特級厨師試験(中華一番!)

登録日:2011/06/09 Thu 14:39:23
更新日:2021/04/17 Sat 09:32:22
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特級厨師試験とは、『中華一番!』の単行本第4巻〜5巻にて行われた、特級厨師の資格を得る為の試験。
4年に1度開催される。

【「特級厨師」とは】

作中における中華料理界の最高称号で、これを取得した者は料理界で最も日の当たる道が約束される。
一応、実際の中国でも1988年まで実在したが、現実においては単なる調理師免許であり、そこまで絶大な権力があるわけではない。
だが中国の調理師にとっては憧れかつ雲の上の資格であることには違いないので、持ってた人は敬われ尊敬されたことは間違ってはいないだろう。

ただし、特級厨師は料理と関係ない場面では、『無闇に特級厨師の権限を振りかざしてはいけない』という暗黙のルールが存在する。
劇中では『特級厨師』の権限を悪用して福建省などで悪行三昧をしていた、ニセ特級厨師のウォン・セイヨが登場したが、例え本物の特級厨師だったとしても、セイヨの行為は即剥奪・投獄モノの言語道断の行為である。

合格者には龍(青龍)に「特」の紋章があしらわれた特別なコックコートが与えられる。
紋章のデザインは龍以外にもあるようで、後に四川省特級厨師は玄武(亀)に「特」の紋章である事が判明。
恐らくは朱雀・白虎の特級厨師の紋章も存在しているのだろう。
ちなみにこの紋章、付ける場所はどこでもいいらしい。
基本はマオのように左腕につけているが、チョウユはマントに付けている。

尚、特級厨師には様々な種類があり、広州だけでなく四川・湖南などの各省の特級厨師、面点師版である特級面点師等が有る。
この中でマオは最難関と言われる広州(広東省)特級厨師に挑んだ。
(とは言っても、既にリー提督によって推薦状が提出されていた。)

因みに湖南省特級厨師はカラオ(餃子兄弟の兄の方)、山西省特級面点師はシェル、そして四川省特級厨師はショウアンがそれぞれ修得している。
なお、アニメ版ではカラオとショウアンは一級厨師という設定に変えられている。
特級厨師を倒した後に特級厨師を目指すというストーリーがヘンだと判断されたためか。


【試験】

試験の数日前に、前もって2つの課題が与えられる。
「何の料理を作るのか」と、「その料理で何を表現するか」である。
試験当日までに案をまとめ、準備をしてくるのである。
ちなみにマオの師匠チョウユの時の課題は、「粥」と「青春」。どのようにクリアしたかは語られなかった。
あまりヒントを与えすぎてはアンフェアで、マオのためにもならないと思ったのだろう。たぶん。*1

リー提督の推薦でマオは特級厨師の試験会場に向かう。(助手としてメイリィも同行。だが…)



◇予選

課題は
そしてもう一つの課題は「国士無双」

5人が通過したらそこで試験終了という条件付で、すでに4人の料理人が己が理解で課題をクリアしていた中、
マオは鹹水(かんすい)*2を使った、かなりの歯ごたえがある麺を完成。
それを味付けしたラードだけを纏わせたスープ無し、現在で言うところの油そばやパスタに近い料理を出した。
「豪傑、韓信が“国士無双”たりえたのは武器や鎧ではなく本人が強かったから。この麺はスープや具に頼らず、麺だけで美味しいことで韓信を表現した」
と示し、見事に合格。
本選に出場するのであった。

アニメでは下記の4名の合格の後、マオが完成の宣言をする直前にモウコという男が名乗りをあげる。
彼が出したのは東坡肉(トンポーロウ)*3をメインに、山海の珍味で飾り立てた豪華な麺。
彼曰く『わが国が誇る国士無双の一人である蘇軾(そしょく)を表現したもの』*4
味そのものは合格だったが、審査員の答えは……。
「蘇軾は決して驕らず、自分を飾り立てることのない人物だった。これは蘇軾にふさわしくない」
と、モウコは失格となり、マオが審査を受けられることとなった。


