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奴隷

登録日:2009/11/11 Wed 12:46:06
更新日:2026/08/02 Sun 11:15:10
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【どれい】



概要

戦争の敗戦国民や囚人、借金の片として人間でありながら物や財産、家畜のように所持、売買、譲渡され、家事や農業、工業等に従事し、人権や人格を無視した扱いを受ける人物、またはそのような階級や身分を指す言葉。

主に労働力として取引されるのは前述した通りだが、性行為を強要するために所持される奴隷を性的奴隷と言う。

敵を殺し尽すより他国や他地域から拉致、誘拐した方が利益になるし、場合によっては敵の抵抗を抑えられる*1ため、重要な輸出品として重宝され、無益で過剰な殺戮を抑える役割を果たしもした。
これは過酷な地理環境と主要な食料が穀物ではなく腐りやすいイモ類や果物だった故に徴税ができず、大規模な国家ではなく部族社会が発展したアフリカ大陸では現地住民による奴隷狩りが活発に行われたが、日本のような米や小麦が主体で皇帝のような権力者が存在したアジアでは敵勢力や身分の低い人間とはいえ人を自国外へ売る行為は労働力が減少し、税収減を招くため余り行われ無かった。

このような奴隷を許容する体制を奴隷制と呼ぶ。
古代日本の奴卑も同様のものとされる。

有史以来世界中あらゆる国がこの奴隷制を取っていたが、16世紀末の日本で豊臣秀吉が伴天連追放令に伴う奴隷売買の禁止を打ち出し、18~19世紀のイギリスによる国際的奴隷制度禁止運動、1948年に国連により採択された世界人権宣言国際的に一切禁止されている。
それでも世界には非合法な奴隷がまだ2700万人もいると言われている。
一部の発展途上国や紛争地域等では人身売買をしたり、個人を拉致監禁し暴力等によって奴隷化したりする犯罪も多数発生している。
そんな強制的な労働でも稼げる、逆にそんな労働でなければ稼げないような社会状況とも無縁ではないだろう。

奴隷=酷い扱いという印象を与えたのは、15~19世紀のアメリカ合衆国において身分差別+人種差別でより陰惨となった黒人奴隷によるものが大きい。

基本は上記の扱いだが、「奴隷」と一口に言ってもその扱いは仕事内容や購入目的などでピンからキリまである。
現代日本で一般に想像されるような奴隷はいわゆる「農場奴隷」や「炭鉱奴隷」と言った単純な肉体労働に従事する者たちで、上記のアメリカの黒人奴隷もこれが大半。彼らは替えの利く労働力として文字通り死ぬまで使い潰されることが多かった。ガレー船の漕ぎ手でも奴隷が使われる事が多かった。
一方で古代ローマ等では高い教養を持つ奴隷は重宝されたり、その活躍によっては市民権を得る事もできたり*2、「奴隷の身分は主人の身分の1/2」とされたイスラム世界などは、平民よりも身分が高い奴隷が宗教的指導者にまで上り詰める例もあった。
旧約聖書によると、イスラエルでは7年ごとに徳政令が出て奴隷は必ず自由にされたとの記述がある。一方、主人や主人から与えられた妻子等に愛着があって自由を望まなければ一生奴隷として仕えることも選択できた。
また、(これも時代や地域、「主人」の方針にもよるが)私有財産が認められる場合もあり、計画性や忍耐力のある者なら自分で自分の身柄を買って自由になる、という事もあった。
朝鮮王朝時代には「奴婢」という奴隷階級が存在していたが国家に属する「官奴婢」は法的・制度的な保護が比較的機能していたためそれほど悲惨な扱いではなく、寧ろ読み書き計算ができるため地元では村のまとめ役程度にはなっていた。実際、凶作の際に税を納めるのに窮する良民よりも、役所に属して一定の食糧が確保されている官奴婢の方が生活が安定していたという逆転現象も記録に残っている。そのため特に官奴婢は現代人が想像するような悲惨な境遇ばかりではなく、地域社会ではエリート寄りの立場であったことも少なくない。

