいたるまで怠ることは決して無い。
だがそれ以外は基本的に痩せぎすの体型であり、第二回大会の特別審査員である栄養学の権威・ケペルからは「痩せすぎだ。もっと栄養を摂ったほうがいい」というツッコミと共に大量の栄養剤を渡された。
また、中華以外にも仏蘭西料理などの調理技法にも精通している。

祖父であり師でもある階一郎の死後、銀座にある日本の中華料理店の頂点「五番町飯店」で働くことになる。



【性格】

このように料理の腕を磨くために努力を欠かさず奇抜な調理法を得意とするといわれると正統派な料理漫画の主人公だと思ってしまうだろう。
しかしこの秋山醤、他の料理漫画だったら間違いなく悪役になっているほどに極悪非道な性格なのだ。
例を挙げると
  • デフォルトでカカカ笑いで犬歯が牙の様に尖って描かれている
  • 初登場時は閉店時間になった五番町に入り込みチャーハンを注文、その後厨房に乗り込み料理人を罵倒した後チャーハンをゴミ箱へ
  • マジックマッシュルーム入りのスープで審査員を中毒にする
  • 相手の料理の欠点を突いて不味く感じるようにする
  • 朝鮮人参とナツメグの組み合わせで血糖値を下げて体を動けなくする
  • 食べると熱々のゼラチンで口が焼け爛れる春巻
  • 笑いながら跳ねる豚の首を送られた腹いせに生首爆弾(食べられる)を直接配達
  • スプリンクラーを作動させて他人の料理を水浸しにする
完全に悪役の所業。
ただし、これらをやるには相当な知識や観察眼を必要とするため、決して楽な方法ではない。どちらかというと完膚なきまでに倒すのが目的である。
その所業を象徴するかのごとく凶悪面だが、顔立ちは整っているので女装をすると黙っていればぱっと見分からない。

そのため他の料理人どころか料理大会の審査員や観客にまで嫌われている。「秋山にも程がある」
ジャン本人もそれを煽るように攻撃的な言動を繰り返すため始末に負えない。
性格が災いして審議拒否されたり、ゴミを客から投げられたり、指の骨を折られたり、その後の料理対決でもう片方の腕を折られたりされる事さえしばしばあった。

ちなみに、勝つために手段を択ばない割に、存在自体が有耶無耶になったビッグ大谷杯を除けば
4回ほど料理大会や勝負の番組に出ているが成績は決勝戦引き分けが1回くらいしか結果が残せていない。
その1回も、審査員の大谷が退場→腹いせに0点評価→切れた醤にぶん殴られる→他の審査員「まあ、しょうがない」、などという有様。
残りは大会オーナーが醤の対戦相手の凶行に切れて終了、大量のハエが会場を飛び回る事態になって終了、霧子が醤をぶん殴って終了、といった感じである。
一応優勝扱いのビッグ大谷杯は、ダブルKOをやらかした筍&沢田、出落ちの見本市みたいな十三龍、ジャンに褒められるも予選落ちの藤田、
といまいちな敵が多く、決勝戦の強敵相手でも割と余裕の勝利となっている。



…とまぁ上記の通り勝つためなら手段を選ばない凶悪な性格の持ち主だが、そんな彼にも人間らしい面はある。
同僚である小此木タカオに対しては一緒にキャンプに行ったり丁寧に料理を教えたりする*1など親友といってもよい間柄。
同じく同僚である五番町霧子が野菜の飾り切りで悩んでいた時は(仲が険悪になる前だが)本当の親切心から飾り切りを教えてやろうかと言っていた*2他、霧子が風邪をひいたときには風邪に効くデザートを作ってあげるなど、全くの冷血漢というわけではない。
孤独な幼少期を送ってきた故に、優しさを素直に表現できないタイプなのだろう。

また料理を失敗した時はいつもの強気な態度からは信じられないほどに動揺して涙を流しさえした。
ついでに言うと、あくまでも勝つために手段を選ばないだけなんで勝負抜きなら凶悪な面は滅多に出さない。

大会の司会とカメラマンが勝手に寸胴に近づいて火傷を負いそうになったときは*3
身を挺してかばった上に水道水を全身に浴びながらも「気にするな」と言い放っている。この漫画の他の外道料理人だったら確実に切れている。
挙句にこのカメラマン、その寸胴で調理中だったラー油を勝手に味見とかやらかしているのだが(カメラにかかってしまったラー油をぬぐった際についでになめた)、
「味のことはまだ秘密だZE☆」みたいな内緒顔でやっぱり咎めなかった。ぶっちゃけ殴られても仕方ないのに。
もっとも、前の大会で審査員が気になる食材をつまみ食いをしようとした際は、その指目掛けて包丁を振り下ろしているので、
あくまで勝負そのものに無関係な人限定な模様。

ダチョウステーキ店のオーナーに至っては、(打算があったとはいえ)詳しく解説しつつステーキの調理法を丁寧に教えてあげ、その上で「(焼き時間は)自分で考えろ」「反復練習も大事だ」と説いている。
小此木に対してもそうだが、「見て覚えろ」「盗め」が常識の料理業界において、基礎からここまできっちり教えてあげるのは相当珍しいタイプである。
教え方も上手く、小此木・オーナー共にすぐに上達している。*4