マオの他には、以下の4名が本戦に出場。

後に準レギュラーとなる少年・フェイ。
予選の課題は、前日に蓮の花にくるんで寝かせた麺生地を、20回以上も折り畳んだ“龍髭麺(ロンシャオミェン)”という髪の毛のように細い麺を揚げて、お菓子のように仕上げた繊細な料理。
「国士無双」と対になる「絶対佳人」(ぜったいかじん)を表現。
「夫婦は表裏一体。絶対佳人の妻なくして夫の国士無双は有り得ない」として合格。

「陶江館」の荒武者・ハン。
予選の課題は、牛・豚・鶏の油ギトギトの超スタミナスープと極太麺、今で言うところの二郎系ラーメンで「国士無双」らしい豪快さを表現して合格。
曰く「昨日の病人も今日は“国士無双”の大豪傑」

「伴林酒家」の副料理長・タン。
チョウユにも匹敵すると言われる技量を持ち、本大会取得候補No.1。
予選の課題は、八宝菜のあんかけ麺。
仁・義・礼・智・信・忠・考・悌の「国士無双」に求められる美徳の文字を具に彫り、その高い味と技術力を評価されて合格。

広州料理界の魔女・チェリン。
予選の課題は、カエルや蛇などのゲテモノを具にした、今で言うジビエラーメン。
「国士無双」が食べるような野趣あふれる大胆さと、バラバラの肉の味を一体にした絶妙に調合されたスパイスによる味のバランスの繊細さを評価され合格。



◇本選

本選の課題は引き続き麺。だがもう一つの課題は「否麺」
麺にあって麺であらず。
この課題に合格した者が、特級厨師の資格を得る事が出来る。

審査委員長は、マオの母『仙女』パイのライバルであり親友の『女虎』レイカ。
パイと双璧をなすとまで言われた凄腕の女傑である。

本選ではレイカから一つの特殊なルールが発表された。
それは「受験者同士がお互いの料理を実食し、採点する」というもの。
ライバルの作った料理を私情を交えずに評価する公平性を求めるものである。

課題を元に、マオ達は否麺料理を作り上げた。
しかしマオは途中で、ある人物の妨害を受けるも、フェイのおかげで見事に乗り越える。
そして遂に、否麺料理が完成したのであった。


◆実食

  • 一番目
チェリンの烏賊墨(イカスミ)ビーフン。
課題はクリアーしており、普通に食べても充分に美味しい料理だったはずなのだが…
なんと彼女は料理の中に、強い常習性を持つ「芥子(ケシ)の実」から取れる乳液(※アヘンの原料)を混入していた。
更には、マオに対する妨害工作(味覚が麻痺するツボにこっそり針を刺す)まで発覚。
この言語道断なゲスの所業が露呈した結果、チェリンは料理人の資格を剥奪され、広州より永久追放処分を受ける事となってしまった。
ジビエ麺の技量と言い、卑怯な手段なんて使わずに真っ当に勝負してれば合格も夢じゃなかったはずなのだが…!

なお、チェリンはレイカと旧知の仲っぽい発言つまり結構なオバサゲフンゴフンや、その「どんな手段を用いてでも人に料理を食わせる」卑怯な手段から裏料理界との繋がりを匂わせており、『真』にて裏料理界のメンバーとして再登場する事が期待されていたが、結局登場することは無かった。

…ぶっちゃけ、なんでこの人試験受けに来たんだ?
本当は特級厨師の地位なんてどうでも良く、因縁あるレイカの試験をメチャクチャにしてやろうとでも考えてたんだろうか…?