権力者の側近として権勢をふるった奴隷も歴史上には存在している。
普通の人間には血縁者が居て、相互扶助しており、子女に財産や家格を受け継がせる事も出来る。
本人が有能で忠実でも、その子孫が同じぐらい優秀とは限らないし、代を経る毎に忠誠心が薄れるリスクも有る。
また、粛清しようものなら血縁者が恨んで、復讐に動く危険性も存在しているし、其処まで行かなくとも側近本人程の能力や忠誠を持たない血縁者が問題行動を起こす事も起こり得る。
奴隷は血縁者と言う集団から切り離されて、主人と主人から与えられた財産以外に頼る相手が居ないので、忠実で尚且つ血縁者と言う厄介なものを絡めて考えなくても良いと言うメリットが有るのだ。
また、成り上がり者は余程の人格者でもヘイトを集めやすいので、主人視点では批判の避雷針として奴隷上がりの側近は有難い一面も有る。

また、現代でまとまった金になる仕事の大半は専門的な技量や知識経験、それにまつわる各種規格や法規制などをクリアしなければならないものばかりである。
「奴隷で稼ごう」と思えば奴隷にそれなりの専門技能を身につけさせなければならず、鞭でひっぱたいたり背中に銃を突きつけてようやく渋々動くような人間にそのような技能を身につけさせるのは困難である。技能も無いまま無理やりやらせようものなら事故&不良品続発で瞬く間に大赤字である。
また、最低限の衣食住や休息時間を提供しなければあっという間に人権以前に医学的に労働不能な状態になるし、器具や材料と言った環境もこちらで整えなければならない。
現代の日本で一番奴隷に近い立場と思われる懲役刑の受刑者でも、刑務作業による収益よりも刑務所の運営経費の方が遙かにかかっている*3

まあ美貌や特殊技能が無いと文字通り一般的なイメージどおりの待遇になるのは間違いないが。

可哀相だからと奴隷商人から奴隷を買ってはいけません。
仮に買った奴隷を幸せに出来たとしても、連中はその資金でまた それ以上の人数を誘拐し、売り飛ばします。 つまり、奴隷を救うどころか奴隷ビジネスそのものの活性化に貢献してしまうだけです。
たとえあなたがどれほどの資産家だったとしても、海外に行っても買ってはいけません。

創作において

とまぁ、世界規模で極めてセンシティブな話題のため、近年の作品ではよほどニッチな形態で販売されていたりCERO:Z級の作品でない限り『奴隷』という表現そのものを悉く自粛される傾向にある。
『奴隷』を扱った過去作品の復刊やリメイク、移植などが行われた場合は該当する表現を変えられたりはもちろん、それだけでは払拭しきれないと判断された場合はその展開や設定そのものが奴隷を彷彿させない形に改変・最悪カットされたりすることも珍しくない。

スパロボではコンバトラーの「どれい獣」が後期の上位種である「マグマ獣」に統合されたうえで、「本当は○れい獣だが、やばいので変更された」と説明された。異世界でマグマがなんちゃら

奴隷になった(或いは奴隷からはじまる)主人公がそこから逃げ出し大冒険を始めたり、心優しい王子様が奴隷制度を廃止させようと奮闘するしたり、様々な展開に発展できる便利な設定だったりする。

石ノ森章太郎原作の漫画『サイボーグ009』の008/ピュンマは、奴隷商人に奴隷として連れていかれそうになった所を脱走したという過去がある。*4

トマトスープの漫画『天幕のジャードゥーガル』では、主人公のシタラ(ファーティマ)がイスラム教圏の国ペルシア(現在のイラン)の奴隷。
母の代からの奴隷身分ゆえに幼い頃は「元の場所に戻る」事すら出来ない身を嘆くも、良い主人達との出会いを得た事で学問を学び成長。将来恩人の傍に仕える事を願うも、モンゴル軍の襲来で捕虜→モンゴル王族下の奴隷となった事で数奇な運命をたどる事に…。
なお史実ベースで描かれかつ本人が高めの教育・技能を主人の意向で取得したため、作中では奴隷として「自由」と「権利」こそ制限されているものの、ペルシア時代・モンゴル時代共に主人達からは普通の召使の様に扱われている。

さちみりほの漫画『銀のヴァルキュリアス』の舞台は、女が支配者・市民、男が奴隷という異世界である。
奴隷を矢の的にする、要らない奴隷は道端に捨てられるなど男は人間以下の扱いで、幼い少女ですら弟は将来自分の奴隷になるからとこき使っている。