一方、直接相手を攻撃したりなどは滅多にやらない。
やったのはせいぜい蟇目や五行など同レベルかそれ以上の下衆相手くらいで、相手もジャンに対して似たようなことをやっているのでお互い様である。



◆R頂上決戦

Rでは人間としても成長し、少しだけ丸くなった。祖母の店でしごかれたのだろうか。
「料理は勝負」の基本的なスタンスこそは変わってはいないが、「旨い料理は心に響くんだよ」と、霧子の「心の料理」の信念も若干ながら受け継いでいる節もある。
また、(前科がアレなのですごい警戒されたが)反則的な行為は一切やらなくなっており、常にテーマと使える食材を最大限に生かす料理を作って真っ当に勝利している。あまりの毒気のなさに、敵キャラに嫌味まで言われた。
憎まれ口と嫌がらせ行為は相変わらずだが、比較的まとも。まあ、十三龍へは恨みもあるのか死体蹴りは容赦なかったが。
本編とRの空白期においては霧子とは色々あったようだが、この時点でははっきりと明らかにはされなかった。
ただ、「性格は最悪だけど腕は信用してる」と言われており、相棒と言っても良い間柄にはなっているようだ。
祖父から続く大事な研究ノートをキリコに奪われた際はそのでかい胸に隠されたのだが、「取れねぇだろ」と速攻で強奪を諦めている。
ちなみに、戻った後も前でも月給12万円でこき使われていたらしい。
尤も、自分の給料を語る際はいつもの笑顔だったので、あまり気にしてない可能性も。
案外将来は霧子に尻に敷かれるタイプかもしれない…。

◆2nd

更におそらく15年程度先を描いた「2nd」では、彼と霧子との間にできた息子が登場している。

息子もまた名前が「醤(ジャン)」であるが、霧子がヤンデレ化しているっぽいのでおそらく彼女が名付けと思われる。
彼自身は登場していないが、何があったのか霧子から恨みを抱かれているらしく、そのことで息子には打倒を目指されている。
やっぱり相当霧子の尻に敷かれてたんじゃ…

なお、子供に親と同じ名前を付けるのは戸籍法では問題ないが、実際にやると拒否されることが多い。「紛らわしい」というまっとうな拒否理由なので仕方ないが。



■作った料理

料理に関する技術・知識・執念は半端ではなく、彼の繰り出す常識外れの料理は「秋山の魔法」と称される。
例え材料と完成品が解っていても容易に再現できないものも多く、なかには自分の命が危険になるものさえある。
幾つか例を挙げると
  • カワハギの肝と調味料を一定の量で混ぜたものに白レバーを漬け込む(ちょっとでも分量を間違えると思わず吐き出す程不味くなる)
  • 空中に浮かび上がらせた餃子の皮と餡を高速で"にぎる"(『空想科学漫画読本4』によれば0.007秒で1個握っている)
  • 冷凍庫の中で無数のもやし一本一本に注射器でフカヒレと鮫のすり身を注入
  • 低温設定ながら加熱中のオーブンレンジに手を突っ込んで微妙な温度を体感して調理
などがある。
「毒料理」「キワモノ料理」というイメージが先行しがちなジャンであるが、意外にも作る料理は中華料理の基本を忠実に突き詰めたものが多い。
例えば、ウロコを取らずにアマダイを調理してウロコごと食べさせるという奇抜な料理を作った事があるが、日本料理にはウロコを食べさせる「鱗焼き」等の技法が実在しており、作中の描写はジャンが高い調理技術・知識を持っている事の証明となっている。
キワモノみたいな料理を作ることも多いのは確かだが、それと同じくらいに真っ当な料理だって作っている。

◆無印


●五番町飯店編

  • 豆腐と干し貝柱の炒飯
作中で醤が最初に披露した料理で、米と干し貝柱の出汁を染み込ませた豆腐を使った炒飯。
二つのフライパンでジャッグルすることで豆腐の多すぎる水分を飛ばしている。


  • 羊の脳みそ入り茶碗蒸し
大谷日堂との初遭遇で作った料理。

茶碗蒸しの出来は言わずもかな完璧。加えて茶碗蒸し内に仕込んだ軽く茹でて裏ごしした羊の脳みそが豊かなコクを与えている。
脳みそを茶碗蒸しの隠し味として扱う常識外れの発想から大谷も料理のタネを見抜けず赤っ恥を晒し、以後大谷とジャンの因縁が幕を開ける。


  • 竹葉牛柳(牛ヒレ肉の竹の葉包み焼き)
端的に言えば中華風シャリアピンステーキ。*5
肉の旨味を増幅させる赤小玉ねぎを炒めたものをブレンドした肉用オリジナルXO醬をソースとして用いている。

竹の葉で包んでオーブン焼きしており、竹の葉と玉ねぎの香りで食欲を高め、下処理の段階で肉を玉ねぎのすりおろしに漬けることで極上の柔らかさを実現した料理。


●第1回全日本若手中華料理人選手権編

  • 太極鍋巴
「牛肉」の課題で作った料理。

ゼラチンたっぷりの牛すね肉を醤油・酒・豆板醤で煮込んだ餡と、アスパラ・ニンジン・セロリ・椎茸が入った塩味の餡。
2種類の餡かけを太極の形になるようにおこげにかけた一品。