  • 二番目
タンの猫耳朶(マオアルドゥ)
小麦粉の生地を使い麺の型を変えたマカロニパスタのような料理。
しかしライバルたちからは「ただ形を変えただけ」、「麺にあって麺にあらずという試験目的を理解していない」、「試食は必要ない」、「発想が安易」とボロクソに言われ、なんと一口も食べられずに失格となってしまった。
温厚なマオですら口をつけなかったことから、余程呆れられていたらしい。

実はタンの広州特級厨師試験は今年で3回目である。
マオの師匠チョウユに匹敵するとまで言われる技術を持ちながら、彼が今まで合格できなかったのは、この発想の貧困さのためと思われる。
ちなみに予選の料理も、「国士無双」に求められる性格の漢字を具に彫るだけで特に味などに工夫はないというアイディア的には微妙なもので、合格できたのは総合力が高かったため。

この物語の時代背景は鎖国状態で食に異文化をあまり取り入れられられない状態であるため、マカロニやパスタは十分新しい料理と言えるように思えるが、
そもそも中華における「麺」とは小麦粉そのもの、ひいては小麦粉を使った料理全てを指す。餃子やパンも中華では「麺」である。
彼の前に失格になったチェリンも、「小麦粉を面状に仕立てて作るから“麺”であり、自分は米粉を使うことで否麺の条件を満たした」と説明している(そして、最終的にはゲスな行為のために失格となったものの、料理自体は試食してもらえている)。
小麦粉を生地にしている時点でその料理は「麺」の範疇であり、テーマに沿ったものではないのである。

さらに、マオアルドゥは彼の独自の発案によるものというわけではなく、料理法は人から教わったものである。
それに加えて、味付けに使ったのも彼が働く伴林酒家の秘伝のタレ、つまりは悪く言ってしまえばありものでしかない。
そのことはタン自身も料理の説明をする際にドヤ顔で言及しており、あるいはそれも失格とみなされる要因になったのかもしれない。
仮に料理自体が同じものであっても、それが彼自身のアイディアによるもので、「なぜこれが否麺なのか」について納得のいく説明ができていれば、あるいは何かしら独自色を出し、既存の麺とは異なるものを感じさせられれば、試食もされずに終わるなどという事もなかったかもしれないが…。

試験の「麺にあって麺にあらざる料理を作れ」という課題は、明らかに既存の麺の常識を覆す新しいアイディアを求めているので、いくら珍しくても他人から教わった料理をそのまま作っただけでは課題の要求を満たしていないといわれても仕方がないだろう。


  • 三番目
出されたのはハンの牛筋麺。
卵あんかけの中に歯ごたえのある牛筋で作った麺が隠れている豪快なもの。

発想はシンプルだが味は抜群で、「牛肉が麺の形で口の中に入ってくるだけなのに全く新しい食感だよ」とマオの舌を完璧に唸らせ、フェイにさえ「くやしいが(現時点では)最高の味」と言わしめたほど。


  • 四番目
フェイの馬鈴薯(ジャガイモ)麺。今で言う冷麺。
冷たい唐辛子のスープに、馬鈴薯で作った麺が入っている。そのコシの良さは、予選のマオの鹹水麺をも凌ぐ程。

もちろん、フェイ独自にアレンジが加えられており、隠し味に裏ごしした南瓜(カボチャ)が麺の中に練り込まれている。
少しでも南瓜の量を多くしてしまうと、味のバランスが崩れる上にコシも損なわれてしまう為、予選の龍髭麺に劣らず繊細な料理と言えるだろう。


  • 五番目
マオの(ナマズ)麺。
泥臭さのない淡白な味の鯰のすり身で作った麺の中には、コシを出す為に細かく裂いた(スルメイカ)の芯が一本一本に入っている。
ちなみに、鯰麺は試作の段階では鯰のすり身のみで作っていた。
この時点では極細のカマボコみたいなもので、生麺の時点では問題はなかったのだが、暖かいスープに入れるとコシが減ってしまう事をメイリィに指摘されて改良した。
ってか、メイリィお前マオが改良鯰麺作る所見てたはずじゃ…?

