SCP-1851-EX

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SCP-1851-EX - (2020/05/26 (火) 03:11:52) の編集履歴(バックアップ)


登録日: 2017/03/06 Mon 00:37:20
更新日:2024/01/09 Tue 11:33:01
所要時間:約 6 分で読めます





以下は記録情報セキュリティ事務局によりアクセス不可のコードレッドとして分類されています。アクセスはレベル5職員のみに制限されています。このドキュメントは、1916年1月1日にこの組織(the American Secure Containment Initiativ:アメリカ確保収容イニシアティブ)がいくつかの他団体と合併し現在の財団となった際、監査指令001により無効化されました。この記録は保管のみを目的として残されています。


SCP-1851-EXはシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト(SCiP)である。
…というものの、Explained指定からわかる通り、現在このオブジェクトは「解明された」として収容されていない。

ExplainedオブジェクトといえばこのwikiにはSCP-8900-EXSCP-1841-EXSCP-014-JP-EXが存在するが、
性質としてはSCP-1841-EXに近い。項目名は「Drapetomania (ドラペトマニア/逃亡奴隷精神病)」。
アメリカ確保収容イニシアティブが定めていたClassification Typeというオブジェクトクラスに似たものは「Threatening」。
もっとも、財団に移行してからは今の通りExplainedであり、Unclassedオブジェクトというわけではない。


概要、というか歴史

アメリカ確保収容イニシアティブは現象1851-023の解決を模索していた。

現象1851-023とは、白人に奴隷労働者として雇用されている黒人に特有の現象で、
影響を受けた黒人労働者は神に与えられた職務と土地を脱して他の土地へ向かおうとする願望を持つようになった。

アメリカ確保収容イニシアティブも黒人労働者を多数、実験のための補助人員として雇用していたが、
この現象1851-023には度々悩まされてきたようである。
イニシアティブ主任研究員S. Cartwrightはこの現象を「ドラペトマニア」と呼称し、研究していたという。

そして、危険な職務にあたる補助人員は、非公式に、「ドラペトマニアクラス」…つまりDクラスと呼称されていたのである。
その現象が起きた際は、以下のようなプロトコルを実施された。

①日に100回の鞭打ちという形での体罰(若い娘には75回、ピカニニ(子供の黒人)にはせいぜい50回)
②影響を受けた労働者は神によって任命された所有主に示す適切な敬意を聖書の教えを通して教育される
③両足の親指の切除。改善できない奴隷はこの報告書に詳しく述べられているような手に負えない者のためのプログラムに採用



…さて、少しアメリカ確保収容イニシアティブを解説しておく。といっても、このオブジェクト以外で言及されることは少ない団体なのだが。
この団体が財団に吸収されたのは南北戦争後であり、アメリカ確保収容イニシアティブはそれ以前から南部にあった組織である。
南部では当時は黒人の奴隷労働は普遍的に行われていた時代であり、彼ら奴隷労働者が逃げ出そうとする事例も度々あったという。

普通に考えて人間なんだもの、過酷な苦役から逃げようと思うのは当然のことなのだが、
何をどう血迷ったのか、それとも黒人は人間ではないと思っていたのか、Cartwright研究員はこれを「異常現象」と見なしていたのである。
つまり、ドラペトマニアというのは単に白人が、黒人の事情を無視して収容を図ったことが理由の酷い差別問題だったのである。


その後

南部は南北戦争で窮地に立たされていた。北部の勝利は黒人奴隷の解放を意味することになる。

アメリカ確保収容イニシアティブはこの後に起きる類似組織との合併における処置に迫られていた。
これまで同様に黒人をDクラス人員として雇うことは他団体の反発を招くだろう。

そこで、死刑囚や浮浪者、救貧院や孤児を代わりに使用するように制度を転換した。
しかしその後合併しようとした団体にいまだ反発を招き、最終的に死刑囚のみを対象とするようにした。
その後、完全に合併し、今の『財団』となってからは、更に死刑囚から二重盲検法を用いて、
犯した罪以外の人種・性別と言ったあらゆる要素を無視してDクラス人員を選別することになった。

このオブジェクトには登場しない話だが、恐らくここから「D」の意味を「Disposable(使い捨て)」と広め直したものと思われる。
そして現象1851-023あらため、SCP-1851はExplained指定を食らう。
この際Cartwright研究員は全ての収容プロトコルの破棄を要求したが、財団はそれを棄却。


Cartwrightに君は地獄行きだと伝えてくれ。私たちはそれを取り除くが、何をしてきたかの記録は保ち続ける。彼の仲間がこれを行い、私たちが彼を手伝ったということを。
私たちは彼についての記録を白塗りにはしない。
私たちの所業をどのように埋め合わせることになるかは分からない、だが少なくとも記憶に留めておかなければならないのだ。O5-9


こうして、単に黒人を危険なオブジェクトに対処させるなどの差別的扱いはなくなり、
黒人だろうが白人だろうが黄色人種だろうが単純に犯した罪の重さだけで決定されることになった。


余談

ドラペトマニアという語、S.Cartwright研究員、そして以上のエピソードは実は元ネタが存在する。

実際の南北戦争の軍医に、サミュエル・A・カートライト(Samuel Adolphus Cartwright)という軍医がおり、
彼は黒人奴隷の医学的正当性を訴え、奴隷が逃亡するという症状を「ドラペトマニア」という精神病である、とし
鞭打ち刑を課すことが治療行為となると、大真面目に医学書にも論文が掲載されていた。
不思議なことに、彼の師匠にあたるベンジャミン・ラッシュは奴隷制及び死刑に反対する人だった。
なおベンジャミン・ラッシュの弟子に奴隷制を擁護するものは他にも存在している。
ラッシュさんは草葉の陰から差別に加担する弟子を見て何を思ったのか*1

ベンジャミン・ラッシュはトーマス・ジェファーソンとジョン・アダムズの和解を仲介したことや、
連邦政府の設立への寄与、精神医学への多大な功績や奴隷制廃止論などの数々の人道的な功績を残しているにも関わらず、
同時代人より知名度が低い。一方で弟子のサミュエル・A・カートライトは前述の悪名のせいで知名度が高い。
なんとも皮肉な話である。


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