おこげのパリッとした食感と牛すね肉のこってりとしたゼラチンが良く合っており、さらにそれを塩味の野菜餡かけが爽やかに引き立てる。
肉と野菜の餡かけの旨みがおこげを揚げた香ばしい油と組み合わさって絶妙な風味を生み出した料理。

ありふれた材料でも知恵と工夫でここまで美味くなる、を体現した料理であり、審査員からの評価は高かった。


  • 若鶏の春雨あん詰め煮
「鶏料理」というお題で作った料理。

袋抜きして下味を付けた若鶏丸ごと1匹に春雨のあんを詰めて蒸し、醤油を塗って乾かした後若鶏をキツネ色になるまで揚げ、
湯で余分な油を洗い落としたら更に1時間煮込んで仕上げた手間暇かかった料理。
ジャンの地味ながらも丁寧かつ的確な調理技術の積み重ねが光る一品。

対戦相手の河原の料理と出来はほぼ互角だったが、河原がジャンの口車に乗せられたせいで味を台無しにする大きなヘマを犯した*6結果勝利を収めた。
ただし、このヘマをしてなくとも河原の料理は食材が自己主張し合ってる微妙な状態になっていた(それがヘマのせいでバランスが完全に崩れてしまった)との事であり、どの道ジャンの勝利であったと思われる。


  • 蓮根、ナツメ、龍眼の蒸しスープ
「蓮根料理」という課題で作った料理。
上記の3食材をザラメと蜂蜜を敷いた品鍋で2時間近く蒸した甘いスープ。
清々しいさっぱりとした甘さに、爽やかな喉ごしの良さ、蓮根のホクホクとした歯ざわりやナツメ、龍眼のほのかな甘みが楽しめる一品。

しかしその実態は多くの試食をした審査員に極上の満腹感を与え、更に相手の料理が「冷めると脂っこくなり極端に不味くなる」という欠点を突いて、
時間をかけてこの料理を食べた後に相手の料理を食べると、胃腸の弱い者なら嘔吐するほど激しく胃もたれさせるという悪意の塊みたいなスープ。

ただし、先行して出した事に関してはどちらが先に出すかを事前に決められてた訳でもなく、対戦相手側がやたら盛り付け等に手間取ってたので先出したが近い。
後攻であったとしてもこれまでの試食で純粋に満腹が近い+直前が重い料理と言う状況になった審査員を甘いデザートのようなスープで癒す形になっていたので、圧勝は無理にせよジャンの勝利はどの道揺るぎなかったと思われる。

ちなみに別の料理漫画にて酷似した戦法を使用した人物がいるが、言うまでもなく悪役である。


  • 刀削麺
決勝戦前半戦の「麺料理」の課題で作った料理。
ジャンのオリジナルではなく実在する料理である。
連載当時は日本では出す店はほとんどなかったが、現在ではだいぶ店も多くなった。アキバでも食べられるぞ!!

小麦粉と水だけで作った生地をステンレスの棒に巻きつけ専用の刃で削り出していく。
麺の断面は厚いところと薄いところがある独特な形になり、厚い部分はコシが強く薄い部分ではタレやスープが程よく絡まる。
塩もかんすいも使わないため、小麦粉の甘さと旨味を最大限に楽しめる。
特にジャンのオススメの食べ方は山西省の黒酢だけを掛けた刀削麺で、一人の在日中国人の老審査員は、故郷の光景を思い出して感動の涙を流したほど。
シンプル故に難易度はかなり高く、階一郎もこれを作るコツをジャンに教えた際は折檻抜きだった上、
「体で覚えるしかないんだ」「ワシが殴っても教えることはできん技」とぶっちゃけたほど。

味そのものは絶賛され、一般審査員からは好評だったが、「麺料理=小麦粉料理で、勝負は小麦粉の味を最大限活かすもの」と解釈を間違えてしまい、オリジナルの麺料理を求めていた特別審査員達からは、「独創性がない」とボロカスに言われ、誰にも点を入れてもらえなかった。
せめて感動してたおじいさんぐらいは入れてやれよ…←多分これも大谷が横槍を入れた可能性あるが*7


  • 鴿子型酥皮包戯蛋(ハト型パイ包みのハトの血の4種のビックリ卵)
決勝戦後半戦の「デザート」の課題で作った料理。
鳩の血を使った前衛的なデザート。
前述の刀削麺で「技術のみで独創性の無い」の評価にブチ切れてやった。
乳鴿(若鳩)の血に生クリームや砂糖、コーンスターチ、薔薇の香りのする玫瑰露酒などを加えて卵の殻に入れて蒸し上げ、
コーンスターチを衣にして揚げてからココナッツパウダー・抹茶・真珠の粉・血燕(最高級燕の巣)をまぶしたもの。