この手の奴隷が存在する作品の多くは「一般奴隷」と「犯罪奴隷」が区分けされている事が多い。
前者は「労働力」を提供する商品として自分を売った存在なので、R18やR18Gのような事をしてしまうと購入した主人の方が罰せられる。
どちらかというと「住み込み労働者(期間:自分を自分で買い取れるまで)」とかの方が近く、近年の作品だと『迷宮クソたわけ』の主人公(主人に儲けの殆どを債権利子として支払い続ける義務があるが、日々の支払いや主人への忠誠さえ守っていれば比較的自由に仕事が出来、仕事に必要な基礎技術習得の支援くらいは提供される)が当てはまるか。
後者は何かしらの罪を犯した人が落ちる階級であり「買った人が何をしても罪に問われない人間以下の存在」という現実の奴隷に近い物となっている。
こちらの奴隷の主な使い道は購入者のストレス解消、及び戦闘の捨て駒である。

よくあるメイドもの等とは違い、主人が望めばどんな時でも場所でも体を提供しなければならない。

まれにものすごく愛される幸せな(元)奴隷もいるが、自主的に望んで奉仕するよりは拷問レイプ等の鬼畜系だったり、精神崩壊しておねだりするようになったりする表現が多い。

またサディストな主人だとスカトロ等の変態的なものや、場合によっては手足を切り落とされたり……

特権階級の主人と奴隷の禁断の恋をテーマにしたラブストーリーもある。恋愛に限らず身分を越えた絆を育むことも多い。いずれにしても主人側の関係者や部下が「お前何奴隷なんかに絆されてんだよ目ぇ覚ませ。自分の立場分かってんの?」などと二人を引き離そうとするのがお約束の展開である。
周囲を説き伏せるなりして無事ゴールインするか*5、駆け落ちするか、自分の立場や使命を選んで涙を呑んで奴隷と離別するか、事態を鑑みた彼らの手により奴隷が暗殺されてたり秘密裏に違う奴隷商人に転売されてしまうか…結末も様々である。


もちろんこれらは犯罪なのでみんなは真似しないように。


また、近年ではネット小説…もとい小説家になろうあたりのファンタジーモノ、異世界モノあたりだと、現代日本出身の主人公が奴隷を買うという展開も多い。
(例:「盾の勇者の成り上がり」「異世界迷宮で奴隷ハーレムを*6など)
家具家電が現代日本ほど便利ではないので「面倒な家事炊事をやらせよう」とお手伝いさんを雇う気持ちで行うものから、
恋人から見捨てられたから、絶対に裏切らないパートナーが欲しくなったというもの、そんなケツの穴の小さい器だからあっさり恋人に見限られるんだよとは言ってはいけない
せっかく異世界に来たのだからハーレムが欲しくなったという下心全開なものまで、
主人公の動機は様々である。

主人公が元居た現代日本ではブラック企業勤めorいじめやら冷遇を受けた経験があり、そんな主人公が己の境遇を踏まえた現代日本の人権観で奴隷に接するため、死活を握られていて地獄のような日々を覚悟していた奴隷は優しく接してくれる主人公様にベタ惚れ...というのがなろう作品における典型的なテンプレ展開である。
なお、当然の如く奴隷は美人な女の子である。*7
もちろん「とんでもスキルで異世界放浪メシ」や「10年ごしの引きニートを辞めて外出したら自宅ごと異世界に転移してた(Web版)」など、この手のテンプレ女性ではないパターンもあったりはするが。

ただ、こういう展開は身も蓋もなく言えば何の実績も無い段階の主人公が手っ取り早く、かつほぼ無条件で女性の信頼・好意を得る常套手段であり*8、作者としてもヒロインの心を掴む紆余曲折の大半をすっ飛ばせるため一時期は魔法やステータスボードに継ぐ頻出ワードで、それ故かなり嫌がられた時期もある。

そして、「現代日本との対比」「日本の社畜と同様」などと、日本社会の風刺として奴隷が出てくる作品もある。
しかし、自身の死活すら物理的に掌握された史実上の奴隷と、逃げ出す事自体は自由にできる日本の社畜を同列にするなというこれまた厳しいツッコミを受けることが多々ある。

