SCP-368-JP

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SCP-368-JP - (2020/04/09 (木) 12:45:57) の編集履歴(バックアップ)


登録日: 2017/01/26 Thu 22:38:32
更新日:2023/09/30 Sat 18:47:05
所要時間: 約 5 分で読めます






「芸術」とは「理解」の隣人であり、理解なき芸術はクールとは呼べない。




SCP-368-JPはシェアード・ワールド SCP Foundation に登場するオブジェクトのひとつである。
オブジェクトクラスSafe。JPのコードが示すとおり日本支部の管轄にある。

概要

SCP-368-JPは暴露したものに認識災害を引き起こす複数の芸術作品である。
……そこ、芸術作品と聞いて嫌な予感がした人。
先に言っておくと、これは要注意団体である 『彼ら』が作ったものではないので安心してほしい。

より厳密に言えば、確かに『彼ら』が関わっていて、恐らくは『彼ら』による技術提供によってコレが生み出された可能性が極めて高いが、
それでもコレは『彼ら』の作品ではない。

その異常性も、「ある特性」も相まってさほどの危険性はない。

SCP-368-JPを構成する芸術作品は四つ。順に紹介していこう。

まずSCP-368-JP-2。これは絵画である。題名は「望郷」
灰色の砂漠の中央で黒い爬虫類が空を見つめている。
これに暴露した人物は「あそこに帰らなければならない」という衝動を植え付けられる。
被暴者のいう「あそこ」がどこなのかは被暴者自身わかっていないようで、
これについて尋ねられると混乱して答えられなくなる。

つぎにSCP-368-JP-3。こちらは彫刻。題名は「落涙」
大理石でできた2本の腕が絡み合い、水滴の形をした水晶を持ち上げている。
被暴者は深い悲しみを感じ、実験の結果80%が涙を流した。

続いてSCP-368-JP-4。これは楽譜で、タイトルは「懐古」
破り取られた2枚のノートに綴られている。
演奏を聞いた者はその曲をかつて聞いたことがある気がする、と感じる。
副次効果として、被暴者が忘れていた出来事を思い出すという効果がある。

最後にSCP-368-JP-5。女性のマネキンであり、題名は「破顔」テーレッテーではない。
顔面に油性インクでスマイリーフェイスを書き加えられており、さらに全身に橙色の包帯が巻きつけられている。
暴露した人物は気分が高揚し、ほとんどの被暴者は自然に笑顔になる。

と、総じて題名通りの効果を及ぼす。
厄介ではあるが感動しすぎて死ぬ絵画とかに比べると有情である。

ところで、先程のナンバーは2から始まっているが、SCP-368-JP-1もある。
これはSCP-368-JP-2〜5が回収された埼玉県のとあるアパートの居室の壁に刃物で刻まれた「後悔」の2文字である。
その文字を見ると、前述の効果がすべてキャンセルされる。
つまり、被暴者に対する対処が容易なのだ。
こちらも壁ごと切り出されて財団に収容されている。

SCP-368-JPの作者

SCP-368-JPはこれらの作品が回収されたアパートの居室にアパートの大家が家賃の回収に立ち入り、
そこでSCP-368-JP-3「落涙」に暴露したため大声で泣き叫んでいるのを近隣の住人によって通報されたため発見された。

当該の居室には地域では有名なとある芸術家が入居しており、多岐にわたる作品分野と人間の感情を題材にした作風が評価されていた。
なお、これまでの彼*1の作品には異常性は確認されていない。
ところが、1年ほど前から作品の発表がなされておらず、スランプに入っていたと思われる。

このSCP-368-JPの作者と思われる芸術家が今どうしているかというと、

自宅から8kmほどの崖から身を投げて亡くなっているのが発見された。


近隣の住人にはその人柄を「優しくて正義感の強い人だった」と証言されている。

回収された文書

それまで異常性のない作品を作り続けていた彼がなぜ、突然SCPオブジェクトを作り上げてしまったのか。
また、なぜ彼は自殺したのか。
その答えは、SCP-368-JP-1「後悔」の下にナイフで留めてあった文章からうかがうことができる。

完成された芸術とは、どんな物なのだろうか。
現実の風景をそのままに切り抜いたかの様な絵画は完成された芸術だろうか。
社会に反抗し重圧を恐れずに姿無き敵を攻撃する文学は完成された芸術だろうか。

私は、そうは思わない。
私の考える完成された芸術とは、人々の感情を揺り動かす様な、言葉も思想も宗教も越えて感動を与える様な、一種の奇跡。そういった物が完成された芸術だと私は考える。

芸術は特定の分野に縛られる必要は無い。人が、自身の信じる形を想像の大地から掘り出したなら、それは音楽であれ、文章であれ、絵画であれ、芸術なのだろう。



私が作りたい"芸術"は、人を惑わす物ではない。私は、私が作品に込めた感情を感じ取って欲しいのだ。
こんな物は、私の望む芸術ではない。彼らの手段も、誰かに感情を伝える為の一つの方法なのだろう。

だが、私はそれを、たった一つの残された方法だとは思わない。
冴えたやり方とも思わない。

私は、彼らの力を美しいとは思わない。私は私の、芸術を信じる。
作品の本質を理解もされないまま、ただ感情を操作するのは感情の表現によって、人の心を動かしたとは言えないだろう。

私の今までの作品の中で最も恥ずべき物達。しかし、それでも私の子供であり、作品である事に変わりは無い。
私には自身の子供を殺す事はできない。

せめてもの償いに、彼らが残した力を借りて、私はこれを作った。私の、最後の、作品として。

"クール"でない私は、それこそ彼らの求める人材では無いだろう。私は、芸術を完成させられただろうか?私は、私だけの力で誰かの心を動かせただろうか?
私は








SCP-368-JP - Are You Really Cool?





私はそうだとは思えない。



追記・修正は、「芸術」とは何かを考えながらお願いします。


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SCP-368-JP - Are You Really Cool?
by Rubbish Shamrock
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