グミキャンディーのようなクニュクニュとした食感、ルビーのように半透明で紅く美しい断面、深紅の薔薇の何とも言えない血の香り、舌をとろかす高貴な甘さを味わうことができる。
審査員達をして「口では言い表せない未知の旨さ」「麺料理の失敗を補っても余りある」と言わしめた逸品。

血のデザートという弥一でも初耳の料理は、いくら過程が進んで完成した段階になっても味の予想がつかず、
会場の注目と意識は全てジャンに向けられ、他二人はいたたまれない雰囲気の中で料理をすることとなった。
しかも、ただでさえモラルの悪いクソ観客が一時期暴徒化しかけた上、大会終了後はどんな味なのか知りたくて仕方がない観客たちが野良の鳩を捕まえようと躍起になる事態に。

ちなみに、血の味はきちんとするとの事だが、実際の所基本的な甘みの正体は生クリームと砂糖だけに過ぎない。
他にも特段珍しいものは真珠の粉と血燕ぐらいである。
それがハトの血と組み合わさるだけで大谷に「舌をとろかす高貴な甘さ」「一生涯出会うことのなかった味」と言わしめたのだから、ジャンの調味料配合が神業であるとしか言えないだろう。


●VS蟇目編

  • 秋山式参鶏湯
蟇目との対決で、自分の腕を二度も折った蟇目の鼻を明かすため披露した一品。

見た目は普通の参鶏湯だが、実は朝鮮人参とナツメグを独自の配合で組み合わせてスープに仕込んだ料理で、飲むと血糖値が急激に低下しぶっ倒れる毒膳料理。

なお蟇目側も、阿片の原料であるケシの実の中でも特に強力なモノを隠し味に使った四川麻婆豆腐を振舞ったことで両者共に昏倒し、勝負はドローとなった。

ちなみに、ぶっ倒れた蟇目に対して「しばらくそこで寝てろ。カゼ引くなよ」と捨て台詞を残している。優しいんだか優しくないんだか…


  • アヒルの足の春巻
事実上の「春巻対決」となった五番町飯店の新メニューの候補選びで発表。
ゼラチンたっぷりのアヒルの水かきを鶏のトサカと一緒に煮込んで冷やし固めたものを、ミントを中心とした香草と一緒に巻いて揚げた春巻。
熱せられて溶けたゼラチンが漏れないように普通の皮と生湯葉の皮で二重に巻いてある。

噛みしめると口が焼け爛れるほどに熱いゼラチンスープが飛び出してくるので、ゼラチンスープは噛んだと同時に飲んでしまうのが正解。
イメージ的には小籠包の春巻バージョン、と考えてもらえれば分かりやすいだろう。

ベトナム料理から発想を得た料理で、喉と胃で下っていく熱いゼラチンの熱を楽しみ、口に残った水かきとトサカ、パリッと揚がった春巻きの皮と湯葉、香草の食感を楽しめる料理。
加えて一緒に巻かれた香草の風味が鳥臭さを消し、爽やかな後味を与えてくれる。

ただし、皮を二重に巻くことから包む手間も二倍であり、店のメニューとして試採用された際には続々来る注文にこたえるために(ササミを叩いて皮にする手間が大変な)霧子共々必死になって作り続けることになってしまった。
キワモノに近いとは言え、客からのウケはなかなか良かったようである。
なお、霧子からは「ヤケドするだけだ」と食べもしないで酷評された。楊と小此木はちゃんと食べたのに…


●VS五行道士編

  • 秋山式補髄湯
「スタミナ料理」の課題で作った料理。
スッポン1匹丸ごとと豚の脊椎を煮込んだスープ。
スッポンの高い滋養強壮効果、トロリとした豚の脊椎の食感と極上のコラーゲンが食べた者に活力を与えてくれる。

……が、此処までは普通の補髄湯。
秋山が作った場合、対戦相手であった伍行の裏をかくため調理終了後にこっそり塩を入れているのが最大の特色。
本来補髄湯には塩を入れずに作るため伍行は動揺。
更に伍行の料理が非常に甘い料理だったため密かに入れた塩の作用で「伍行の料理が逆に甘すぎて食べられなくなる」という結果を生み勝利を収めた。
ただし、伍行が中華のセオリーに縛られ過ぎた事も勝因の一つであり、塩を入れたところで健康には何も問題はない。


  • 長寿回春
「不老長寿」というお題で作った料理。
大ヤモリやサソリ、黒サイの角、岩茸、虎の骨の酒、恐竜の化石の酒といった貴重な奇品珍品食材をふんだんに使った料理。

選んだ食材はどれも豊富な栄養や滋養強壮効果があるが、目玉は1グラム1万円にもなる超希少品「龍の涙」を大量に投入した点。
「食べる者の欲望を昂らせ生きる気力を与える」というコンセプトで作られており、
食べれば身体機能を大幅に活性化させ、鼻から鼻血が吹き出、さらには四股を踏めば地面を揺らす程の効能を持つ。
旨味の点でも地鶏のような食感と噛めば噛むほど旨味の出る大ヤモリの肉を、岩茸のプリッとした食感や、
塩味で味付けされたシャワシャワとしたスナックのような食感のサソリの唐揚げが美味さを引き立たせる。