更に主人公が現代出身、かつその記憶を継いでいる場合、「奴隷ビジネスに関わってはいけない事は現代では常識で、更に上述したような扱いを受けて奴隷とは何たるかも想像出来る筈なのに、何故ホイホイ奴隷市場に買い手として関わるのか」と、主人公の倫理観についても批判を受ける事があり、主人公が作中でいかに人格者としての立派な姿を見せたり偉業を成し遂げたとしても「でもコイツは普通に客として奴隷買ってたよね」という一定数のケチが末永くついてしまう事も…。
主人公が前世でいじめられ差別された、ブラック企業で搾取されたという辛い経験があった場合、「そんな倫理観の持ち主は嫌われて当然」「その程度の教養ならブラック企業の小間使いがお似合い」と、いじめや差別に否定的な人たちからも手厳しい意見をぶつけられる。
それでも下に記すような形でフォローがなされているなら中和剤になる事もあるが、それすら無くその展開および奴隷との出会いを是としているとみなされると、最悪作品を通り越して作者自身にさえ批判が及んでしまうことも。

特に奴隷界隈に敏感な外国人や団体などにも多く触れるアニメ化された作品ではこの手の展開は非常に批判されやすい。
異世界転生もの最初期に執筆され、10年越しにアニメ化されたとある作品に至っては、主人公が奴隷を買うという展開を国内外から批判された結果、原作者がTwitterにて弁明する事態にまでなった。

とは言え、「奴隷制が普通」の社会でいきなり現代の価値観を振りかざしても、周囲からは頭がおかしい人間・世間知らずな偽善者と一蹴されかねない
寧ろ、「奴隷制は仕方無いけれど、奴隷の虐待は駄目だろう」「有能で人柄が悪く無い奴隷なら、自分達の仲間に入れても良いと思う」等のまだしも話の通じる人物まで敵に回すリスクも十分にある。
更に、奴隷制社会では『(その社会でも酷いと見做される虐待案件を除けば)主人を裏切った奴隷は命が有ったとしても普通の奴隷以下の、まさに最底辺と見做される』のが基本である。
主人を裏切るような信用ゼロの奴隷など、終始拘束して人体実験や死ぬまでストレス発散用の虐待目的といった非人道的も甚だしい用途か剣闘士*9の様な捨て駒しかほぼ需要が無いし、ローマ帝国の葬儀組合*10の様に奴隷にも門戸を開いているコミュニティーからも排斥されてしまう。

また、奴隷制社会でも奴隷を勝手に殺した場合にどう裁かれるか、で大きな違いが出る。
帝政期以降のローマでは主人と言えども、当局に突き出して処罰を要請するなら兎も角、普通の奴隷を勝手に殺した場合は(自由民身分を殺した場合よりは刑が軽くなりがちとは言え)殺人罪で逮捕されてしまう。
奴隷殺しに殺人罪の適用を認めていない、即ち器物損壊罪、主人の場合だと自己財産の処分で無罪、となると奴隷の扱いは過酷なものになる可能性が高い*11
普通の奴隷殺しには殺人罪が適用されるが、死刑囚に準ずる奴隷にだけ殺人罪の適用が認められない、と言うパターンも考えられ得る。

奴隷を買うにしても、その世界の社会常識と奴隷の扱い方をある程度学んだうえでなら、話の筋は通るが、そうなると「奴隷に対して宥和的な主人」「奴隷を虐待する客には大金を積まれても奴隷を売らない奴隷商人*12と言う主人公が敵に回したくない人物が指導役や斡旋者として登場する可能性が高く、「奴隷に優しい主人」と言うステータスの希少性が失われる

なろうファンタジーではこれに加えて「被差別種族だから」という理由でエルフや獣人、モンスター娘などが奴隷落ちする場合もあり、この場合はほぼ犯罪奴隷と同じ扱いを受ける。
(例:勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強種の猫耳少女と出会う
外観は美人な女の子なのに被差別種族だからという理由で雇い主から性的な目では見られず処女であるのは、なろうによくあるご都合主義である*13
そして主人公サマは私たちを差別しないからと、外見で差別され迫害された身なら仕方ないかもしれないが、モンスター娘を差別する理由がない現代人からしたら「しょうもない理由」でベタ惚れするまでが、異世界モノ作品のテンプレである。

近年では流石に展開として使い古されすぎ・主人公の行いとして倫理的によろしくないと判断されつつあるためか、奴隷を買うのではなく奴隷商人から逃げた奴隷を保護したり、奴隷組織を倒したときに生き残っていた奴隷を個人的に引き取るなど、奴隷ビジネスに与しない形で奴隷ヒロインと出会う流れな作品も増えつつある。
(例:『転生したら剣でした』)

奴隷という名前だけで実際は1人の社員として扱われる、名前通りの奴隷もいないわけではないが斡旋所も奴隷も信頼ならないものとして扱われる作品もある。
(例:ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。~魔導書の力で祖国を叩き潰します~