スープは鯛のアラと魚醤で出汁を取り、具も鯛のチャーシュー。
オール魚介類で作られた麺料理であった。


◇結果

相互採点制により、「マオ・九点」、「フェイ・九点」、「ハン・十点」となった。
ハンの勝利…
かと思われた。

…しかし、実はハンは、マオとフェイがそれぞれハンには五点ずつ入れたのに対し、それぞれの料理に十点満点中・たった一点しか入れていなかった。*5

つまり、ハンは特級厨師の資格に目が眩み、わざと低い点を付けたのだった。

よくフェイがハンの料理を「(上記の通り)最高の味」と言っておきながら五点ってのはおかしくないか? と突っ込まれるが、これは単純に「ハンの料理は美味かったが、マオ(フェイ)の料理はもっと美味かった」と言うだけのことである。

更に言うならば、審査委員長のレイカは「相互採点で1番点数の高い者を合格とする」、「この(5人の)中の一人を合格とする」とは、一言も言ってはいない。
そして、不当な評価をした=正当な評価をすれば自分の方が劣ると暗に認めたということであり、この後の最終試験で試された「自分の料理に対する自信」という面でも問題があっただろう。
他人の料理を純粋に評価できなかったハンは、不合格となってしまった。
この際、不当な点数を入れたにも関わらず、「オレは勝ったんだぞ」と開き直るハンの姿は、レイカの叱責通りの言語道断の「愚か者」である。

結局、ハンは料理の「腕」ではマオ達に決して負けてはいなかったが、自分自身の「心」に負けるという結果となってしまった。
自身のおこがましさに後悔の雄叫びを上げたあとは、スッキリした表情で四年後の再起を決意し、潔く去っていった。
ちなみに、アニメでは去る間際にマオ達に謝罪しており、原作以上に爽やかな結末となっている。
彼の技量ならば、「心」を鍛え直した四年後は合格できる事だろう…。


そして最後は自分の料理を自己採点。
マオ、フェイ、共に「十点」。
これは、料理人としてのプライド、つまり「コレが自分の作れる最高の料理だ!」と胸を張って言う事の出来る「自信」を試されていたのだ。


結果、2人は晴れて特級厨師の資格を習得したのであった。


そしてこれ以降、マオは特級厨師の身分を隠して旅立ち、旅先で問題が起こるたびに料理でそれを解決し、最後に「特」のマークを出して人々がひれ伏すという水戸黄門的展開がしばらく続くのである。


…ちなみにメイリィは側で勝手にイライラしてたりギャーギャー騒いでたり鹹水を汚いと言ったりしてるだけでクソの役にも立ってなかったのは内緒だ!!
そして『真』ではシロウに相棒ポジションを奪われる事に…!!
だが流石に作者もマズいと判断されたのか、相棒としてでなく心の支えとして成長したが。

一応フォローを入れると、彼女は調理工程においてある意味一番大事な「味見役」を引き受けていたので、マオの料理に対しメイリィからもたらされる客観的な評価は充分助けになっていたと思われる。
……読者の視点からは「料理をロクに手伝わずただ食ってただけ」にしか見えなかったわけだが。


課題「追記・修正せよ。」

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最終更新:2021年04月17日 09:32

*1 この時のチョウユは興味津々の様子のマオとメイリィに対し非常に決まりの悪そうな顔をしていた。「青春」という課題からして何が今語るにはこっ恥ずかしい内容、ひょっとしたら亡きメイリィの母に向けたラブコールのようなものだったのかもしれない。

*2 ラーメンの麺の生地によく入れられる、アルカリ塩を溶かした水のこと。

*3 皮付きの豚バラ肉を一度揚げるか茹でるかして余分な油を取り、醤油と酒と砂糖で煮含めた料理。現在で言う豚の角煮。

*4 蘇軾は政治家、詩人として名を残した人物だが、東坡肉の創始者でもある。蘇軾は蘇東坡とも呼ばれたためこれが東坡肉の名の由来となった。

*5 ちなみに、マオとフェイはそれぞれ互いには八点入れた。これでは言い訳不可能である。