…ただし目玉である「龍の涙」の正体は鯨の胆石、すなわちカルシウムの塊に過ぎない。
超貴重品なのは確かだが胆石ということもありイメージは劣悪。
伍行に正体をバラされかけ危うく敗退しかけたが、伍行の方はあまりにも人の尊厳を冒涜した料理を作ったので審査員全員から反感を買い、総合的判断で「生きる欲望(希望)を湧き起こす」料理であるジャンの勝利となった。

ちなみに、「龍の涙」は架空の食材ではなく、龍涎香(りゅうぜんこう)*8という名称で実在する食材である。


  • 南海漁村
「天国に一番近い料理」という課題で作った料理。

シャコ貝の身をドリアン・パパイヤ・金糸瓜と混ぜ合わせて一緒に殻に入れてオーブンで焼き上げた料理。
火を通すことによってシャコ貝の旨味と歯応えは倍加し、ドリアンの悪臭も心地良い南国の香りに変化させている。

一応、酒との相性が致命的に悪いドリアンを使用していながら味付けのためにヤシの実の酒も使っているので、
アルコールが確実に飛ぶのに必要な加熱時間と料理として一番美味しくなる加熱時間のバランス取りが難しいのと、
アルコールが飛んでもドリアンの成分は臭い以外そのままなので酒を飲みながら食べるのもNG、という弱点がある*9

伍行の料理と出来自体は全くの互角だったが、「ホテル・ミラージュ」の社長の横槍やドリアンとアルコールの相性で審査員の一人を病院送りにされた事で危うく敗退しかけたが、伍行の鍋の秘密*10を白日の元に晒した事で社長はマジギレ+伍行は暴走+案の定のクソ観客が暴徒化した為番組は大混乱。
とりあえず小此木が社長以外の審査員の点数をジャンに入れた為、4:1でジャンの勝利となった。


●VSスグル編

  • 竜肝鳳珍
スグルとの料理勝負で「肝料理」の課題で作った料理。
スグルの最高級フォアグラに対し、あえてそれ以下の材料で対抗するために作った料理。

レバー(鶏の天然脂肪肝)をカワハギの肝に漬けこんで風味を増し、さらに豚の背脂で脂肪分を補っている。

フォアグラ以上にレバーの風味が強調されておりムッチリモッタリとした食感で食べ応えがある。
ちなみに、漬け込むタレのレシピは非常に繊細で、少しでも間違うと一気にまずくなる。


●第2回全日本若手中華料理人選手権編

  • 紫雲全鴨
実質第2回大会の前哨戦となった大谷の番組で、「鴨料理」の課題で作った料理。

鴨丸ごと一羽の旨味が詰まったスープとシンプルな麺を組み合わせた鴨南蛮のような料理。
骨から絞り出した血に熱いスープを注ぎ、そこに鴨の脳味噌をペーストしたものを混ぜてコクと濃厚さと旨味を生み出す。
そして素っ気ないほどにシンプルな麺が濃厚すぎる程のスープを最後まで美味しく食べさせてくれるという一品。


  • 上湯炒飯
第2回大会予選「指定された米で日本人の口に合う炒飯」という課題で製作。
極上の上湯スープをかけたお茶漬けみたいな炒飯。

周りの調理台のガス管を潰してガスを自身の元にのみ集中させることで得た超大火力で思いっきり炒めており、
余分な油を吹き飛ばし米1粒1粒をパリッと仕上げたためスープにつけてもスープに油が浮かず米もパラパラしているのが特徴で、
サラサラと胃もたれせずあっさり食べられる。

ただし調理の過程で発生した大火力によりスプリングラーが作動し大量の水が降り注ぐよう計算しただけでなく、
上湯炒飯自体が非常にさっぱりとしているため下手な腕の選手が作った炒飯では胃もたれして食べられなくなってしまう。
スプリングラーによる水で他選手の炒飯を台無しにし、
仮にスプリングラーを乗り越えても今度は上湯炒飯以降の炒飯が不味く感じてしまうという2重の罠が仕込まれた悪意ある炒飯。


  • 北京平安水餃子(大根入り水ギョーザのジャン風かざり)
「餃子料理」の課題で作った料理。

通常サイズの水餃子と小指大の揚げ餃子の2つを盛り付けタレを掛けた一品。
具は2つとも肉に大根おろしとカレイの干物の粉末を混ぜた物を使用。

水餃子のツルツルとした食感と揚げ餃子の香ばしい食感の2種類を味わうことができ、掛けられたタレが食感にアクセントを加えている。
味の面でもカレイの干物の粉末が旨味を高め、大根おろしがさっぱりした味わいをプラスさせており、揚げ餃子の油の重厚感がより皿の満足度を強化している。