主人公が異世界の文化社会に挑み勝利して奴隷制度を廃止するも、女の子が主人公への恩義から結局奴隷として仕えるというものもある。男の夢
(例:『異世界はスマートフォンとともに。』)

中には、主人公が異世界の文化を尊重しつつも奴隷制度を最大限利用して、「あくまでも商売」「慈善事業でやっているんじゃない」という形で関わるものもある。
(例:『異世界で上前はねて生きていく~再生魔法使いのゆるふわ人材派遣生活~』)

なお、中には奴隷を酷い目に遭わせる、屈強なプライドが苦難を前に徐々に堕ちていくという、胸糞で閲覧注意な作品も割とたくさんある。
そんな作品はほぼメディアミックスされないため、そういうのがお好みなドSな方は小説家になろう派生サイト「ミッドナイトノベルズ」で検索してみよう。もちろん自己責任で。


なろうに限らず、逆に「主人公(たち)が奮戦して奴隷を解放し解放者・救世主として方々から賞賛される」「奴隷制度を廃止する」という展開も定番だが、これはその先の展開についても適切にフォローしておかないと今現在では批判されてしまいがち。
何故なら、解放された奴隷たちは行き場を失い浮浪者として路頭に迷うだけになるからだ。
史実上でも、元首制初期のローマ帝国では無責任な奴隷解放*14により生じた貧民が大きな社会問題と化してクラウディウス帝やネロ帝の頭を抱えさせている*15
市場や一大職場ごと解放したりすると3〜4ケタ単位の奴隷が一気に世に放たれる事もありうるが、そのうち何人がまっとうな定職に就けるだろうか。何らかの技能や知識を活かした仕事をやらされていたなら兎も角、それらも無く鞭で叩かれる事への恐怖から目先の単純作業を思考停止でこなす事しか知らない者達を雇う職場はどれほどあるだろうか。
顔などに刻まれた奴隷の証である焼印や刺繍といった傷跡で『卑しい元(解放)奴隷』という差別を受ける事も日常茶飯事。法律で差別を固く禁じても長年培われた人々の常識は変えられない。いくらでも法の穴を突いて「『差別』にならない差別」が生まれるのだ。
そうした何の保証もない「自由」の中で仕事にありつけず食うに困った者がやむなく犯罪に手を染め周辺地域の治安を悪化させたり新たな奴隷商人に闇で横流しされたり、食い詰めた元奴隷たちが結託してスラム街や犯罪組織を作ったり…といった多くの懸念が新たに生まれるのだ。
諸外国の存在に触れている作品の場合、奴隷解放により一気に働き手を失った各企業や商会、活きの良い元奴隷(働き手)が奴隷制度を取り入れている他国に逃げて一気に衰退したり、主人公が国交のある諸外国にも奴隷制度廃止を求めた結果反発されて戦争の火種になる可能性まである。

そのあたりをフォローせず単に奴隷を解放したり奴隷制度を廃止するだけでは
  • 一般市民からは「世間に犯罪者予備軍どもをばら撒いた」
  • 各産業からは「急に働き手が居なくなって現場が回らなくなった(求人しようにも奴隷に無理やりやらせる仕事というイメージが固まっている為一般人から応募が来ないor専門的な知識・技能が必要になるので早々に代替を用意出来ない)」
  • 中央政府や地方を管轄する貴族などからは「外国に労働者や商会が逃げて税収どころか都市機能自体維持できなくなった」
  • そして奴隷たちからも「お前らのせいで路頭に迷った」
…と、救世主どころか奴隷商人以上にタチの悪い巨悪として四面楚歌な立場に追いやられるのがオチである。
奴隷制度についてもそこそこ描かれる『アルスラーン戦記』でもアルスラーン王子や過去のナルサスが解放した奴隷にそれらの理由で恨まれ、前者に至っては逆に「主人の仇」と襲われている。*16

『なぜ銅の剣までしか売らないんですか?』では、奴隷の解放とは名ばかりで、一部の人間が損をして一部の人間だけが得をする歪んだシステムができてしまった。
複雑な問題を早急に結論を出そうとせず、いったん保留してよく考えることの大切さが、奴隷解放エピソードだけでなく物語を通して説かれている。