  • 飲めるラー油(と、それを使った赤い炒飯)
「調味料」の課題で作った調味料。
唐辛子の旨味と香りがたっぷりと詰まった特製ラー油。

韓国産のキムチ用唐辛子を使っている事で普通の唐辛子にはない甘味と深い味わいがある。
勿論底に溜まった唐辛子の粉も旨い。
油も白絞油に陳皮・八角・花椒・桂皮で香りを付けたものを使用し、唐辛子の粉は水ではなく桂花陳酒*11で練るなど手が込んでいる。
飲むと素晴らしい香りが鼻を抜けて口一杯に脂の旨味が広がり、そして最後に喉の奥に程よい辛味が残る。
このラー油を使った赤い炒飯は非常に香り高く、見た目もお米ひと粒ひと粒がルビーのように美しく、さらに具である醤油漬けの大根の漬物が味を引き締めている。
特別審査員のミケロッティ本郷にして「世界中の人間に受け入れられる」と言わしめたシンプル・イズ・ベストな逸品。

ただし、調理中は飲めるラー油だと言わなかったため、真っ赤に仕上がっていくおそらく激辛であろう炒飯に審査員は恐々としていた。
だがネタばらしして食べた途端、即落ち二コマの如くその美味しさに夢中になり、何度もおかわりをねだって絶賛した。
(大谷も意地を張って点は入れなかったが夢中になって食べていた。)

「食べるラー油」が発売されたとき、この炒飯を再現しようとした人も多いと思われる(基本的には同じなので、量があれば充分再現可能)。
「食べるラー油」が大ヒットした事を考えると、ジャンは先見の明があると言えるだろう。
文庫版にレシピが掲載されている。
腕に自信のある方はお試しあれ。


  • 油爆海鮫(サメの丸ごと一匹揚げびっくりもやしのあんかけ)
「サメ肉料理」の課題で作った料理。

鮫を丸ごと一匹揚げて、もやしと野菜を混ぜた黒酢のあんをかけた特大料理。
簡単に言うと鯉の丸揚げ甘酢餡かけの鮫バージョン。
生きたまま揚げたため、鮫特有のアンモニア臭は全く無く、水分も蒸発して食感も良くなっている。
あんかけに使われているもやしには一本一本フカヒレ、そして注射器で鮫肉のすり身が入れられており味と食感がそれぞれ二重で増幅されている。
香ばしく揚がった鮫肉、野菜たっぷりでのど越しの良い醤油と黒酢のあん、プルプルとした鮫唇、ダブル二重食感のもやしが合わさった驚愕の一品。
あと調理法こそは豪快だが、実際の所特段珍しい食材は一切使っていない。

その料理の出来は、あの黄をして「この料理をおかわりしない人間はこの世にいない」とまで言わしめ、
  • 豪快かつダイナミックでスケールの大きい料理(ケペル)
  • グロテスクな美しさがある(ミケロッティ)
  • 本来ならば100点満点を付けてもいいぐらいの完璧な料理(崔会長)
…と、特別審査員からも絶賛されたが、その為に会場の色んなものを壊しまくってしまった*12為、特別審査員からは1点ずつ、計5点減点された。*13
とは言え、あの大谷でさえも自分の舌を裏切れず正当に点数を入れたという事で、この料理の凄まじさが分かるだろう。

ちなみに、ジャンはこの料理を作るにあたり
  • 水槽の中で元気に泳いでいた鮫を、自ら水槽にダイブして中から蹴り出したどんな筋力をしているんだ
  • 会場の中を縦横無尽に駆け回り、料理の為の道具を作り出す
  • もやしの仕込み作業で極寒の冷凍庫の中で防寒着もなしで行う(その為ジャンは危うく凍死しかけた)*14
  • 自分に油がかかるのもお構い無しで鮫を油のプールで生きたまま揚げる
…などなどのリアクション芸人の如く体を張ったムチャクチャな調理をした結果、審査後に体力が尽きてブッ倒れた。残当。
だが、そのムチャクチャながらも真剣に料理に取り組む姿勢は、今まで醤を一方的に敵視し続けたクソ観客も彼の事を見直し始め、あの大谷もこの料理以降、『審査員の立場で正々堂々戦うあと決勝の秋山の料理もちょっと食べてみたいという姿勢になり、心境の変化が訪れ始めた。


  • 義大莉而鳥苗鳥肉(21世紀の生き残りをかけたダチョウ肉のカルパッチョ)
「21世紀の中華料理」+「ダチョウ肉料理」の課題で作った料理。
「21世紀は食糧難(サバイバル)の時代になる」というコンセプトで作った21世紀のためのダチョウ料理。

簡単に言えばダチョウ肉の中華風カルパッチョ。
食糧危機の時代に手に入る食材としてミミズ・ゲンゴロー・トンボが、野菜ではモロヘイヤ、アルファルファ、クロレラがトッピングとして使われている。

しかし単なるゲテモノ料理などでは決してなく、昆虫達は泥取りや羽根取りなどを下処理をしっかりして油で揚げることによりクリスピーな食感に。
メインのダチョウ肉は餅のようにムッチリと吸い付き尚且つ弾力のある肉質を生かすために生で調理し、
さらに"サシ"を入れることによってマグロの大トロのようなクリーミーで濃厚な旨味を生み出している。
そこに豆板醤と黒酢のドレッシングをかけることで味がサッパリとピリッと引き締められている。
実はダチョウ肉に使われているサシの正体は蛆(ただし食用で無菌・安全な蛆)。生きた蠅を使って肉に直接蛆を産み付けさせてサシを入れていた。
ただ、流石にばれた時はやばいと思っていたのか、青い顔をして説明している。
ただし、審査員への嫌がらせなどでは決してなく、「ダチョウ肉料理」と「21世紀(サバイバル)の料理」の課題に真剣に取り組んだ結果である。
ちなみに、サシは牛脂や豚脂などでも試したが、牛(豚)臭くなってしまうという理由でボツになり、結果的に行き着いたのが虫(食用ハエ)だったというだけの事らしい。
睦十からも「大谷が審査員じゃなければ優勝してたかもしれない」と絶賛された。


◆R頂上決戦


●ビッグ大谷杯→ビッグ秋山杯編

  • 軟膀蟹包子(丸ごとソフトシェルクラブ入り中華まんじゅう)
Rの序章で、中国の特級調理師相手に無理矢理口にねじ込んで振舞った料理。
中に上海ガニのソフトシェルクラブ*15の唐揚げが丸ごと入ってる豪華な中華まん。
中華まん生地のフワフワ感とソフトシェルクラブの唐揚げのカリカリ感のダブル食感に加え、五香粉でカニの生臭さも綺麗に消しており、隠し味として混ぜたカレー粉が食欲を刺激する逸品。


  • 超力招来担々麺
Rの予選で披露したチン珍料理。出された時の見た目は、でかいトウガラシが乗った汁なし担々麺。
劇物料理人の評判が広まっていたため、実食フェイズの前に検査フェイズが発生した。
唐辛子はカード・チリ*16という珍しい代物で、これを手で粉々にしてまぶして食するというもの。
坦々麺本体は普通の小麦粉の麺と、ゼラチンと黒ゴマを混ぜて麺状にしたものの2種類で構成されており、口の中で坦々麺が完成する。
また、油は栄養効果のある食材と、黒ゴマ油を中心に数種類の油をブレンドしたもの。インドのマッサージであるアーユル・ヴェーダのセサミオイルを料理に取り入れたらしい。

味は程よいピリ辛でもちろん絶品だが、何よりその栄養効果は抜群で、体がハッスルしすぎてたちまち鼻血が噴出した。そのせいで、「また毒物か」とか言われてしまったが、まあ仕方ない。
さらにはプラスチックの丈夫なボードを握力で粉砕し、一部の審査員の股間は直径が2ケタ近いと言うレベルに超進化を遂げた。
あんなギャグマンガでもお目にかかれないほど壮絶な勃起は、多分早々忘れられない。


  • 荷葉糟蛋鶏塊(龍崗鶏とハトの卵のハスの葉包み・幻の糟蛋風味)
鶏卵から魚卵、爬虫類にいたるまでありとあらゆる種類が準備された卵を使って料理を作る一回戦「卵料理」で作った料理。
広東省の地鶏・龍崗鶏(ロンコンカイ)の肉とハトの卵をハスの葉で包んで蒸し、仕上げに葉を開いて熱した油をかけた一品。
それだけならオーソドックスな中華料理だが、味付けに糟蛋(ザオダン)という調味料を使ったことで濃厚な香りと味を付けた極上の料理となった。
その美味は、海千山千の審査員達も、(あの大谷でさえも)一時期審査を忘れて陶酔してしまった程。

この糟蛋は簡単に言えばアヒルの卵の粕漬けみたいなもので、四川省に伝わる実在する伝統技法。
アヒルの卵を加工して作るものだが、あまりに作り方が難しすぎて後継者がほとんどいなくなってしまい、幻の一品となってしまっている。
そのためジャンですら準備されている卵の中にあるのを見つけたときは驚愕し、審査員の一人だった大谷日堂も食べたのが50年ぶりで中々思い出せなかった。*17


  • 頂瓜原味球節鰕
実質的にエビチリ対決となった二回戦「エビ料理」で作ったクルマエビのエビチリ。

一見すると殻付きなのに味付けに肝心の頭がなく食べづらいだけの中途半端な料理に見えるが、実はエビのすり身をつくって殻に詰めなおして揚げた一品。
エビのプリプリした食感は失われているものの、クワイや豚の背油で味を補強したすり身とエビ油を使ったソース、
揚げた殻の香ばしさによってエビの旨味を存分に楽しめる。
さらに300尾のクルマエビから抽出したエビ油とエビミソを使うことで、普通ならあり得ない程に味が凝縮された一品となった。

観戦していた弥一には「秀逸なエビチリ」と褒められながらも、同時に「いったいいくらかかるんだ、店では出せんぞあんなの」とも評されている。


  • 原澳地香灼金草牛
決勝戦「オージービーフを使った牛肉料理」で披露した料理。

牧草で育ったグラスフェッドの半身肉に果物のペーストを塗った上で加熱した炉の余熱で温め、超熟成状態にしたものを使用。
肉の3分の2を炉でミディアムレアに調理してそのうち中心の一番良い部分のみを切り分け、残り3分の1で出汁を取った熱々のスープを肉にかけて食べる。
日本人好みではないグラスフェッドが非常に食べやすくなっていて、一口食べるごとに肉本来の旨味に魅入られていく。
実は隠し味としてグレートビクトリア砂漠の岩塩やオーストラリア開拓時代のパン風に焼いた餅を使用しており、ペーストに使った果物もオーストラリア産。
料理全体でオーストラリアを感じさせる一品に仕上がっている。