これは史実だが、ノルウェー王オーラヴ1世は、3歳の頃に海賊に捕まり奴隷になったことがあるが、18歳にしてヴァイキングの長に、そしてノルウェーの王へ成り上がったというフィクションのようなエピソードを持つ。
彼の一生は1994年、日本の漫画家あずみ椋氏によって「獅子の如く」というタイトルで漫画化された。


「奴隷は持たざる者……猶予の無い……虐げられし者……、
 しかし……その何も持たない……どうしようもない奴隷だからこそ……追記・修正ができる……と……!」

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最終更新:2026年08月02日 11:15

*1 皆殺しにされるなら命がけで最後の抵抗を試みるが、命が保障されるなら投降を考えようという者も出てくるし、それで敵が投降と交戦で内部分裂でも起こしてくれれば万々歳。ただし「命は保証する」と言う約束が守られることを示す必要があるため、口だけで保証するのでは意味がない。

*2 そもそも古代ローマにおける奴隷は「市民権を持たぬ者」という意味合いが強く、隷属的な立場という意味合いとは異なる。

*3 令和2年度の懲役刑による収益は年間28億円だが、法務省の矯正関係経費は年間およそ2400億円である。(矯正関係経費は刑務所のみの予算ではなく、少年院等の経費も含まれるが)

*4 但し初出が1960年代という事を踏まえても古すぎる描写だったせいか、平成アニメ版ではこのくだりは改変されていた。

*5 史実のネロ帝の妾であるアクテはネロの家庭教師のセネカから『由緒ある家の出身』との身元偽造を手伝ってもらい、ネロの没後に彼を父方の一族の墓に葬って墓守しつつ天寿を全うしている

*6 メディアミックスに伴い、「異世界迷宮でハーレムを」に改題

*7 奴隷を商品としてみる場合、客からの需要が高くなければ高値で売れないので、美人な女の子を奴隷として売るのは理に適っているとも言える

*8 中には周囲の実力者などからも『奴隷を丁重に扱い様々な功績を上げる期待の新人』的に一目置かれる展開や、奴隷の抱えている病気や怪我、呪い等を主人公が奔走したり持っている力を駆使したりで完治した事により信頼や好意を寄せるようになる理由付けもついてきたりする。

*9 厳密には剣闘士でもスター選手を死なせては主人や興行主の損失が大きいので、奴隷制が上手く機能していた時代には無闇に死なせないよう工夫がされていた。主人を裏切って剣闘士にされた奴隷は其れこそ前座試合の使い捨て選手として扱われるのがオチ

*10 下層市民や奴隷の互助組織で、積立金を払ったり葬儀の雑用を手伝ったりすることで「死んでも最低限の葬儀を出して貰える」様に会員同士が相互扶助する

*11 刑法は国家が人民を処罰すると同時に、生存権や所有権の侵害を国家が抑止すると言う意味合いも強く、刑法の保護下に置かれているかどうかは身を守る上で大きな違いなのだ。

*12 史実の古代ローマでも奴隷に専門教育を施す代わりに虐待や賤業禁止の契約を結んだ客にしか奴隷を売らない事でブランドを保つ奴隷商人は存在した

*13 これについては『それでも穢らわしい○○族であることには変わらない。そんな種族を女としてどころか、生意気に人間サマの姿を象ってる事自体腹立たしくて仕方ない。』という風潮描写が挟まれたりする。史実上、黒人奴隷の女性が黒人を卑下してる筈の白人の男性に大勢レイプされて、現在でもアフリカ国家の遺伝子プールにまで影響を与えていることを考えると相当苦しい言い訳であるのだが…。

*14 帝政初期に国外侵略に慎重になると同時に奴隷虐待防止が進められた結果、長生きになった奴隷が歳を取って労働力が低下した、主人の事業が失敗して奴隷の生活費を確保し辛くなった

*15 この二人は『奴隷の虐待防止』『有能な解放奴隷の社会進出増進』を基本政策に置いていた。歴代のローマ皇帝の中でも行政手腕の面では有能な人物が、強大な権力と資金力を使える状況でも真剣に頭を抱えた、と言うのだから解決がどれだけ難しいか想像が出来る。

*16 アルスラーン達に討たれた悪徳領主はアルスラーンの仲間達を殺し彼の後継人に成り代わろうとしていたが自分の奴隷を先述した理屈で上手く扱っており、奴隷たちも素直に働いていた。ナルサスも新たな領主の座に就くと共に奴隷たちに金を与えて解放したが、後に彼の配下になるエラムの両親以外の大半の奴隷から上述した形で恨みを買った。