最終的には牛肉料理としては他の決勝戦メンバーと同じ満点レベルであったが、
「オージービーフ」という課題においては抜きんでているという責任者裁定が下って優勝となった。


  • 秋山流岩石酢豚ガツの詰めもの丸ごと揚げ
「酢豚」の課題で作った料理。

名前の通り、豚のガツ(胃袋)に肉と野菜を詰めて揚げた酢豚で見た目は岩石の塊のようであり、それを切り分けてあんをかけて食べる。
ガツは丁寧にした処理したうえで揚げる前に煮込んでおり、臭みもなくガツの食感も味わえる。
味の決め手としてあんに使用した酢はジャンの祖父階一郎秘伝の黒酢であり、そこに隠し味としてチョコレートを加えることでガツに合うビターさをプラスしている。

ガツ詰め酢豚というアイデアは元はジャンの父親が残したものであり、それをジャンが形にしたうえで独自の工夫も加え祖父の黒酢も使用したという、秋山家三代の歴史の一品。


  • ウツボと龍瓜の辛味煮タライ盛り
「水料理」の課題で作った料理の一品目。

ウツボの水煮をトウガラシや山椒で激辛に味付けした四川料理。
超軟水で煮込んだことで弾力やクセがあるウツボが非常に柔らかく食べやすくなっている。
また、スープではなくあえて水のみ、それも抽出力の高い超軟水で煮込んだことからウツボのダシが煮汁によく出ており、激辛かつウツボ本来のうまみが引き出されながらもスッキリとした味わいに仕上がっている。

  • いろいろ野菜と姿クラゲの和えもの
「水料理」の課題で作った料理の二品目。

激辛の一品目の後もあって食べやすい料理。
野菜とクラゲを和えたものだけでなくクラゲのカサを器と見立てて野菜を盛り込んだ物も用意されており、さまざまな食感が楽しめる。
この料理の水料理としての特徴は和えダレを適度に水で割って口当たりよくしているところなのだが、使用した水はなんとただの水道水
日本の水道水は世界一安全でおいしいとはいえ、対戦相手が徹底的に水に気を配っていた中で蛇口をひねっただけの水を使用したというのは審査員や観客の度肝を抜いた。
「R」に入ってから態度はともかく、料理自体は割と真っ当に作っていたジャンが久々に見せた人を食った料理ではあるが、小難しい理屈なしに水で薄めるだけという原始的で単純ではあるが効果的な水の使い方は審査員にも高く評価された。
また、上記の通り相手である佐藤田十三が徹底的に水を管理して作った料理のカウンターであり、それがただの水で割っただけという事実は勝負慣れしてない佐藤田のメンタルに多大なダメージを与えた。


●五番町飯店復帰編

  • 無限大の風味をまとった駱駝(ラクダ)の瘤の回鍋肉
ジャン曰く「地球的拡大解釈」。
回鍋肉というのが「ゆでた肉をもう一度鍋に戻して調理したもの」という意味であることから、肉でさえあれば何でもいいという解釈から生まれた。
脂身の塊である駱駝の瘤と年代物の四川のからし菜の漬物という癖の強い食材同士を合わせている。
更に味付けとして駱駝の瘤専用のオリジナル醤を作成して混ぜ、隠し味にマジックスパイスウォーター(香辛料の煮出し汁)をオリジナル醤に入れて味を引き締めている。
伝統的な歴史ある数多の調味料を合わせた一品。
複雑怪奇な奥深さと、料理を飲み込むたびに優しい香りを感じられる絶妙な旨さを持つ料理。

  • サクサクの春巻の皮の器に仕込んだフカヒレのカニの餡かけ仕立て~中華の覇王風~
「1皿1000円のフカヒレ料理」というお題で作った料理。

「1皿1000円」への回答として1皿1レンゲ盛りに仕上げてある。
春巻の皮の中に金華ハム、椎茸、フカヒレを挟んで盛りカゴを作り、カゴの中には金華ハムベースのスープをくどくならないギリギリのラインまで煮詰めた餡とカニの卵を盛り、レンゲの底にはシャキシャキとしたもやしが仕込んである。
一口頬張れば餡のかかった場所とかかっていないパリパリした皮の2つの触感を味わえ、そして次に春巻の皮の中の具材が顔を出し、次にカゴの中にある餡が顔を出し、最後にもやしのシャキシャキ感で締めくくっている。
フルコース料理を1レンゲにまとめた驚きの料理。

絶妙な温度調整が必須となるため制作には低温火傷を負ってまで素手でレンゲを持ってオーブンに手を突っ込み盛りカゴを調理していた。
この時、外道料理人の一人である五行が水の準備を慌てて指示している。こいつにそんな人間らしい心が欠片でもあったんだ。

他の面々が普通の料理を1レンゲ分に調整したもので結局1000円分では満足に至らないものだったのに対して、こちらは1000円で満足できる品となっており、料理勝負はジャンの勝利となった。



追記・修正は300匹の海老からエビミソを取り出してエビチリを作った人がお願いします

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